

こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、2025年に世界で売れていたスコッチウイスキーブランドを、TOP10形式でランキング解説致します。
2025年はスコッチ業界にとって厳しい1年でした。米国関税問題、英国国内の事業コスト増加、そして世界的なウイスキー需要の減退が重なり、複数の蒸留所で人員削減が実施されるほどの逆風が続きました。それでも、TOP10ブランドのうち3ブランドは前年比で成長を記録しており、業界全体が沈む中でも力強さを見せたブランドが存在します。
なお、このランキングは英国の酒類・飲料業界誌「ザ・スピリッツ・ビジネス(The Spirits Business)」が2026年6月に発表した年次調査「The Brand Champions 2026」のデータを基に作成しています。
ランキングデータについて

この記事のランキングは、2025年におけるスコッチウイスキーブランド別の販売数量をもとに作成しています。データは、英国の酒類・飲料業界誌『The Spirits Business』が毎年発表している年次調査「The Brand Champions 2026」を参照しました。
ランキングの基準となるのは販売金額ではなく販売数量(900万リットルケース単位)です。そのため、本記事はウイスキーの品質や人気、ブランド価値を順位付けしたものではありません。世界で実際にどれだけ飲まれているのかを示すランキングとしてご覧ください。
2025年のスコッチ業界は厳しい一年に
2025年のスコッチウイスキー業界は、決して楽観できる状況ではありませんでした。
スコッチウイスキー協会(SWA)の公式統計によると、2025年の世界全体の輸出額は前年比0.6%減(53.6億ポンド)、輸出量は4.3%減(70cl換算で約13.4億本)となりました。
輸出先は世界163カ国・地域に及びますが、「1秒あたり43本」が輸出された計算となり、前年の44本からわずかに減少しています。世界的に見ても、市場全体が調整局面に入っていることがうかがえます。
トランプショック⁉米国市場では追加関税が大きな打撃に

特に影響が大きかったのが、世界最大の輸出市場であるアメリカです。2025年4月に10%の追加関税が導入された影響で、通年では、
- 輸出額:前年比4%減(9.33億ポンド)
- 輸出量:前年比9.2%減(約1.2億本)
という結果になりました。
さらに、関税導入後の2025年5月~12月に限定すると、
- 輸出量:15%減
- 輸出額:7%減
まで落ち込み、追加関税がスコッチ業界全体へ与えた影響の大きさが数字にも表れています。
日本を含むアジア市場も苦戦
日本市場への影響も見過ごせません。SWAの統計では、日本向け輸出量(70cl換算)は前年比27%減と大幅に落ち込みました。アジアの主要市場を見ると、
- 日本:27%減
- 台湾:22%減
- シンガポール:11.6%減
と、高付加価値市場が軒並み減少しています。
また、シングルモルト全体の輸出額も前年比6%減(16億ポンド)となり、近年のプレミアム化を支えてきたアジア市場の失速が、業界全体の重荷となっています。
バー業界に携わる立場から見ても、この数字は今後の輸入価格や流通状況を考える上で注目すべき変化と言えるでしょう。
一方でインド市場は大きく成長
厳しい市場環境の中でも、明るい材料があります。現在、輸出量で世界最大の市場となっているインドでは、
- 輸出量:前年比15%増(約2.2億本)
- 輸出額:前年比15%増
と大きく成長しました。
価値ベースでも世界第3位の市場へ成長しており、2026年夏に発効予定の英国・インドFTA(自由貿易協定)によって、今後さらに輸出が拡大すると期待されています。
厳しい市場でも成長したブランドも存在

市場全体では苦戦が続いた一方で、TOP10ブランドのうち3ブランドは前年比プラスとなりました。特に「ブラック&ホワイト Black & White」は前年比14.0%増と、今回のランキングで最も高い成長率を記録しています。
市場全体が縮小する中でも、ブランド戦略や販売地域の違いによって明暗が分かれた一年だったことがわかります。
市場を支える4大メーカーにも注目
ランキングを見ると、TOP10ブランドの多くは以下の4社に集中しています。
- ディアジオ(Diageo)
- ペルノ・リカール(Pernod Ricard)
- バカルディ(Bacardi)
- ラ・マルティニケーズ・バルディネ(La Martiniquaise-Bardinet)
世界のスコッチ市場は、これら大手メーカーが数多くの人気ブランドを保有する寡占状態となっており、各社の経営戦略や新商品の動向が市場全体に大きな影響を与えています。

それでは、ここから【2025年統計】スコッチウイスキー売上ランキング、10位から順に発表します!
10位 サー・エドワーズ(Sir Edward’s)

10位 サー・エドワーズ / Sir Edward’s
生産国:スコットランド
売上数:210万ケース(前年対比101.5%)
メーカー:ラ・マルティニケーズ・バルディネ(La Martiniquaise-Bardinet)
楽天市場価格[2026年7月]:1,738円
2025年のスコッチウイスキー売上ランキング第10位は、フランスの酒類グループ「ラ・マルティニケーズ・バルディネ」が展開する「サー・エドワーズ」です。日本ではほとんど無名のブランドですが、実はこのブランドは過去にThe Spirits Businessが選ぶ「スコッチ・ブランド・チャンピオン」(2024年)に選出された経歴を持つ銘柄です。
サー・エドワーズは1891年創業という歴史あるブランドで、原酒はスコットランド・ウェストロジアン州バスゲート近郊にある「スターロウ蒸留所」で生産されています。親会社のラ・マルティニケーズ・バルディネは、1934年設立の「ラ・マルティニケーズ」と、1857年創業のラム酒メーカー「バルディネ」が1993年に合併して誕生したフランス第2位の酒類グループです。
過去5年間の推移を見ると、2021年は190万ケース、2022年は180万ケース、2023年は190万ケース、2024年は200万ケースと、大きな増減を見せることなく安定した推移を続けてきました。
そして2025年、200万ケースの壁を超え210万ケースを記録し、+1.5%という堅実な成長を達成しています。同ブランドは2024年にも+7.4%の成長を記録しており、2025年の成長は3年連続の増収という安定したトレンドの延長線上にあります。
一見すると控えめな成長率に思えますが、業界全体が縮小トレンドにある中で3年連続の増収を維持している安定感は、フランス市場における同ブランドの強さを裏付けるものといえるでしょう。
同社の国際マーケティングマネージャー、ピア・ガレンヌ氏によれば、「サー・エドワーズ」はフランス国内市場で確固たる地位を維持しつつ、成熟市場・新興市場の両方で着実に販路を拡大しているとのこと。実際、フランス国内だけで年間約150万ケースを販売しており、これはグローバル販売量の7割以上を占める計算になります。
特に力を入れているのが「We Are Master Blenders」と名付けられたマーケティングキャンペーン。日常的な飲用シーンから特別な機会まで、幅広い場面での消費を訴求する戦略を展開しています。ラテンアメリカ・アフリカ市場への販路拡大にも積極的に取り組んでいる点が特徴的です。
楽天市場では1,738円ほどで販売されていますが、日本国内での知名度・人気は、世界10位のブランドとしてはまだそれほど高くありません。今後、国際展開が進むにつれて、日本市場での流通量が増加する可能性があるブランドとして注目しておきたいところです。
9位 J&B

9位 J&B
生産国:スコットランド
売上数:220万ケース(前年対比93.7%)
メーカー:ディアジオ(Diageo)
楽天市場価格[2026年7月]:2,399円(J&Bレア 700ml)
第9位は、イタリア人創業者ジャコモ・ジュステリーニ氏に由来する、南欧市場で強い人気を誇るブレンデッドスコッチ「J&B」です。
1749年、ボローニャ出身のジュステリーニ氏がロンドンでワイン商として事業を始めたことがブランドの起源で、その後1831年にアルフレッド・ブルックス氏が買収し「ジャステリーニ&ブルックス」へと社名を変更しました。今日知られる「J&Bレア」が誕生したのは1930年代初頭、米国の禁酒法終了を見据えて開発された、比較的新しいブレンドとも言えます。
所有権は複数回変遷しており、インターナショナル・ディスティラーズ&ヴィントナーズ(1962年~1972年)、グランド・メトロポリタン(1972年~1997年)を経て、1997年にディアジオ傘下となり現在に至ります。
過去5年間の推移を見ると、2021年は280万ケース、2022年は290万ケースまで伸びたものの、2023年は250万ケース、2024年は240万ケース、そして2025年は220万ケースと、3年連続での減少傾向が続いています。前年比では-6.3%と、TOP10の中でも下落率の大きいブランドの一つです。10位のサー・エドワーズが肉薄する状況となっており、2026年の調査でJ&Bが200万ケースの節目を割り込んでランク外となるか、あるいは踏みとどまるかが注目されるポイントでしょう。
J&Bは1962年にスペイン市場へ進出し、以降スペインにおけるリーディングブレンデッドスコッチの地位を確立、南欧全域で「世界のパーティーウイスキー」として親しまれてきました。
ディアジオの公式発表によれば、J&Bレアは現在も全世界で年間7,200万本が販売されており、これは1秒に2本以上売れている計算になる規模です。世界的な販売数量では苦戦が続くJ&Bですが、その根強い人気は依然として健在と言えるでしょう。
日本国内では楽天市場で複数商品の取扱いが確認でき、「J&Bレア」が2,000円台から3,000円台、上位版の「J&B 12年」なども流通しています。
世界的な販売数量では苦戦が続くJ&Bですが、日本のスーパーや酒屋では比較的入手しやすいブランド。一般的な飲食店ではあまり見かけませんが、バーでは比較的好まれているような…。
8位 ラベル5(Label 5)

8位 ラベル5 / Label 5
生産国:スコットランド
売上数:230万ケース(前年対比95.1%)
メーカー:ラ・マルティニケーズ・バルディネ(La Martiniquaise-Bardinet)
楽天市場価格[2026年7月]:1,299円(ラベル5 クラシックブラック 700ml)
第8位にランクインしたのは、10位のサー・エドワーズと同じ「ラ・マルティニケーズ・バルディネ」社が展開する「ラベル5」です。同じ親会社を持つ2ブランドですが、2025年の成績には明暗が分かれました。
ラベル5は1969年、ラ・マルティニケーズ創業者ジャン・カイヤール氏によって発売されたブランドです。サー・エドワーズやウィリアム・ピールと同様、当初はコストパフォーマンス重視のブレンデッドスコッチとしてフランス市場限定で展開されていました。
1970~80年代には、赤毛でキルトを着た5人のスコットランド人が登場する「Un écossais ne s’y trompe pas(スコットランド人は間違えない)」というユーモラスな広告キャンペーンでフランス国内の人気を確立し、今日ではフランスを中心に欧州・中東・北アフリカで強い存在感を持ち、南米・アジアでも認知度が上昇しているブランドです。
原酒は、10位サー・エドワーズと同じスコットランド・バスゲート近郊の「スターロウ蒸留所」で生産されています。同蒸留所は2010年に開業したスコットランド第6位の規模を誇るグレーン蒸留所で、隣接する熟成・瓶詰め施設は2004年から稼働している、ラ・マルティニケーズ・バルディネ社の中核生産拠点。
過去5年間の推移は、2021年260万ケース、2022年250万ケース、2023年240万ケース、2024年240万ケースと減少を続け、2025年は230万ケースまで落ち込みました。前年比-4.9%と、J&Bに次ぐ下落率を記録しています。
実はこの減少傾向はさらに長期に及んでおり、2019年には270万ケースで「世界9位のスコッチブランド」という地位にありましたが、そこから既に4年間で11%以上の減少が続いていた計算になります。
同じ親会社のブランドでありながら、サー・エドワーズが+1.5%の成長を遂げ「Brand Champion」に選ばれたのに対し、ラベル5は苦戦が続いている状況。この背景には、親会社ラ・マルティニケーズが2018年にエドリントン社から買収した「カティサーク」を近年の投資優先ブランドとしている事情もあるとみられます。
同社CEOジャン=ピエール・カイヤール氏は「カティサークを世界中に展開することが我々の旗艦であり最優先事項」と明言しており、ラベル5にとってはグループ内での投資配分の変化が課題となっている可能性があります。
日本国内ではスタンダードの他、上位版がいくつか販売されています。
7位 ブキャナンズ(Buchanan’s)

7位 ブキャナンズ / Buchanan’s
生産国:スコットランド
売上数:230万ケース(前年対比108.9%)
メーカー:ディアジオ(Diageo)
楽天市場価格[2026年7月]:5,080円(ブキャナンズ デラックス 12年)
第7位は、ディアジオが所有する「ブキャナンズ」です。2025年、TOP10の中で最初の大きな順位変動を見せたブランドで、前年10位から一気に7位まで上昇しました。
ブキャナンズは1884年、スコットランド系カナダ人ジェームズ・ブキャナン氏がロンドンで設立した「James Buchanan & Co」から生まれたブランドです。
当時のイギリス市場には「甘くまろやかな味わいのスコッチ」という未開拓のニーズがあると見抜いたブキャナン氏は、独自のブレンドを開発。このブレンドは英国議会でも愛飲されたことから「あの下院のウイスキー」と呼ばれるようになり、その人気を受けて大衆向けに新たに開発されたブレンドが黒瓶・白ラベルで販売され「Black & White」という愛称で親しまれ、1902年に正式に改名されました。
つまり、今回のランキング4位「ブラック&ホワイト」は、ブキャナンズと同じ創業者・同じ会社から生まれた「兄弟ブランド」という、相当なウイスキー通でないと知らないであろう、意外な繋がりを持っています…。
現在の特徴的な水筒型ボトルデザインは、第一次世界大戦中に英国兵士たちが水筒を分け合った「無私の精神」に着想を得たもので、1926年に導入されました。所有権については、1915年にジョン・デュワー&サンズ社(5位デュワーズ)と合併して「Buchanan-Dewar Ltd」となり、1925年にDistillers Company Ltd傘下入り、1986年にギネス社が買収。1997年のギネス・グランドメトロポリタン合併によりディアジオの傘下となり現在に至っています。
過去5年間の推移を見ると、2021年230万ケース、2022年250万ケース、2023年240万ケース、2024年210万ケースと一度落ち込んだものの、2025年は230万ケースまで回復し、前年比+8.9%という力強い成長を記録しています。この結果、J&B・ラベル5を追い越して7位に浮上しました。
成長の背景には、2025年後半に投入された新製品「グリーンシール(Green Seal)」の存在があります。これは高揚感のある飲用シーンをターゲットにした戦略的な新製品で、次回の調査でその効果がどこまで持続するかが注目されるところです。
ブキャナンズは中南米、特にメキシコ市場で単なる人気ブランドという以上の、文化的アイコンとしての地位を確立しています。同国では「ナルコカルチャー」と深く結びついた存在として、英国Herald Scotland紙や米Esquire誌といった主要メディアが特集記事を組むほどの社会的現象となっており、2016年にはラティーノスターのJ・バルビン氏とのセレブリティパートナーシップも実施するなど、ラテン市場に特化したマーケティング戦略を展開してきた歴史があります。
日本国内ではマイナーブランドですが、「12年」の他に、上位ボトルの「18年」や「陶器ボトル」の販売も確認できます。
6位 ウィリアム・ローソンズ(William Lawson’s)

6位 ウィリアム・ローソンズ / William Lawson’s
生産国:スコットランド
売上数:320万ケース(前年対比98.5%)
メーカー:バカルディ(Bacardi)
楽天市場価格[2026年7月]:2,280円(1000ml)
第6位は、バカルディ(Bacardi)が所有する「ウィリアム・ローソンズ」です。バカルディにとっては、同社が抱える2大スコッチブランドのうちの一つとなります。
ブランド名の由来は1849年、スコットランド出身でアイルランドに移住した実業家ウィリアム・ローソン氏です。彼は1888年にダブリンの酒類会社「E&J Burke」の輸出マネージャーとなり、1889年に「W Lawson & Co」という商標を登録しました。
1963年、イタリアのベルモット・スパークリングワイン大手マルティーニ&ロッシ傘下のクラン・マンロー・ウイスキー社がこの商標を買収し、既存の「Peter Dawson」ブランドとの混同を避けるため「ウィリアム・ローソンズ」へと改称。
1972年にはバンフシャーの「マクダフ蒸留所」を買収し、同蒸留所のシングルモルト「グレンデヴェロン」を中核とした原酒の自社供給体制を確立しました。
1993年、ラム酒大手バカルディがマルティーニ&ロッシを買収したことで、現在の所有形態に至っています。2014年時点では「世界第6位のスコッチブランド」という地位を記録していました。
過去5年間の推移は、2021年340万ケース、2022年350万ケース、2023年340万ケース、2024年320万ケースと推移し、2025年も320万ケースを維持しました。前年比-1.5%と、業界全体の下落トレンドを考慮すれば「まずまず」の踏みとどまりと評価できる結果です。
注目したいのは、バカルディが所有する2ブランド(ウィリアム・ローソンズとデュワーズ)が、いずれも2025年にディアジオ系ブランドに順位を追い越されている点です。バカルディにとっては複雑な心境の1年だったのかも。
なお、ウィリアム・ローソンズはロシアで最も売れているウイスキーという独自の地位を確立しているブランドでもあります。2016年にはバカルディがロシアの酒類メーカーSynergy社と提携し、モスクワでのボトリング契約を締結しており、同国市場での存在感は他のスコッチブランドと一線を画しています。
日本国内では楽天市場での取扱いは確認できましたが、まだ販売店は多くはありません。
5位 デュワーズ(Dewar’s)

5位 デュワーズ / Dewar’s
生産国:スコットランド
売上数:320万ケース(前年対比97.6%)
メーカー:バカルディ(Bacardi)
楽天市場価格[2026年7月]:1,375円(ホワイトラベル)
第5位は、バカルディが所有するもう一つの主力スコッチブランド「デュワーズ」です。2024年は4位でしたが、2025年はウィリアム・ローソンズにわずかに追い越される形で5位に後退しました。
デュワーズは1846年、ジョン・デュワー氏がスコットランド・パースに開いたワイン&スピリッツ店から始まりました。当時は珍しかった「自分の名前入りのガラス瓶」で販売する先駆的なブランディングを行い、これが今日まで続くブランドの原点となっています。
1880年にジョン氏が亡くなった後、息子のジョン・アレクサンダー氏とトミー氏が事業を引き継ぎ、国際展開を推進。1898年には自社ブレンドの中核となるシングルモルトを確保するため「アバフェルディ蒸留所」を設立しました。
特筆すべき逸話として、トミー・デュワー氏は1892年、世界を巡る2年間の営業旅行中にニューヨークのバーで「ハイボール」を考案したとされ、これは現在もデュワーズ公式が「ホワイトラベル、氷、ソーダ、レモン」で提供される定番の飲み方として紹介している逸話です。1980年には米国市場で首位のブレンデッドスコッチブランドの地位を確立しました。
所有権については、1925年にDistillers Companyへ「Buchanan-Dewar」として参加、1986年にギネス社が買収。1997年のギネス・グランドメトロポリタン合併でディアジオ傘下となり、1998年にディアジオがバカルディへ売却するという変遷を経て、現在の所有形態に至っています。奇しくも7位ブキャナンズと同じ歴史的経緯を辿っているブランドです。
過去5年間の推移を見ると、2021年280万ケース、2022年350万ケース、2023年330万ケース、2024年330万ケースと安定していましたが、2025年は320万ケースまで減少し、前年比-2.4%を記録しています。
バカルディにとって特に痛手だったのは、デュワーズに近年重点的な投資を行ってきたにもかかわらず、実売の成長につながらなかった点です。
2024年末にはプレミアム化トレンドに対応したマーケティングキャンペーンを開始し、「世界初」を謳うストーン・トースト製法のウイスキーを投入。さらに2025年には、フランスの高級クリスタルブランド「バカラ」との共同企画として、第79回トニー賞に合わせた限定スピークイージー体験を演出するなど、話題性のあるマーケティング施策を展開しました。
デュワーズは世界中で高い知名度を誇るブレンデッドスコッチですが、さまざまな施策を打ち出したものの、2025年は販売数量の伸びにはつながりませんでした。
4位 ブラック&ホワイト(Black & White)

4位 ブラック&ホワイト / Black & White
生産国:スコットランド
売上数:340万ケース(前年対比114.0%)
メーカー:ディアジオ(Diageo)
楽天市場価格[2026年7月]:1,320円
第4位は、ディアジオが所有する「ブラック&ホワイト」です。2025年のTOP10の中で最も高い成長率を記録したブランドで、前年6位から4位まで順位を上げました。
このブランドは、7位ブキャナンズと同じ創業者ジェームズ・ブキャナン氏による、実は同一ブランドの改称版です。当初「Buchanan’s Blend」として発売され、英国議会で愛飲されたことから一時「House of Commons Finest Old Highland」と改称、黒瓶・白ラベルというデザインから客が「あの黒白のウイスキー」と呼ぶようになり、1902年に正式に「Black & White」へ改名されました。
1920年代には、ブキャナン氏がドッグショーで見た黒いスコティッシュ・テリアと白いウェストハイランド・テリアに着想を得て、この2匹をブランドマスコットとして採用。広告での起用が本格化し、2013年には初めてボトルラベル自体にも描かれるようになりました。
中核原酒はハイランドの「ダルウィニー」蒸留所で、クライヌリッシュ・グレンダランとともにブレンドされる、軽やかでグレーン主体の味わいが特徴です。
興味深いことに、1970年代に販売量が落ち込んだ結果、英国本国市場からは完全に撤退し、現在は輸出専用ブランドとなっています。俳優ディーン・マーティン氏やウォルト・ディズニー氏が愛飲したと伝えられ、小説・映画『007』シリーズにも登場するなど、20世紀ポップカルチャーに深く刻まれたブランドでもあります。
過去5年間の推移は、2021年310万ケース、2022年360万ケース、2023年320万ケース、2024年300万ケースと一度落ち込んだあと、2025年は340万ケースまで急回復し、前年比+14.0%という驚異的な成長を達成しています。
これはThe Spirits Business「Brand Champions 2026」において、スコッチカテゴリーで最大の成長率を記録した結果であり、業界他誌「ドリンクス・インターナショナル」の「The Millionaires’ Club 2026」でも+13%成長として言及されており、フランス・ブラジル市場での成功が特に大きく寄与したブランドと分析されています。
フランスは、2024年時点でスコッチ輸出量世界2位の市場(1.77億本、前年比+1.9%)であり、ブラック&ホワイトが強い地盤を持つ市場として業界データでも裏付けられています。
3位のシーバスリーガルとの差はまだ130万ケース以上ありますが、この勢いが続けば、2026年以降のランキングでさらなる上昇も期待できるブランドです。
3位 シーバスリーガル(Chivas Regal)

3位 シーバスリーガル / Chivas Regal
生産国:スコットランド
売上数:470万ケース(前年対比98.5%)
メーカー:ペルノ・リカール(Pernod Ricard)
楽天市場価格[2026年7月]:2,680円(シーバスリーガル12年)
第3位は、ペルノ・リカールが所有する名門ブレンデッドスコッチ「シーバスリーガル」です。TOP3ブランドはいずれも前年と同じ順位を維持しましたが、3ブランドとも成長率では苦戦を強いられた1年でした。
過去5年間の推移は、2021年410万ケース、2022年520万ケース、2023年460万ケース、2024年480万ケースと推移し、2025年は470万ケースとなり、前年比-1.5%という結果に終わっています。
2025年のシーバスリーガルで最大の話題となったのは、マスターブレンダー・サンディ・ハイスロップ氏が開発した透明スピリッツ「クリスタルゴールド(Crystalgold)」です。ウイスキー規制上「スコッチ」と公式に名乗ることはできず、法的には「スピリット・ドリンク」として販売されていますが、ブランド側はこれを「伝統からの脱却ではなく、ウイスキーカテゴリーの自然な進化」と位置づけています。
そして、業界的に大きなニュースとなったのが、42年間のキャリアを持つマスターブレンダー、サンディ・ハイスロップ氏が2025年12月31日をもって現役を退任したことです。
同氏は今後「マスターブレンダー・エメリタス」という名誉職に就き、ペルノ・リカールとのコンサルタント契約のもとで助言を行うほか、ブランドのグローバル代表としても活動する予定です。後任には、ハイスロップ氏と20年間ともに働いてきたケビン・バルムフォース氏が就任し、スムーズな引継ぎが行われました。
2位 バランタイン(Ballantine’s)

2位 バランタイン / Ballantine’s
生産国:スコットランド
売上数:910万ケース(前年対比96.8%)
メーカー:ペルノ・リカール(Pernod Ricard)
楽天市場価格[2026年7月]:1,280円(バランタイン ファイネスト)
第2位は、ペルノ・リカールが誇る看板ブランド「バランタイン」です。1位のジョニーウォーカーには及ばないものの、3位のシーバスリーガルとは約2倍という圧倒的な差を維持しており、揺るぎない地位を保っています。
過去5年間の推移は、2021年870万ケース、2022年920万ケース、2023年820万ケース、2024年940万ケースと推移し、2025年は910万ケースとなり、前年比-3.2%を記録しています。
注目すべきは、2024年に+13.9%という驚異的な成長を遂げ、その年のThe Spirits Business「Brand Champion」に選出されていたことです。2025年はその高い水準を維持することが難しく、成長が一服した格好となりましたが、それでも2023年の水準は上回っており、深刻な状況とは言えません。
2025年のバランタインは、ロックバンド「KISS」との限定コラボレーションを実施しました。2025年11月25日、KISSのヒットアルバム『Destroyer(邦題:地獄の軍団)』が2026年3月に発売50周年を迎えることに合わせ、そのジャケットデザインを施した「バランタイン ファイネスト」限定ボトルが、日本国内を含む全国のスーパー・酒量販店で発売されています。
また、2025年11月19日には、看板企画「40 Year Old Masterclass Collection」の第3章「The Moment」を発表しました。
バランタインの核となるシングルモルト「ミルトンダフ蒸留所」の原酒を主軸にした40年熟成ブレンドで、世界限定108本・1本13,000米ドルという超プレミアム価格で発売されています。
このコレクションは、1959年から1994年まで同ブランドのマスターブレンダーを務めたジャック・ガウディ氏が仕込んだ原酒を、その技を受け継ぐ第5代マスターブレンダー・サンディ・ハイスロップ氏がブレンドするという、師弟の技を受け継ぐ企画。全5章は「バランタイン歴代5人のマスターブレンダーへのオマージュ」というテーマで構成されており、2023年4月の第1章「The Remembering」、2024年12月の第2章「The Waiting」に続き、予定通りのペースでリリースが進んでいます。
最終第5章は2027年のバランタイン200周年に合わせて発売予定。なお、ハイスロップ氏は前述の3位シーバスリーガルのマスターブレンダーも務めた(2025年末に引退)人物で、ペルノ・リカール傘下の両看板ブランドを長年手掛けてきた存在でした。
1位 ジョニーウォーカー(Johnnie Walker)

1位 ジョニーウォーカー / Johnnie Walker
生産国:スコットランド
売上数:2,030万ケース(前年対比94.0%)
メーカー:ディアジオ(Diageo)
楽天市場価格[2026年7月]:1,149円(ジョニーウォーカー レッドラベル)
堂々の第1位は、世界最大のスコッチウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」です。2025年も2,030万ケースを販売し、2位以下を大きく引き離して首位を維持しました。販売数量は前年を下回ったものの、その圧倒的なブランド力を考えると、近い将来に順位が入れ替わる可能性は極めて低いでしょう。
ジョニーウォーカーの歴史|200年以上続く世界的ブランド

ジョニーウォーカーの歴史は1820年、スコットランド・キルマーノックで14歳のジョン・ウォーカーが父の遺産417ポンドをもとに小さな食料品店を開いたことから始まります。当初は紅茶やワイン、スピリッツを扱う雑貨店で、ウイスキーの売上は全体の約8%に過ぎませんでした。
1857年にジョンが亡くなると、紅茶商として「ブレンド」の技術を学んでいた息子アレクサンダー・ウォーカーが事業を継承します。彼は複数の蒸留所の原酒を組み合わせる技術を応用し、1865年に「オールド・ハイランド・ウイスキー」を発売しました。これが現在のジョニーウォーカー ブラックラベルの原型となっています。
1908年にはブランドの象徴である「歩く紳士(ストライディングマン)」が誕生しました。当時のマネージングディレクター、ジェームズ・スティーブンソンがイラストレーターのトム・ブラウンと昼食を共にした際、メニューカードに即興で描かれたことが始まりとされています。
同時に「Born 1820 – Still Going Strong(1820年生まれ、今も健在)」という有名なキャッチコピーも誕生し、この年にブランド名も正式に「ジョニーウォーカー」へ変更されました。現在のレッドラベル、ブラックラベルというブランド体系もこの頃に確立されています。
1945年には「レッドラベル」が世界で最も売れるウイスキーとなり、その地位を約80年にわたって維持しています。かつて世界最大規模を誇ったキルマーノックのボトリング工場は2012年に閉鎖されましたが、創業の地には現在もジョン・ウォーカーの銅像が建ち、ブランドの歴史を今に伝えています。
販売実績|2025年も世界売上No.1を維持
過去5年間の販売実績は、2021年1,910万ケース、2022年2,270万ケース、2023年2,210万ケース、2024年2,160万ケース、そして2025年は2,030万ケースとなりました。
前年比では6.0%減とTOP10ブランドの中でも比較的大きな落ち込みとなりましたが、それでも2,000万ケースを超える販売規模は他ブランドを圧倒しています。2位のバランタインとは1,100万ケース以上の差があり、世界No.1ブランドとしての地位は揺らいでいません。
ディアジオの経営戦略|新CEOのもとで路線転換へ

近年は親会社ディアジオの経営戦略にも注目が集まっています。2025年11月10日には、英国大手スーパー「テスコ」の元CEOであるデイブ・ルイス氏がディアジオの新CEOに任命され、2026年1月1日に正式就任しました。
就任後初となる2026年2月の決算では純売上高が前年同期比4%減の105億ドルとなり、株価は1日で約13%下落。ルイス氏はこれまでのプレミアム化戦略を見直す姿勢を示し、「ディアジオは低価格帯スピリッツ市場で十分な存在感を示せていない」と発言しています。今後はプレミアム市場だけでなく、マスマーケットにも再び力を入れる方針です。
その方針を象徴するように、2026年3月1日にはプレミアム志向の「ブラックカスク(Black Cask)」を発売。さらに10日後の3月11日には、ウイスキー初心者や非飲用者をターゲットとした、甘くマイルドな「レッド・ソウル(Red Soul)」も投入しました。プレミアム層とエントリー層の双方を取り込む、新たなブランド戦略が進められています。
また、レッド・ソウルの発表では、市場調査会社IWSRの予測を引用し、エントリー価格帯のブレンデッドスコッチが2029年まで世界で最も高い成長率を示すセグメントになるとの見通しも紹介されました。こうした動きからも、ディアジオがマスマーケットへの回帰を重視していることがうかがえます。
ブランドマーケティング|サブリナ・カーペンターとの大型コラボ
2025年はブランドマーケティングでも話題が続きました。ロニー・チェン、オリヴィエ・ルスタン、Mr Lyanらとのコラボレーションに加え、2025年8月28日にはグラミー賞受賞アーティストのサブリナ・カーペンターとの複数年契約によるグローバルパートナーシップを発表しています。
この取り組みは、彼女のアルバム『Man’s Best Friend』のリリースとワールドツアー「Short n’ Sweet Tour」の最終公演に合わせて展開されました。ツアー会場では21歳以上の来場者向けに、「ジョニーウォーカー ブラックラベル」を使用したマンハッタン、ウイスキーサワー、ウイスキーハイボールの3種類のシグネチャーカクテルが提供されています。
日本でもコラボイベントが実施され、2026年5月15日には渋谷のタワーレコードで「JOHNNIE WALKER × Sabrina Carpenter Cocktail Night」を開催。サブリナ本人の来場はありませんでしたが、DJ・シンガーソングライターのYonYon氏によるライブパフォーマンスが行われ、「ゴーゴーハイボール」「マンハッタンズ・ベスト・フレンド」「ショート&サワー」の3種類の限定カクテルが振る舞われました。
約7年半ぶりの通年新商品「ブラックルビー」
商品展開では、2025年4月1日に「ジョニーウォーカー ブラックルビー」が発売されました。ブラックラベルの甘みをより引き立てた味わいが特徴で、2017年発売の「ジョニーウォーカー18年」以来、約7年半ぶりとなる通年ラインナップの追加として業界内でも大きな話題となりました。
さらにRTD(Ready-to-Drink)商品も同時に展開し、ウイスキー初心者や若い世代へのアプローチも強化しています。
世界売上1位を支える圧倒的なブランド力

2,030万ケースという販売数は、2位のバランタイン(910万ケース)の2倍以上という圧倒的な規模です。市場全体の縮小や販売減少という逆風を受けながらも、200年以上かけて築き上げたブランド価値と、180カ国以上で親しまれる知名度は他ブランドの追随を許しません。
経営戦略の転換や新たな商品展開によって、ジョニーウォーカーは変化する市場に対応し続けています。伝統と革新を両立しながら世界No.1ブランドの座を守り続けるその姿は、まさに「スコッチウイスキーの王様」と呼ぶにふさわしい存在といえるでしょう。
2025年統計 スコッチウイスキー売上ランキングTOP10|一覧表

2025年のTOP10ランキングを振り返ると、米国の追加関税やアジア市場の失速といった業界全体の逆風が色濃く表れた一年でした。そのような厳しい環境の中でも、ブラック&ホワイトやブキャナンズのように販売を伸ばしたブランドがある一方、J&Bやラベル5は大きく販売を落とすなど、ブランドごとに明暗がはっきりと分かれる結果となっています。
その中でも、ジョニーウォーカーが2,000万ケースを超える販売規模を維持し、不動の首位を守り続けている点は特筆すべきでしょう。200年以上にわたって築き上げてきたブランド力と世界的な知名度の高さが、改めて数字として示された一年だったと言えます。
市場全体が縮小局面を迎える中、各メーカーはマスマーケットへの回帰やプレミアム路線の強化、セレブリティとのコラボレーション、新商品の投入など、さまざまな戦略を打ち出しています。こうした取り組みが今後どのような成果につながるのか、そして2026年以降のランキングにどのような変化をもたらすのか、引き続き注目していきたいところです。

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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