
こんばんは。ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキーライター。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定 ソムリエ。2022年1月20日 東京・銀座にBAR WHITE OAK(バーホワイトオーク)をオープン。
みなさん「グレーンウイスキー」についてご存じでしょうか?
「なにそれ?」
「どこの国のウイスキー?」
グレーンウイスキーは一般的にはあまり馴染みのないウイスキーの種類だと思います。そしてその存在を知っている人も、主役にはなれない、ちょっとかわいそうなウイスキーだと思っている人も多いはず。
でも、その印象が今日変わります!
じつは、グレーンウイスキーは、ウイスキー業界ではなくてはならない重要なウイスキーの種類なのです!!その理由と、そもそもグレーンウイスキーとは一体なんなのか、この記事では詳しく解説したいと思います。これを読めば、グレーンウイスキーのことはもちろん、モルトウイスキーやブレンデッドウイスキーのことも理解を深めることができると思います。
ウイスキーの種類について「グレーンウイスキー」とは?
グレーンウイスキーとは
大麦麦芽100%でつくるモルトウイスキーに対して、他の穀物も使って作るウイスキーのことが「グレーンウイスキー」です。
他の穀物とは、小麦、ライ麦、カラス麦、とうもろこし、未発芽の大麦(バーレイ)などがあります。グレーンウイスキーでは大麦麦芽(モルト)も少し入るのですがメインの原料は、上記のような穀物になります。
グレーンウイスキーの製造について
スコットランドで作られているグレーンウイスキーの原材料は、小麦かとうもろこしです。(スコットランドでは小麦の場合が多いです)
糖化酵素として大麦麦芽(モルト)を1割~2割程度の割合いれて、8~9割ほどは、主原料として穀物(グレーン)が入ります。
ちなみに、「とうもろこしを使ったバーボンウイスキーはグレーンウイスキーなのか?」という疑問が生まれるかもしれませんが、それは違います。広い意味でいうと、近い物同士のウイスキーではあります。しかし、作り方やウイスキーのルールがかなり違うため、バーボンウイスキーとグレーンウイスキーは違う種類ということになります。
基本的にはモルトウイスキーに対して、「グレーン」のウイスキーがある。そんなイメージです。なので、モルトウイスキーを作っている国で、グレーンウイスキーが作られています。5大ウイスキーでいう、スコットランド、アイルランド、日本ですね。
大麦麦芽以外の穀物をメインに使って作る。それが「グレーンウイスキー」です。
ウイスキーの種類について「グレーンウイスキー」とは? グレーンウイスキーとモルトウイスキーの違いとは?
異なる原料や製造方法によって、タイプの違うウイスキーになります。
モルトウイスキーは個性的な風味で、
グレーンウイスキーは控えめな風味です。
それでは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの違いを見ていきましょう。その違いは原料だけではありません。違いを比べることで、それぞれのウイスキーの個性やその役割も見えてきます。
モルト・グレーンの比較 | ||
比較対象 | モルトウイスキー | グレーンウイスキー |
別名 | ラウド(声高な)スピリッツ | サイレント(静かな)スピリッツ |
原料 | 大麦麦芽(モルト) | 穀物(グレーン) |
蒸留器 | 単式蒸留器 | 連続式蒸留器 |
生産 | 少量生産 | 大量生産 |
熟成樽 | 新樽、または2~3回目の古い樽 | 4回目以降の古い樽 |
最低熟成期間(スコッチの場合) | 3年 | 3年 |
蒸留所の数(スコッチの場合) | 110以上 | 5か所程度 |
ウイスキーの個性 | 強い | 弱い |
上記のように、違いはいろいろとあるのですが、その中でも重要な4つのポイントをご説明します。
- 原料
- 蒸留器
- 熟成樽
- ウイスキーの個性
原料
モルトはピート(泥炭)を使うことで個性的な原酒となります。また、モルト原酒のほうが、蒸留後のスピリッツは華やかなフレーバーが強くなります。
グレーンはピートを炊きません。フレーバーも単調で控えめな印象です。
蒸留器
モルトは単式蒸留器です。蒸留器のサイズが小さい為、蒸留液が個性的になります。
逆に、グレーンを作る連続式蒸留器はかなり大きいです。生産能力が高く、コストが安い。そして、ウイスキーの個性はおだやかで、癖のない味わいになります。
熟成樽
モルトは比較的新しい樽。ウイスキーに樽からの風味をしっかり付けます。グレーンは古い樽。モルト熟成で使った古い樽を、今度はグレーン熟成用に使います。
樽は熟成の役割を終えると、最終的に解体されます。家具、インテリア、高級ウイスキー用の木箱などにリメイクされます。熟成には使えなくなっても、樽は廃材されずまだまだ使えるみたいです。
すごいね。たる!
ウイスキーの個性
異なる原料や製造方法によって、それぞれ個性の違うウイスキーになります。この個性の違いが、ブレンデッドウイスキーになったときの調和をもたらすのです。
モルトウイスキーは個性的な風味で、
グレーンウイスキーは控えめな風味になっていきます。
ウイスキーの種類について「グレーンウイスキー」とは? グレーンウイスキーの役割とは?
生産されたグレーンウイスキーのほとんどが、ブレンデッドウイスキーの原酒として使われます。つまり、グレーンウイスキーはブレンデッドウイスキーをつくる為に作られているのです。
ここ最近、「シングルグレーンウイスキー」が販売されることが多くなりましたが、全体でみるとごくわずかな量です。もともと、グレーンウイスキーは単体では飲まないウイスキーでした。
グレーンウイスキーの役割は、モルトウイスキーの個性を引きだし、バランスの取れたおいしいブレンデッドウイスキーの下地になることです。
ウイスキーの「ブレンド」は奥が深いです。グレーンの役割を簡単に語れない部分があるのですが、ブレンドされた、各種モルトウイスキーを繋いでいくことができるのです。
主役は「モルトウイスキー」だけど、脚本・演出は「グレーンウイスキー」といった感じでしょうか。味の基本ベースとなる、モルトウイスキー。それを裏方で静かに支えている、それが「縁の下の力持ち」グレーンウイスキーなのです。
この役割は、モルトウイスキーにはできないのです。個性のおだやかな、グレーンウイスキーだからこそできる役割ですね。
グレーンウイスキーは存在感の薄いだけではありませんでした。モルトウイスキー同士を繋いでいき、バランスの取れた味わいのウイスキーに整えてくれる、重要な役割を果たしているのです。
まとめ
・ウイスキーの種類について「グレーンウイスキー」とは?
→大麦麦芽100%でつくるモルトウイスキーに対して、他の穀物(グレーン)を使って作るウイスキーのこと。
・ウイスキーの種類について グレーンウイスキーとモルトウイスキーの違いとは?
→異なる原料や製造方法によってタイプが変わる。モルトウイスキーは個性的で、グレーンウイスキーは控えめ。
・ウイスキーの種類について グレーンウイスキーの役割とは?
→モルトウイスキーの個性を引きだし、バランスの取れたおいしいブレンデッドウイスキーの下地になること
冒頭で、グレーンウイスキーが重要だということをお話ししましたが、その理由を理解していただけたでしょうか?
ウイスキーの消費量の9割が、ブレンデッドウイスキーです。つまり、ほとんどのウイスキーにグレーンが入っていて、今日も明日も、グレーンウイスキーが世界中で飲まれていることになります。
ブレンデッドウイスキー混ざることで、その存在感が表に出てこないグレーンウイスキーですが、ひょっとしたら、モルトウイスキーより大切な存在なのかもしれませんね。

あなたの人生がウイスキーによって幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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