

こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
ラフロイグ10年(Laphroaig 10y old)とアードベッグ10年(Ardbeg 10y old)。どちらも強烈にスモーキーですが、並べて飲むと煙の個性はまるで違います。薬品を思わせるラフロイグに、焚き火や焦げた食材を思わせるアードベッグ。
今回は甘みや余韻も含めて、2本の違いをじっくり比べてみます。フェノール値についても、数字だけでは分からないことを調べました。
ラフロイグ10年とアードベッグ10年を飲み比べ|煙・甘み・余韻の違い

今更解説も必要ないと思いますが、どちらもスコットランドのアイラ島で造られる、10年熟成のシングルモルト・スコッチウイスキーです。ラフロイグ10年、アードベッグ10年ともにバーボン樽での熟成されており、シェリー樽は使用していません。
| 項目 | ラフロイグ10年 | アードベッグ10年 |
|---|---|---|
| 産地 | スコットランド・アイラ島(共通) | |
| 種類・熟成 | シングルモルト・10年(共通) | |
| 容量 | 750ml | 700ml |
| アルコール度数 | 43% | 46% |
各ボトル単体の詳しいレビューは、こちらをどうぞ↓
2本を並べて飲み比べ

同じグラスを2つ用意して、まずはストレートで香りから確かめます。アルコール度数はラフロイグが43%、アードベッグが46%です。
一般的には、度数の低い方から順にテイスティングします。ただ、今回の2本に関しては、あまり気にしなくてもいいかな、と。
というのも、どちらもスモーキーさが強烈で、私にはアルコールの刺激よりも、そちらの個性が先に伝わってくるからです。これがノンピートの10年物同士なら、3%の差も結構気になると思います。でも、この2本はクセが強すぎて、もはや3%程度の差はあまり気にならない(笑)。
とはいえ、一応は習わし通り、43%のラフロイグからテイスティングしていきます。
煙|ラフロイグは薬品系、アードベッグは焚き火系

グラスを鼻に近づけた瞬間、2本の個性の違いがはっきり分かります。
ラフロイグ10年は、ヨードチンキや消毒液を思わせる薬品香が真っ先に来ます。薬箱、薬局、歯医者さん。そんな場所が浮かぶ香りです。バニラや柑橘も奥にありますが、前に出てくるのは薬品系のピート香。ひと言でいえば「正露丸」です。
アードベッグ10年は、燻製、BBQ、焦げた魚、焦げたパンケーキのような香り。ヨードや潮気もありますが、薬品というより、焚き火や食材が焼けたときの煙を思わせます。
並べてみると、同じ「スモーキー」でも、煙の質はずいぶん違います。「どちらが煙いか」よりも、「薬品っぽい煙」と「焚き火や焦げっぽい煙」のどちらが好みかで選ぶほうが、自分に合う一本を見つけやすいでしょう。
とはいえ、初めてスコッチウイスキーを飲む人にいきなりこの2本を出したら、香りだけでアウトかもしれません。「酒じゃなくて薬を飲まされてる?」と勘違いされてもおかしくないくらい、やばいウイスキーです(笑)。
甘み|ラフロイグは入り口、アードベッグは中盤から

口に含むと、甘さの出方にも違いがあります。
ラフロイグ10年は、甘さとスモーキーさが一緒にやってきて、そこから徐々にドライな味わいへ。香りにはハチミツ、キャラメルポップコーン、ホワイトチョコレート、バニラクッキーといった甘い要素もあります。
ただ、薬品系のピート香が強いので、甘さが主役になるわけではありません。バーボン樽の風味も控えめですが、強烈なピートの奥で、全体のバランスを支えています。
アードベッグ10年は、マイルドな口当たりから始まり、中盤にかけて甘さが広がります。そこへ燻製香とビターな味わいが重なっていきます。
違いは、甘さの強弱というより現れるタイミング。ラフロイグは「入り口が甘く、終盤に向かってドライ」。アードベッグは「中盤で甘さが広がり、煙とほろ苦さが重なる」。2本を続けて飲むと、この流れの違いが交互にはっきり感じられます。
口当たり|ラフロイグはさっぱり、アードベッグはオイリー
ラフロイグ10年は、香りの強烈さに反して、口当たりは意外なほどさっぱりしています。ボディはミディアムライト。
アードベッグ10年は、マイルドな口当たりの中にオイリーさがあり、ボディはミディアム。ラフロイグよりひと回り、飲みごたえがあります。
香りのクセの強さと、口当たりの重さは別物です。ラフロイグを先に飲んでからアードベッグに移ると、その厚みがより際立ちます。
余韻|最後に何が残るか
どちらも、スモーキーな余韻が長く続きます。違いは長さよりも、最後に何が残るかです。
ラフロイグ10年は、薬品系の風味が最後まで続きます。「歯医者で治療した後」を思わせる独特の感覚。フィニッシュには、ほのかに柑橘やカカオも感じます。
アードベッグ10年は、強い煙にヨードと潮気が重なります。加水すると、ほろ苦いピーティーな余韻が長く続きます。中盤から強まるビターさと燻製香が、飲み込んだ後も印象に残ります。
ラフロイグには薬品を思わせる個性が、アードベッグには燻製や焦げに通じる煙とほろ苦さが残る。余韻にも、2本のスタイルがよく表れています。
加水・お湯割り|崩れない個性、違う開き方
最後に、それぞれへ少しずつ水を加えてみます。どちらも加水に強く、スモーキーさが簡単に薄れることはありません。
ラフロイグ10年は、洋梨、青りんご、オレンジビターズ、アーモンドの香りが現れます。それでも薬品系のクセはしっかり残り、バランスも崩れません。
アードベッグ10年は、煙を保ったまま甘さとクリーミーさが引き立ちます。青りんご、ハチミツ、エルダーフラワーといった果実や花の香りも開いてきます。お湯割りにすると、温められた香りがさらに大きく広がります。
鮮烈な個性をそのまま楽しみたいならラフロイグ。甘さや華やかさの変化を楽しみたいならアードベッグ。加水という同じひと手間でも、表情の変わり方は違います。
違いを一覧で
| 比較する点 | ラフロイグ10年 | アードベッグ10年 |
|---|---|---|
| 煙の中心 | ヨードチンキ、消毒液、薬箱を思わせる薬品系 | 燻製、BBQ、焦げた食材を思わせる焚き火系 |
| 甘さの流れ | 甘くスモーキーに始まり、徐々にドライへ | 中盤以降に甘さが広がり、ビターさが重なる |
| 口当たり | さっぱり(ミディアムライト) | マイルドでオイリー(ミディアム) |
| 余韻 | 薬品系の風味と煙。ほのかに柑橘、カカオ | 強い煙とヨード、潮気。加水後はほろ苦い |
| 加水後 | 果実香が出ても、強いクセとバランスは維持 | 甘さとクリーミーさが増し、果実や花の香りが開く |
フェノール値だけでは分からない、煙の個性

ピーテッドウイスキーを調べると、「フェノール値」や「PPM」という言葉によく出会います。PPMは「parts per million」の略で、百万分のいくつか、という濃度の単位。ピート(泥炭)で燻した麦芽に含まれるフェノール類の量(フェノール総合値)を示すために使われます。
ただし、必ずしも数値が大きいほど必ず強く煙を感じる、というわけではありません。蒸留や熟成、ほかの香味とのバランスも、煙の感じ方に関わるからです。
麦芽の数値と、瓶の中の濃度は別もの

アードベッグは、ポートエレン製麦所の麦芽を使用しています。麦芽は基本的に、最低55ppmまでピート処理されています。ただし、これはあくまで麦芽の段階の数値。10年熟成した後、瓶の中に残っているフェノール濃度を示すものではありません。
一方、ラフロイグの公式解説には、10年やカスクストレングスのフェノール値は通常35〜45ppmとあります。ただし、測定対象や分析方法は明記されていません。そのため、この数値を瓶内の実測値とみなして、アードベッグの55ppmと単純に比べることはできません。
数字を見るときは、「どの段階で、何を測った値なのか」を確かめるのが大切です。
ラフロイグの麦芽は、ポートエレン製から本土産とのブレンドへ

ラフロイグはこれまで、麦芽の一部を蒸留所内のフロアモルティングで製造し、残りの多くをポートエレン製麦所などから調達してきました。自社製麦の割合は資料によって異なりますが、おおむね15〜25%ほど。伝統的な自家製麦と外部の製麦所、その両方がラフロイグの麦芽を支えてきたのです。
ところが、ディアジオ傘下のポートエレン製麦所が自社ブランド向けの供給を優先し、他社への出荷を制限。2023年末以降、ラフロイグはスコットランド本土の製麦所からピーテッドモルトを調達するとともに、自社製麦分のピート値を引き上げて生産を続けています。
蒸留所では製麦設備の拡張も計画されており、外部から調達する麦芽と自家製麦芽を組み合わせる体制へ移りつつあります。
調達先やブレンド比率が変われば、麦芽に付くフェノール類の構成や、燻製の風味に影響する可能性があります。ただし、それだけでボトルの味が変わったとは言い切れません。将来のボトルと飲み比べるときは、製麦の変化に加え、熟成やロットの違いも含めて見ていきたいところです。
フェノール類は、複数の成分の集まり

「フェノール類」は、関連する化合物の総称です。ウイスキーのピート香には、フェノールのほか、クレゾール類やグアイアコール類など、さまざまな成分が関わっています。グアイアコール類は、スモーキーな香りに関わる成分のひとつです。
成分によって、香りの種類も感じられる強さも異なります。研究レビューでは、薬品を思わせる香りとo-クレゾール、m-クレゾールとの関連が述べられています。また、含有量が少なくても、香りに大きく影響する成分があります。
フェノール類の総量を示す数字だけでは、その中身までは分かりません。「どれだけ含まれるか」だけでなく、「どんな成分が含まれるか」も大切です。
ピートの質、燻し方、蒸留も香味に関わる

ピートそのものも均質ではありません。スコットランドの複数地域で採取したピートを比較した研究では、採取した地域や深さによって化学組成が異なることが確認されています。
燻し方にも、蒸留所ごとの個性があります。ラフロイグは、湿った麦芽に約10〜12時間ピートの煙を当て、比較的低温で燻す製麦方法を紹介しています。この工程は、タールを思わせる特徴に関わるとされています。
一方、アードベッグが製造上の特徴として挙げているのが、スチル(蒸留器)に取り付けられた「ピュリファイアー」です。蒸気の一部を冷やして釜へ戻し、再び蒸留する仕組みで、還流と銅との接触を増やします。アードベッグは、この工程が煙と果実味、甘さのバランスに関わると説明しています。

今回、両10年を「クレゾール主体」「グアイアコール主体」と分類できる直接の比較データは見つかりませんでした。
とはいえ、グラスの中で感じた薬品系と焚き火系の違いを、特定の成分ひとつで説明しきることはできません。ピートの組成や燻し方、蒸留、熟成。そうした要素が重なり合って、最終的なウイスキーの香味が形づくられるからです。
ラフロイグとアードベッグ、どちらを選ぶ?

薬品っぽいピート香にハマりたいなら、ラフロイグ10年
「正露丸みたいな香り」と聞いて気になった方には、ぜひ一度飲んでほしい一本です。消毒液を思わせるクセの強さは、飲み込んだ後までしっかり続きます。
でも、薬品香だけで終わらないのがラフロイグの面白さ。口当たりは意外とさっぱりしていて、最初に感じる甘さはだんだんドライに変化します。強烈なピートの奥にあるバニラや柑橘を探すのも楽しいですよ。
私はラフロイグ10年の、このピート香とバーボン樽のバランスがとても気に入っています。
燻製の煙に、甘さとほろ苦さも楽しみたいなら、アードベッグ10年
焚き火やBBQ、焦げた食材を思わせる煙が好きな方には、アードベッグ10年がおすすめです。オイリーな口当たりで、中盤から甘さが広がり、煙とビターさが重なっていきます。飲み込んだ後に残る、ほろ苦いピートもたまりません。
加水すると甘さやクリーミーさが増して、果実や花の香りもふわっと開きます。ストレートで力強さを楽しむのはもちろん、お湯割りで香りを広げるのもいいですね。
アードベッグ10年の強い煙の中に柑橘やバニラ、フローラルな香りが溶け込むところが、私は好きな部分です。
まとめ|煙の強さより、煙の質と流れで選ぶ

ラフロイグ10年は、薬品を思わせるピート香が余韻まで続き、甘さの後にはドライな印象が残ります。アードベッグ10年は、焚き火や燻製のような煙に、中盤から甘みとほろ苦さが重なります。
どちらがより煙いかではなく、どんな煙が好みなのか。ぜひBAR WHITE OAKで2本を飲み比べて、ご自身の舌で確かめてみてください。

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
年齢確認: お酒は20歳を過ぎてから。未成年者の飲酒は法律で禁止されています。
健康への配慮: 妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
適正飲酒: お酒は楽しく適量を。飲酒運転は法律で厳しく禁止されています。
マナー: 飲酒後は節度ある行動を心がけましょう。











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