樽熟成の魔術師「ミッシェル・クーブレイ」のウイスキーとは?おすすめボトル3選

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事では、樽熟成の魔術師の異名を持つ「ミッシェル・クーブレイ」について解説致します。

ミッシェル・クーブレイをご存じない方や、ミッシェル・クーブレイのおすすめウイスキーを知りたい方におすすめの内容となっております。

 

ウイスキーの「樽」についての解説記事↓

 

 

樽熟成の魔術師「ミッシェル・クーブレイ」のウイスキーとは?

出典:https://michelcouvreur-whisky.com/en/

ミッシェル・クーブレイは、「ウイスキーの味わいを決定づけるのは蒸留所ではなく熟成樽」という独自の哲学をもっている「ボトラーズ」。蒸留所は所有せず、シングルモルトウイスキーをスコットランドの各蒸留所から買い付けています。

購入した原酒は、ミッシェル・クーブレイの拠点であるフランス・ブルゴーニュ地方ボーヌの熟成庫(元ワイン商なので「カーヴ」と呼んでいます)に運び、独自に調達した樽に移し替えて熟成を行い、ボトリング。現在は自社のカーヴを所有していますが、創業当初はブルゴーニュの名匠「フィリップ・パカレ」氏の所有するカーヴを間借りしていました。

ミッシェル・クーブレイのウイスキーは「スコットランド産」ですが、フランスで独自に熟成をさせているので「スコッチウイスキー」という表記はありません。ウイスキーの個性は「樽」が決め手となるという信念の元、蒸留所とは異なるウイスキーに仕上がっていることから、商品ラベルに「蒸留所名」を刻むこともしていません。

 

「ミッシェル・クーブレイ」の誕生

ミッシェル・クーブレイ氏はベルギーのブリュッセル生まれ。2013年にお亡くなりになっており、現在は義理の息子「シリル・デシャン」や、妻の「マルト」、娘「アレクサンドラ」ら家族が中心となり事業を引き継いでいます。

元々はワイン商で、フランスのブルゴーニュ地方に本拠地を構え、長年にわたり高品質なワインを追求してきました。彼の哲学は、ワインに対しても妥協も許さない強いこだわりをもっており、次第にその欲求はウイスキーの世界へ進んでいきます。

ミッシェル・クーブレイ氏はワインビジネスで築いたコネクションを生かし、スペインのヘレス地方でシェリーボネガ(ワイナリー)から絶大な信頼を得ることに成功します。その結果、通常のウイスキーメーカーでは手に入れることが難しい、最高品質のシェリー樽を調達することが可能になります。

自身のカーヴで、厳選した高品質なシェリー樽に移し変えて熟成を行うことで、原酒(蒸留所)の個性にはあえてこだわらず、理想的なウイスキーを生み出しています。

 

原料の大麦麦芽にもこだわる

ミッシェル・クーブレイの哲学は、ウイスキーの味わいはあくまでも「蒸留所」ではなく「熟成樽」で95%決まる、というものですが、それを確信するまでには原料の大麦麦芽にもこだわり抜きました。

当初から「樽が全て」という考え方ではなく、「まずは原料にこだわってみよう」という試みから、ミッシェル・クーブレイのウイスキー造りは始まっています。

クーブレイ氏は「ベレ種」と呼ばれる希少な大麦を「ハイランドパーク蒸留所」に持ち込み、フロアモルティングを行います。そこで完成したモルトを。今度はハイランドの「エドラダワー蒸留所」へ持ち込み、ポットスチルで蒸留しウイスキーを造ります。その後、自身が持つ高品質なシェリーカスクで熟成。

「単一品種の大麦(ベレ種)」と、(単一蒸留所の原酒)であるとこから、希少品種で造られたこのウイスキーは、『シングル・シングル・ベレ・バーレー』と呼ばれています。

現在でも、これまで誰も成し遂げたことのなかった「シングル・シングル」シリーズの生産は続けられています。原料と熟成樽を追求した唯一無二のボトラーズウイスキーとして、ミッシェル・クーブレイを象徴するボトルとなっています。

 

原料と樽にこだわった結果

出典:https://michelcouvreur-whisky.com/en/

ミッシェル・クーブレイの提唱した大麦麦芽へのこだわりは、当時のスコッチウイスキー業界に革命をもたらします。

現在では、アイラ島の「ブルックラディ蒸留所」など、独自に大麦を生産し、モルトを栽培から製造まで一貫して行うことも珍しくは無くなりましたが、当時のスコットランドではあまり考えられなかったことでした。つまり、原料の大麦麦芽の品質は、ウイスキーにの味わいにそこまで重要ではないという考え方。

クーブレイ氏は元ワイン商らしく、フランス固有の「テロワール(土壌と風土)」という概念をウイスキーの世界に持ち込みます。この非効率で生産性が悪い方法で造られたウイスキーは、これまで原料にこだわりを持っていなかった「シングルモルトスコッチウイスキー」の新たな領域を切り拓くきっかけとなりました。

その後も、クーブレイ氏はテロワール・熟成樽へのこだわりを続けた結果、「ウイスキーの味わいを決定づける要因は蒸留所ではなく、95%は樽そのものが決める」という確信を持ちます。享年85歳で亡くなるまでの間、その哲学を追求しウイスキーを造り続けました。

 

現在の「ミッシェル・クーブレイ」

出典:https://milliontd.co.jp/lustau/

ミッシェル・クーブレイ氏の美学・哲学は現在でも引き継がれています。

「ミッシェル・クーブレイ」の代名とも呼べる「シェリー樽熟成」は、現在でも基本的なスタイル。ファースト・フィルのシェリー樽(オロロソシェリーやクリームシェリー)をメインに使用。

シェリー樽は大手メーカー「ルスタウ社」から調達。伝統的な「ソレラシステム」で30年以上シェリーの熟成に使用した樽を使っています。その他、ポートワイン樽やオークカスク(ワイン用のコモンオーク?)も使用しており、本来のスタイルともまた違った個性の商品もリリースしています。

ウイスキーはスコットランドの蒸留所から調達した「シングルモルト」ですが、複数の蒸留所(樽)を合わせたブレンデッドモルトウイスキーもあります。

ボトリングはノンチルフィルター(冷却ろ過無し)で行われています。ノンチルは特に珍しいことではないのですが、一般的なボトラーズがリリースするシングルモルトと比較しても、ミッシェル・クーブレイのウイスキーはかなり多くの「澱」があります。

ウイスキーは「ノンチルフィルター」とはいっても、何かしらの濾過を行うのが一般的。

これは推測にしかすぎませんが、ミッシェル・クーブレイの商品は、目に見えるレベルの不純物の除去は行いますが、可能な限りフィルターで成分を濾過することなくボトリングを行っているようです。

アルコール度数はボトルによって異なりますが、43~48%くらいに設定されているのものが多い印象。これは、アルコール感が高い状態では、ウイスキーの個性や余韻を感じ取るのが難しいという、ミッシェル・クーブレイ氏の考え方に沿ったもの。カスクストレングスの商品も、基本的に「加水」して飲むことを推奨しています。

 

ミッシェル・クーブレイが推奨するウイスキーの温度

もう一つユニークな考え方としては「ウイスキーの温度」。これも、ワイン商らしい、ワイン的な発想ですね。ウイスキーは通常、ワインとは異なりテイスティングであっても「ウイスキーの温度」はあまり気にしません。ボトルは常温で保管されます。

ミッシェル・クーブレイでは「ぬる過ぎる温度」を推奨していません。かといって、ワインセラーに入れるほどデリケートに管理しなくてもいいとのことで、季節・気温によってはボトルのウイスキーが高温になっているから気を付けてね、といったニュアンスでしょうか。

ミッシェル・クーブレイの推奨するこの考え方は改めて勉強になりました。

バーテンダーは、ストレートのウイスキーに対して「加水」する水を常温で提供するのが基本です。これは、ウイスキーの温度を冷やして香りが閉じてしまうことを防ぐため。ですが、季節によってはウイスキーの温度を高温にしてしまう可能性もあります。

いくらストレートとはいえ、必要以上にウイスキーの温度がぬるくなるのは、たしかにあまり気持ちよくない飲み方です。外気の気温も考慮しつつ、加水用の水の温度も調整が重要だと感じました。

 

ユースケ
ユースケ

夏場であれば「冷たい水」で加水するのもいいですね♪

 

 

樽熟成の魔術師「ミッシェル・クーブレイ」のウイスキーとは?おすすめボトル3選

  1. ミッシェル クーブレイ クーヴルーズ クリアラック
  2. ミッシェル クーブレイ イントラヴァガンザ
  3. ミッシェル クーブレイ ペール シングル シングル

 

ミッシェル クーブレイ クーヴルーズ クリアラック

ミッシェル クーブレイ クーヴルーズ クリアラック

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「ミッシェル クーブレイ クーヴルーズ クリアラック」は、ミッシェル・クーブレイのフラッグシップ的な位置づけのボトルです。「初クーブレイ」の方におすすめ。

シングルモルトウイスキーをシェリー樽で2~3年熟成。酒齢が若いので、モルトの風味が強くて、ややハツラツとした口当たり。華やかさもありますが、全体的なボディは軽やか。

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ミッシェル・クーブレイ
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ミッシェル クーブレイ イントラヴァガンザ

ミッシェル クーブレイ イントラヴァガンザ

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「クーヴルーズ・クリアラック」の上位ボトル的な商品。「ミッシェル クーブレイ イントラヴァガンザ」は、クーヴルーズ・クリアラックに該当する樽の中から、特別に選ばれたものをボトリングしています。この辺も、元ワイン商らしい発想に感じますね。

アルコール度数も高めとなる50%。その影響もあって濃厚に感じます。

クリアラックと同じ熟成年数ですが、厳選された樽からボトリングされていることもあり、豊かな風味。余韻もリッチで飲みごたえもあります。

ミッシェル クーブレイ イントラヴァガンザ

 

 

ミッシェル クーブレイ ペール シングル シングル

ミッシェル クーブレイ ペール シングル シングル

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「ミッシェル クーブレイ ペール シングル シングル」は、スコットランドのオークニー諸島で栽培された「ベレ・バーレイ」を原料に使用している商品。この品種は19世紀から20世紀初頭まで使用されていましたが、現在ではほとんど栽培されていない最古の品種です。

ミッシェル・クーブレイ氏によって復活したこの大麦は、「ハイランドパーク蒸留所」の伝統的な製麦「フロアモルティング」で大麦麦芽に加工し、その後「エドラダワー蒸留所」で蒸留。オーク樽で12年間熟成させています。

このボトルこそ、「樽の魔術師」ミッシェル・クーブレイを象徴するウイスキー。ぜひお試しください。

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蒸留所を所有していないのにも関わらず、ウイスキー業界に大きな影響を与えた「ミッシェル・クーブレイ」。

「熟成樽がウイスキーの味の決め手となる」という結論を出すまでには、原料への徹底したこだわりがありました。その結果、ウイスキーにとって熟成樽が重要であることを改めて証明しました。

後世に名を遺すウイスキー造りの名匠、魔術師クーブレイ氏。その哲学でつくられたウイスキーは、これからも私たちを愉しませてくれることでしょう。

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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