【初心者向け講座】モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」モルトとは? 

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事ではモルトウイスキーの原料である大麦麦芽(モルト)について、ウイスキー初心者の方にもわかりやすく解説します。

こんな疑問がある方にお勧めの内容です。

  • そもそも大麦麦芽(モルト)ってなに?
  • モルトに種類ってあるの?
  • モルトのつくり方は?ピートってなに?

原料の「モルト」を詳しく知ることで、モルトウイスキーについての理解度を大幅にあげることができます。

モルトウイスキーがもっと好きになれますし、知識があればウイスキー選びにも役に立つと思います! 

ぜひ最後までご覧ください。

 

【初心者向け講座】モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」モルトとは?

大麦麦芽(モルト)とは

大麦を発芽させたもの モルトをつくることを製麦といいます。

なぜ大麦を発芽させた「大麦麦芽」にする必要があるのか。それは、大麦を発芽させることで「糖化酵素」をつくり出すことができるから。

ウイスキーの原料である「穀物(大麦)」はでんぷん質なので、そのままだとアルコール発酵に必要な糖分がありません。 アルコール発酵させるために、でんぷんを糖分に変える(糖化)必要があります。糖化のために必要な酵素を大麦自身の中に作らせるために、大麦を発芽させます。

 

ユースケ
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モルトになる前の「大麦(バーレイ)」には糖化酵素がありません。

 

【初心者向け講座】モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」モルトとは? 「大麦」について 

「大麦」(バーレイ)について

大麦はイネ科の穀物。原産地は中央アジア。

小麦、トウモロコシ、米などと共に、人類に欠かすことのできない重要な食用穀物の一種で、紀元前8500年頃には食用としての栽培が始まり、小麦よりも低温や乾燥に強いため、小麦の生産が困難な地域で多く栽培されています。

最近では大麦の若葉を粉末にした「青汁」が人気となっており、健康食品としても需要が高まっています。お酒造りではウイスキー以外に、ビール、大麦焼酎などにも利用されています。 

 

大麦の歴史

大麦は、人類の歴史の中で重要な穀物として栽培されてきました。

栽培の起源は、紀元前8000年から10000年前にさかのぼるとされています。中東地域(現在のイラン、イラク、シリアなど)が大麦の起源地と考えられています。最初の農業社会が形成された時期には、すでに大麦の栽培は始まっていたとされています。

大麦は古代メソポタミア文明や古代エジプト文明など、古代の多くの文明で重要な穀物として栽培されていました。古代エジプトでは、大麦は主要な食糧として栽培され、ビールの材料としても利用。

古代ギリシャとローマ時代になっても、大麦は重要な食糧の一つでした。特にローマでは大麦から作られたパンが一般的であり、兵士の食糧としても重要な役割を果たします。

中世になると、ヨーロッパでは大麦は主にビールの醸造に使用されます。食糧として消費されなかった訳ではありませんが、貧しい人々の主食として消費されていました。

近現代に入ると、大麦の栽培技術が向上し、生産量は増加。さらに、大麦の栄養価や健康効果が再評価されたことで、多くの国で食品としての需要が高まる傾向にあります。

 

栽培と生産

大麦は主に冷涼な気候で栽培されますが、乾燥地帯でも栽培が可能です。北アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの地域で広く生産されています。主に、春大麦と秋大麦の2つの主要な品種があります。

 

用途

大麦はさまざまな用途に使われます。主なものは以下の通りです。

  • 食品:大麦は穀物の一種。大麦粥、大麦スープ、サラダ、シチューなどに使用。
  • 飼料:家畜の飼料としても使用。
  • 酒造:ビールやウイスキーなどの醸造に使用。

 

栄養価

大麦は栄養価が高く、食物繊維、タンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富。特に食物繊維が多く含まれており、消化器官の健康をサポートし、血糖値のコントロールにも役立ちます。

 

健康効果

大麦は健康に良いとされており、食物繊維が豊富なため、消化器官の健康を促進し、コレステロールを下げ、血糖値の安定に役立ちます。また、ビタミンやミネラルも含まれており、栄養バランスを整える効果もあります。

 

種類

大麦にはいくつかの異なる種類があり、主な種類には、パール大麦、ホール大麦、ロールド大麦などがあります。

 

 

初心者向け講座 モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」モルトとは? 大麦の種類 

ウイスキー用に使われる大麦は大きく2種類に分けられます。 

  • 二条大麦 
  • 六条大麦 

 モルトウイスキーの原料として使われるのは「二条大麦」です。「六条大麦」と比較して解説致します。 

 

二条大麦(二条種)

通称「ビール麦」。モルトウイスキー以外にビールにも使われています。 

一粒が大きいことから「大粒大麦」と呼ばれることもあります。酵素力が弱い品種。 

 

六条大麦(六条種)

上から見ると、正六角形に実がなって見えることから名前がつきました。二条大麦と比べて酵素力が強いのが特徴。 

糖化酵素が強いため、大麦麦芽以外の穀物を主体としてつくっているウイスキー(バーボンウイスキーグレーンウイスキー)に使用されています。

ちなみに、麦ごはん(麦飯)や麦茶などに使われているのも六条大麦です。 

 

二条大麦と六条大麦の比較

二条大麦と六条大麦の比較表
二条大麦 六条大麦
ウイスキーの種類 モルトウイスキー バーボン、グレーンウイスキーなど
粒の大きさ 大きい 小さい
でんぷん 多い 少ない
タンパク質 少ない 多い
酵素力 弱い 強い
その他の用途 ビール、麦芽飴(麦芽糖)、飼料用 など 食用(麦飯、麦茶)、デンプン、飼料用 など

二条大麦は、酵素力が弱い分でんぷんが多いため、最終的なアルコール収量が多いのが特徴です。モルトウイスキーは100%大麦麦芽ですから、酵素力が弱くてもアルコール発酵にはなんの問題もありません。 

 一方、六条大麦は酵素力は強いのですが、でんぷん質は少ないためアルコール収量も少なくなります。つまり、六条大麦だけを原料とした場合、ウイスキー醸造用としては不向きと言えます。

そのため六条大麦は、バーボンやグレーンウイスキーに全体の量の1~2割程度いれられて、酵素力の強さを活かした「糖化酵素としての役割」を果たすことになります。

 

 

【初心者向け講座】モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」モルトとは? 大麦品種について 

大麦の品種

モルトウイスキー用の大麦の品種は、1900年以降に品種改良・開発が進みます。大麦の品種は「ウイスキーの味わいにおおきく作用することはない」というのが定説です。(ワインであればブドウ品種が味わいを決定づけますが、ウイスキーの場合は違います) 

大麦の品種改良の目的は、おいしいウイスキーをつくる為ではなく、あくまでもアルコールの収量を増やすことが目的です。でんぷん質が高い大麦を次々と品種改良によって生み出し、ウイスキーの生産効率を高めていったのです。 

 

ゴールデンプロミスとは?

1960年代に開発された有名品種。ゴールデン・プロミスはかつて「マッカラン蒸留所」が使用していた大麦麦芽。

優秀な品種でしたが、その後品種改良のサイクルがどんどん早くなり、現在では「コンチェルト」「オクタビア」などの更にアルコール収容の多い品種が存在しているため、ゴールデンプロミス種を育てている農家は少なくなりました。 

 

ユースケ
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いまではより多くのアルコールをとれるよう、収量の多い大麦の品種を積極的に使うようになったことで、古い品種は無くなりつつあります。

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【初心者向け講座】モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」モルトとは? 大麦麦芽のつくり方「製麦」

製麦とは?

大麦麦芽(モルト)をつくることを「製麦」といいます。 

製麦はかつて全てのモルトウイスキー蒸留所で行われていましたが、現在はほとんどの大麦麦芽が「モルトスター」と呼ばれるモルトを作る専門業者によってつくられています。

蒸留所はそれぞれのウイスキーにあう「モルトのレシピ」をモルトスターに伝えて作らせます。そして完成したモルトは蒸留所へと運ばれ、蒸留所ごとに個性の異なるウイスキーが生産されています。 

 

大麦麦芽のつくり方

スコッチウイスキーでの伝統的な製麦(フロアモルティング)についてご説明したいと思います。 製麦は以下のような手順で行われます。 

  1. 収穫 
  2. 自然乾燥 
  3. 保管 
  4. 選粒 
  5. 浸麦 
  6. 発芽 
  7. 乾燥
  8. 除根 

 

1、収穫 

スコットランドでは8月頃。 日本では5月~6月頃に大麦が収穫されます。 

日本では、ウイスキー用大麦はほとんど栽培されていませんでしたが、近年は原料となる大麦も国産で作る動きが加速しています。以下参考記事。

  • 被災した土地で栽培した大麦を使ったウイスキー原酒の製造を開始
  • 静岡県産大麦の栽培が本格スタート!

 

2、自然乾燥 

収穫直後の大麦を自然乾燥させます。 適度に乾燥させることで保存性を高めるという目的があります。

 

3、保管 

大麦には、発芽しない休眠期間があります。そのため乾燥後に保管して待ちます。 通常の期間は2~3か月。 品種改良により休眠しない品種もあるようですが、それでも発芽が不均一になるようです。一定の休眠期間を設けるのが一般的。 

 

4、選粒 

大きさを揃えます。そうすることで吸水や発芽のタイミングを揃えることができます。 

 

5、浸麦 

大麦を浸麦槽(スティープ)に入れて吸水させます。 

この吸水の作業は「ウエット&ドライ」と呼ばれていて、仕込み水に漬け込むのと引き上げる作業を繰り返して行います。ずっと漬け込んでおくと空気が入らず、発芽がうまくいきません。浸麦は30〜60時間かけて行われています。

 

6、発芽 

1週間程度、空気を送り込んで酸素を供給。発芽による熱を冷ます目的もあります。麦芽の全長に対して、大麦の芽の長さが3分の2程度になったら発芽は完了。

現在、発芽の工程は機械で行われるのが一般的ですが、本場のスコットランドでは、完全に人の手で発芽を行う「フロア・モルティング」という伝統的な製法があり、いまだに一部の蒸留所がこの製法でモルトを作っています。

 

ユースケ
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フロアモルティングを行っている蒸留所は、スプリングバンク、ボウモア
ラフロイグ、キルホーマン、ハイランドパーク、バルヴェニー、グレンギリー、ベンリアック など。モルトスター(製麦業者)から買い付けた麦芽と自家製麦芽をブレンドしています。スプリングバンクのみ自家製麦芽100%。すごい!

 

 

7、乾燥 

製麦において重要ポイント!乾燥作業

伝統的なスコッチの製法だと、「キルン」と呼ばれる乾燥室で作業が行われます。「発芽」の工程である程度乾燥した大麦麦芽ですが、ここから最後の仕上げ乾燥が行われます。乾燥の作業で使われるのが「ピート」(泥炭)です。 

ピートとは、スコットランドの野草や水生植物(海藻類)などが炭化した泥炭(でいたん)のこと。木炭や石炭のように可燃性があります。火はそこまで強くありませんが、燃えると特有の香りのある煙がたくさん出てきます。ピートの燻煙によって大麦麦芽の水分が抜けていき、スモーキーな香りが麦芽に付きます。ピートによる燻煙時間の長さによって、完成するウイスキーの個性は大きく変わります。 

 

「ピート」での燻煙は、モルトの個性=ウイスキーの個性に直結する。

そのため、蒸留所(正確には商品)ごとにそれぞれ異なる個性の麦芽を使っています。  

乾燥の作業を、最初から最後まで「ピート」で行うと…

ヘビリーピーテッド麦芽(クセの強いウイスキー用の麦芽)

商品例:アードベック

乾燥の作業を、最初から最後までピートを使わない「温風」で行うと…

ノンピーテッド麦芽(クセのないウイスキー用の麦芽)

商品例:ブルイックラディ(ザ・クラシックラディ)

乾燥の作業を、「ピート」と「温風」両方で行うと…

ライトピーテッド麦芽(クセの強さはピートの燻煙時間に比例する。長ければクセが強くなる)

 ※「温風」とは匂いのしない電気などを熱源にしたもの。  

 

ユースケ
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ピートとは、シダやコケ類・草・ヘザー・海藻などが沈積してできた泥炭のこと。クセの強いウイスキーは、このピートで香りが付けられているので「ピーティー」と表現することがあります。

 

 

8、除根 

乾燥した根を取り除きます。 これでモルトが完成! 

 

 

 

まとめ 

モルトウイスキーの原料「大麦麦芽」とは?
→大麦麦芽とは大麦を発芽させたものでモルトとも呼ばれている。

大麦について
→小麦やトウモロコシ、米などと共に、人類に欠かすことのできない、重要な食用穀物の一種。

大麦の種類
→二条大麦はモルトウイスキー用。六条大麦はバーボン、グレーンウイスキー用。

大麦品種について
→アルコール収量の多い大麦の品種を積極的に使うようになり、古い品種は使われなくなった。

大麦麦芽の作り方(製麦)
→収穫 、自然乾燥、保管、選粒、浸麦、発芽、乾燥、除根。

 

 



 

 

大麦麦芽については、ウイスキーバーではなかなか聞くことのない知識かもしれません。

一般的に、ウイスキーは樽での熟成ほうが、味の決め手となる重要な工程だと思われがちですが、原料の大麦麦芽も非常に重要です。近年は大麦や大麦麦芽を自社で調達・製造する蒸溜所も増加しています。

当然ですが、大麦がなければモルトウイスキーは作れません…

自然の恵みに感謝です!

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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