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スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ノックドゥー Knockdhu
ノックドゥー Knockdhu
地域:ハイランド
創業年:1893
タイ・ビバレッジ社
「ノッカンドオ」でも「カードゥ」でもない ノックドゥー
創業は1893年。ノックドゥーはDCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)社が建設した数少ない蒸留所です。
DCL社自体は多くの蒸留所を傘下としていたスコッチ業界では巨大企業ですが、蒸留所は買収したものがほとんどで自らの資本で操業させた蒸留所は多くありません。ノックドゥーは100年近くDCL社が経営していましたが、1988年にインバーハウス社に売却され、現在はそのインバーハウスを傘下に置くタイ・ビバレッジ社がオーナーとなっています。
年間生産量は200万ℓ。ポットスチルは初留、再留1基ずつですが、生産量はその割には多め。
麦芽は基本ノンピーテッドで、生産量の3割をヘビリーピーテッド麦芽(フェノール値45ppm)で造り分けています。インバーハウスになってからはシングルモルトの販売に力を注ぐようになり、その際にブランド名を「アンノック」に変更します。
ノックドゥーは「ノッカンドオ」や「カードゥ」と間違えられることがあって紛らわしいというのが改名の理由。区別が付けやすくなった影響?か、アンノックの出荷量はその後徐々に伸びていきます。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ハイランドパーク Highland Park
ハイランドパーク Highland Park
地域:アイランズ(オークニー諸島メインランド島)
創業年:1798
エドリントングループ社
「北の巨人」と評される最北の蒸留所
オークニー諸島のメインランド島は北緯59度に位置しており、本格的なウイスキー蒸留所としてはスコットランド最北となっています。
創業は1798年ですが、オーナーが何度も変わっていく間に蒸留所の設備は増改築を繰り返し、現在の建物となったのは1860年代。今も変わらぬ石造りでつくられた建物が印象的です。
ハイランドパークは現在でも伝統的な製麦「フロアモルティング」を続けている数少ない蒸留所です。麦芽に炊き込むのはハイランドパーク独自のピートボグ(採掘場)でとれた、個性的なヘザーピート。ピートと熱風の両方をバランスよく使い、フェノール値40~42ppmの自家製麦芽をつくります。
自家製麦の割合は全体の3割ほどで、この他に本土でつくられたノンピーテッド麦芽を使用。ピーテッド麦芽とノンピーテッド麦芽を混ぜ込むことで、最終的なフェノール値は10~15ppmとなっています。
年間生産量は250万ℓ。初留、再留2基ずつ。
シングルモルトとして人気の高い蒸留所ですが、カティサークやフェイマスグラウスのブレンド原酒にも使用されています。
そして何より驚くのが、原酒の8割以上をシェリー樽で熟成させていること。ハイランドパークはマッカランと同じエドリントングループということもあり、他の蒸留所よりもシェリー樽の融通が効くのかもしれませんが、シェリー樽不足が深刻な昨今において、未だシェリー樽をメインに熟成が行われているのはハイランドパークのこだわりの一つ。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!バリンダルロッホ Ballindalloch
バリンダルロッホ Ballindalloch
地域:スペイサイド
創業年:2015
バリンダルロッホ・ディスティラリー社
バリンダルロッホ城の当主がつくるこだわりのウイスキー
スペイ川とエイボン川の合流地にあるバリンダルロッホ城。そのエイボン川の畔にあるのがバリンダルロッホ蒸留所です。
オーナーはバリンダルロッホ城23代目当主、ガイ・マクファーソングラント氏。7200ヘクタールという広大な領地で自家栽培した大麦を使用し、ウイスキーを造っています。現在は製麦を他社に委託していますが、将来的には自家製麦をする予定。
生産能力は年間10万ℓ。初留、再留1基ずつ。スコットランドで増えている小さな蒸留所ですが、他社と明確に違う部分はウイスキー以外の生産を行っていないところ。
クラフト蒸留所は資金繰りが厳しく、ジンやスピリッツを同時並行して生産し、ウイスキーの熟成が乗り切るまでの繋ぎとしている造り手がほとんどです。しかしバリンダルロッホではウイスキーのみをつくっており、生産方法もスコッチの伝統的なやり方。熟成の早いオクタブなどの小樽は使わず、ゆっくりと原酒を寝かせています。しかも、短期熟成のリリースも行う予定がなく、酒齢8~10年物ができるまでは販売しないそうです。
数多くあるクラフト蒸留所の中でも、伝統的かつ正統派な蒸留所。豊富な資金力がそれを可能としているのでしょうか。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!バルヴェニー Balvenie
バルヴェニー Balvenie
地域:スペイサイド
創業年:1892
ウィリアム・グラント&サンズ社
グレンフィディックの第二蒸留所
ウィリアムグラント&サンズが所有する3つのモルト蒸留所の内の一つ。バルヴェニーはフィディックと同じ敷地内に存在しており、第二蒸留所という形で創業しました。1892年はフィディックが完成した5年後のこと。地元の領主の館だった建物を改造して建てられました。
年間生産量は700万ℓ。フィディックの約半分となる量ですが、スペイサイドの蒸留所としては大規模で、スコットランド全体でも10本の指に入る生産量。
ポットスチルは初留5基、再留6基の計11基。原酒は同社のモンキーショルダー、グランツの他、現在は終売となっているクラン・マクレガーというブレンデッドにも使用されていました。
シングルモルトとしては基本となる「12年ダブルウッド」や「14年カリビアンカスク」など多彩に展開。ボトラーズからの商品はほとんどありません。
バルヴェニーの特徴の一つとしては、現在でもフロアモルティングを行っているところ。この伝統製法を行っている蒸留所は現在ではほとんどありません。普段はトミントール産のピートで最初の12時間乾燥させ、残りは熱風で乾燥させた麦芽を使用しています。
その他、年に1週間だけ強くピートを炊いたモルトをつくっており、ピーテッドタイプのウイスキーも仕込んでいます。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!バルブレア Balblair
バルブレア Balblair
地域:ハイランド
創業年:1790
タイ・ビバレッジ社
インバーハウスを支える北ハイランドの銘酒
ハイランドでは2番目に古い蒸留所。北ハイランドの田舎町エダートン村にあります。
バルブレアは創業から行くとどなくオーナーが変わったことでも知られています。現在のオーナーはタイ・ビバレッジ(インバーハウス社傘下)。ブレンデッドウイスキー「インバーハウス」の原酒をつくっています。
年間生産量は180万ℓ。初留、再留1基ずつ。
シングルモルトとしては12年、15年、18年などをリリース。スコッチには珍しくヴィンテージ表記が記載されていた時代もありましたが、現在は熟成年数の表記に変更されています。
オフィシャルの他ボトラーズでも見かけますが、それほど多くはない印象です。バルブレアはバーボン樽とシェリー樽で印象がかなり違うので、個性的で面白いウイスキーです。背丈の低い独特なボトルデザインもいいですね、
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!バルメナック Balmenach
バルメナック Balmenach
地域:スペイサイド
創業年:1824
オフィシャルボトルはまさかのドライジン⁉
スペイサイドには数多くの蒸留所がありますが、「生産量がそこそこある割にあまりよく知られていない蒸留所」がいくつかあります。バルメナック(バルメニャック)はまさにこれに当てはまる存在ではないでしょうか。
年間280万ℓもの生産量がありながら、オフィシャルシングルモルトが販売されていないこともあって人気も高くはありません。ブレンド原酒としても、インバーハウス社(タイ・ビバレッジ)の傘下にありますが、メジャーブランドのキーモルトにもなっておらず(ひょっとしたら何かしらのキーモルトなのか⁉)地味な存在。
しかし複数のボトラーズ商品は高品質で秀逸で、オフィシャルボトルに採用されてない分、比較的多くリリースされています。
そんなバルメナックですが、ウイスキーのオフィシャルボトルを出していないのに、何故かクラフトジンはオフィシャルボトルとしてリリース。
スコティッシュ・クラフトジンの生産量は年間1000ℓほど。ボタニカルにはジュニパーベリー、コリアンダー、オレンジピールなど、ジンに入る代表的なアイテムと、スコットランド・ハイランド産のローワンベリー、クール・ブッシュ・アップル、ヘザーが配合されています。
シングルモルトの蒸留所でありながら、オフィシャルボトルとしてはドライジンだけを販売しているなんて…蒸留所はもうすぐ創立200周年を迎えるのに、まるで創業したばかりのクラフト蒸留所みたいなことをしてます(笑)
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!フェッターケアン Fettercairn
フェッターケアン Fettercairn
地域:ハイランド
創業年:1824
エンペラドール・ディスティラーズ社
唯一無二の冷却システムを採用
東ハイランドにあるフェッターケアンはヴィクトリア期のイングランドの政治家「ウィリアム・グラッドストーン」にゆかりのある蒸留所。
1939年まではグラッドストーン家の元でウイスキーが造られていました。現在は世界最大のブランデー会社(安価なブランデー)エンペラドール社の傘下となっています。
年間生産量は320万ℓ。初留、再留2基ずつ。原酒はブレンデッドウイスキー「ホワイトマッカイ」に使用されています。
シングルモルトはオフィシャルの12年物が主力。その他、数多くのボトラーズから様々なタイプがリリースされています。
フェッターケアンの個性を語る上で重要なのは、唯一無二の冷却システムの存在。再留釜のネック上部から水が流れる仕組みがつくられており、ネックの表面は絶えず水によって冷やされています。これによって蒸留液の還流が大きくなり、ウイスキーに個性を与えているのです。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブナハーブン Bunnahabhain
ブナハーブン Bunnahabhain
地域:アイラ島
創業年:1881
ディステル・グループ社
基本はノンピート ピーテッドも好評
ブナハーブンはアイラ島では珍しく、ノンピーテッド麦芽でウイスキーを造るのを基本としている蒸留所です。
ノンピートでの生産が始まったのは第二次世界大戦後。カティサーク用のクセのない原酒が求められたことによるものでした。1997年からはピーテッドモルトでの生産もスタートさせており、現在は全生産量の4割に当たるウイスキーが、フェノール値34~38ppmのポートエレン製モルトで造られています。
クセの強いアイラウイスキーの人気はとどまることをしりません。今後もヘビリーピーテッドのウイスキーは需要が伸びることが予想されます。ひょっとしたら近い将来、ノンピーテッド仕込みの方をむしろ限定的に造るようなこともあるかもしれませんね。
年間生産量は270万ℓ。初留、再留2基ずつ。カティサーク、ブラックボトルのブレンド原酒に使用されています。
シングルモルトはスタンダードが12年物。長期熟成の25年。その他免税店向け商品や限定品ボトルもあります。ボトラーズでも見かけることは多いので、ノンピーテッドでありながらブナハーブンが人気のアイラモルトだということが分かります。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブラッドノック Bladnoch
ブラッドノック Bladnoch
地域:ローランド
創業年:1817
ブラッドノック・ディスティラリー社
スコットランドの最南端の蒸留所
ローランドで最も南にあり、スコットランド最南端となっているブラッドノック(ブラドノック)。蒸留所名は仕込み水として利用している「ブラッドノック川」から名付けられています。
多くのスコットランドの蒸留所は、長い歴史の中で何度かオーナー企業が変わっていますが、ブラッドノックもその中の一つ。1817年の創業以来、実に10回以上も経営者が変わっています。
現在はオーストラリアの起業家デビッド・ブライア氏が2015年に買収し、操業を継続しています。その際1930年代から使われていた古い設備を一新。原料のモルトを粉砕する「モルトミル」だけを残し、ポットルチルや発酵槽などを最新のものに変更しています。
新しくなったブラッドノックの生産能力は年間150万ℓ。初留、再留2基ずつ。原酒はブレンデッドウイスキー「ベル」などに利用。
現在のオーナーとなってからはシングルモルトも定番をリリース。オフィシャルの11年はバーボン樽とカリフォルニア産の赤ワイン樽で熟成させたボトル。その他オロロソシェリー樽で熟成させた15物や長期熟成もリリースしています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブリュードッグ BrewDog
ブリュードッグ BrewDog
地域:ハイランド
創業年:2016
ブリュードッグ社
ローンウルフから改名 孤高の狼
旧名は「ローンウルフ」蒸留所。2019年からブリュードッグへと名前が変わりました。元々ビールの造り手として有名で、クラフトビール界では知らぬ者無しといったほど名声があり、発酵槽などの一部の設備はビールと併用されています。
年間生産量は45万ℓ。初留、再留1基ずつ。
その他ジン用の蒸留器や、スピリッツ用のコラムスチルもあります。蒸留所の壁には狼の絵が描かれていて、個性的な蒸留器のバックに守り神のように一匹狼が睨みを利かせています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブルックラディ Bruichladdich
ブルックラディ Bruichladdich
地域:アイラ島
創業年:1881年
伝説の男!ジム・マッキュワンによって復活
蒸留所の創業は1881年ですが、いく度となくオーナーが変わったことで生産と休止が繰り返されてきました。
現在のブルイックラディのスタイルとなったのは、2000年頃から。マーレイマクダビット社によって買収され、蒸留所の責任者にジム・マッキュワンを招き入れました。マッキュワン氏はアイラ島出身で、「アイラの伝説の男」と評されたウイスキー製造のプロフェッショナル。アイラモルトをこよなく愛する男によって、ブルイックラディの再建がスタートします。
マッキュワン氏が最もこだわったのが「スコットランド産」であること。
スコッチなのに大麦が海外からの輸入というのに疑問を抱き(当時スコットランド産の大麦はほとんどなかった)、アイラ島で大麦をつくる計画を進めます。
そして現在ではすべての大麦をスコットランド産にし、その内アイラ島産は50%程度まで賄えるようになっています。ウイスキーにワインのような「テロワール」を意識し、大胆な発想と地道な努力によって、ブルイックラディは多くのウイスキーファンから支持を受けるようになっていきます。
ブルイックラディのもう一つの魅力としては、他の蒸留所にはない多彩な原酒造りでしょうか。
オフィシャルボトルは3つのブランドを確立。スタンダードとなる「クラシックラディ(ノンピーテッド)」。ヘビリーピーテッドタイプの「ポートシャーロット(フェノール値40ppm)」。そしてギネスブックにも認定された世界最強のスーパーヘビリーピーテッドウイスキー「オクトモア(フェノール値80~300ppm)」。
個性的で世界中を驚かせるスタイルも、伝統を重んじるスコッチの中では異端児。というか、革新的なウイスキー造りを進めた「進化した蒸留所」というべき存在が、現在のブルイックラディ蒸留所の魅力そのものなのです。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!プルトニー Pulteney
プルトニー Pulteney
地域:ハイランド
創業年:1826年
タイ・ビバレッジ社
潮の香りが漂う港町のウイスキー
現在スコットランド本土の最北端にあるのは、2013年にできたウルフバーン蒸留所。その前まではウィックという港街にあるプルトニーが最も北に位置する蒸留所でした。
ウィックはヨーロッパ最大のニシンのとれる港として有名で『ウィックの「金」はプルトニーのウイスキー、銀はニシン』と言われていた時代もありました。
ウイスキーは潮気を感じる個性的でオイリーな味わい。ピーティーではありませんがアイラ島を思わせるような独特な風味が人気となり、シングルモルトとしての売り上げを増やしています。
年間生産量は180万ℓ。初留。再留1基ずつ。ブレンド原酒としては、タイ・ビバレッジの親会社「インバーハウス社」のつくるインバーハウスに利用されています。
シングルモルトのラインナップは12年、15年、18年、25年と充実。この他、ノンピート麦芽を使用しながらも、熟成にはピーティーなウイスキーを入れていたバーボン樽をフィニッシュに使用した「オールドプルトニー ハダート」という変わり種のボトルもあります。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブレアアソール Blair Athol
ブレアアソール Blair Athol
地域:ハイランド
創業年:1798
MHD
カワウソが可愛らしいディアジオの銘酒
旧UD社時代のオフィシャルボトル「花と動物」シリーズでは、カワウソが描かれたラベルが印象的だったブレアアソール。蒸留所の名前も『カワウソの小川』という意味のゲール語から名付けられています。
蒸留所の歴史はハイランドの中でも長く、1798年の創業。ブレンデッドウイスキー「ベル」の重要な原酒として重宝されてきました。ブレアアソールではシングルモルト用とブレンデッド用で原酒造りをしっかり分けており、オフィシャルシングルモルト(花と動物12年)にはシェリー樽熟成を使い、ブレンデッドにはバーボン樽で寝かせたものを主に使用しています。
年間生産量は280万ℓ。初留、再留2基ずつ。
生産量の内、シングルモルトとしてボトリングされるのは2%程度。ほとんどがバーボン樽で熟成させたベルの原酒ということになります。
シングルモルトとしての評価は決して低い訳ではありませんが、あくまでもベルの供給が優先で、オフィシャルラインナップを増やさないところが如何にもディアジオらしい所ですね。ボトラーズではシェリー樽原酒、バーボン樽原酒ともに出回っていますが、たしかに全然違う味わいです。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブレイヴァル Braeval
ブレイヴァル Braeval
地域:スペイサイド
創業年:1973
ペルノリカール
生産量が多い割にマイナー?シーバスの原酒
ブレイヴァルの年間生産量は420万ℓで、スペイサイドの中でも中規模の蒸留所ですが、あまり名前が知られていません。というのも、創業が1973年で、歴史が浅いからという他に、改名されてまだ間もないということも理由としてあります。
今の名前になったのは1994年のことで、かつては「ブレイズ・オブ・グレンリベット Braes of Glenlivet」と呼ばれていました。
年間生産量は420万ℓ。蒸留所としては少しマイナーなブレイヴァルですが、世界的なメジャーブレンデッドウイスキー「シーバスリーガル」の原酒として活躍。その他にも「パスポート」や「100パイパーズ」にも使用されています。
シングルモルトとしてはオフィシャルボトルは無いため、一部のボトラーズからリリースされているものだけが流通。
蒸留所には熟成庫が存在せず、樽詰めされたウイスキーは、全てキースの街にあるシーバスブラザーズ社の集中熟成庫に運び熟成しています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ブローラ Brora
ブローラ Brora
地域:ハイランド
創業年:1967(1819)
MHD
2021年に蘇った幻のウイスキー
クライヌリッシュの第2蒸留所として建設された蒸留所。ブローラの歴史をまとめます。
・1819年 クライヌリッシュ蒸留所(のちのブローラ)が創業。
・1967年 DCL社によって新たな蒸留所が隣に建てられる。新しい蒸留所は「クライヌリッシュA」古いほうは「クライヌリッシュB」と名付けられる。
・1967年 「クライヌリッシュB」から「ブローラ」へと改名。
・1970年代 改名後から続けられていたピート麦芽(フェノール値35~40ppm)での生産が終了。
・1983年 生産停止(ブローラはわずか14年間の稼働)
・2017年 再建計画が発表される。
・2021年 4年間の改修工事を経て38年ぶりに蒸留が再開。
新しく建てたほうをクライヌリッシュと呼び、古いほうをブローラと改名。つまりブローラは旧クライヌリッシュ蒸留所ということになります。ブローラの生産が停止したのは1983年。ジョニーウォーカの原酒用としてヘビリーピーテッド麦芽での原酒造りをしていた時期もありましたが、70年代には需要もなくなったことで、ウイスキーの生産自体が不定期なものとなっていました。そして83年には生産停止(モスボール)。
90年代には旧UD社「レアモルトシリーズ」などでオフィシャルボトルが発売されたり、ディアジオ社になってからも「スペシャルリリース」で長期熟成を限定販売しています。
蒸留所は生産中止状態なのにオフィシャルボトルのリリースを限定的に行っていたことを考えると、モルトファンからの支持が熱いものだということがわかります。
そして2017年には重い腰をようやく持ち上げる形?で、MHDが待望だった生産再開を発表。建物は以前のままで、新しいポットスチルを2基導入して蒸留がスタートしています。
スチルは以前のと全く同じ形状・サイズで新調していますので、当時のような心地よいフレーバーのあるブローラがまた飲めることに期待したいですね!
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ベンネヴィス Ben Nevis
ベンネヴィス Ben Nevis
地域:ハイランド
創業年:1825
ニッカウヰスキー
ニッカウヰスキーの重要拠点 セッションのキーモルト
ベンネヴィス山の麓にあるベンネヴィスはニッカウヰスキーが所有する蒸留所。
創業は1825年。創業家であるマクドナルド家が経営していたのは1940年代まで。その後はオーナーがいく度と変わりますが、1989年にニッカウヰスキーが買収します。トマーティン以来、日本企業がオーナーのところはまだありませんでしたから、ベンネヴィスが日本企業が所有する第2号の蒸留所となりました。
当時は「デュー・オブ・ベンネヴィス」という、シングルモルトかと勘違いしてしまう、ややこしい名前のブレンデッド用原酒として利用されるのがメインでした。しかしここ数年は、生産量の7割ほどをニューポットの状態で日本に送り、ニッカ製品の原酒として利用しています。
スコッチの法律上は「スコッチ」と名乗らなければ問題はありません。しかし日本で熟成を経たとしても、「ジャパニーズウイスキー」とも当然名乗れないわけですから、スコッチでもジャパニーズでもないウイスキー用のブレンド原酒として役割を果たしています。
ベンネヴィスの原酒が、ニッカウヰスキーのどの銘柄に、どの程度入っているかについては詳細が明らかになっていませんが、2020年に発売された「ニッカ・セッション」については、ベンネヴィスがブレンドされていることが公式発表されています。
シングルモルトとしては「ベンネヴィス10年」のみがオフィシャルボトルとしてリリースされています。蒸留所としては生産量が年間200万ℓもあるので、シングルモルト用の原酒造りを拡大させて、もう少しオフィシャルラインナップを拡充させてほしいと個人的には思っています(オフィシャル10年がおいしいので…)。
現在はボトラーズからいろいろなベンネヴィスがリリースされているので、そちらを愉しみたいと思っています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ベンリアック Benriach
ベンリアック Benriach
地域:スペイサイド
創業年:1897年
ブラウンフォーマン社
いいとこどり?原酒を造り分けるスペイサイドの銘酒
ベンリアックは1897年にロングモーンの創業者であるジョン・ダフによって創業されました。
しかしウイスキー不況の影響から1900年には閉鎖。そこから長きにわたって蒸留が再開されることはありませんでしたが、1966年にシーバス社(当時はザ・グレンリベット・グレングラント蒸留会社)が買収したことで再び生産を開始。そして現在はアメリカのブラウンフォーマン社が経営しています。
ベンリアックはスパイサイドでありながら、ヘビリーピーテッドのモルトでも仕込むことで有名です。これは、近年のスモーキーモルトのブームに乗っかった訳ではなく、シーバス社時代にシーバスリーガル用のスモーキー原酒が必要であったことから、定期的に仕込まれるようになったようです。
現在は年に4週間だけフェノール値55ppmの麦芽を使用した原酒が造られています。
年間生産量は280万ℓ。初留、再留2基ずつ。
日本ではあまりメジャーではありませんが、ブレンデッドウイスキー「サムシング・スペシャル」や「クイーンアン」などの原酒となっています。
オフィシャルシングルモルトは「ベンリアック ザ オリジナル テン」が現在のスタンダードボトル。その他ザ スモーキー テンやキュリオシタスなど、同じ10年表記でもテイストの違うボトルをリリースしています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ベンリネス Benrinnes
ベンリネス Benrinnes
地域:スペイサイド
創業年:1826
MHD
ベンリネスはベンリデス⁉ほとんどブレンド用
ベンリネスのはスペイサイドで最も高い山、ベンリネス山の麓にある蒸留所。創業は1826年。ウイスキー不況の影響を受けオーナーは次々とかわっていき、1925年からディアジオの傘下となります。
ベンリネスは1966年から2009年まで仕込みの一部に3回蒸留を採用していました。数多くあるスペイサイドの蒸留所のなかでもごく一部とはいえ、3回蒸留をしていたのは珍しいといえます。当時からディアジオ社所有の蒸留所はたくさんありましたから、その中からベンリネスが選ばれ実験的に行われていたのかもしれません。現在は一般的な2蒸留となっています。
年間生産量は350万ℓ。初留2基、再留4基。原酒のほとんどがブレンデッドウイスキー「J&B」や「ジョニーウォーカー」に使用されており、シングルモルト用はわずか1%。
オフィシャルボトルはUD社の花と動物15年だけで、ボトラーズ商品も多くはありません。知る人ぞ知る、ディアジオの異端児…
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ベンローマック Benromach
ベンローマック Benromach
地域:スペイサイド
創業年:1898
ゴードン&マクファイル社
G&M社の蒸留所 少しスモーキーなスペイサイドモルト
創業以来、次々とオーナーが変わり操業と休止が繰り返されてきました。ベンローマック(ベンロマック)は長い間安定したオーナー企業に恵まれていませんでしたが、1993年に老舗のボトラーズ会社、ゴードン&マクファイル社によって買収され、その後現在に至るまで安定した生産が行われています。
蒸留所は93年から改装を始め、5年後の1998年に完成・再稼働。創業が1898年ということですから、実に100年が経過してようやくウイスキーがしっかりつくれる環境になったということになります。
年間生産量は70万ℓと小規模。スチルも初留、再留1機ずつ。ウイスキーは古き良きスペイサイドモルトのスタイルで、フェノール値8~12ppmのライトピーテッド麦芽を使用しています。
12ppmと聞くとピートは決して強くならないイメージですが、実際にベンローマックを飲んでみるともっとしっかりとピートが効いているような印象。スペイサイドの華やかなフレーバーとスモーキーさがトップノートに表れています。
シングルモルトは2009年より10年物がリリース。シェリー樽とバーボン樽で熟成した原酒をブレンド後、オロロソ・シェリー樽でフィニッシュして仕上げています。
また、バッチの一部を次のバッチへ混ぜる「ソレラ方式」を採用しているのも珍しい所。親会社がボトラーズなだけあり、個性を大切にした仕込みと樽熟成が施されているベンローマック。長期熟成ができる数年後も愉しみですね。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ボウモア Bowmore
ボウモア Bowmore
地域:アイラ島
創業年:1779
ビームサントリー社
ブラックボウモアがすごい!アイラの女王
創業は1779年。アイラ島で最も歴史が長く、スコッチ全体で見ても南ハイランドにあるグレンタレットに次ぐ2番目に古い蒸留所。
現在でも伝統的な製麦、フロアモルティングを続けており3割程を自家製麦でまかなっています。使用しているピートは、島の中央部の高台に位置する独自のピートボグから採取したもの。ポートエレン製のものとは異なる風味をもっており、ヨードを含む力強いピートスモークではなく、やわらかくてクセの少ないおだやかな風味をもたらしています。麦芽のフェノール値は25から30ppm。バランスのとれたピーティーさこそ、ボウモアの個性ではないでしょうか。
ボウモアの伝説となっている「ブラックボウモア」について、せっかくなので触れておきたいと思います。
ブラックボウモアは1990年代にリリースされたオロロソシェリー樽の長期熟成。1964年蒸留の29年物。1st リリースは2000本の限定発売でした。
その素晴らしいポテンシャルから、ウイスキー史に名を残す名作として、世界中のファンのなかで語り継がれています。その後、「セカンド」「サード」と何度か別ロットで再販されたブラックボウモアでしたが、1995年に発売されたロットでついに「ファイナルエディション」となりました。
「これで終わりか…」と多くのファンがシリーズの終了を惜しみましたが、なんとその後25年の沈黙を破ってまさかの復活。2020年に「ブラックボウモアDB5(31年熟成)」という名で発売されます。
原酒はファイナルエディションの時に余っていたものがそのまま使用されているので、基本的には同じ物。アルコール度数に違いがありますが、これはアルコール分を測る計器が古くて95年当時は正確にはかることができなかった、ということだそうです。
DB5の販売価格は約700万円。販売本数は僅か27本。イギリスの高級車「アストンマーチン」とのコラボボトルとしてリリースされたため、超プレミア価格となっています。
この値段なら、95年のファイナルエディションを探して買ったほうが安いかも(笑)
ボウモアの年間生産量は200万ℓ。初留、再留2基ずつ。
かつてはブレンデッドウイスキー「ロブロイ」などにブレンドされていましたが、現在は原酒の全てがシングルモルト用となっています。アイラモルトの中では売上3位。(1位ラフロイグ、2位ラガブーリン)あえて言う必要もありませんが、ボウモアの評価は高く、売り上げは伸び続けています。
原酒が枯渇してきた影響か…2022年には18年と25年の休売が発表されました。無理に販売せず、オフィシャルボトルのクオリティと流通量の維持してほしいですね。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ボーダーズ Borders
ボーダーズ Borders
地域:ローランド
創業年:2017
ザ・スリースチルズ社
ツイード織の町に誕生 国境地帯にある蒸留所
ボーダーズとはスコットランドとイングランドの国境地帯のこと。蒸留所はボーダーズにあるホーイック町に建てられました。
この地域でウイスキーの生産が行われるのは実に180年ぶり。「ツイード織」が伝統産業ということもあり、蒸留所の建物はツイード繊維工場に電気を供給していた発電所を改造する形でつくられています。
生産能力は160万ℓと中規模。クラフト蒸留所と言われることもあるそうですが、これだけウイスキーを造っていればもはやクラフトではありませんね。
ポットスチルはフォーサイス製で、初留、再留2基ずつ。将来的にはグレーンウイスキーもつくる計画で、シングルブレンデッドウイスキーがリリースが期待されます。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ポートエレン Port Ellen
ポートエレン Port Ellen
地域:アイラ島
創業年:1825(現在生産準備中)
MHD
幻のウイスキーが「新ポートエレン」として復活
1983年に閉鎖された幻の蒸留所ポートエレン。再オープンが発表されたのは2017年のことです。ディアジオ社はブローラとポートエレンの復活を発表しました。
しかし、ポートエレンの場合はあくまでも「新ポートエレン」としての再スタート。同じディアジオの復活蒸留所でも、ブローラは古い建物をそのまま使用し、設備の一部もかつてのものを利用する形で生産しているので、「復活」という言い方はギリギリ通用するとは思いますが、ポートエレンの場合は少し違います。
ポートエレンの場合、現在は閉鎖当時の建物も設備も完全にない状態。復活というよりは、0から新たに蒸留所を造ることになります。これからは旧ポートエレンと新ポートエレンというように、名前は同じでも「別の蒸留所」として認識されることでしょう。
建設地はかつて旧ポートエレンのあった場所と同じ。跡地の一部はポートエレン精麦所となっていますが、空いている土地があるため広さに問題はありません。新ポートエレンに導入される予定のポットスチルは初留、再留1基ずつ。そして、これとは別に実験用の小型スチルも2基用意されるようです。
旧ポートエレンのような人気がでるかどうか…伝説にあやかった新たな蒸留所の誕生に、少しワクワクしますね。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ホーリルード Holyrood
ホーリルード Holyrood
地域:ローランド
創業年:2019
ホーリルード・ディスティラリー社
長いヘッドのポトスチル 仕込み水は水道水
マッカラン蒸留所の元マスターブレンダー、デイヴィット・ロバートソン氏とカナダ人夫婦が創業。デイヴィット氏はウイスキー投資会社をやっていたことから、ホーリルードは60人程の投資家の出資によってつくられています。
年間生産量は25万ℓ。初留、再留1基ずつ。
ポットスチルは非常に背丈の高い形状。スコットランドで最も高い、キリンと競わせようという計画が浮上したこともあるグレンモーレンジィよりも高くなっています。グレンモーレンジィは5.14m。ホーリルードはそれをはるかに超える7m。仮にキリンを連れてきても、もはや比較材料になりません(笑)
また、仕込み水がエジンバラの水道水というのも個性的。湧き水などの天然の水源を使うことの多いシングルモルト蒸留所の中では珍しいと言えます。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!マクダフ Macduff
マクダフ Macduff
地域:ハイランド
創業年:1960
バカルディ社
ウィリアム・ローソンの原酒 オフィシャルボトルは「デヴロン」
マクダフは同じバカルディグループがつくるブレンデッドウイスキー「ウィリアム・ローソン」のキーモルトとして重要な役割を果たしている蒸留所です。
ウィリアム・ローソンは日本での人気はあまりありませんが、世界のウイスキー売上ランキング30位以内に入るメジャー銘柄。2019年度は「デュワーズ」をおさえて24位。出荷数は330万ケースとなっており、バカルディグループの中でも代表的な人気ウイスキーとなっています。
創業は1960年と比較的新しい蒸留所。1972年にイタリアのマルティニ&ロッシ社がオーナーとなり、ウィリアム・ローソンの原酒を確保するための拠点とします。
1993年にはバカルディがマルティニ社を買収し傘下になりますが、マクダフのウィリアム・ローソンへの原酒供給が変更されることはありませんでした。マクダフはシングルモルトとしては人気が出ず、それに反してウィリアム・ローソンの売上が好調だったことから、キーモルトの役割として重宝されたようです。
年間生産量は340万ℓ。初留2基、再留3基。シングルモルトは「ザ・デヴロン(ザ・デヴェロン)」という名前でリリース。デヴロンは蒸留所の横を流れる川の名前で、仕込み水はデヴロン川の支流から採取しています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!マッカラン Macallan
マッカラン Macallan
地域:スペイサイド
創業年:1824
エドリントングループ社
シェリー樽にこだわるシングルモルトのロールスロイス
マッカランは実名ともにスコッチのトップを走り続ける蒸留所。百貨店ハロッズの『ウイスキー読本』でシングルモルトのロールスロイスと評されており、シングルモルトはもちろん、ブレンデッド用の原酒としてもブレンダーの間で好評だったことから「最高のトップドレッシング」と言われるほどでした。
マッカランのこだわりと言えば、やはりシェリー樽。かつてはスパニッシュオークのオロロソシェリー樽のみを使用していましたが、現在はアメリカンホワイトオークのシェリー樽も使っています。
シェリー樽の原木は自社調達。スペイン北部のガルシア地方で原木を選定し、1年間天日乾燥します。その後、シェリー酒の産地であるスペイン南部のへレス地方に運び、さらに1年天日乾燥。2年間の乾燥を終えた原木を、専属のクーパレッジへ運んで製樽。ようやく樽になった所で、今度はオロロソシェリーのシーズニングが始まります。
シーズニングは2~3年間で、それが終わってようやくスペイサイドへ運び、ニューポットが詰められて熟成に入ります。ここまでの工程が全てが「マッカラン仕様」となっている点が他の蒸留所にはない強いこだわり。コストを惜しまず良い樽を作ることで、マッカランはスコッチのトップを走る存在であり続けることができたと言えます。
年間生産量は1500万ℓ。スペイサイド有数の巨大な蒸留所です。
マッカランは2018年から新しい蒸留所となっており、旧蒸留所の1100万ℓから生産量が上がっています。ポットスチルは初留12基、再留24基。
サイズはスペイサイドで最小となっており、初留1基に対して再留が2基の「1:2」の蒸留システム。マッカランの伝統として長く受け継がれています。シングルモルトとしてはグレンフィディック、グレンリベットに次ぐ世界3位の売上(日本では20年間くらいスコッチで1位)。
ブレンデッドウイスキー用の原酒としては「カティサーク」や「フェイマスグラウス」などで使われています。
近年ではその人気に更に火がつき、これまでの定番「12年シェリーオーク」や「18年シェリーオーク」は供給不足。2022年に値上がりが発表されてからも、じわじわと相場が高くなっています。この2つに代わる商品として「ダブルカスク」「トリプルカスク」などの別シリーズも発売されていますが、やはり人気のあるのはシェリーオーク。
マッカラン伝統のオロロソシェリー樽熟成は、モルトファンには馴染みがありますし、現在でも高いクオリティを維持しているのは言うまでもありません。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!マノックモア Mannochmore
マノックモア Mannochmore
地域:スペイサイド
創業年:1971
MHD
生産量600万ℓの割にマイナー⁉グレンロッシーの第二蒸留所
マノックモアはグレンロッシーの敷地内に第二蒸留所として建てられました。グレンロッシーと同様、ブレンデッドウイスキーの「ヘイグ」「ディンプル」のキーモルトとなる存在です。
蒸留所名のマノックモアとはゲール語で「大きな丘」という意味。蒸留所の南にあるマノックヒルから名付けられ、仕込み水にはマノックヒルを水源とするバードン川の水が使用されています。
操業は1971年ですが、1985年に一時的に閉鎖。ウイスキー不況による需要低下の影響でした。1989年からは生産が再開され、2007年以降はグレンロッシーと半年交代で生産するスタイルを廃止し、両蒸留所ともフル生産となっています。
年間生産量は600万ℓ。初留、再留4基ずつ。オフィシャルボトルは花と動物のマノックモア12年のみ。
生産量が多い割にはマノックモアがマイナーなのは、シングルモルト用ではなくブレンド原酒用につくられた蒸留所であったからでしょうか。ボトラーズにも原酒が流れているので、そちらではオフィシャルとはまた違う、シングルモルトとして個性的なマノックモアにも出会うことができます。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ミルトンダフ Miltonduff
ミルトンダフ Miltonduff
地域:スペイサイド
創業年:1824年
ペルノリカール社
バランタイン用の代表的なキーモルト
マレイ州エルギンの穀倉地帯は、古くからスコットランド有数の大麦産地として有名。密造酒時代からウイスキー造りが盛んだった土地にミルトンダフはあります。近くにはグレンバーギ蒸留所があり、二つは姉妹蒸留所として生産を続けてきました。
ミルトンダフといえば、バランタインのキーモルトとして名が知られています。バラン17年のキーモルトである“魔法の7柱”(アードベッグ、グレンカダム、グレンバーギー、スキャパ、バルブレア、プルトニー、ミルトンダフ)の一つで、さらにその中でも味の決め手となる重要な3つの内の一つ。2017年からは「バランタイン シングルモルト ミルトンダフ 15年」としてリリースされています。
年間生産量は580万ℓ。初留、再留3基ずつ。
ほとんどがバランタインの原酒用となっており、バランタイン原酒シリーズ以外のオフィシャルはありません。決してシングルモルトとしての評価が悪かった訳ではなく、華やかでしっかりとボディのある個性はむしろシングルモルト向けと言えます。
ボトラーズからのリリースも多くあるので、いろいろ飲み比べるのも面白いですね。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!モートラック Mortlach
モートラック Mortlach
地域:スペイサイド
創業年:1823
MHD
ダフタウンの異端児
スペイサイド・ダフタウンにある蒸留所。
1823年の創業以来、いく度となくオーナーが代わっていきましたが、現在のモートラックの基礎を築き上げたのは1853年にオーナーとなったジョージ・コーウィー。モートラックの「職人でも理解するのに半年かかる」と言われる蒸留システムも、コーウィーが生み出したものです。
モートラックでは原酒を3種類に造り分けています。
まずは通常の2回蒸留。もう一つは初留液のアルコール分の高い部分(蒸留開始直後の部分)を再留したもの。そして3つ目はアルコール分の低い蒸留液を集めて3回蒸留したもの。複雑な原酒造りのシステムから、モートラックは2回蒸留でも3回蒸留でもなく「2.81回蒸留」と言われています。
他の蒸留所ではまずありえない、この独特すぎる蒸留システムによって、モートラックは男性的で厚みのあるウイスキーを造ることができています。その個性はディアジオ社内でも「野獣」「異端児」と評されているとか…
年間生産量は380万ℓ。初留、再留3基ずつ。ジョニーウォーカーの原酒となっている他、シングルモルトとしては2014年からオフィシャルボトルがリリース。12年、16年、20年が定番ラインナップ。四角形のボトルが良く目立ちますね。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ラガヴーリン Lagavulin
ラガヴーリン Lagavulin
地域:アイラ島
創業年:1816
MHD
ホワイトホースのキーモルト ラフロイグに次ぐ売上
アイラ島の南に位置するラガヴーリンはスモーキーでバランスののとれた味わい。スタンダードの年数は16年。熟成が長いだけあってリッチなテイストです。
ヘビースモーキーモルトの仲間であるラフロイグやアードベックともまた異なる、ラガヴーリンならではの個性がファンをコアなモルトを魅了しています。
創業は1816年。ラガヴーリンが発展したのはジェームズ・ローガン・マッキーがオーナーとなってからで、ジェームズはホワイトホースを生み出したピーター・マッキーの親戚。ジェームズの死後1889年に蒸留所を相続し、ラガヴーリンをキーモルトとしたブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」を発売します。
その後ホワイトホース社は現在のディアジオ系列に買収されることになりますが、ラガヴーリンをキーモルトとしたホワイトホースは現在でも継続されています。
年間生産量は250万ℓ。初留、再留2基ずつ。1974年以降、麦芽は全てポートエレン製。カリラと同じフェノール値34~38ppmのモルトを使用しています。
カリラよりもラガヴーリンの方がスモーキーに感じるのは、ポットスチルの形状の違いや、ミドルカット(2回目の蒸留の際に熟成用にまわす蒸留液の部分、「ハート」とも呼ぶ)のタイミングなどの製造方法の細かな違いによるもの。
シングルモルトとしての人気は高く、アイラモルトの中ではラフロイグに次ぐ売上となっています。その人気にこたえるべく、ラインナップは16年の他に12年、8年が追加されています。16年は年々、少しずつ値上げされていますが、スキャパ16年のような突然の終売だけは勘弁してほしいと思っています。
スコッチウイスキー蒸留所128カ所解説!ラフロイグ Laphroaig
ラフロイグ Laphroaig
地域:アイラ島
創業年:1815
ビームサントリー社
アイラ売上No.1 ワラントを授かる唯一の蒸留所
「ラフロイグ」という発音は、英語を勉強している人は逆に発音が困難だと言われています。ゲール語はもともと文字を持っていないゲール民族の言語ですから、ゲール語は英語で「当て字」にしたものとなっています。やや無理やり当て字にした結果??発音しにくかったり、読みずらい文字になってしまったようです。「ラフロイ」って言う人もいるよね(笑)
ラフロイグはゲール語で「広い入り江にある美しい窪地」という意味。実際に蒸留所は美しい入り江に面した場所に建てられています。真っ白く塗られた建物は、小さな入り江に映える美しさ。「ラフロイグ」と名付けられたのは必然だったと言えます。
年間生産量は330万ℓ。初留3基、再留4基。
今でもフロアモルティングを行っている数少ない蒸留所の一つで、自家製麦の比率は15%程度。残りはポートエレン製のフェノール値35~40ppmの麦芽を使用しています。ポートエレン製よりも自家製麦のほうがフェノール値が高いため、仕込みの時に混合しています。
ブレンデッドされている銘柄は、ロングジョンやアイラミスト。原酒の7割はシングルモルト用。ラインアップは豊富ですが、代表的な商品はやはりラフロイグ10年でしょう。
10年は他の製品とは違い、ファーストフィルのバーボン樽の原酒しか使用しないというこだわりがあります。10年の高いクオリティが維持されていることで、ラフロイグは不動の人気を誇るアイラモルトとなり、現在ではアイラ島のシングルモルトの売上はダントツ1位。さらにチャールズ皇太子のお気に入りとなっていることから、ワラント(王室御用達)を授かる唯一のシングルモルトとなっています。
名実ともアイラを代表するウイスキー。それがラフロイグ。
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