【2023年版】アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説!おすすめボトルも登場

アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Powerscourt パワーズコート

出典:https://powerscourtdistillery.com/tours/distillery-and-warehouse-tour-tasting/

パワーズコート

地域:アイルランド共和国・ウィックロー州
創業年:2017
Powerscourt Distillery Ltd

ダブリンから南へ車で1時間ほどの場所にある、ウィックロー州パワーズコート・エステート内に創業した蒸留所。エステートは広大で、400ヘクタールの敷地内に2つのゴルフ場、ホテル、20ヘクタール近いランドスケープガーデンがあり、年間50万人以上の観光客が訪れています。

リゾート地の敷地内にウイスキーの蒸留所を創業させるのは、世界的にも増加傾向にあり、日本やアメリカ、スコットランドでもリゾート地やその付近に蒸留所を新たに建設し、地域と連携させる形で運営していることは珍しくありません。

パワーズコート蒸留所は2017年にオープンし、蒸留を開始したのは翌年の2018年。古い粉挽工場を改造して作られています。製造責任者にはアイリッシュウイスキー界のレジェンドとして有名な「ノエル・スウィニー」氏。以前はジョン・ティーリング氏の右腕として、クーリー蒸留所を統括していた実力者です。

パワーズコート蒸留所では、モルトウイスキーとポットスチルウイスキーの2種類の原酒を製造しています。マッシュタン、発酵槽、スチルなどの設備は、すべてスコットランドのフォーサイス社製。ポットスチルは全3基。3回蒸留で造られるアイリッシュタイプのモルトウイスキーとポットスチルウイスキーの両方に対応しています。

仕込み量はワンバッチ25トンの麦芽を使用。麦汁は約1万2500リットル。年間の生産能力は100万リットル以上で、クラフト蒸留所としてはやや多いほうです。

ユニークなのはウェアハウスでの熟成方法が「パラタイズ式」であること。スコッチやアイリッシュ、ジャパニーズなどのモルトウイスキーには、通常「ダンネージ式」が採用されており、樽を横に並べて重ねていくスタイルですが、パラタイズ式は樽を縦にして、樽の上の板を挟んで重ねて熟成する方式です。一般的にはグレーンウイスキーやラム酒の熟成などに採用されています。

ウイスキーは、「ファルカレン」という名前ですでに販売されていますが、中身はすべてクーリー蒸留所で製造されたもの。ブランド名が「パワーズコート」だと、有名なアイリッシュウイスキー「パワーズ」と混同されてしまう可能性があるため、蒸留所名とは異なる名前を使用しています。(そもそも蒸留所で生産した原酒でもないし…)

 

 

アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Glendalough グレンダロッホ

出典:https://www.glendaloughdistillery.com/

グレンダロッホ

地域:アイルランド共和国・ウィックロー州
創業年:2011
Glendalough Distillery

グレンダロッホ蒸留所は若者5人によって創業されたました。最初はボトラーズとして活動していましたが、2015年にウィックロー国立公園の近くに蒸留所をオープン。創業当初は主にジンの製造に取り組んでいました。

グレンダロッホは中世の教会が残るアイルランド随一の観光地であり、美しい景色と湖が広がる自然環境に囲まれています。蒸留所の周辺には、セント・ケヴィンが建てた7つの教会とアイルランド・キリスト教建築の象徴である高いラウンドタワーがあります。

そのため、グレンダロッホで造られているジンやウイスキーには、セント・ケヴィンが祈りを捧げる様子が描かれており、なんとも神秘的なボトルデザインが施されています。

また、グレンダロッホ蒸留所は英国のウイスキーマガジン誌が主催する「アイコンズ・オブ・ウイスキー2021」で、最もサステナブルな蒸留所として選ばれています。これは自然環境を最優先に考えた、ウイスキーやジンの製造を行っていることが評価されたもので、特にアイルランド産のオークを使用した樽が高く評価されています。

アイリッシュオークというのは聞きなれないと思います。オーク材としてはかなり希少なため、グレンダロッホでは1本の木を切るたびに7本の苗木を植える取り組みを行っています。

EXバーボンカスクで熟成させた後、ヴァージン・アイリッシュオークでフィニッシュさせたポットスチルウイスキー「グレンダロッホ  ポットスチル アイリッシュウイスキー」は、ウイスキーのコンペティションで金賞を獲得。

アイルランド独自のアイリッシュオークの存在は、今後も注目されることでしょう。

 

「Glendalough グレンダロッホ」おすすめのウイスキー&ジン

グレンダロッホ  ポットスチル アイリッシュウイスキー

グレンダロッホ  ポットスチル アイリッシュウイスキー

 

グレンダロッホ ワイルド ボタニカル ジン

グレンダロッホ ワイルド ボタニカル ジン

 

 

アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Kilbeggan キルベガン

出典:https://www.kilbegganwhiskey.com/

キルベガン

地域:アイルランド共和国・ウエストミーズ州
創業年:1757
ビーム・サントリー社

キルベガンは博物館兼用の蒸留所。創業は1757年。世界最古と言われています。(ブッシュミルズ蒸留所の「1608年」というのは創業年ではないため)2007年に創業250周年を迎え、ウイスキー造りを復活させています。

近くを流れるブルスナ川から、当初は「ブルスナ蒸留所」と呼ばれていましたが、その後、19世紀以降は、当時の経営者「ロックス家」の名前から「ロックス蒸留所」と呼ばれるようにもなっていました。

キルベガン蒸留所の特徴として、53年に閉鎖されるまで電化されていなかったことがあります。蒸留所の動力は、ブルスナ川の上流から引かれた水路を通じて水車を回し、それによって動力を得ていました。

当時、自然動力で造られていたのは「ポットスチルウイスキー」。大麦、大麦麦芽、ライ麦、オート麦を混ぜて仕込みを行っていましたが、麦芽以外の穀物はローラーミルで挽けないため、大きな石臼を使用して粉にしていました。そして現在でも、石臼はキルベガンに保存されており、動かすこともできとのこと。さすが蒸留所兼博物館…。これまで残っていたのは、閉鎖後も建物が地元資本だった影響なのかもしれません。

キルベガン蒸留所はアイルランドの独立や禁酒法、世界大戦などの影響で衰退し、1953年に閉鎖。その後、蒸留所はしばらくの間、養豚業者の作業場や倉庫として使用されていましたが、1982年に「ウイスキー蒸留所博物館」としてオープンします。この時はまだ、ウイスキーは生産されていません。

1989年には「ジョン・ティーリング」氏が、キルベガンを購入。博物館は町が運営し、熟成庫などはクーリーの熟成庫として使用します。そして2007年に1基のスチルが導入され、ウイスキー造りを再開。さらに2010年にはマッシュタン(麦汁の仕込み槽)や発酵槽、スチルを追加で1基導入し、すべての製造工程をキルベガンで行えるようにします。

現在、キルベガン蒸留所ではモルトウイスキーとポットスチルウイスキーを造っており、どちらも2回蒸留が行われています。ワンバッチの仕込み量は1トン。マッシュタンにはオーク製のワイン樽を再利用したものを使用。発酵槽はオレゴンパイン製が4基。

蒸留器がユニークで特異な形状。サイズも非常に小さく、かなり年季の入った見た目です。際留釜は1860年代にタラモア蒸留所で使用されていたもので、初留はフォーサイス社製。

ちなみに、ブレンデッドウイスキー「キルベガン」は、ブルスナ蒸留所時代のブランドを復活させた銘柄となりますが、実際に使用されている原酒はクーリー蒸留所で造られたもの。むしろ、クーリー蒸留所の主力商品が「キルベガン」です。この事実はウイスキーに詳しい方でも少し混乱します…

キルベガン蒸留所で100%製造されたウイスキーとしては「キルベガン スモール バッチ ライ」というボトルがあります。このウイスキーは限定発売され、現在では入手不可。生産量が少ないキルベガンですので、なかなか定番リリースと言うのは難しいかもしれませんが、個人的には世界最古の蒸留所として、オフィシャルボトルを定期的に販売してほしいと思っています。

 

 

アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Tullamore タラモア

タラモア

地域:アイルランド・タラモア
創業年:2014
ウィリアム・グランド&サンズ社

タラモア蒸留所(新タラモア蒸留所)は、グレンフィディックなどを経営する、スコッチの大手メーカー「ウィリアム・グラント&サンズ社」によって2014年に再建された蒸留所です。

アイルランドでは生産量第2となる巨大蒸留所で、「タラモアデュー」はジェムソンに次ぐアイリッシュ第2位のブランドとして人気となっています。年間生産能力は、モルトとポットスチルの合計が350万リットルで、グレーンウイスキーは900万リットル。合計で1250万リットル。

ちなみにグレンフィディックの年間生産量は1300万リットル。モルトウイスキーだけでこれほどの量を造っているのは改めて驚かされます。

「タラモアデュー」は以前、タラモア町にあったダリーズ蒸留所が製造していましたが、1954年に閉鎖。その後は他の蒸留所(1966年以降はミドルトン蒸留所)で原酒が造られていましたが、ウィリアム・グラント&サンズ社が「タラモアデュー」のブランド権も取得し、新タラモア蒸留所を創業させます。

タラモア蒸留所は広大な土地に建てられ、最新鋭の連続式蒸留機が導入されました。2014年にオープニングセレモニーが行われ、ダリーズ蒸留所が閉鎖されてから60年目の節目の年でした。

タラモア蒸留所では、モルトウイスキー、ポットスチルウイスキー、およびグレーンウイスキーの3種類を生産しています。モルトとポットスチルウイスキーは、3回蒸留が行われ、それぞれ6.5トンのバッチで製造されています。合計で3万2000リットルの麦汁を抽出。

使用する穀物はすべてアイルランド産。ポットスチルウイスキーは大麦50%:大麦麦芽50%の比率。蒸留器はフォーサイス社製で、モルト用のスチルが3基、ポットスチル用のスチルが3基、合計6基が稼働しています。

特徴的なのは初留釜の形状。これは以前のタラモア(ダリーズ)蒸留所で使用されていたスチルを再現したもので、銅との接触を増やし、クリーンな酒質を生み出すことができるタイプとなっています。

このスチルはスコッチウイスキーから見るとかなり独特。それでも、タラモアの伝統的な特殊なスチルを、スコッチメーカーのウィリアム・グランド&サンズ社が復刻しているのは面白いですね。

また、グレーンウイスキーはイタリアのフリッリ社製の最新鋭の連続式蒸留機で2018年から生産されています。減圧蒸留が可能な特殊なタイプで、屋外に設置されているところも珍しいですね。グレーンの主原料はアイルランド産の小麦。その他の原料も全てアイルランド産を使用しています。

ちなみにウィリアム・グラント&サンズ社は、スコットランドにもグレーンウイスキーを造る「ガーヴァン蒸留所」を所有していますが、こちらのほうでも2018年から同じタイプの減圧蒸留機が導入されています。全ての仕込みが減圧蒸留機で行われているのかはわかりませんが、ウィリアム・グラント&サンズ社が造る、グレーンウイスキーの一つの特徴となっています。

現在、タラモア蒸留所の製品は、フラッグシップとなるブレンデッドウイスキーの「タラモアデュー」のほか、シングルモルトの「14年」、「18年」などがあり、シングルモルトはミドルトン蒸留所の原酒を使っています。

ウイスキーの生産開始から10年程が経過しましたが、「タラモアデュー」に新タラモア蒸留所で造られた原酒がどの程度使われているのかは定かではありません。ミドルトン蒸溜所の原酒も恐らく使用されていることでしょう。

 

「Tullamore タラモア」おすすめのウイスキー

タラモア デュー

タラモア デュー

 

タラモアデュー 14年 シングルモルト(ミドルトン蒸留所)

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タラモアデュー 18年 シングルモルト(ミドルトン蒸留所)

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アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Monasterevin (Paddy McKillen) モナスターヴィン(パディーマクキラン)(準備中)

モナスターヴィン(パディーマクキラン)(準備中)

地域:アイルランド・キルデア州
創業年:準備中

 

 

アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Royal Oak ロイヤルオーク

出典:https://royaloakdistillery.com/

ロイヤルオーク

地域:アイルランド共和国・カーロウ州
創業年:2016
イルヴァサローノ社

ロイヤルオークと言えばすでにご存じの方も多いと思いますが、「バスカー(The Busker)」という人気のアイリッシュウイスキーを造る蒸留所です。

2020年12月に、ロイヤルオーク蒸留所の原酒を使用した、初めてのボトルとしてリリースされました。バスカーは「モルトウイスキー」「ポットスチルウイスキー」「グレーンウイスキー」「ブレンデッドウイスキー」の4種類が発売されており、すべてロイヤルオークの原酒でつくられています。

ロイヤルオーク蒸留所の所有者はイタリアの大手酒類会社。アイルランドのカーロウ州に位置しています。この地域は穀倉地帯であり、美しい川や森、広大な大麦畑が広がっています。

当初は創業者のバーナード・ウォルシュ氏にちなんで「ウォルシュ蒸留所」と名乗っていましたが、2019年からは地名名であるロイヤルオークを蒸留所名として使用しています。

現在のオーナー「イルヴァサローノ社」が、2019年にウォルシュ蒸留所の全株式を買収し、同社の完全子会社化。ちなみに創業者のウォルシュ氏は、現在別の会社を立ち上げ「アイリッシュマン」と「ライターズティアーズ」という2つの有名ブランドを引き継いでいます。

ロイヤルオーク蒸留所の仕込み量は、ワンバッチで3トン。モルト、ポットスチル、グレーンの3種類の原酒が造られています。モルトウイスキーは2回蒸留で、ポットスチルウイスキーは3回蒸留。スチルの容量は初留が15,000リットル、後留が7,500リットル、再留が10,000リットル。

蒸留にはポットスチル3基と、ステンレス製の連続式蒸留機が使用されており、これらが一つの建物の中に収まっているのも特徴的。このような形態の蒸留所は、アイルランドではロイヤルオークとグレートノーザンくらいでしょうか。

熟成樽は様々な種類を使用し、幅広く原酒を造り分けています。ユニークなのは、オーナーがイタリアの会社だけあって、イタリア・シチリア産の酒精強化ワイン「マルサラ」の樽を使用しているところ。一部のボトラーズなどでは見かけますが、オフィシャルボトルとしてマルサラカスクの使用は珍しいですね。

 

「Royal Oak ロイヤルオーク」おすすめのウイスキー

バスカー アイリッシュウイスキー

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バスカー
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バスカー シングルモルト アイリッシュウイスキー

バスカー シングルモルト アイリッシュウイスキー

 

バスカー シングルグレーン アイリッシュウイスキー

バスカー シングルグレーン アイリッシュウイスキー

 

バスカー シングルポットスチル アイリッシュウイスキー

バスカー シングルポットスチル アイリッシュウイスキー

 

 

アイリッシュウイスキー蒸留所51カ所解説|Ballykeefe バリーキーフ

出典:https://ballykeefedistillery.ie/our-story/birthplace-irish-whiskey/

バリーキーフ

地域:アイルランド・キルケニー州
創業年:?
Ballykeefe Distillery社

バリーキーフ蒸留所はアイルランドのキルケニー州にある家族経営のウイスキー蒸留所。

2016年に創業し、2017年からシングルポットスチルでのウイスキー造りをスタートさせ、現在はシングルモルトウイスキーとシングル・ライウイスキーも造っています。

原料となる大麦は、自社の農場で栽培されたものを使用。原料から生産までを自社で行う「フィールド・トゥ・グラス」にこだわる「シングルエステートウイスキー」を名乗っています。

バリーキーフ蒸留所では、特注の銅製ポットスチルを使用。3回蒸留が行われています。仕込み水は深井戸から採取。環境に配慮した取り組みにも力を入れており、農場外廃棄物ゼロを実現しているそうです。

 

 

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