こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、「ジャパニーズウイスキー」についてわかりやすく初心者向けに解説します。
ジャパニーズウイスキーに「法定義」はありませんが、今回は「純日本産」(日本で造られた原酒のみをブレンドしていることが最低条件)のウイスキーのことを「ジャパニーズウイスキー」としてご紹介します。
ジャパニーズウイスキーの定義についての解説記事↓
今や日本のウイスキーは5大ウイスキーのなかでも一番人気があるといっても過言ではありません。
国内のみならず海外でもとても人気があり、人気銘柄は高値で取引されています。10年位前までは誰も予想することができなかった、空前の「ジャパニーズウイスキーブーム」が到来。一部の国産ウイスキーは品切れ状態となりました。
メーカー側としては原酒の在庫がなくなってしまうことで、近い将来製品を生産できなくなることを恐れて、原酒の在庫をキープするために人気ブランドの販売中止などの措置を取らざる終えない状態です。
そして供給量が減ることで、需要と供給のバランスは崩れて価格が高騰。私たちウイスキーファンに大きな影響が出ています。
ジャパニーズウイスキーは日本人の誇りです!日本人としてしっかり勉強していきましょう。
【初心者向け講座】ジャパニーズウイスキーとは?
日本のウイスキーはスコッチの製法をお手本として発展してきたので、スコットランドのウイスキー造りと基本的には変わらないと言えます。
スコッチとの違いについて
蒸留所の数
日本は近年、急速に蒸溜所の数が増えました。
2024年現在、大小合わせて約100カ所以上の蒸溜所が存在しています。
原酒はメーカーが管理
スコットランドではウイスキーの原酒(樽)を他の会社に譲渡・交換・販売を行いますが、日本のメーカーは積極的に行いません。
スコットランドでは、独立瓶詰業者(ボトラーズ会社)がウイスキーの原酒を購入。購入した原酒をボトリングしたり、独自にブレンドして販売。また、蒸留所同士でも樽の交換(サンプルとして利用されるらしい)は珍しいことではなく、頻繁に行われているそうです。
しかし、日本ではそういった制度はありません。
最近では日本のボトラーズ会社が企画した原酒の交換によってつくられたボトルや、蒸留所同士が公式に原酒の交換を行って熟成されたウイスキーなどが販売されるケースもありますが、まだまだ日本では一般的とまでは言えず、そのような商品は特例です。(ただし、国産ウイスキーとスコッチウイスキーをブレンドするパターンは頻繁にあります。)
ウイスキーメーカーは、
蒸留所での原酒造りからボトリング、製品の販売までを全て自社で行います。
スコッチとは異なる、ジャパニーズウイスキー独自の特徴ですね。
ウイスキーに限らず、日本のお酒造りは生産者が販売までを一貫して行う文化があります。最後まで責任を負って商品をつくるのは、日本人のマジメな国民性が反映されているような気がしますね。
ジャパニーズウイスキーの定義とは?
2021年4月1日からジャパニーズウイスキーの定義の適用が開始
これまで日本にはスコッチウイスキーのような明確な法定義が存在せず、日本産ではないジャパニーズウイスキーが市場に横行する事態となっていました。それらのボトルは消費者に誤解を与える表記・表現が多く、このような状態が続けば、ジャパニーズウイスキーのブランドイメージに悪影響を与えかねません。
こうした事態を避けるために、ウイスキー製造メーカー数十社が加盟する「日本洋酒酒造組合」によって、日本初となるジャパニーズウイスキーの定義が制定されました。
ウイスキー製造メーカー数十社が加盟する「日本洋酒酒造組合」が発表した、「ジャパニーズウイスキー」と表記するための定義(法律ではなく、自主的な新基準となります)
原料として用いてよいのは麦芽、穀物、日本国内で採取された水のみ。この場合麦芽は必ず使用すること。
糖化、発酵、蒸留は日本国内の蒸留所で行うこと。
蒸留の留出時のアルコール度数は95%未満とする。
熟成は容量700リットル以下の木製樽に詰めて、樽詰め日の翌日から起算して3年以上を日本国内において行うこと。
瓶詰は日本国内において容器詰めし、その場合のアルコール度数は40%以上とすること。
瓶詰め(容器詰め)に際して、色調整のためのカラメルの使用は認められる。
『ウイスキーガロア2021年4月号』より引用
新基準についてまとめると…
- 日本国内でウイスキー製造免許のある約82社がこの基準を遵守。(加盟していないメーカーはこの定義を守る必要がありません)
- 2021年3月31日以前に販売されたウイスキーについては、表記の変更まで3年間の猶予期間が与えられている。
- 法定義ではない。
新たな「基準」はつくられましたが、日本のウイスキーに「法定義」が無い現状は変わっていません。いまだに「日本のウイスキー」っぽい商品名だけど、実際は純粋なジャパニーズウイスキーではないボトルは結構あります。こうした商品は、国内・海外の消費者に誤解と混乱を与えてしまうのでよくないです。新基準が制定されたことがきっかけとなり、今後徐々に改善されていくことに期待しています!
【初心者向け講座】ジャパニーズウイスキーとは?5種類に分けられる
ジャパニーズウイスキーの種類について解説します。スコッチと同じく5種類に分けられます。
- シングルモルトウイスキー
- ブレンデッドモルトウイスキー
- シングルグレーンウイスキー
- ブレンデッドグレーンウイスキー
- ブレンデッドウイスキー
シングルモルトウイスキー
→一つの蒸留所でつくられたモルトウイスキー。
今もっとも人気のあるジャパニーズウイスキーは「シングルモルト」
各蒸留所はフル稼働で製造をしていますが、原酒不足に陥っているため流通量が激減しています。ウイスキー造りには「熟成」という工程に長い年月が必要です。
日本のシングルモルトが復活するまではかなり時間がかかると思いますが、応援したいですね!
銘柄は多いが生産量は少ない
ジャパニーズシングルモルトウイスキーは、蒸溜所が激増したことによりブランドの数は多くなりました。
しかしまだ創業して間もない蒸溜所がほとんどなので、原酒ストックは少ないため、リリース自体は限定的かつ少量となっています。
また、大手メーカーのシングルモルトに関しては、未だに原酒不足が続いている状況であるため、生産量が調整されていることから、市場には限定的に流通しています。
ジャパニーズシングルモルトの特徴
日本のシングルモルトは本家のスコッチを脅かすほどの徹底した品質管理と、独自の原酒ブレンド技術によって造られています。丁寧な仕事が施された高品質なウイスキーであることは間違いありません。
日本人の繊細な仕事がウイスキーの味わいに反映しているように思います。
スコッチとジャパニーズを飲み比べると…「日本のシングルモルトウイスキーは甘さがある」ように感じます。スコッチは辛口(ドライ)なものが多いのですが、日本のウイスキーは上品な甘みがあります。
シングルモルトの作り方はこちらの記事をご覧ください
ブレンデッドモルトウイスキー
→複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドしたもの。
ブレンデッドモルトウイスキーは、現在リリースされている商品が少ないのが現状です。
ジャパニーズウイスキーでは自社でウイスキー原酒を調達するのが基本ですので、2か所以上の蒸留所を所有する必要があります。
複数のモルトウイスキー蒸留所を持っているメーカーは、サントリー(山崎・白州)、ニッカウヰスキー(余市・宮城峡)、本坊酒造(駒ヶ岳・津貫)の3社のみ。
国産モルト原酒のみを使用しているブレンデッドモルトウイスキーは、ある意味シングルモルトよりも貴重な存在です。
シングルグレーンウイスキー
→一つのグレーンウイスキー蒸留所で作られたもの。
もともとはブレンデッドウイスキーの原酒用として造られているウイスキー。最近は単体(シングル)でもボトリングされるようになり、一つのウイスキージャンルとして確立しています。
グレーンウイスキーの作りかたはこちらの記事で紹介しています。
日本のグレーンウイスキーは各社こだわりをもっています。グレーンウイスキーはモルトウイスキーと比べ「個性のないウイスキー」として知られていますが、それはブレンデッド用の原酒としてつくられている場合。
シングルグレーンとしてボトリングしている原酒は、ブレンド用の原酒よりも飲みごたえがあって味や香りがしっかりしているものが使用されています。
メーカーによっては、ブレンデッドウイスキー用とシングルグレーンウイスキー用で、それぞれ原酒を造り分けています。
- 味や香りがしっかりした原酒→シングルグレーン用として
- 個性の優しい原酒→ブレンデッド用として
ウイスキーの味わいの差は、
- ウイスキーの蒸留方法
- 熟成樽の種類
- 熟成期間
ブレンデッド用は「縁の下の力持ち」。シングルグレーン用は「主役」として。それぞれ役割の違う原酒を使用しているのです。
ブレンデッドグレーンウイスキー
→複数のグレーンウイスキー蒸留所で作られた原酒をブレンドしたもの。
現在これに該当する商品はありません。
大手ウイスキーメーカー「サントリー」が知多蒸留所と白州蒸留所でグレーンウイスキーを製造しているので、将来的には製品化されることもあるかも!?
ブレンデッドウイスキー
→モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたもの。
日本でウイスキー文化がはじまった当時は「スコッチ=ブレンデッドウイスキー」でした。スコッチを真似する形で歴史が始まったジャパニーズウイスキーの歴史も、まずはブレンデッドウイスキーから発展することになります。
ブレンデッドウイスキーの解説はこちらの記事をご覧ください。
日本でシングルモルトが一般的に発売されたのはつい最近の話。「シングルモルト山崎」が発売されたのは1984年のこと。それまでのジャパニーズウイスキーはブレンデッドウイスキーが主流でした。
しかし、国産原酒のみで構成された「ブレンデッドジャパニーズウイスキー」に該当する商品は非常に少なく、国産のブレンデッドウイスキーと思われている銘柄でも、実際は海外原酒が混入しているものがほとんど。
国産原酒100%の銘柄としては、「ローヤル」、「響」、「シングルブレンデッドウイスキー富士」、「嘉之助ダブルディスティラリー」、「ブレンデッドジャパニーズウイスキー戸河内」などが挙げられます。
【初心者向け講座】ジャパニーズウイスキーとは?歴史について
ジャパニーズウイスキーの歴史について簡単に解説。
そこで鳥居信治郎は「日本人の味覚にあう」甘い混成ワインを作りました。それが「赤玉ポートワイン」。寿屋はこの赤玉ポートワインの成功で、ものすごい利益を上げることができました。後の山崎蒸留所を操業する際の資金源になりました。
ちなみにマッサンと鳥居信治郎は、日本を出発する前に港で対面しているようです。この時はまだ、新たな歴史をつくる大切なパートナーとなることは想像もしていなかったことでしょう。
マッサンはせっかくウイスキー造り勉強してきたのに、摂津酒造では本格的なスコッチつくるという夢を実現することができませんでした。
この当時「ウイスキー」のことを理解している日本人はいませんでした。その為、山崎蒸留所がいったい何をつくっている工場なのか、周辺住人達にとってはわかりません。来る日も来る日も大量の大麦麦芽が山崎蒸留所に運ばれる。しかし、一向に工場からなにかしらの商品が出荷されることはない。そんな光景を見た周辺住人たちの中では、「山崎工場には大麦をたべる化け物がいる」と噂が流れたそうです。
その後、鳥居信治郎は「日本人も嗜好にあうウイスキー作り」を目指していくことになります。これは、マッサンとはウイスキーに対する考えかたが少し違っていました。マッサンの作るウイスキーは、正真正銘のスコッチウイスキーを日本で造ることでしたが、鳥居さんは日本独自の、日本人の味覚に合ったウイスキーを造りたかったのです。
どちらの考え方も素晴らしいと思います。この2人が「分裂した」かのように言う人もいますが、実際はそうではありません。お互いをリスペクトしてそれでも方向性が違った結果、それぞれ納得のいくウイスキー造りを進めることとなったのです。
結果的には両者の生み出した蒸留所は、ジャパニーズウイスキーの発展に大きく影響を与えるものになりました。
マッサンはウイスキーを出荷するまでの経営を、りんごジュースを売ることで成り立たせようと考えました。創業当時の名前が「大日本果汁」であるのはそういったことから。
そして現在…
一時はウイスキーが売れない時代がありましたが、「ハイボール」文化の浸透などで、再び人気のお酒になりました。ジャパニーズウイスキーは消費量こそ最盛期には届きませんが、今では「空前のウイスキーブーム」といえる状況。
ウイスキーの原酒が足りなくなり、供給が追い付いていません。この人気はさらに高まっていくでしょう。
また、近年は海外のウイスキーのコンクールでは最優秀賞や金賞を受賞するなど、品質面がようやく認められるようになります。日本人に、そして世界の人たちにもその品質が評価されたジャパニーズウイスキー。
これからも私たちを驚かせる進化していくことに期待しましょう。
ジャパニーズウイスキーの歴史 まとめ
- 竹鶴政孝によってスコッチウイスキーの製法が伝えられる。
- 鳥居信治郎が山崎蒸留所を開設。竹鶴と共に、本格的なウイスキー作りを始める。
- その後、サントリーとニッカウヰスキーが、業界を引っ張っていき発展。日本は世界に認められる高品質なウイスキーを作る国になった。
初心者向け講座 ジャパニーズウイスキーとは?おすすめの飲み方
結論:「ストレート」が一番いいけど、「オンザロックス」「ハイボール」「水割り」なんでもあう!
ジャパニーズウイスキーは、スコッチと同じ製法で生み出されたものですが、スコッチとは異なる日本独自の進化・改良を経たウイスキーでもあります。
その違いは
- 日本人の味覚にあうウイスキー
- ソーダや水などで割って飲んでもおいしいウイスキー
を目指していったところにあります。
日本人はお酒が強くない人種ということもあり、ウイスキーのようなアルコール度が40%以上のお酒を飲む文化というのがありません。そこで、ウイスキーの文化を大衆的に広めるために、水割り、炭酸割り、オンザロックのようなアルコール分を抑える飲み方を提唱していきました。
ジャパニーズウイスキーは「薄めて飲んでもおいしいウイスキー」を目指していったのです!
日本人の感覚ではウイスキーを薄めて飲むのが一般的ですが、ウイスキーは本来、薄めて飲むお酒ではないのです。
スコにはなかった感覚と取り入れて、ジャパニーズウイスキーは独自の原酒作りやブレンド配合比率によって、ストレート以外の飲み方でもおいしく飲めるウイスキーに進化・改良していきました。
スコッチでは「ストレート」の一択でしたが、ジャパニーズウイスキーはウイスキーの種類(シングルモルト・ブレンデッドなど)の違いがあったとしても、基本的には「割って飲む」ことを想定して作られていますので、ストレート以外の飲み方でもおいしく飲めるという結論に至りました。
【初心者向け講座】ジャパニーズウイスキーとは?おすすめ銘柄3選
この3本は「美味しいのになんで売り切れてないの?」と正直に思います(笑)売り切れてしまう前にぜひお試しください。
サントリーローヤル
サントリーローヤル
おすすめポイント!
☆リーズナブルでありながら国産原酒100%
☆クセのない味わいで初心者向け。
☆割って飲むのはもちろん、ストレートでもいける!
シングルグレーンウイスキー 知多
シングルグレーンウイスキー 知多
シングルグレーンウイスキー(サントリー)
おすすめポイント!
☆日本で一番売れているグレーンウイスキー。
☆さわやかな香りで飲みやすい。落ち着きのある味わい。
☆すっきり飲めるのから、ハイボールにするのがおすすめ!
ホワイトオーク あかし シングルモルト
ホワイトオーク あかし シングルモルト
おすすめポイント!
☆まだ買えます!貴重なジャパニーズ・シングルモルト。
☆山崎蒸留所よりも長い!100年以上の歴史がある江井ヶ嶋酒造のウイスキー。
☆本場のスコッチのような複雑なアロマ。
日本のウイスキーは竹鶴政孝がスコットランドから製法を学んできて、鳥居信治郎によって山崎蒸留所が作られて実現。その後発展していきました。
もし、竹鶴政孝がスコットランドに留学していなければ…あるいは鳥居信治郎がウイスキーを作ることを諦めていたら…日本のウイスキーは発展が遅れていたか、もしくは存在することもなく「5大ウイスキー」に認められなかったのかもしれません。
日本のウイスキー史を作っていった人物は、この2人以外にもたくさん居ます。改めて、先人たちの情熱と努力によって、ジャパニーズウイスキーが生み出されたことに感謝していきたいですね!
そして、これからも世界の「ジャパニーズウイスキー」であり続けるためにも、日本のウイスキーを応援するためにも、飲んでいきましょう!
日本人で良かった。日本にウイスキーがあってよかった。
あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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