【2024年6月】白州蒸溜所見学|サントリーのウイスキー造りを解説

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事では2023年にリニューアルオープンし、これまで以上に魅力的となった「サントリー白州蒸溜所」のウイスキー造りや歴史、蒸溜所見学ツアーの様子について解説致します。

今回は、バーテンダー向けの特別な見学ツアーの様子をまとめたレポート記事となります。「白州蒸溜所ものづくりツアー(通常見学)」とは内容が異なっておりますので、あらかじめご容赦ください。

BARWHITEOAKのオーナーバーテンダーである私、ユースケが実際に見学して感じたことも踏まえながら、新しくなった白州蒸溜所のショップや、蒸溜所限定のウイスキーもご紹介致します。

さらに、テイスティングラウンジについてもレポートしていますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

ウイスキー蒸溜所見学レポート記事↓

 

 

【2024年6月】白州蒸溜所見学|サントリーのウイスキー造りを解説

白州蒸溜所の基本情報

サントリー白州蒸溜所

所在地:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
オーナー企業:サントリー(サントリーホールディングス)
創業年(蒸留開始年):1973年
仕込水:南アルプス甲斐駒ヶ岳水系の花崗岩を通った地下水(硬度約30 軟水)
麦芽のフェノール値:0~40ppm
モルティング:無(2024年中にモルティング施設を完成予定)
モルトミル:4本ローラーミル(ポーティアス製)
ワンバッチ麦芽仕込量:10~18トン
糖化槽(マッシュタン):ステンレス・フルロイタータン(三宅製作所製)
イースト菌/添加量:ディスティラーズ酵母、ブリュワーズ酵母
発酵槽(ウォッシュバック):オレゴンパイン×18基/約7万5,000リットル(約5万5,000リットル)
※グレーンウイスキー用のステンレス製ファーメンター×6基。
初留器:ストレート型×5基、ランタン型×3基(マクミラン製・三宅製作所製)ガス直火 計8基
初留器の冷却装置:シェル&チューブ×7基、ワームタブ×1基
再留器:ストレート型×6基、ランタン型×2基(三宅製作所製)スチーム加熱 計8基
再留器の冷却装置:シェル&チューブ
グレーンウイスキー蒸留器:フォーサイス製カフェ式2塔式連続式蒸留機×1セット
ウェアハウス(貯蔵庫):ラック式×18棟、ほか近江エージングセラー(19棟)など
見学:要予約

 

 

「サントリー白州蒸溜所」が開設されたのは、山崎蒸溜所の建設着手から50年後となる1973年。当時は「トリス」や「オールド」といったウイスキーが爆発的なヒットを記録し、国内のウイスキー需要が急速に拡大。生産量を拡大するために第二蒸溜所の建設を計画します。

サントリーは新たな蒸溜所を設立することで、ウイスキーの生産量を上げるだけでなく、タイプの異なる原酒を生み出すことで、より高品質な商品を安定供給することを目指しました。

 

サントリー白州蒸溜所は、南アルプスの「森の蒸溜所」としてよく知られています。

山梨県北杜市白州町、南アルプス・甲斐駒ヶ岳の裾野に位置し、標高は約700メートル。東京ドーム約17個分に相当する825,000㎡の広大な敷地。そして、豊かな緑に包まれており、多様な野生動物が生息する自然豊かな環境です。

サントリーの第二の蒸溜所としての役割を果たすだけでなく、自然と調和したウイスキー造りを行っています。

 

「サントリー白州蒸溜所」の建設を指揮したのは、サントリー創業者・鳥居信治郎の次男であり、サントリーの二代目社長兼、2代目マスターブレンダーである「佐治敬三」氏。佐

初代チーフブレンダーの大西為雄氏に、蒸溜所が建設できる理想的な環境・仕込水を探すように指示。最終的に白州の地にたどり着きます。

白州の水は「サントリー南アルプス天然水」としても販売されています。サントリー天然水南アルプス白州工場は白州蒸溜所と同じ敷地内にあります。

白州の水は、花崗岩層を通じて地下へと流れ込み、山崎の水と比べて硬度が低いのが特徴です。この仕込み水によって、白州のモルトウイスキーは重厚で芳醇な山崎のモルトウイスキーとは異なり、軽快でクリーンな個性を生み出しています。

原酒の増産に加えて、より多様なモルト原酒を造り分けることも目的としていたなかで、白州の冷涼な気候と柔らかな水は、まさに理想を実現するのに最適な場所でした。

 

初期の白州蒸溜所には、初留・再留のすべての工程でスチーム間接加熱を採用。同じサイズの大きめのポットスチルが12基並んでいました。

しかし、1981年にさらなる品質向上を目指し、新しい蒸留棟を開設。新しい蒸留棟では、初留器はすべてガス直火による直接加熱に変更され、ポットスチルのサイズも小さめに改良されています。

 

現在、白州蒸溜所で稼働しているポットスチルは、1981年に設置された12基と、2014年に増設された4基を合わせた、合計16基。

白州蒸溜所の初留器は、ストレート型が5基とランタン型が3基の計8基あり、すべてガス直火焚きです。サイズは9,000~24,000リットルとさまざまで、ネックの長さやラインアームの角度もそれぞれ異なります。冷却装置は7基がシェル&チューブ、1基がワームタブを採用しており、蒸留時間は7~8時間。

再留器も同じく8基。ストレート型が6基とランタン型が2基で、容量は4,000~14,000リットル。こちらはすべてスチーム加熱。冷却にはシェル&チューブを使用。再留も初留と同じく7~8時間かけて行われます。

 

2010年にはグレーンウイスキーの生産設備も導入されました。

この設備には高さ14m、モロミ塔18段、精留40段のカフェ式連続蒸留機が含まれており、グレーン用の粉砕機、クッカー、ステンレス製ファーメンター6基も併設されています。

サントリーのグレーンウイスキー蒸溜所といえば、愛知県の「知多蒸溜所」が有名ですが、それと比べて白州のグレーン設備は小規模。実験的な原酒造りも容易となっており、多様な原料を造り分けることができる設計です。また、白州のグレーンウイスキーには、トウモロコシ以外の様々な原料(小麦、未発芽大麦など)を使用することもできます

白州のグレーンウイスキーは、2010年12月から試験生産を開始。2013年5月から本格稼働を始めています。

 

白州蒸溜所でのモルトウイスキーの仕込みは、ワンバッチあたり10~18トンの麦芽を使用。主に英国産(スコットランド産)の麦芽を使用し、マッシュタンは容量130,000リットルのフルロイタータンを使用しています。

発酵槽(ウォッシュバック)は18基。すべて北米産ダグラスファー製の木桶発酵槽。容量は75,000リットル。発酵にはディスティラリー酵母とビール酵母を併用し、65~75時間かけて行っています。

 

樽詰め時のアルコール度数は63%未満。貯蔵環境に合わせて最適な度数で樽詰めされます。

使用する樽は、主にアメリカンホワイトオークのバーボン樽とホグスヘッド樽。

白州蒸溜所には創設当初からクーパレッジ(樽製造所)が併設されており、バーボン樽の側板を「ホグスヘッド仕様」に加工して組み上げる作業も自社で行っています。

ウイスキーの熟成は、白州蒸溜所内の貯蔵庫のほか、山崎蒸溜所や近江エージングセラーの貯蔵庫も使用しており、リスク分散の観点からも複数のエージングセラーで原酒を熟成させています。

 

白州蒸溜所を含む一帯はユネスコエコパークにも登録されており、広大な敷地内には「バードサンクチュアリ」と呼ばれる野鳥観察用の散策コースが設けられています。

2022年末から9ヶ月間にわたって大規模な改修工事が行われ、見学は一時休止していましたが、2023年10月に再開され、新しいビジターセンターが完成。

今回の見学の際にはまだ建設中でしたが、2024年中にはビジターセンター、バードサンクチュアリ、白州蒸溜所の入口を結ぶ「バードブリッジ」が完成します。また、新しいレストラン「フォレストテラス」もオープン予定です。

 

ツアー内容も刷新され、有料コースは予約制かつ抽選制の「白州蒸溜所ものづくりツアー」(税込3,000円)と「白州蒸溜所ものづくりツアープレミアム」(税込5,000円)の2つが用意されています。

プレミアムツアーでは、通常ツアーと同様の製造工程見学やテイスティングに加えて、これまで一般公開されていなかったグレーン用のカフェ式連続蒸留機の見学や、貯蔵庫内での原酒のテイスティング体験も含まれます。

また、有料ツアーに参加しなくても、予約(先着順・無料)をすれば、場内の「ウイスキー博物館」やギフトショップ、テイスティングラウンジなども利用可能です。

 

白州蒸溜所の歴史

1973年:白州蒸溜所設立。白州ディスティラリー(白州第1)を開設。「森林公園工場」として自然との調和を目指し、バードサンクチュアリを設置。

1977年:白州ディスティラリー(白州第2)を増設。

1979年:日本初のウイスキー博物館を開館。

1981年:白州ディスティラリー第3ブランド(白州第3)を増設。12基の蒸溜塔、直火蒸溜釜6基、小型蒸溜釜2基を導入。

1983年:鳥類保護区を設置(2008年まで)。

1991年:「ピュアモルト白州1981年」「ピュアモルト白州1991年」発売。

1994年:「ピュアモルトウイスキー白州12年」発売。

1996年:南アルプスの天然水白州工場竣工(現在のサントリー天然水南アルプス白州工場)。「ピュアモルト白州18年」発売。

2005年:白州蒸溜所の改装、蒸溜塔一部入替(初・再蒸溜釜)。

2006年:シングルモルトウイスキー「白州18年」発売。
ISCにて「白州18年」が金賞受賞(ISC インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)。

2008年:シングルモルトウイスキー「白州25年」発売。

2010年:グレーンウイスキー製造設備の建設稼働。

2012年:「白州ヘビリーピーテッド2012」発売。
ISCにて「白州25年」がトロフィー受賞。

2013年:カフェ式蒸溜法によるグレーンウイスキーの本格稼働開始。
「白州ベビリーピーテッド2013」発売。

2014年:「白州シェリーカスク2014」発売。
ポットスティルを4基増設。

2018年:エッセンス・オブ・サントリーシリーズ販売開始。

2023年:「プレミアムハイボール〈白州〉350ml缶」発売。
白州蒸溜所50周年を迎え、施設をリニューアルオープン。サントリーウイスキー100周年記念蒸溜所ラベル「白州」、「白州12年」発売。

2024年:「白州 Story of the Distillery 2024 EDITION」限定発売。

 

東京から白州蒸溜所までのアクセス

東京から白州蒸溜所までのアクセスは電車がおすすめ。
ルートと所要時間は以下の通り。

06:37発 東京
JR中央・青梅線快速・青梅行

06:51着 新宿
07:00発 R特急あずさ1号・松本行

08:53 着 小淵沢
09:10発 無料シャトルバス

09:30着 白州蒸溜所所要時間 2時間53分
IC優先:5,320円(乗車券3,080円 特別料金2,240円)

※ヤフー路線情報より

 

冒頭でもお伝えした通り、今回は通常予約枠とは異なるバーテンダー向けの蒸溜所研修ツアーでの内容となります。

 

「新宿」から最寄り駅の「小渕沢」までは約2時間。

BARWHITEOAKの営業終了後に向かいましたので、睡眠時間も2時間くらいで出発(笑)

眠いはずなのに、興奮状態なので全く眠くなかった…

 

小淵沢に到着。

小淵沢駅にはお土産売り場と立ち食い蕎麦屋さんがありました。お腹が空いている場合は、蕎麦で小腹を満たすのもいいかもしれません。

ただし、シャトルバスには乗り遅れないように注意しましょう♪

 

無料シャトルバス時刻表(所要時間は往路・復路ともに約20分)

行き

小淵沢駅発 白州蒸溜所
9:10 9:30
10:00 10:20
10:50 11:10
12:00 12:20
12:40 13:00
13:30 13:50
14:10 14:30
15:00 15:20
16:15 16:35

帰り

白州蒸溜所        小淵沢駅着
11:10 11:30
12:20 12:40
13:00 13:20
13:50 14:10
14:30 14:50
15:55 16:15
16:35 16:55
17:35 17:55
※2024年6月現在の時刻表

 

白州蒸溜所到着!

敷地内ではまだ工事されている箇所がいくつかありました。

 

蒸溜所見学・ツアーコースについて

白州蒸溜所の見学・入場は、完全予約制。予約がないと入ることができません。

ショップやテイスティングラウンジの利用の場合も「ウイスキー博物館・セントラルハウス入場」の予約が必要です。

見学・ツアーコースには以下のプランがあります。

 

【抽選式】白州蒸溜所ものづくりツアー(有料)

  • 特徴: 有料試飲あり、要予約、お土産付
  • 詳細: 「シングルモルトウイスキー白州」が生まれる現場を見学し、香りや温度を五感で体感。
  • 期間: 年末年始、工場休業日を除く毎日
  • 時間: 約90分
  • 備考: 抽選制

 

【抽選式】白州蒸溜所ものづくりツアー プレミアム(有料)

  • 特徴: 有料試飲あり、要予約、お土産付
  • 詳細: 製造エリアや貯蔵庫内での特別テイスティングを通して、こだわりや自然環境を案内。
  • 休止期間: 2024年8月から9月中旬まで(再開情報はホームページにてお知らせ)
  • 期間: 年末年始、工場休業日を除く月曜日・金曜日
  • 時間: 約130分
  • 備考: 抽選制

 

ウイスキー博物館・セントラルハウス入場(無料)

  • 特徴: 無料、要予約
  • 詳細: 有料テイスティングラウンジやウイスキー博物館、ギフトショップを自由に楽しむ。
  • 注意: 製造工程は見学不可、レストランは当面休業(準備中)
  • 期間: 年末年始、工場休業日を除く毎日
  • 備考: 抽選制

 

白州蒸溜所ツアーの予約は公式サイトから↓

 

 

【2024年6月】白州蒸溜所見学|サントリーのウイスキー造りを解説|見学の様子

今回の見学ツアーでは、白州蒸溜所の建設当時からウイスキー事業に携わっていたという、超ベテランの方が講師として案内してくださりました。

サントリーを定年退職された後も、白州蒸溜所でウイスキー造りの伝承を続けているそうです。

 

蒸溜所見学に行く前に、サントリーウイスキーと白州蒸溜所についてのセミナーを受けました。

今回のツアーはプロ向けですが、参加者全員がウイスキーに精通している訳ではありません。見学前のセミナーがあったことで、ビギナー参加者にとって分かりやすく、ツアーをより楽しむことができたと思います。

一般見学のツアーの場合も、ウイスキー初心者向けに分かりやすく案内を行っているので、詳しくない方でも安心して参加することができます。

 

いよいよ蒸溜所見学へ。イヤホンと帽子が支給されます。

今回のツアーではイヤホンからもウイスキーの説明を聞くことができたので、とても良かったです。蒸溜所の機械音は結構なボリュームなので、せっかくの説明が聞こえないことが過去にありました。

他の蒸溜所でも取り入れてほしいですね。

 

サイロ(モルト貯蔵施設)

まず最初に教えてもらったのは、ちょっとマニアック。原料の大麦麦芽(モルト)を保管している「サイロ」です。

他のクラフトウイスキー蒸溜所では、モルトは「袋」に入って置かれているので、これまで「サイロ」を見ることがありませんでした。生産量の多いサントリーの蒸溜所ならではです。

白州蒸溜所で使用するモルトはスコットランド産で、複数社から輸入しています。

これまで自家製麦を行っていませんでしたが、新たにフロアモルティング施設を導入して自家製麦を開始する予定です。(山崎蒸溜所ではすでに自家製麦を始めています。)

 

旧蒸留棟

こちらは一般見学ではお目にかかれない「旧蒸留棟」。1977年の増設後には24基のポットスチルがあり、当時は世界最大規模となっていました。

 

製造工程をプロジェクションマッピングで紹介

旧蒸留棟から現在の白州蒸溜所、通常の見学ルートへ移動。

リニューアル後に新たに導入された、プロジェクションマッピングでウイスキーの製造工程を見ることができる部屋からスタート。ウイスキーが完成するまでを、短い時間で分かりやすく可視化されており、ビギナーにも分かりやすい内容でした。

感情を揺さぶるような「音」と「動き」のある映像は、他の蒸溜所では体験できません。非常に魅力的な演出だと思います。

プロジェクションマッピングを見ることで、ウイスキー造りに対する興味が湧いてくるような演出でした。

 

原料の「モルト」と「ピート」

ウイスキーの原料、大麦麦芽(モルト)の展示。

モルトは通常の「ノンピートモルト」と、ピートで燻煙を行った「ピーテッドモルト」の2種類があり、どちらも香りを嗅ぐことができます。

また、モルトにスモーキーな風味を付与させる「ピート(泥炭)」を実際に触ることもできました。

 

糖化(マッシング)

いよいよウイスキーの仕込みの工程に入ります。

糖化(マッシング)は、粉砕した大麦麦芽に温水を加え、仕込み水と混ぜてお粥状態にします。麦芽に含まれる酵素(糖化酵素)の働きにより、「でんぷん」は「糖分」に変化。

作られた糖化液(麦汁)はろ過して、発酵槽に送られます。

糖化槽(マッシュタン)は、容量130,000リットル。クラフト蒸溜所の見学に行ったことがある方なら、白州蒸溜所の糖化槽が、他と比べてものすごく巨大なことに驚くはず。

マッシュタンには「レーキ」と呼ばれる熊手状の攪拌装置が設置されています。これにより自動的にマッシュを攪拌することができます。

このような機構を持つマッシュタンは「ロイタータン」と呼ばれ、白州蒸溜所の場合は「レーキ」の上下稼働が可能となる「フルロイタータン」が導入されています。上下稼働によって沈澱を促し、得られる麦汁がより清澄になります。

 

マッシュタンの内部。

仕込み中でしたので、お湯が注入されているのも見ることができました。

マッシュタンの内部は、通常の見学ツアーでは見せることがないそうなので、貴重な体験となりました。

 

発酵(ファーメンテーション)

発酵(ファーメンテーション)は、麦汁に酵母を添加しアルコール発酵をさせ、ビール状の液体「ウォッシュ」を生み出す工程のこと。

酵母は麦汁中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分を生み出します。酵母の種類や発酵条件によって、ウイスキーの特長は変化します。

発酵液のアルコール分は約7%。白州蒸溜所の発酵時間は約60時間。

 

発酵中は、液面に炭酸ガスの白い泡がでてきます。

発酵段階によっても状態が変わり、最盛期には全体に泡が発生します。発酵が終わりに近づくと泡は落ち着きます。

 

白州蒸溜所のモルトウイスキーは、全て木桶発酵槽を使用しています。

木桶は保温性が高く、発酵工程で乳酸菌や微生物が発酵を促すことで、特有の甘酸っぱい香りや酸味を生み出します。木桶に棲みついた「森の乳酸菌」によって、白州ならではの個性を生むことができます。

 

蒸留(ディスティレーション)

できあがったウオッシュ(もろみ)は、銅製の釜(ポットスチル)に入れて「蒸溜」を行います。

水の沸点が100℃であるのに対して、エタノールの沸点は約78℃。この沸点の差を利用し、ポットスチルで加熱することで純度の高いアルコールを得ることができます。

蒸留は、「初溜」と「再溜」の計2回。最終的にアルコール度数約70%となり、この無色透明の液体を「ニューポット」と呼びます。

 

通常見学では、蒸溜棟の中には入れませんが、今回は特別に入れて頂けました。

蒸留中のハウス内は蒸し暑い状態。これを体験できるのもウイスキー蒸溜所見学の醍醐味ですね♪

 

蒸留の工程は、ポットスチルの形状や加熱方法などによって、完成するウイスキーの味わいに影響を与えます。白州蒸溜所では多様な原酒をつくるために、あえてさまざまな形やサイズのポットスチルでウイスキー造りを行っています。

他の蒸溜所へ見学に行っても、白州のようにバラバラな大きさ・異なる形状のポットスチルを見かけることはありません。ウイスキーの本場、スコットランドでもありえないほどのバリエーションです。

白州蒸溜所の原酒造りは世界的にも稀と言えるほど複雑に、多様に行われていることが改めて理解できました。

 

写真の左側が「初留器」。ストレート型5基。ランタン型3基。計8基。

初留器は全て「ガス直火焚き」で蒸留しています。サイズは9,000~24,000リットル。ネックの長さやラインアームの角度もそれぞれ違いますね。

一般的にはスチーム加熱蒸留が主流となっていますが、白州蒸溜所では初溜を1,000℃以上の高温加熱となる「ガス直火焚き蒸留」。

直火焚き蒸溜は、すっきり軽快な原酒ができるスチーム加熱蒸留(間接蒸溜)と比べると、香ばしく力強いタイプの原酒を生み出すことができます。

写真の右側が「再留器」。ストレート型6基。ランタン型2基。計8基。

こちらは初留器は異なり、一般的な「スチーム間接加熱」で蒸留。サイズは4,000~14,000リットル。

 

こちらの機器は「スピリッツセイフ」。

蒸留液は、

  • 最初に流れる「ヘッズ(フォアショッツ)」→初留釜に戻す→ウォッシュと合わせて再び蒸留
  • 熟成の工程にまわされる「ハーツ(ミドル)」→熟成の工程にまわす→製品化
  • 蒸留の終わりに近い部分の「テール(フェインツ)」→初留釜に戻す→ウォッシュと合わせて再び蒸留

の3種類に分けられます。

再留の工程では、ウイスキーの良質な香気成分「ハーツ(ミドル)」を分離することが最大の目的。再留によって生み出された蒸留液を適切なタイミングでカットし、熟成にまわす用の「ハーツ(ミドル)」を取り出します。

 

熟成(マチュレーション)

生産棟から少し離れた「貯蔵庫」へバスを利用して移動。

ここが一番行きたかったエリア!ウイスキーの香りとアルコールが充満する貯蔵庫は、ウイスキー好きとっては天国…

ここへ入れば、天使がウイスキーを飲む(エンゼルズシェア)にも納得です(笑)

ウイスキーの製造工程で最も長い期間を要する「熟成」。熟成のメカニズムや重要性は別記事で解説しています。

 

モルトウイスキーの貯蔵庫は、伝統的な積み上げ式の「ダンネージ式」と、1950〜60年代から利用されている「ラック式」の2種類の形式に分けられます。

「ダンネージ式」は、床に木のレールを直接敷き、樽を3~4段ほど積み重ねて熟成します。

一方「ラック式」は、鉄製のラックにウイスキーの樽を並べて熟成させる方法で、十数段にまで積み上げることができるため、スペースを有効的に活用することができます。

 

白州蒸溜所の貯蔵庫は「ラック式」。

貯蔵庫は計18棟。そのほか「近江エージングセラー(19棟)」や、「山崎蒸溜所」と「知多蒸溜所」の貯蔵庫にも分散して貯蔵しています。

 

白州蒸溜所で、主に使用されている樽は「バーボンバレル」と「ホグスヘッド」の2種類。その他、アメリカンホワイトオークで作られた「パンチョン」や、スパニッシュオーク材で作られた「オロロソシェリーカスク」も使用しています。

「バーボンバレル」はアメリカから輸入されたものをそのまま利用。「ホグスヘッド」はバーボンバレルを分解して組み合え、サイズを大きくしたものです。

ホグスヘッドに組み替えると、「鏡板」のサイズが合わなくなってしまうので、アメリカンホワイトオークで新たに作ったものをはめ込んでいます。

 

ウイスキーの「熟成」が一目で分かるように、アクリル板をはめ込んだ樽が展示されていました。これは展示用の樽ではありますが、中身を詰め替えたものではなく、実際に熟成した状態を展示しているそうです。

右側が10年物。左側が15年物。

こうしてみると、エンジェルズシェア(天使のわけまえ)って結構エグイ(笑)

熟成期間が長くなればなるほど、中身のウイスキーは天使に飲まれてしまいます。長期熟成のウイスキーが高価な理由の一つです。

 

以上で蒸溜所見学は終了。

再びバスに乗り、最初に案内されたセミナールームへ移動。

いよいよウイスキーのテイスティングです!

 

テイスティング

今回のテイスティングでは、貴重な白州の構成原酒4種類と、製品の「シングルモルトウイスキー白州」を頂くことができました。

各原酒の個性を一つ一つ解説してもらい、さらにテイスティングのコツなども丁寧にご指導して頂きました。

構成原酒の名称、特徴、味わいは以下の通り。

 

構成原酒① 構成原酒② 構成原酒③ 構成原酒④
名称 ホワイトオーク樽原酒 ピーテッド原酒 スパニッシュオーク樽原酒 ライトリーピーテッド原酒
特徴 軽快でバランスがよく熟成 爽快且つ複雑なスモーキー 甘くフルーティで香味の総量が豊か 「白州」のキーモルト
味わい – 青りんご – 軽快で鼻通りの良いスモーキー – ドライフルーツ(アプリコット・プルーン) – グレープフルーツ、青りんご
– 柑橘系軽いフルーティ – クッキー、ビスケットの甘さ – ティーリーフ、チョコレート – みずみずしく涼やか甘くクリーミー
– バニラ様の甘い香り – スモーキーの長い余韻 – ビターな余韻 – かすかなスモーキー、ほのかな甘み、爽やかな後味

 

個人的に最も印象に残ったのは「スパニッシュオーク樽原酒」。

貴重なスパニッシュオークで作られたシェリーカスクで寝かせた白州は、フルボディで複雑。余韻は長く、甘やかで心地よいビター。

シェリーカスクと言えば「山崎」の方がイメージが湧くと思いますが、白州も山崎を違った良さがありますね。

 

各原酒を並行してテイスティングする機会はめったにありません。

飲み比べると、樽による個性の違い、麦芽による風味の違いが良く分かります。

そして完成品のシングルモルト白州を味わう…

改めて勉強になりました!

 

以上で白州蒸溜所見学&セミナーは終了。

帰りのバスの時間まで少し余裕があるので、ここからはフリータイム。

「テイスティングラウンジ」と「ショップ」に向かいます。

 

 



 

 

次のページでは白州蒸溜所ショップ限定ウイスキーをご紹介!

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