こんばんは ユースケです。
自己紹介：BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中！
北海道・厚岸町で造られている「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」のテイスティングレビューをはじめ、ボトルの評価や、シリーズ全体を彩る「二十四節気シリーズ」について詳しく解説します。
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」の味わいや、厚岸蒸溜所の魅力を知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。
【ジャパニーズウイスキーレビュー】厚岸蒸溜所とは？
厚岸蒸溜所は「スコッチの伝統を尊重し、日本の風土で育まれるウイスキーを創造する」というコンセプトのもと、2016年に北海道・厚岸町に設立されました。
この町は、牡蠣の生産で有名な小さな港町。アイヌ語の「アッケシイ」が名前の由来となっており、その意味はズバリ「カキのあるところ」。厚岸蒸留所は生産開始後に間もなくして、ウイスキーの品評会で高く評価されました。日本のモルトファンだけでなく、世界中が注目するモルトウイスキー界の新鋭です。
「アイラモルトのようなウイスキーが作りたい」という、蒸留所のコンセプトにははっきりとしたものでした。一年を通じて寒暖差があり、熟成に最適な環境。さらには海霧や潮風に包まれる湿潤な気候もあって、厚岸のウイスキーは「日本版アイラモルト」として、ジャパニーズウイスキー愛好家から支持を受けています。
厚岸蒸留所はプラン作りから全ての蒸留器具、蒸留試験に至るまで、スコットランドのフォーサイス社（ポットスチルの製造メーカー）によるコンサルティングによってつくられており、フォーサイス社の技術者が2か月以上現地に滞在し、ウイスキーのノウハウを一から伝えています。
スコッチの伝統に乗っ取った形で生産が行われているのは、ジャパニーズウイスキー全体に言えることですが、全てのプランニングをフォーサイス社（スコットランド人）によって進められた蒸留所というのは日本で厚岸が初となっています。
仕込みは1バッチ麦芽1トン。麦芽はイギリス産のロリエット種がメイン。地元厚岸町で獲れた「りょうふう」という二条大麦も使用。
ノンピートとピーテッドの２種類のタイプを生産しており、比率は半々。アイラ島のようなウイスキーを造りたいのであれば、全てをピーテッド麦芽にしてもいい訳ですが、多種多様な原酒を生産し熟成されない限りは、蒸留所の未知なる可能性が開拓できません。
また、厚岸蒸溜所では複数の熟成庫を使い分け、異なる熟成環境で原酒を育ています。海に近い熟成庫は、潮風の影響を受け、塩気やミネラル感のある風味に。森林に囲まれた熟成庫の場合は、温湿度が安定することで、マイルドで複雑な個性に熟成します。
場所ごとに熟成の違いを出し、それをブレンドして複雑な味わいを生み出しているのです。
出典：http://akkeshi-distillery.com/company/overview/
シングルモルトだけでなくブレンデッドウイスキーを生産することも視野に入れた場合、クセの少ないモルト原酒も必要になりますので、生産比率が半々であることには納得できますね。2022年５月には製麦設備が完成し、自社での製麦にも力を入れています。
2018年からニューボーンシリーズ「ファウンデーション」をリリース。その後、2020年には初のシングルモルトとなる「サロルンカムイ」をリリースしています。
創業してからしばらくは200mlの小さなボトルでの販売でしたが、2020年10月には初の700mlボトルの３年物「厚岸シングルモルトウイスキー寒露」が15000本限定リリースされました。
厚岸蒸溜所の代表的なシリーズのひとつに、日本の伝統的な暦に基づく「二十四節気シリーズ」があります。このシリーズは、春夏秋冬の移ろいを24の節気に分けた日本独自の季節感を反映した、数量限定のコレクションです。リリースごとに、その節気がもつ自然の表情や空気感をウイスキーで表現しています。
「二十四節気シリーズ」には、大きく分けて2種類のタイプがあります。ひとつは、厚岸蒸溜所で蒸留・熟成されたモルトのみで構成されるシングルモルトウイスキー。もうひとつは、厚岸モルト原酒にグレーンウイスキーを合わせたブレンデッドウイスキーです。
このブレンデッドウイスキーは、使用されているモルト原酒の50%以上が厚岸産。グレーン原酒については、ニューポットの状態で輸入し、厚岸の貯蔵庫で最低3年間熟成させた後にブレンドされています。これにより、土地の風土を反映しつつも、複雑で奥行きのある味わいを生み出しています。
さらに、2025年2月には「二十四節気シリーズ」とは別に、北海道の風土に根ざした**「厚岸シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー冬至」が登場しました。このボトルは、モルト・グレーンの両原酒をすべて厚岸蒸溜所で製造。特にグレーンは、北海道産の原料を使った「シングルポットスチルグレーンウイスキー」で構成されており、厚岸蒸溜所の技術と地域性を最大限に活かした意欲作となっています。
厚岸蒸溜所｜二十四節気シリーズ【一覧】
| No. | 商品名（ふりがな） | 種類 | 税込定価 | 生産本数 | 発売日 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 寒露（かんろ） | シングルモルト | 16,500円 | 15,000 | 2020年10月 |
| ② | 雨水（うすい） | ブレンデッド | 11,000円 | 15,000 | 2021年02月 |
| ③ | 芒種（ぼうしゅ） | シングルモルト | 16,500円 | 10,000 | 2021年05月 |
| ④ | 処暑（しょしょ） | ブレンデッド | 11,000円 | 10,000 | 2021年08月 |
| ⑤ | 立冬（りっとう） | シングルモルト | 19,800円 | 不明 | 2021年11月 |
| ⑥ | 大寒（だいかん） | ブレンデッド | 13,200円 | 10,000 | 2022年02月 |
| ⑦ | 清明（せいめい） | シングルモルト | 19,800円 | 不明 | 2022年05月 |
| ⑧ | 大暑（たいしょ） | ブレンデッド | 13,200円 | 不明 | 2022年08月 |
| ⑨ | 大雪（たいせつ） | シングルモルト | 19,800円 | 不明 | 2022年12月 |
| ⑩ | 啓蟄（けいちつ） | シングルモルト | 19,800円 | 不明 | 2023年02月 |
| ⑪ | 小満（しょうまん） | ブレンデッド | 13,200円 | 不明 | 2023年05月 |
| ⑫ | 白露（はくろ） | シングルモルト | 19,800円 | 不明 | 2023年08月 |
| ⑬ | 小雪（しょうせつ） | ブレンデッド | 13,200円 | 不明 | 2023年11月 |
| ⑭ | 立春（りっしゅん） | シングルモルト | 19,800円 | 不明 | 2024年02月 |
| ⑮ | 穀雨（こくう） | ブレンデッド | 16,500円 | 不明 | 2024年05月 |
| ⑯ | 小暑（しょうしょ） | シングルモルト | 23,100円 | 不明 | 2024年08月 |
| ⑰ | 霜降（そうこう） | ブレンデッド | 16,500円 | 不明 | 2024年11月 |
| ⑱ | 冬至（とうじ） | シングルブレンデッド | 29,700円 | 不明 | 2025年02月 |
※2025年4月時点のリスト
【ジャパニーズウイスキーレビュー】厚岸シングルモルト小暑を評価
厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑
- シングルモルトジャパニーズウイスキー
- アルコール度数：55％
- 容量：700ml
- 発売日：2024年8月
- 抜栓時期：2024年8月
- テイスティング時期：2025年4月
- whiskybaseでの評価：89.67/100
- 希望小売価格：23,100円（税込）
- 楽天市場価格[2025年4月]：26,000円
- Amazon価格[2025年4月]：26,980円
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」の特徴
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」は、「二十四節気シリーズ」の第16弾としてリリースされました。原酒の一部には、北海道産ミズナラの樽で熟成したものを使用。
「小暑」とは、二十四節気の11番目で、日本の伝統的な暦では7月7日頃にあたり、「より弱い暑さ」を意味しており、梅雨が明けて夏の暑さが始まること表す言葉として用いられています。
香り
レモンバーム、カスタードクリーム、グレープフルーツ、ドライイチジク、杏、スモークドナッツ、カカオマス、ダークチェリー、レーズン、黒糖、燻製、ヨードチンキ。スモーキーさに加え、オーク樽由来のバニラやフルーティーなアロマも感じます。
加水するとオレンジジャム、青りんご、モルト、クセの少ないハチミツ。
味わい
甘くてなめらか。ミディアムボディ。爽やかな酸味のあと、スモーキーでピーティー。中盤以降にややビター。コクのある味わいと燻製香が続きます。余韻はやや長め。ピーティーでスモーキ―な風味。
加水後も甘みがあり、クリーミー。味わい深さのある個性。加水に対しても強く、ストレートとは一味変わります。
評価
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」の評価としては、「ミズナラ樽の影響⁉スモーキーだけでない、味わい深い1本」です。
「小暑」は、「二十四節気シリーズ」の第16弾にあたるボトルで、シングルモルトとしては第14弾「立春」に続くリリースです。
今回も、シリーズに共通するスモーキーな個性が健在で、アイラモルトを思わせる力強い香りと味わいが特徴。まさに“厚岸らしさ”が凝縮された一本で、ジャパニーズウイスキーの枠に収まりきらないクセの強さを持っています。
前作の「立春」と比べると、甘さがより際立っている印象を受けました。「小暑」にはミズナラ樽熟成の原酒が使用されており、それによる影響かは明言できないものの、フルーティーさやウッディなニュアンスが加わり、スモーキーさの中にも複雑で奥行きのある味わいが広がっています。香り、飲みごたえともに、全体的にパワーアップしたと感じました。
もちろん「立春」ならではの良さもありますが、個人的には「小暑」のほうがより魅力的に感じました。アイラモルトのような王道のスモーキーさをしっかりと備えつつも、ジャパニーズウイスキーらしい柔らかさと奥行きがあり、バランスの取れた味わいに仕上がっています。
シェリー樽が使われているかどうかは定かではありませんが、ドライフルーツや赤ワインを思わせるような、ふくよかなフルーティーさも感じられました。スモーキーさの中に広がるこうした甘みや果実味が、より複雑で印象深い味わいを演出しています。
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」は、ミズナラ樽の影響が全面に出ているわけではありませんが、北海道産の上質なミズナラ樽によって、ウイスキーに複雑で深みのある風味を与えていることは確か。ミズナラ樽は、どの程度使用されているのかは明確ではありませんが、ミズナラ樽の希少性を考慮すれば、「フィニッシュ（後熟）」に使われているのかもしれませんね。
もしミズナラ樽の原酒がこのウイスキーの「キー」となり、厚岸の個性を生み出しているのであれば、北海道産の素材を追求する厚岸蒸溜所にとっては、大きな意味があることと言えるでしょう。
スモーキータイプのシングルモルトウイスキーをミズナラ樽で熟成させるというのは、スコットランドを含めても他の蒸溜所では見られない珍しいケースです。唯一、思い当たるのは「ボウモア」くらいですが、ミズナラ樽がボウモア蒸溜所でスタンダードに使用されている訳ではなく、あくまで特別な商品の仕込みに限られています。
つまり、世界中を見渡しても、普段の仕込みでスモーキーモルトをミズナラ樽で熟成させているのは厚岸蒸溜所くらいのもので、ミズナラ樽は厚岸のウイスキーにとって独自の付加価値を与えていると言えます。
また、「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」は「立春」と比べると、加水後の安定感も「小暑」の方が優れていると思いました。「立春」は、加する原酒の若さが引き立ちますが、「小暑」ではそういった印象を受けず、加水後も全体的なアロマバランスとコクのある味わいが豊かに広がります。
「立春」ならストレートがおすすめですが、「小暑」であればストレート以外に、ロック、ハーフロック、ハイボール（ちょっと贅沢ですが…）でも美味しく飲めると思います。「二十四節気シリーズ」全体をみても、このウイスキーはビギナー向けかもしれません。
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」の、whiskybaseでの評価は89点と、かなりの高得点。ご存じの通り、厚岸のウイスキーは人気が高く、とくにシングルモルトは生産本数が少ないため入手困難。国内でも希少価値が高いのに、海外のモルトファンはどのようにしてこのウイスキーを入手しているのでしょう（笑）
そんな「レアウイスキー」を頑張って見つけて飲んでいる、コアなウイスキー愛好家からも90点に迫る高評価を得ている「小暑」の完成度は、シリーズ歴代でもトップクラスのクオリティではないでしょうか。
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」公式テイスティングノート↓
【香り】バナナジュース、クリームあんみつ、ソルティレモン
【味わい】砂糖をかけた柑橘、エディブルフラワー
【余韻】ミョウガ、出汁醤油、レモン飴、薄煙（うすけむり）
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」は、まさに“厚岸らしさ”の真骨頂。アイラモルトを彷彿とさせるスモーキーな骨格をベースにしながらも、北海道産ミズナラ樽由来のまろやかで複雑な味わいが共存しています。加水してもその魅力は損なわれず、むしろ多面的な表情が引き出されています。
シリーズのファンはもちろん、スモーキーなジャパニーズウイスキーを探している方にとっても、試す価値のある1本。「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー小暑」を、まだ試したことがない方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪
あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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