【グレーンウイスキーレビュー】ニッカ カフェグレーンを評価

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事では、ニッカウヰスキーが誇るグレーンウイスキー「ニッカ カフェグレーン」について、テイスティングレビューから評価、定価や市場価格の推移まで、徹底的に解説します。

「甘くて飲みやすい」だけでは語り尽くせない、カフェスチル由来の奥深い味わい。そして、なぜこのウイスキーが“グレーンなのに主役級”と称されるのか——その理由に迫ります。

「ニッカ カフェグレーン」の魅力を深く知りたい方や、「カフェ式連続式蒸溜機」の特徴が気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

ニッカ カフェグレーンとは?「カフェ式連続式蒸溜機」本物の味へのこだわり

「ニッカ カフェグレーン」は、宮城県仙台市にある宮城峡蒸溜所にて、カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル)を用いて製造される、ジャパニーズグレーンウイスキーです。コーン(トウモロコシ)を主原料にし、一般的なグレーンウイスキーよりも風味豊かな味わいが特徴です。

ブレンデッドウイスキーのベースを超える存在感を放つボトルとして、日本市場では2013年からリリースされています。

 

カフェ式連続式蒸溜機とは?

カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル/Coffey Still)は、19世紀初頭にアイルランド人のイーニアス・コフィー(Aeneas Coffey)によって改良・完成された連続式蒸溜機の一種です。連続式とはいえ、一般的な現代のグレーンウイスキー製造用の超効率的な多塔式蒸溜機とは異なり、原料の香味成分をしっかり残すという特徴があります。

発明者「イーニアス・コフィー」の背景

コフィーは1780年、フランス・カレーで生まれました。10代でアイルランド・ダブリンに戻り、名門トリニティ・カレッジを卒業後、アイルランド関税局の役人として働きます。

酒類の取り締まりに関わる中で、非効率なポットスチルに代わる手法を模索しはじめたとされています。1823年の酒税法改正では、アイルランドの蒸溜事情について何度も報告しており、このような経験が、蒸溜機の開発に影響を与えたことは間違いありません。

翌1824年には関税局を辞職。開発のために蒸留所を購入。フランスやアイルランドにあった蒸留器を参考にし、独自の改良を加えて1830年に「コフィースチル(連続式蒸留機)」を完成させます。その後、1831年にはアイルランド国内で14年間の特許(パテント)を取得。蒸留器は「コフィー・スチル」や「パテント・スチル」と呼ばれるようになります。

ニッカウヰスキーとカフェスチルの導入

カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル)は、原料の香味成分を比較的多く残すという特徴があります。

現代のグレーンウイスキーのほとんどは高効率な多塔式連続蒸溜機で造られていますが、それに比べて旧式の連続式蒸溜機であるカフェ式蒸溜機は、蒸溜効率(アルコールの精製)では劣るものの、原料由来の香味成分をより多く残すことが可能です。

ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝は、スコットランド留学時代に得た経験と知識をもとに、「本物のウイスキーをつくるには、個性あるグレーンウイスキーが不可欠」と考えていました。そして1963年に、この“時代遅れ”とも言える設備をあえて導入。その理由はただ一つ、「本物のおいしさ」を追求するため。

カフェスチルは、1963年に兵庫県西宮市の朝日酒造西宮工場に初めて導入されました。当初、ニッカウヰスキーは資金繰りの問題から直接導入することが難しく、旧知の仲であった朝日麦酒(現アサヒビール)の社長・山本為三郎氏の支援を受け、朝日酒造がカフェスチルを導入し、ニッカがその原酒を購入する形で運用が開始されます。

その後、1969年には朝日酒造がニッカウヰスキーを吸収合併し、カフェスチルはニッカウヰスキー所有となります。1999年には、西宮工場から宮城峡蒸溜所へと移設。現在も同蒸溜所で稼働しています。移設後は、グレーンウイスキーの製造だけでなく、クラフトジンやウォッカの製造も、カフェスチルを用いて製造するようになりました。(西宮工場は2024年末に閉鎖しています。)

 

カフェスチルが生み出す「個性あるグレーン」

カフェスチルで造られる原酒は、効率重視の現代的な連続蒸溜機では得られない、穀物の甘みや油分、ウッディさなどの香味成分を豊かに残します。だからこそ、ニッカのブレンデッドウイスキーにおける骨格を成す存在となっており、モルトウイスキーに負けない深みのある味わいが特徴です。

竹鶴政孝の哲学と、それを支えた仲間たちの協力がなければ、この蒸溜機が日本にやってくることはなかったでしょう。現在もニッカのウイスキーの個性と品質を支える重要な設備として、現在も宮城峡蒸溜所で稼働を続けています。

 

 

【グレーンウイスキーレビュー】ニッカ カフェグレーンを評価

ニッカ カフェグレーン  Nikka Coffey Grain Whisky

ニッカ カフェグレーン

 

定価と価格推移

「ニッカ カフェグレーン」の定価は税込6,600円。

2015年9月には価格改定が行われ、税抜5,200円から税抜6,000円へと値上げされましたが、それ以降は2025年6月時点でも再値上げは確認されていません。この10年間でウイスキー全体の価格が高騰する中、これほど長く価格が据え置かれている銘柄は非常に珍しいと言えるでしょう。

また、「ニッカ カフェグレーン」は海外市場での人気が高い一方、国内需要はそこまで高くないという特徴があります。そのため流通量が限られており、2020年から2024年ごろまでは定価を上回る価格で取引されることもありました。

しかし2025年に入り、ジャパニーズウイスキーのブームが一段落したことを受けて、価格の高騰も落ち着きを見せています。現在は定価をやや下回る価格で購入できるケースも増えてきました。

「ニッカ カフェグレーン」の価格推移(税込)

  • 2015年5月(定価5,616円):4,500円前後
  • 2023年5月(定価6,600円):7,500円~8,500円
  • 2024年5月(定価6,600円):7,500円~8,500円
  • 2025年5月(定価6,600円):5,000円~6,000円

 

香り

バニラ、青りんご、ウッドデッキ、シトラス系の香水、接着剤、紅茶。

加水後のそれほど変化はなし。モルトウイスキーに比べ、全体的に落ち着いたアロマ。

 

味わい

ソフトな甘さが広がり、徐々にドライ。スムースで若干オイリー。ミディアムライトボディ。スムースな飲み心地ですが、それに比べ余韻はしっかりとしています。穀物、カスタードクリーム。

加水するとよりなめらかな味わいに。しかし、バランスは崩れず骨格があります。トワイトワイスアップまで加水しても、ボディがしっかりとしています。

 

評価

「ニッカ カフェグレーン」の評価としては、「グレーンウイスキーとは、こうだ!飲み方万能で豊潤」です。

まず気になるところに、「知多」と異なり「ニッカ カフェグレーン」には、「シングル(単一蒸留所)」の表記がありません。公式ページを拝見しても、宮城峡蒸溜所で造られていますが、「シングルグレーン」の表記は採用されていません。

これは恐らく、ブランディングとして「あえて表記しない」のではなく、やはり「シングルグレーンではないから」と考えるべきかと。

考察できる点として、カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル)は、一度移設されていることにあります。設置当時は兵庫県の西宮工場にあり、その後、宮城峡蒸溜所に移設しているため、西宮工場時代の原酒を混入している場合、「シングル」とは名乗れない形となります。

ただ、カフェスチルの移設は1999年のことで、すでに25年以上が経過しています。1本6000円のボトルに、25年以上熟成された原酒が多く使われているとは考えにくいため、仮に西宮時代の原酒が含まれていたとしても、ごくわずかでしょう。しかし、こうした経緯が「ニッカ カフェグレーン」がシングルグレーンと表記されない理由の一端を示しています。

まあ、1本6000円のウイスキーに、25年以上の長期熟成原酒が大量にブレンドされていることはまずありえないので、西宮の原酒が混入されていたとしても、ほんのわずかだと思いますから、「ニッカ カフェグレーン」は公式に「シングルグレーン」とは表記されていないものの、実質的には“ほぼシングルグレーンウイスキー”と考えて差し支えないボトルだといえます。

「ニッカ カフェグレーン」は、穀物由来の豊かな香味としっかりとした甘みが特徴的で、いかにも“ジャパニーズグレーン”らしいリッチでコクのある味わいが楽しめます。スコッチのグレーンウイスキーとはまったく異なるアプローチで、「単体」でじっくり味わえる完成度の高さが魅力です。これほどのグレーン原酒が、ニッカのブレンデッドウイスキーに使われているのですから、そりゃ美味しくなるはずですよね(笑)。

全体的にしっかりとした骨格があり、ややアルコール感が立つ部分もありますが、それもまた味わいの一部。グレーンらしい穏やかさの中に、どっしりとしたボディ感があり、加水にも強く、水割りやハイボールにしても崩れないバランスを保ちます。むしろ、ストレートよりも割って飲む方が、このウイスキーの魅力がより引き立つかもしれません。カフェスチル由来の芳醇な個性は、どの飲み方でもしっかりと存在感を放っています。

「ニッカ カフェグレーン」は、グレーンらしさをしっかり備えつつ、モルトウイスキーにも通じる飲みごたえを持っています。アロマや余韻の複雑さではモルトウイスキーに一歩譲る部分もありますが、それでも単なる脇役とは言えない、独自の存在感と楽しみ方があるグレーンウイスキーだといえるでしょう。

最後に、サントリーとニッカ、それぞれのグレーンウイスキーを代表する「知多」と「ニッカ カフェグレーン」を比較してみましょう。

ひと言でいえば、「知多」は飲みやすさに優れたグレーンウイスキー。フルーティーでスムースな口当たり、甘みとほろ苦さの絶妙なバランスは、非常に洗練されていて完成度の高い一本です。誰にでも勧めやすい、万人向けのウイスキーといえるでしょう。

対して「ニッカ カフェグレーン」は、より飲みごたえがあり、グレーンウイスキー本来の個性をしっかりと味わえるタイプ。どっしりとしたボディと芳醇な香りには、ニッカウヰスキーが長年培ってきたクラフトマンシップが表れています。「おいしさ」や「売れ筋」を追うというよりも、“グレーンウイスキーとはこうあるべきだ”という、マッサン(竹鶴政孝)のウイスキー哲学を貫いたような一本。これは、蒸留所限定の原酒シリーズを思わせる、本格派のつくりです。

「知多」と「ニッカ カフェグレーン」。どちらもそれぞれの良さがありますから、ぜひ比較しながら飲んでみてください♪

ニッカ カフェグレーン

 

 



 

 

「ニッカ カフェグレーン」は、ニッカウヰスキーが長年守り続けてきたカフェ式連続式蒸溜機から生まれる、誇るべき“職人の結晶”です。甘み、深み、そして繊細ながらも芯のあるボディ。グレーンウイスキーの可能性をここまで引き出せるのかと、驚かされます。

ブレンデッドの陰に隠れていたはずのグレーンにこそ、こんなにも豊かな表情があった――そう気づかせてくれるこのボトルは、ウイスキーラバーにとって一つの転機となり得るはず。

「ニッカ カフェグレーン」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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