
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事ではスペイサイドのシングルモルトウイスキー「クラガンモア12年」のテイスティングレビューと、ボトル評価、クラガンモア蒸溜所についても解説致します。
「クラガンモア12年」の味わいを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
クラガンモア蒸溜所とは?

出典:By Andrew Wood, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=13777283
クラガンモア蒸溜所 Cragganmore Distillery
- 地域:スペイサイド
- 創業年:1869年
- オーナー:ディアジオ
- 蒸留器:初留x2基、再留x2基
- 仕込み水:クラガン・バーン
- 年間生産量:300万ℓリットル
歴史と設立
クラガンモア蒸溜所(Cragganmore Distillery)は、スコットランド・スペイサイド地方のバリンダロック村に位置する、歴史と伝統に彩られた蒸溜所です。1869年にジョン・スミス(John Smith)によって設立。
現在はディアジオ社の傘下にあり、オールド・パーやジョニーウォーカーといったブレンデッドウイスキーの主要原酒として使用されるため、シングルモルトとしてのリリースは非常に限られています。
創業者のジョン・スミスは、グレンリべット、マッカラン、グレンファークラスなどの名門蒸溜所での経験を持つ熟練のウイスキー職人でした。ストラス・スペイ鉄道(Strathspey Railway)沿線という地理的利点を活かし、蒸溜所を設立。当時はこの鉄道によって、多くの製品が輸送されていました。
スミスの死後、家族が経営を引き継ぎ、1901年には著名な蒸溜所建築家「チャールズ・ドイグ(Charles Doig)」による改修が行われました。1923年には、ホワイトホース・ディスティラーズ社とバリンダロック・エステートによる共同会社が蒸溜所を買収し、その後、ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド(DCL)を経て、最終的にディアジオ社の傘下となりました。
特徴と製造工程
原料
クラガンモアでは、蒸溜所隣を流れるミネラル豊富な「クラガンバーン」の軟水を使用しています。麦芽は軽くピートを効かせたものを採用し、かつて蒸溜所内で行っていたモルティングは20世紀後半に廃止され、現在はディアジオ社のモルティング施設から供給されているモルトで仕込みをしています。
粉砕と糖化
麦芽はまず粉砕され、「グリスト」と呼ばれる状態になります。クラガンモアでは2段式ローラーミルで粉砕を行い、その後、容量7トンのマッシュタンで糖化を実施。糖化では温水を段階的に加え、麦汁を抽出します。特徴的なのは、最後に残った麦汁を次の糖化工程に再利用する点で、効率的かつ風味の均一化に寄与しています。
発酵
糖化で得られた麦汁は、容量3万リットルの木製ウォッシュバック6基で発酵。蒸溜所特有の酵母と乳酸菌が働くことで、独自の香味が形成されます。発酵時間は最低でも50時間。長い発酵時間を確保することで、スペイサイドの中でも屈指の複雑さを生み出しています。
発酵後の液体はアルコール度数約8%の「ウォッシュ」となります。
蒸溜
ウォッシュを4基のポットスチルで蒸留。初留釜(8,725リットル)2基と、再溜釜(6,600リットル)2基。
クラガンモアのポットスチルは上部が平らにカットされ、T字型のラインアームを持つ独特の形状が特徴的です。この設計により、蒸気と銅の接触面が増え、複雑で繊細なフレーバーが生まれます。また、冷却には伝統的なワームタブ方式が用いられています。
熟成
蒸溜したニューポットは、バーボン樽・シェリー樽・ポート樽に詰められ、1925年建造の3つのダンネージ式倉庫で熟成されます。倉庫を分散して使用することで、香味の複雑さを高めるとともに、災害時のリスク分散のためにもなります。
主な製品と評価
クラガンモアの主力製品は、12年熟成の「クラガンモア 12年」。ディアジオ社の「クラシック・モルツ・シリーズ」の一環として1988年に選ばれました。
その他、数量限定リリースの「クラガンモア ダブルマチュアード」も人気があります。
クラガンモア12年
フラッグシップボトル。クラガンモア蒸溜所の全てが詰まった1本。
クラガンモア ダブルマチュアード
クラガンモア ダブルマチュアードは、UDV社クラシック・モルト6蒸留所のマスターディスティラー監修で作られたシリーズの一つで、ルビーポート樽で仕上げたことで、通常の12年より華やかで甘い香りが特徴です。
【スコッチウイスキーレビュー】クラガンモア12年を評価
クラガンモア12年 CRAGGANMORE 12-year-old
- 40% 700ml
- 正規販売ボトル
- 抜栓時期:2025年7月
- テイスティング時期:2025年9月
- whiskybaseでの評価:81.93/100
- 楽天市場価格[2025年9月]:4,708円 送料別
- Amazon価格[2025年9月]:4,713円 送料無料
香り
洋梨、青りんご、茹でたてのトウモロコシ、タルトタタン、マスカットグミ、ラズベリー、カシスリキュール、ユリの花、べっ甲飴、カルダモン、シナモンロール、レモングラス。バリエーション豊富なアロマ。華やかでスイート。非常に心地よいアロマ。
加水後はバニラ、ドライフルーツ、シトラス、ハチミツのアロマが引き立ちます。
味わい
甘くて華やか。白ブドウジュース、キャラメル、マドレーヌ。徐々にドライ。ミディアムライトボディ。中盤以降もフレッシュさとエステリーな風味が強く、気品あふれる味わい。フィニッシュにかけてはドライでスムース。余韻はやや短め。さっぱりとしており、後を引かない個性。
加水後も優しい甘さがあって、スッキリとしています。どちらかと言えば繊細さを感じるウイスキーですが、不思議とバランスは崩れません。
評価
「クラガンモア12年」の評価としては、「スペイサイドのフレグランス!高級ウイスキーにも劣らないアロマティックな香りが凄い」です。
そもそも、このウイスキーが美味しいことは分かっていたので、改めて評価するとなると少し緊張します。厳しめに採点してしまうのではないか、あるいは逆に「身内びいき」のように甘い評価をしてしまうのではないかと…、自分の中で心配もありました。
けれども、グラスを前にすると自然と真剣になり、結果的にポジティブな部分もネガティブな部分も冷静に見つめ直すことができました。
最初に感じるのは、やはり「やっぱり美味しい」という安心感です(笑)。
その美味しさを形作っている最大の要素は、何といっても香り。クラガンモア12年のアロマは、スペイサイドモルトの中でも特に華やかで複雑です。洋梨や青りんごを思わせる瑞々しいフルーツ、花束や石鹸のようなフローラルさ、さらには柑橘やドライフルーツ、ハチミツの甘みが折り重なります。そこにほんの少しのスパイスが加わることで、ただ甘いだけでなく、奥行きとエレガンスを持つ香りへと仕上がっているのです。
以前は「クラガンモア12年」を「ややピーティーなモルト」と感じていましたが、今回改めて飲んでみると、そのスモーキーさは控えめで、むしろ全体の中に上品に溶け込んでいる印象でした。スモーク感というよりも、ほんの少し野性味を帯びたニュアンスが顔を覗かせる程度で、全体の複雑さをさらに引き立てています。
香りのリッチさに比べて、口に含むと意外に軽やかでスムース。甘さを感じながらも、飲み進めるうちにドライで引き締まった表情を見せ、最後は心地よい余韻で締めくくってくれます。スペイサイドモルトの典型とも言える「バランスの美しさ」がここにあります。
ネガティブな点をあえて探すとすれば、香りの豊かさに比べて味わいの厚みがやや物足りなく感じられるところでしょう。
ライトボディでスムースなため、後半には少し飲みごたえに欠ける印象を与えるかもしれません。しかし、これは重箱の隅をつつくような評価に過ぎません。むしろ、その軽やかさこそがクラガンモアの個性であり、飲み疲れしない魅力とも言えます。
「クラガンモア12年」は、5000円前後という価格帯を考えると、このウイスキーの完成度は驚くほど高いと言えるでしょう。香り、味わい、余韻のバランスは同価格帯のシングルモルトの中でもトップクラス。特に「香りの表現力」に関しては、1万円以上の銘柄に匹敵、あるいはそれ以上と感じられるほどで、まさに「フレグランス・モルト」と呼びたくなるほど。
おすすめの飲み方は、まずはストレートで香りと味わいをじっくりと堪能してください。その後、ロックや水割り、さらにはハイボールでも試してみるのも良いでしょう。クラガンモアの懐の深さが実感できます。
特にハイボールは、加水によって味がぼやけることなく、フルーティーさとモルティーな個性を心地よく楽しむことができます。
「クラガンモア12年」は、スペイサイドモルトの優等生と言える存在。飲み進めるほどに「出来の良い子」をさらに期待してしまうような感覚すらありほど。華やかな香りとエレガントな味わいは、決して派手ではないものの、静かに心を掴む力を持っています。
「クラガンモア12年」は低価格ながら、高級ウイスキーにも引けを取らない香りとバランスを持つ、非常に完成度の高いスペイサイドモルトです。初めて飲む時はぜひストレートで。洗練されたアロマバランスを体験してみてください。
シングルモルトスコッチウイスキー「クラガンモア12年」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
高級ジャパニーズウイスキーを定価で買うなら…
東急クレジットカード会員限定のウイスキー抽選販売がおすすめ!
- 山崎、白州、響などの希少なジャパニーズウイスキー抽選販売の参加が可能。
- 東急グループの他、提携先が豊富なのでポイントを貯めやすい。
- PASMOのオートチャージができる(一体型カードと通常カードの両方で利用可能)
- 年会費は初年度無料。次年度以降は1,100円。
コメント