こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事ではアメリカンウイスキーについて初心者向けに解説致します。アメリカンウイスキーとは、アメリカ連邦アルコール法に従ってつくられたウイスキーのこと。
そもそも「アメリカンウイスキー」という言葉をあまり聞かないかもしれませんが、これはアメリカ合衆国で造られたウイスキーのなかで「バーボン」が圧倒的な知名度を誇っているため。アメリカンのウイスキー=バーボンと言っても過言ではありません。
今回はバーボンウイスキーはもちろんのこと、他のアメリカンウイスキーについてと、バーボン誕生の歴史も解説。
意外と知らなかったバーボンとアメリカンウイスキーのことを理解できれば、ウイスキーをもっと楽しむことができると思います。ぜひ最後までご覧ください。
【ウイスキー初心者向け講座】アメリカンとは?
アメリカンウイスキーとは
アメリカ合衆国の連邦アルコール法で規定された通り作られているウイスキーのこと。近年は蒸留所の建設ラッシュが続いており、その数は大小合わせると1000か所以上と言われていますが、正確な数は把握できていない状況です。
アメリカンウイスキーの生産は、大手メーカーが大規模な蒸留所で複数のブランドを生産している傾向があり、主な生産地はケンタッキー州とテネシー州ですが、マイクロディスティラリー(小規模蒸留所)はさまざまな州に存在し、現在はアメリカ全土で多彩な種類のウイスキーが生産されています。
【ウイスキー初心者向け講座】アメリカンとは?法定義
アメリカンウイスキーの法定義は以下の通り。
穀物を原料に190プルーフ(95%)以下で蒸留し、オーク樽で熟成(コーンウイスキーは必要なし)
80プルーフ(40%)以上でボトリングしたもの
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
スコッチやアイリッシュなどのモルトウイスキーの法定義と比べれば、簡単にまとまっていますが、実際はアメリカンウイスキー各種にそれぞれ法定義が存在しています。詳細は次の項目で解説致します。
【ウイスキー初心者向け講座】アメリカンとは?種類について
アメリカンウイスキー7種類の解説。
≪バーボン・ウイスキー≫
法定義
法定義
原料の51%以上がトウモロコシで、160プルーフ(80%)以下で蒸留し、内側を焦がしたオークの新樽に125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めし、熟成させたもの。2年以上熟成させたものがストレート・バーボンウイスキー。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
→トウモロコシを51%以上使って作り、内側を焦がした新樽で熟成させたウイスキー。
主な銘柄:ジム・ビーム、メーカーズマーク、ワイルドターキー、フォアローゼス、ジャックダニエルなど
アメリカンウイスキーの代表格「バーボンウイスキー」は全世界で飲まれているアメリカを代表するお酒です。バーボンの特徴は何といってもバニラのような香りと、深みのある味わい。バーボンは熟成樽から強く影響を受けており、真っ黒に焦がした新樽で熟成させることで、その特徴的な味わいを生み出しています。
バーボンウイスキーとグレーンウイスキーの違いについて
バーボンウイスキーと、スコッチやアイリッシュなどでご説明した「グレーンウイスキー」は、似ているウイスキーだと言われることがありますが、バーボンとグレーンは異なる点がいくつもあります。
- バーボンは原料にトウモロコシを51%以上使用。グレーンは小麦かトウモロコシを主原料とする。
- バーボンは内側を真っ黒に焦がした新樽で熟成させる。(グレーンウイスキーはサードフィル、フォースフィルなどの古い樽を使用)
- バーボンのほうが蒸留したアルコール度数が低い。(蒸留液はグレーンウイスキーよりもフレーバーが豊富で個性的)
- バーボンは仕込み水が硬水。(特殊な製法「サワーマッシュ方式」によってPH値が調整されている)
- 熟成環境。(スコットランドよりもケンタッキー州のほうが乾燥していて平均気温が高く、熟成のスピードが早い)
など。
バーボンとグレーンは連続式蒸留器で製造されている点は同じですが、根本的に違うウイスキーです。バーボンは単体で飲まれますが、グレーンは基本的にブレンデッド用の原酒として生産されているため、バーボンよりも個性が控えめで軽い味わいに造られています。
シングルモルトウイスキーをバーボンと同じ内側を焦がした樽に入れて熟成させると…原料がモルトであるにもかかわらず、バーボンのような個性になってしまいます。それくらい「熟成樽」による影響を強く受けてしまうのが「ウイスキー」なのです。
≪ライウイスキー≫
法定義
原料の51%以上がライ麦で、160プルーフ(80%)以下で蒸留し、内側を焦がしたオークの新樽に125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めし、熟成させたもの。2年以上熟成でストレート・ライウイスキー。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
→ライ麦を51%以上使って作り、内側を焦がした新樽で熟成させたウイスキー。
主な銘柄:オールドオーバーホルト、ワイルドターキー・ライ、ノブクリーク・ライ、ミクターズ、サゼラック・ライ など
ライウイスキーはバーボンに次いで生産量が多いアメリカンウイスキー。バーボンと製造方法が似ており、原料の配合(マッシュ比率)が異なっています。バーボンウイスキーのブランドが「仕込み違い」でライタイプを生産していることもよくあります。
味わいもバーボンに似ていますが、ライウイスキーのほうが軽めに造られているものが多い傾向にあります。銘柄によっては、バーボンとほぼ変わらないようなフレーバーを持つ、力強いタイプのライウイスキーもありますので一概には言えません。
≪ホイートウイスキー≫(ウィートウイスキー)
法定義
原料の51%以上がホイート(小麦)で、160プルーフ(80%)以下で蒸留し、内側を焦がしたオークの新樽に125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めし、熟成させたもの。2年以上熟成でストレート・ホイートウイスキー。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
→小麦を51%以上使って作り、内側を焦がした新樽で熟成させたウイスキー。
主な銘柄:バーンハイム、キャットスキル・フィアレス。
ホイート(小麦)がメインで作られるウイスキー。こちらも原料以外はバーボンやライウイスキーとほぼ変わりません。ホイートウイスキーはライウイスキーよりもさらに軽めに造られていることが多く、やわらかい口当たりで味わいに落ち着きのある印象。グレーンウイスキーのようにドライでスッキリとしたタイプもあります。
≪モルトウイスキー≫
法定義
原料の51%以上がモルトで、160プルーフ(80%)以下で蒸留し、内側を焦がしたオークの新樽に125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めし、熟成させたもの。2年以上熟成でストレート・モルトウイスキー。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
主な銘柄:ウエストランド・アメリカンオーク、ジャック・ダニエル・トワイスバレルドスペシャルリリース・アメリカンシングルモルト など
アメリカンウイスキーにも「モルトウイスキー」がありますが、スコッチやアイリッシュと定義が異なっています。原料にモルトを51%以上使用することでモルトウイスキーと名乗ることができます。つまり、スコッチなどのモルトウイスキーとは全くの別物。
ちなみに、原料に100%モルトを使用して造っている場合は「アメリカン・シングルモルトウイスキー」となり、アメリカンウイスキーではスコッチの「シングル」(一つの蒸留所)とは異なる法定義となっています。現在アメリカではマイクロディスティラリーが増加しており、モルトウイスキーを造る蒸留所も珍しくはありません。今後は日本で販売されるアメリカンモルトウイスキーも増えるかもしれませんね。
≪ライモルトウイスキー≫
法定義
原料の51%以上がライモルト(ライ麦芽)で、160プルーフ(80%)以下で蒸留し、内側を焦がしたオークの新樽に125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めし、熟成させたもの。2年以上熟成でストレート・ライモルトウイスキー。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
ライモルト(ライ麦を麦芽にしたもの)を使って製造するウイスキーのこと。100%ライモルトの場合は「シングル・ライモルトウイスキー」になります。
アメリカ産のライモルトウイスキーは日本ではほとんど流通していません。
恥ずかしい話、わたくしも飲んだことがありません…
≪コーンウイスキー≫
法定義
原料にトウモロコシ(コーン)を80%以上使用し、160プルーフ(80%)以下で蒸留したもの。ストレート・コーンウイスキーは古樽か、内側を焦がしていないオークの新樽に125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めし、2年以上熟成させたもの。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
主な銘柄:ジョージアムーン・コーンウイスキー、プラットヴァレー など
コーンウイスキーはトウモロコシの風味を重視して造られているウイスキー。バーボンよりも多くのトウモロコシを使用し、ウイスキーの熟成には影響力の少ない「古樽」をつかうことで、原料由来の風味を残して造られています。
また、コーンウイスキーの法定義には「熟成」の必要性が記されておらず、アメリカンウイスキーの中で唯一、熟成させなくてもウイスキーとして認められています。つまり、樽熟成させても良いし、一切熟成させず蒸留直後の状態でボトリングしても、コーンウイスキーと名乗ることができるのです。国際的なウイスキーの法定義と比べてみると、樽での熟成を行わなくても「ウイスキー」として認められているのは異例です。さすが自由の国アメリカ(笑)
コーンウイスキーは軽い口当たりで、原料のトウモロコシの風味を感じる香ばしさと甘さが魅力的。最近では、あえてしっかりと樽熟成させたコーンウイスキーも造られているようですが、王道はトウモロコシのフレーバーを感じさせるフレッシュなタイプになります。
≪アメリカン・ブレンデッド・ウイスキー≫
法定義
ストレートウイスキーにそれ以外のウイスキーかスピリッツをブレンドしたもので、ストレートウイスキーを20%以上含む。
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015下巻』より引用
バーボンやライ、コーンのストレートウイスキー(ベースとなるウイスキー)に対し、他のウイスキーやスピリッツを加えてブレンドしたウイスキーのこと。ベースウイスキーはアルコール度数50度に換算して20%以上使用されています。
日本に輸入されている銘柄としては、初のアメリカンブレンデッドウイスキーであり、アメリカ国内で人気のある「シーグラム・セブンクラウン」が有名です。味わいはカナディアンウイスキーににており、ドライでライトボディ。スムースな飲み口でスッキリとした個性。
ストレートバーボンウイスキーを50%以上使用している場合は「ブレンデッド・バーボン」と名乗ることができます。
次のページではアメリカンウイスキーの歴史を解説!
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