ウイスキーの熟成樽「ブランデーカスク」とは?コニャック・アルマニャックについても解説

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事ではブランデーの樽で熟成させたおすすめウイスキーをご紹介致します。

そもそも「ブランデー」とは何か?コニャック・アルマニャックについても初心者向けに解説。

ウイスキーの熟成には、バーボン樽やシェリー樽を用いるのが一般的ですが、最近はブランデーの熟成に使用した樽「ブランデーカスク」を利用している蒸留所やボトルが増えています。

この流れは一過性の流行ではなく、今後も継続すると思われます。ブランデーを飲まない方も、ブランデーカスクを知る意味でおさえておきたい内容となりますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

【初心者向け記事】ウイスキーとブランデーの違いについて

 

 

ウイスキーの熟成樽「ブランデーカスク」とは?コニャック・アルマニャックについて

ブランデーとは?

ブランデーとは、果実酒から作った蒸留酒の総称。一般的にはブドウを原料にし蒸留したものことを指し、ワインを蒸留し木製の樽で熟成させた蒸留酒のこと。 

ブランデーはワインを蒸留して造られているため、ワインを生産している多くの国で造られています。ウイスキーと比べると生産国や地域が多く、ブランデーは世界中でつくられている蒸留酒です。

その中でも有名なのがフランスで造られている「コニャック」と「アルマニャック」です。

 

ブランデーの分類

コニャック:フランス・コニャック地方で造られているブランデー。

アルマニャック:フランス・ガスコーニュ地方の一部、アルマニャック地方で造られているブランデー。

フレンチブランデー:フランス国内で造られているブランデーの総称。(コニャック・アルマニャック以外のフランス産ブランデー)

カルヴァドス:フランス・ノルマンディー地方で造られている、リンゴと洋梨を原料に造られているブランデー。

マール:ワインの原料として使用済みの「ブドウの搾りかす」で造られたフランス産のブランデー。主な産地はブルゴーニュ、アルザス、シャンパーニュ地方。イタリアでは「グラッパ」と呼ばれている。

グラッパ:イタリア産の「ブドウの搾りかす」で造られたブランデー。熟成させず、無色透明な状態で飲むことが多いが、木樽で熟成させたものもある。

フィーヌ:ワイン用としては質の低いブドウを原料に造ったブランデー。規格外のワインを使用する場合もある。

 

コニャックとは?

コニャックは、フランスのシャラント県およびシャラント=マリティーム県にある特定の地域(コニャック地方にある6つの地区)で生産されているブランデー。

世界のブランデーを代表する「世界三大ブランデー(コニャック・アルマニャック・カルヴァドス)」としても数えられており、高い品質と知名度を誇っています。

 

コニャックに使用されるブドウ品種は、主に「ユニ・ブラン」。伝統的な蒸留法と熟成プロセスによって製造されています。生産には「アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ(AOC)の認証が必要で、特定の条件を満たすことで「コニャック」と認定されます。

コニャックには「等級」があり、熟成年に基づいて分類されています。代表的なものに「V.S.(2年以上)」、「V.S.O.P.(4年以上)」、「XO(昔は6年以上でしたが現在は10年以上に変更)」があります。その他、ウイスキーと同じく「熟成年数(12年、20年など)」を表記する場合もあります。

蒸留は単式蒸留器で2回。シャラント型の銅製アランビック・スチルが使用されており、アルコール度数を70%程度まで精留します。熟成はリムーザンオーク、もしくはトロンセ産のオーク樽で最低でも2年間行われます。

ウイスキーと同様に、コニャックも最終的に水で希釈調整されてボトリング。ほとんどのコニャックはアルコール度数40%に調整されています。

ウイスキーの場合、「カスクストレングス(無加水)」のように、50%を超えるアルコール度数で瓶詰されるのは珍しくありませんが、コニャックの場合は加水するのが一般的。長期熟成によって自然にアルコール度数が落ちている場合でも、加水して40%に調整します。

コニャック・アルマニャックを問わず、ブランデーの基本的なアルコール度数の設定は40%で、ウイスキーも40%のボトル(特にブレンデッドウイスキーの場合)が大半ですが、近年では43~48%程度に調整されたボトルも増えています。

比較するとブランデーの方がアルコール度数は低く設定されているので、ブランデーとウイスキーは風味の違いから、加水に対しての考え方も少し異なっていると言えますね。

 

ユースケ
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コニャック・アルマニャックには「コント(Compte)」と呼ばれる熟成年数を表す単位がありますが、ここでは説明は割愛させて頂きます。

 

アルマニャックとは?

アルマニャックは、フランス南西部のアルマニャック地方で製造されるブランデー。コニャックとは生産地域が異なります。フレンチブランデーの一翼を担い、コニャックと双璧をなす存在。

アルマニャックはアルマニャック地方の3つの異なる産地(バ・アルマニャック、アルマニャック・テナレーズ、オー・アルマニャック)で生産されています。それぞれ異なる土壌特性を持っていることから、同じアルマニャックでもその個性は多彩です。

アルマニャックもコニャックと同じく、熟成期間によって異なる等級に分類されます。代表的なものにV.S.(1年以上)、V.S.O.P.(4年以上)、X.O.(10年以上)などがあります。また、ウイスキーと同じく「熟成年数」の表記も一般的です。

アルマニャックもコニャックと同様、白ブドウで造られています。主なブドウ品種は「ユニ・ブラン」、「フォル・ブランシュ」、「コロンバール」。

蒸留は、アルマニャック型と呼ばれる「連続式蒸留器」を使用し、1回蒸留で造られています。しかし、1972年以降はコニャックで使用される「単式蒸留器」での蒸留も認めらたことから、生産者の一部には2回蒸留でアルマニャックを造るところもあります。

アルマニャックはAOCの規定に従って、52%~72.4%で蒸留することが出来ますが、実際の蒸留直後のアルコール度数は、伝統的に52%~60%となります。

熟成樽はガスコーニュ産やリムーザン産のオーク樽を使用。コニャックと同様に、最終的なアルコール度数は最低でも40%以上、高いものでも48%程度でのボトリングが一般的。アルコール度数50%を超える「カスクストレングス」のようなアルマニャックも一部あります。

 

コニャックとアルマニャックの違いとは?

コニャックとアルマニャックは、まず前提として、味わいや個性に決定的な違いはありません。コニャックっぽいアルマニャックもあるし、その逆もあります。

「ブラインドテイスティング」でコニャックとアルマニャックを見極めるのはプロでも難しい。前に記した通り、生産地、蒸留器、熟成樽など、細かな違いはありますが、ぶっちゃけ似ていて判別できません。

過去には「ソムリエ試験」に出題されたこともありますが、どちらか当てるなんてのは無理ゲーです(笑)

しいて言うなら、単式蒸留器で2回蒸留の「コニャック」は上品でエレガント。アルマニャックは連続式蒸留器の影響からか、やや個性的で力強いといったイメージ。この違いは、コニャックの主要な生産者は大手メーカーが多く、生産量もアルマニャックよりも多いために品質が安定している、といった側面もあことから。

逆に、アルマニャックは小規模生産者が大半なので、コニャックよりも独自の個性を生み出す造り手が多い訳ですが、一概に「アルマニャックのほうが個性的」と断言できないと思います。

 

コニャックとアルマニャックの詳しい説明は「ソムリエ教本」に書かれています↓

 

ブランデーカスクとは?

コニャックやアルマニャックなどを代表とする「ブランデー」の熟成に使用した樽のこと。

ウイスキーにはコニャックの樽が利用されることがほとんどなので、商品名に「コニャックカスク」が表記されている銘柄も多くあります。

伝統的なモルトウイスキー(スコッチ)には使用していなかったブランデーカスクですが、近年はウイスキー用の樽が不足している影響もあってか、新たな熟成樽として採用している蒸留所やボトラーズが増えています。

ブランデーは世界中で造られいますが、ブランデーカスクとしてウイスキーの熟成に利用されているのは、やはり「コニャック」が多い印象です。

これは、そもそもコニャックの生産量が多いこともありますが、樽の品質が良いことも理由の一つ。「ワイン樽」もそうですが、ワイン大国フランスの樽製造技術はスコッチも唸るほど。コニャック・アルマニャックといったフレンチブランデーの樽に対して高い信頼があります。

ブランデーカスクのサイズは350~400リットル。コニャックとアルマニャックでサイズが異なります。

木材の種類としては、「コモンオーク(スパニッシュオーク)」や「セシルオーク(フレンチオーク)」と呼ばれるものを使用。この二つは広く「ヨーロピアンオーク」とも呼ばれており、ワイン樽の木材にも使用されています。

 

 

ウイスキーの熟成樽「ブランデーカスク」とは?ウイスキーとブランデー 個性の違いとは?

ウイスキーとブランデーは原料も製法も全く異なる蒸留酒です。

両者の個性を比べてみると、ブランデーはウイスキーと比べ、フルーティーなアロマがより引き立っていることが挙げられます。

これは原料の違いが大きな要因。

ブランデーは「ブドウ」を原料に造ったワインを蒸留しているので、ワイン由来のフルーティーなアロマを豊富に含んでいます。一方、穀物を原料とするウイスキーの場合は、フルーティーな風味もありますが、ブランデーのようにダイレクトな果実香を持つ銘柄は多くありません。

たしかに、ウイスキーの中でも大麦麦芽を原料とする「モルトウイスキー」は、穀物であるのにも関わらずフルーティーなアロマは豊富。ブドウを原料とするブランデーと肩を並べるというのは、率直に「大麦麦芽すごいな」と思います。

いずれにしてもウイスキーとブランデー、どちらも「樽」で熟成させる工程が味の決め手となっているのは事実。しかし、原料による個性は、「熟成」と並ぶほど大きな要因となっており、ウイスキーとブランデーは明確な味わいの違いを生み出しています。

 

 

「ブランデーカスク」による熟成がウイスキーに与える影響

ブランデー由来の風味

ブランデーカスクは、直前までブランデーを熟成させていた樽を使用するのが一般的。これは「シェリー樽」や「ワイン樽」も同じことが言えます。

完全に取り除いた後でも、樽の内側にはたっぷりとブランデーがしみ込んでいます。「しみ込み量」は、乾燥が進んでいなければより多く含まれており、そのことをウイスキー業界では「インドリンク」と呼んでいます。

樽の状態やサイズによっては、インドリンクの量は数リットルにもなると言われているほど。

インドリンクは直接的にウイスキーに「混ざる」訳ではありませんが、樽に含まれたブランデーの成分は、樽の成分(タンニンなど)と一緒に熟成期間を経て流出。

ブランデーカスクで熟成させたウイスキーに、ブランデーが持っているワインのようなベリー系のフルーティーさを与えることができます。

 

 

ヨーロピアンオーク由来の風味

もう一つはブランデーからの個性というよりは、オーク樽そのものを由来とする風味です。

ブランデーカスクの木材「ヨーロピアンオーク」は、スコッチウイスキーの熟成に9割使用されているバーボン樽の木材「アメリカンホワイトオーク」とは、異なる個性をウイスキーに与えます。

具体的に例をあげると、アメリカンホワイトオークで熟成させた場合は、バニラ、キャラメル、メープルシロップ、ソフトキャンディー、ハチミツのような、甘いフレーバーが中に現れると言われています。

しかしヨーロピアンオークの場合は、アメリカンオークよりもタンニン分やポリフェノールなどを多く含んでいることから、ボディに厚みが現れます。同様に甘やかなフレーバーも生まれますが、フレッシュフルーツやドライフルーツの風味。スパイシーでドライな味わいとなりやすいと考えられています。

比較すると、ヨーロピアンオーク(ブランデーカスク)の方が熟成樽としての影響力が強いことから、ウイスキーの熟成に利用されるときはアメリカンオーク(バーボン樽)よりも短期間の熟成であったり、フィニッシュ(後熟)に使うことが多い傾向にあります。

 

 

ウイスキーの熟成樽「ブランデーカスク」とは?コニャックカスクのおすすめボトル

出典:https://www.pernod-ricard-japan.com/news/whisky/20211025/3789/

コニャックカスクを使用したおすすめのウイスキー「ザ・グレンリベット 14年コニャックカスク・セレクション」をご紹介致します。

 

ザ・グレンリベット 14年コニャックカスク・セレクション

ザ・グレンリベット 14年コニャックカスク・セレクション

「ザ・グレンリベット 14年コニャックカスク・セレクション」は、2021年11月に販売されたシングルモルトスコッチウイスキー。2020年には一部のEコマースチャネルで先行販売。好評につき全国で販売されることになりました。

熟成樽にはコニャックカスクを使用。グレンリベットのラインナップで、ブランデーカスクの使用が公言されたのは、この商品が初めてだったと思います。

コニャックカスクは構成原酒のフィニッシュに利用されており、14年以上熟成させたバーボン樽とシェリー樽の原酒をブレンドした後、その一部をコニャック樽で6ヶ月以上後熟させています。ブレンド後にフィニッシュを行う「マリッジ」と呼ばれる製法。

注目すべきは、フィニッシュはあくまでも「原酒の一部」であること。原酒の全てを後熟するわけではなく、コニャックカスクによる影響力を調整できるような仕組みです。

オフィシャルボトルとして継続的にリリースする場合、原酒の個性を毎回同じものにしなければいけません。コニャックカスクの状態によっては、その辺を調整するのは難しいでしょうから、「一部に使用してブレンド」する製法には納得ですね。

 

公式テイスティングノート

バーボン樽、シェリー樽で14年間熟成させたブレンドの一部を、コニャックを熟成した高品質な樽で6ヶ月間以上寝かせることで、柑橘、豊かなはちみつ、ほのかなリコリスの香りを想わせる豊かなフレーバーと滑らかさが生み出されます。

・香り:甘くフルーティなアロマから、ほのかなスパイス香へとつづく

・味わい:熟した桃、梨、シロップ漬けのマンダリン、チョコレートをまとったレーズンを想わせる味わいが口の中に広がり留まる

・フィニッシュ:驚くほど甘く、スムース

 

 

 



 

 

ウイスキーとブランデーは、同じ蒸留酒としてライバル的な存在でもありますが、それぞれ違った魅力を持ち、どちらも蒸留酒の世界で確固たる地位を築いています。

ブランデーカスクがウイスキーに与える影響とその可能性は計り知れません。今後も両者の繁栄を望みつつ、ブランデーカスクの美味しいウイスキーが更に増えることに期待したいですね。

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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