【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「フィノ・シェリーカスク」
シェリー酒のほとんどがフィノタイプ
- 別名:マンサニージャカスク(マンサニージャはフィノシェリーの一種で、産地が違うため名称が変わる)
- 熟成されるウイスキーの種類:モルトウイスキー。
- 樽の容量: 480~600リットル
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク、ヨーロピアンホワイトオーク
「フィノ・シェリーカスク」で熟成したウイスキーの特徴
同じシェリーでも「オロロソ」とは全く異なる個性になる。さわやかなオーク樽からの複雑な風味がウイスキーに反映される。
フィノシェリーは、数多くの種類がある「シェリー酒」のなかでも一番生産されている種類で、シェリーの9割がフィノタイプ。ウイスキーの熟成用としてはこれまであまり使われてこなかった樽でしたが、近年はフィノシェリーで熟成させたウイスキーをよく見かけます。
最近のウイスキーブームでオロロソシェリーカスクの需要が高まり、蒸留所が熟成に使用する樽が足りなくなっていることから、オロロソシェリー樽の代わりとして利用されています。
オロロソとは全く異なる個性を生み出していますが、フィノシェリーカスクならではの個性はすでに評価されています。ウイスキー造りに新たな可能性をもたらしてくれたフィノシェリーカスク。今後も注視していきたいですね。
フィノシェリーカスクを使用したおすすめウイスキー
カバラン ソリスト フィノシェリー カスクストレングス
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「モスカテル・シェリーカスク」
マスカットのような爽やかな風味⁉
- 熟成されるウイスキーの種類:モルトウイスキー。
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク、ヨーロピアンホワイトオーク
- 樽の容量: 480~600リットル
「モスカテル・シェリーカスク」で熟成したウイスキーの特徴
フレッシュフルーツを思わせる甘い香りが印象的。
モスカテルシェリーはシェリーのなかでもフレッシュな甘さがあるのが特徴的です。ブドウ品種としては「マスカット」と同じ系統のもの。フィノシェリーと同様、ウイスキーの熟成として使われるようになったのは最近のこと。
フレッシュな甘い香りをウイスキーにつけるために、カスクフィニッシュ(ウイスキーのメインの熟成が終わった後に行う、仕上げの短期間熟成のこと)で使われることが多い樽です。
モスカテルシェリーカスクを使用したおすすめウイスキー
カバラン ソリスト モスカテル カスクストレングス
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ペドロヒメネス・シェリーカスク」
近年注目されている人気のシェリー樽
- 別名:PXカスク
- 熟成されるウイスキーの種類:モルトウイスキー
- 樽の容量: 480~600リットル
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク、ヨーロピアンホワイトオーク
「ペドロヒメネス・シェリーカスク」で熟成したウイスキーの特徴
ウイスキーに甘さがでる。オロロソシェリーにも似た濃厚な風味が特徴的。
ペドロヒメネス(PX)シェリーは、極甘口のシェリー酒。デザート用のワインとして人気のあるシェリーですが、生産量は少なく、シェリー全体の1%程度と言われています。近年、オロロソシェリーに代わる代用品として人気が高まり、その結果もともと数の少ないPXカスクは足りなくなっています。
PXカスクで熟成させることで、リッチで重厚な甘さと香りがウイスキーに付与されます。オロロソシェリーとも違った風味が生まれるので、この特性を気に入った蒸留所の間では取り合いになるほど。
PXカスクはメインの熟成と後熟(カスクフィニッシュ)の両方にうまく適用することから、汎用性が高い熟成樽として注目されています。
ペドロヒメネス・シェリーカスクを使用したおすすめウイスキー
ラフロイグ PX カスク
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ポートワインカスク(ポートパイプ)」
シェリーとは一味違うフルーティーさと重厚な味わい
- 別名:ポート樽、ポートパイプ
- 熟成されるウイスキーの種類:モルトウイスキー。
- 樽の容量: 600~650リットル 出荷用に小さいサイズ(260リットル、125リットル)もある。
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク、ヨーロピアンホワイトオーク、フレンチオーク。
「ポートワインカスク(ポートパイプ)」で熟成したウイスキーの特徴
ナチュラルな甘さと果実のような香りがウイスキーに反映される。
ポートワインは「シェリー酒」や「マデイラワイン」とならぶ3大酒精強化ワインの一つで、ポルトガルの北部(ドウロ川沿い)でつくられています。
ポートワインにもいくつか種類がありますが、ウイスキーの熟成樽として使われているのは、甘口タイプが多く使われています。メインの熟成用として使われるほか、カスクフィニッシュ(後熟)にも多く利用されています。
ポートワインカスクは、ウイスキーに甘い果実のような香りと余韻をあたえてくれます。やわらかい風味でちょっと甘めのウイスキー造りに適している熟成樽です。
ポートワインカスクを使用したおすすめウイスキー
グレンモーレンジ キンタルバン 14年 ポート カスク フィニッシュ
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「マデイラワインカスク」
甘やかで独特な熟成香を生み出す
- 別名:マデイラ樽、マデイラカスク
- 熟成されるウイスキーの種類:モルトウイスキー。
- 樽の容量: 一般的には420~600リットル以上。これよりも小さいサイズ(210リットル、15リットルなど)もある。
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク
「マデイラワインカスク」で熟成したウイスキーの特徴
ホワイトオークからのバニラ香のほか、ハーブやスパイスなどの複雑な香りがでる特徴がある。
マデイラワインは「シェリー」「ポート」とならぶ酒精強化ワインの一種で、ポルトガル領のマデイラ島で作られています。濃厚な味わいのワインであることから、料理のソースなどにも使われることもがあります。
マデイラにも様々な種類がありますが、ウイスキー用には辛口~甘口まで幅広く使われています。マデイラワインカスクはウイスキーに複雑な変化を与えるため、これから注目の樽といえますね。
マデイラワインカスクを使っている蒸留所は増えています。ちょっと前まではボトラーズ商品でしか見かけませんでしたが、現在はオフィシャルボトルでも使用されています。
マデイラワインカスクを使用したおすすめウイスキー
キルホーマン マディラカスク 5年
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ワインカスク」
ワインの種類によってさまざまに変化
- 別名:ワイン樽(ワイン名+樽 のような呼び名になることも多い。例:バローロカスク、ソーテルヌカスクなど)
- 熟成されるウイスキーの種類:シングルモルトウイスキー、ブレンデッドウイスキー、グレーンウイスキー。
- 樽の容量: 225~560リットル (ワインの種類によってさまざま)
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク、ヨーロピアンホワイトオーク、セシルオーク(フレンチオーク)など。
「ワインカスク」で熟成したウイスキーの特徴
ワインカスクはスティルワイン(辛口のワイン)の樽を使用します。最近ではウイスキーの熟成用として使われることが一般的になっており、ボトラーズ商品だけでなくオフィシャルボトルにもワイン樽で熟成した原酒をブレンドしたり、後熟にも使用されています。
ワインカスクの特徴はそのワインの品種や産地で異なります。ワインの種類も重要ですが、それ以上に樽の材質(オークの品種)がポイントになっているようです。
ワインカスクはスコッチやジャパニーズで良く利用されており、各蒸留所がお気に入りのワイナリーから樽を購入しています。フランスの高級ワインを造る会社から購入していることが多く、高級ワインのメーカーは当然ですが樽にもこだわっているため、高品質なワイン樽を調達できるようです。
私が話を聞いた中ではワインカスクの中でも「赤ワイン」の樽がウイスキーに与える影響が一番大きいみたい。
ワインカスクを使用したおすすめウイスキー
赤ワインカスク
アイル オブ ジュラ レッドワインカスクフィニッシュ
白ワインカスク
グレンマレイ シャルドネ・カスク・フィニッシュ
ソーテルヌカスク
アラン ソーテルヌ カスク フィニッシュ
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ミズナラカスク」
日本が誇るジャパニーズホワイトオーク
- 別名:ミズナラ樽、ジャパニーズオーク
- 熟成されるウイスキーの種類:ジャパニーズウイスキー、スコッチウイスキー。
- 樽の容量: 350~500リットル (長期熟成の場合はこのくらいの大きさ)
- 樽の材質:日本産のミズナラ(大楢)の木
「ミズナラカスク」で熟成したウイスキーの特徴
白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)を思わせるような香りがつく。
ミズナラカスクは日本原産の樽。ミズナラ(オオナラ)の木は、北海道、樺太、アジア(中国北東部)などに広く分布していますが、日本のミズナラの木が、その中でもウイスキーの熟成に最適だとされています。
「ミズナラ」という名前の由来は「水漏れしやすいナラの木」という意味から。つまり、本来は樽に加工するのには向かない木材でした。
しかし、試験的にウイスキーを熟成させた結果、どの木材にも表れない独特の個性がウイスキーにつくことが分かったのです。
ミズナラはウイスキーの樽材として人気となり、今やその貴重性はシェリーカスクをはるかに上回ります。日本のウイスキーメーカーだけでなく、スコットランドの蒸留所もミズナラカスクを求めるようになりました。
現在はミズナラカスクは供給が滞っている状態。
かつては北海道に大量に自生していたミズナラの木でしたが、ウイスキーの熟成用としては利用されず、資材用として伐採されていました。ミズナラの木がウイスキーの熟成に良いと分かった頃にはほとんどなくなってしまったのです。
ミズナラカスクは長期熟成によって個性がでてくると聞いたことがありますが、熟成の酒齢の若い原酒もそれはそれでおいしかったです(笑)
ミズナラカスク特有の個性(白檀や伽羅のようなオリエンタルな香り)がでるという意味では、ある程度の熟成期間が必要だと思います。
ミズナラカスクを使用したおすすめウイスキー
シーバスリーガル 18年 ミズナラ カスク フィニッシュ
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ブランデーカスク」
主にコニャックカスクが主流
- 熟成されるウイスキーの種類:シングルモルトウイスキー
- 樽の容量: 350~400リットル (コニャックとアルマニャックで異なる)
- 樽の材質:フランス産オーク
「ブランデーカスク」で熟成したウイスキーの特徴
タンニン分を多く含んでいる場合はスパイシーさとフルーティーな芳香が付与される。
ブランデーはワインを原料にしてつくる蒸留酒。世界中で造られていますが、やはり有名なのはフランスの「コニャック」と「アルマニャック」。ウイスキーの熟成樽に使用されているものも、ほとんどがどちらかの空き樽を再利用したものとなります。
材質はコニャックとアルマニャックで微妙に異なります。どちらもフランス産オークですが、コニャックは主にリムーザンオークやトロンセオークで、容量はバリック( barrique)と呼ばれる350ℓ程度の樽。アルマニャックにはリムーザンオークの樽が使われており、ピエス(pièce)と呼ばれる容量400ℓ程度の樽となります。
どちらかというとフィニッシュ(後熟)で利用されることが多く、近年はオフィシャルボトルの中~上位クラスの原酒に、コニャックやアルマニャックのブランデーカスクが使用されているケースがあります。
ブランデーカスクを使用したおすすめウイスキー
グレンリベット14年 コニャックカスク・セレクション
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ビールカスク(IPA)」
ビールの風味を感じるが苦味はなく甘やか
- 熟成されるウイスキーの種類:シングルモルトウイスキー
- 樽の容量: 250~600リットル
- 樽の材質:ホワイトオークが一般的。ビールにはいろいろな木材を使用している。
「ビールカスク(IPA)」で熟成したウイスキーの特徴
ホップの香りやハーブ、スパイス、モルティーな風味が感じられ、複雑な余韻を生み出す。
ビールカスクは昔からスコッチに使用されてるわけではなく、近年流行りだしたスタイル。
ビールもワインのように様々なタイプが存在していますが、ウイスキーの熟成用に使われているもので一般的なものに「IPA(インディアン・ペール・エールの略)」がありますので、今回はIPAビールカスクについて解説します。
IPAとは通常よりも大量にホップが使われ、アルコール度数を高めにして醸造されたビールのこと。醸造の時だけでなく、樽詰め時にもホップを入れる場合もあります。IPAの誕生は、長い航海によってビールを輸出していた時代の頃。ビールの劣化を防ぐために、ホップやアルコールを多めに入れて菌の増殖や品質の劣化を防いでいました。その独特な製法は今でも受け継がれており、IPAはホップの香りと強い苦味が特徴的なビールとして人気となっています。
IPAカスクをウイスキーの熟成に用いることで、ビール的な要素が加わります。ホップの香りやビターな風味。このような個性は他の熟成樽ではなかなか生み出せないことから、IPAはじめとしたビールカスクは注目されています。
ウイスキーもビールも原料は大麦麦芽なので相性が良いのかな。
ビールカスク(IPAカスク)を使用したおすすめウイスキー
グレンフィディック IPA エクスペリメント インディアペールエールカスクフィニッシュ
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|「ラムカスク」
ダークラムのトロピカルなアロマ
- 熟成されるウイスキーの種類:シングルモルトウイスキー、ブレンデッドウイスキー
- 樽の容量:180~200リットル
- 樽の材質:アメリカンホワイトオーク
「ラムカスク」で熟成したウイスキーの特徴
ブラウンシュガーのような甘い香りと、南国を思わせるトロピカルな風味が与えられる。
ラムはサトウキビを原料につくられた蒸留酒で、中南米やカリブ諸島が主要な産地となっています。樽熟成させることで「ダークラム」となり、濃厚でスパイシーな風味が魅力的です。
ラムの熟成にはバーボンの空き樽を使用するのがほとんどです。一度ホワイトラム酒をバーボンカスクで熟成させ、その後、ダークラムになったら取り出します。
樽の大きさを組み替えることがないため、バーボンカスクと同じ容量。アメリカンホワイトオークでつくられています。
ウイスキーにラムカスクを使用することで、キャラメル、黒糖のような甘い香りや、トロピカルフルーツの風味が生み出されます。シングルモルトの熟成だけでなく、ブレンデッドウイスキーの原酒やカスクフィニッシュにも利用されています。
ラムカスクを使用したおすすめウイスキー
グレンマレイ クラシック ラム カスク フィニッシュ
【初心者向け】ウイスキーの熟成樽を解説!種類・役割・樽材の秘密|その他
クリームシェリー
オロロソシェリーに甘味を加えたシェリー酒。ペドロヒメネスのような強烈な甘さではなく、割と上品な甘さが特徴。
広島県にある桜尾蒸留所のウイスキー「シングルモルトジャパニーズウイスキー桜尾シェリーカスク」がこれにあたる。
焼酎カスク
一部のジャパニーズウイスキーで利用されている、焼酎の熟成に使用した空き樽。
鹿児島県にある「嘉之助蒸留所」の定番ウイスキー「シングルモルト嘉之助」などが有名。
メスカルカスク(テキーラカスク)
メスカルはアガベ(リュウゼツラン)を原料としたメキシコの蒸留酒。メスカルのなかでもテキーラ地区で認定を受けたものが「テキーラ」となる。
ブレンデッドスコッチウイスキー「デュワーズ イリーガルスムース 8年」に使用されている。
現在でもモルトウイスキーの熟成樽は「バーボンカスク」と「シェリーカスク」が主流です。
モルトウイスキーの販売量が増えたことや、シェリーカスクの供給不足によって、ここ数年でウイスキーの熟成樽の種類はかなり増えました。
それぞれの蒸留所は個性的な原酒造りを目指す上で、どんどん新しい樽での熟成にチャレンジしています。新たなウイスキーの樽も登場するかもしれませんね。
あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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