
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
アイラ島の潮風に包まれながら、静かに眠りについていた蒸溜所――ポートエレン。1983年に閉鎖されて以来、長らく沈黙を守ってきたこの蒸溜所は、今やウイスキー愛好家たちの間で“伝説”と称される存在となっています。
今回は、そんな幻の原酒をゴードン&マクファイル社がボトリングした「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」をご紹介。本ボトルのテイスティングレビューを中心に、その魅力や評価について詳しく解説します。
このウイスキーの味わい、そしてポートエレン蒸溜所が持つ特別な魅力を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
スモーキーで繊細な一滴の奥に眠る、20世紀アイラの記憶を一緒に辿っていきましょう。
【ウイスキーレビュー】ポートエレン蒸溜所とは?

出典:By Ayack – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4909985
ポートエレン蒸溜所(Port Ellen Distillery)は、スコットランド・アイラ島に位置する、伝説的な存在として語り継がれるシングルモルトウイスキー蒸溜所です。その希少性と品質の高さから、世界中のウイスキーファンやコレクターの間で非常に高い評価を受けています。
ポートエレン蒸溜所の創業は1825年で、長い歴史の中で一度は閉鎖と再開を繰り返しましたが、1983年の閉鎖以降はウイスキーの生産を停止し、モルトスター(麦芽製造所)としての役割に転換されました。この閉鎖によって、ポートエレンのオリジナル原酒は極めて貴重なものとなり、特にボトラーズブランドやオフィシャルリリースはプレミアム価格で取引されています。
ポートエレンのウイスキーは、典型的なアイラモルトらしいスモーキーでピーティーな風味に加えて、独特のミネラル感や繊細なフルーティさが特徴です。アイラモルトの中でも比較的エレガントで洗練された味わいと評されることが多く、長期熟成されたボトルは驚くほど複雑かつバランスの取れた風味を備えています。
そして2024年3月、長い歳月と準備期間を経て、ついにポートエレン蒸溜所は正式に操業を再開しました。ディアジオ社による大規模な再建プロジェクトのもと、蒸溜設備や建物はオリジナルの設計を尊重しつつも、現代技術との融合を図った最新鋭の施設へと進化。かつてのレシピや製法の再現にも力を入れ、伝説的な味わいの復活に向けた挑戦が始まっています。
かつて“幻のモルト”と呼ばれたウイスキーの再来は、世界中のファンにとって大きな歓びとなりました。今後リリースされる新しいポートエレンは、伝統と革新が融合した新たな伝説として期待されています。とはいえ、「旧ポートエレン」のウイスキーが持つ特別な希少価値は、今も変わることなく輝き続けています。
【ウイスキーレビュー】ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイスを評価
ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス
Port Ellen 1981-2000 Gordon & MacPhail Connoisseurs Choice
- シングルモルトスコッチウイスキー
- 40% 700ml
- ヴィンテージ:1981年
- ボトリング:2000年
- 熟成年数:18年
- ボトラーズ:ゴードン&マクファイル社
- シリーズ:コニサーズチョイス マップラベル
- 輸入業者:ジャパンインポートシステム
- 抜栓時期:2023年1月
- テイスティング時期:2025年4月
- whiskybaseでの評価:88.26/100
「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」の特徴
「ポートエレン 1981-2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」は、アイラ島にかつて存在した伝説の蒸溜所「ポートエレン」で1981年に蒸留され、2000年にボトリングされた18年熟成のシングルモルトです。老舗のインディペンデントボトラー「ゴードン&マクファイル(G&M)」の「コニサーズチョイス」シリーズのひとつとしてリリースされました。
熟成に使用された樽の種類やカスクナンバー、ボトリング数は明らかにされていませんが、40%まで加水調整されており、複数の樽をヴァッティングしたものと考えられます。
アイラモルトとしての希少性と、閉鎖蒸溜所の歴史的価値を併せ持つこのボトルは、世界中のウイスキー愛好家に高く評価され、現在ではコレクターズアイテムとして非常に高値で取引されています。
「ゴードン&マクファイル Gordon & MacPhail」とは?

出典:https://www.facebook.com/gordonmacphailretailshop/?locale=ja_JP
ゴードン&マクファイル(Gordon & MacPhail、略称G&M)は、1895年創業のスコットランド・スペイサイド地方エルギンを拠点とする老舗インディペンデント・ボトラーです。
G&M社の主な事業は、スコットランド各地の蒸溜所から買い付けた若い原酒を自社の熟成庫で丁寧に熟成させた後、最適なタイミングで瓶詰・販売するというもの。熟成にはシェリー樽やバーボン樽などを厳選し、それぞれの蒸溜所が持つ個性を最大限に引き出すことに長けています。
1968年に始まった、同社の代表的なシリーズが「コニサーズチョイス(Connoisseurs Choice)」。このシリーズは、当時まだ名声の無かった蒸溜所のモルト原酒を積極的にボトリングし、シングルモルトの多様性を広めた先駆的な存在となります。
また、G&M社は1993年には閉鎖されていた「ベンローマック蒸溜所」を買収・復活させ、自社蒸留によるウイスキーづくりも展開しています。
G&Mはその優れた熟成技術から“樽選びの魔術師”とも称され、40年以上におよぶ長期熟成の実績も豊富です。時に蒸溜所公式ボトルを凌ぐ品質を示すこともあり、世界中のウイスキーファンや評論家から「信頼できるボトラー」として高く評価されています。
香り
青りんご、洋梨、フラワーブーケ、ドライレーズン、サンザシ、ハチミツ、マスカットグミ、ライチ、グラッパ、レモンキャンディー、ドライパイン、アップルミント、ヘザーピート、
トワイスアップまで加水すると、アニスリキュール、バター、紅茶。
味わい
まろやかな口当たり。フルーティーさの後にスモーキーフレーバーが上品に開きます。ミディアムライトボディ。フレグランスやグラッパを思わせるフローラルな味わい。中盤から終盤にかけては、ピーティーなフレーバーは少し落ち着きます。モルティーでエレガント。
余韻の長さが中程度。複雑かつ洗練された味わい。オールドボトルでありながら、ボディは保っていて、劣化している印象はありません。経年変化によるものか、アイラモルトの割には少しさっぱりとした後味です。
トワイスアップまで加水すると甘さと酸味が引き立ち、クリーミーでエキゾチックな印象。1:1の割合まで薄めても、骨格があって素晴らしいバランス。
評価
「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」の評価としては、「ミズナラ樽の影響⁉スモーキーだけでない、味わい深い1本」です。
ポートエレンの希少性やこれまでの歩み、新たに再建された蒸溜所については、別の記事で詳しく紹介しています。ご興味のある方はぜひそちらもご覧ください。↓
「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」を購入したのは2011年から2012年頃のことです。この頃は、まだポートエレンの価格は今ほど高騰していなくて、東京駅近くの某リカーストアや、S濃屋さんの店頭でも見かけた記憶があります。
現在では、銘柄によっては1本30万円を超える超高級レアウイスキーとなったポートエレンですが、「その価格に見合う価値があるのか?」と疑問を抱く人も少なくありません。冷静に考えると、蒸溜所が閉鎖されたからといっても、あまりに高額すぎるという意見はバーテンダーたちの間でもよく聞かれます。
それでも、「なくなる前に飲むしかない」というのが、オールドボトルの鉄則であることは変わりません。時が経つにつれて、一部のお金持ちのコレクターが買いあさり、BARでも適正価格のポートエレンはどんどん減っていっています。
高いと理解しつつも、飲みたければ飲んだほうがいいというのが正直なところ。そして、「今が最安値かもしれない」と思えば、案外抵抗もないような…あるような(笑)
「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」は、40%の加水タイプです。ノージングではスモーキーさが控えめで、フルーティー、フローラル、ハーブのアロマが複雑に絡み合っています。熟成年数は18年ですが、若すぎるわけではなく、全体的に樽香は穏やかです。オーク樽からくるバニラやキャラメルといった分かりやすい熟成由来の香りよりも、モルト由来のややニューポッティーな風味が目立ちます。
率直に「グラッパ」っぽいな、と。それも、高級グラッパ「ロマーノ・レヴィ」を思わせるような、上品で複雑な印象。奥行きのある独特な個性が感じられます。
口に含むと、アイラモルトらしいピーティー&スモーキーな風味が広がりますが、キルダルトン3兄弟(ラフロイグ、ラガヴーリン、アードベッグ)と比較すると、やや落ち着いた印象。この落ち着きは、18年熟成で、ボトリングが「2000年」というオールドボトル(古酒)であることが影響しているかもしれません。
いずれにしても、ボトリング時点で、キルダルトン3兄弟のようなヘビーなスモーキーさは感じられないバランスです。幾重にも広がる香りの複雑さにピーティーさが加わり、現行品のアイラモルトでは味わえない独特の個性。
個人的には、「レアウイスキー」や「オールドボトル」だから美味しいというだけでなく、希少性が評価に影響を与えないよう、冷静にテイスティングすることを心がけています。しかし、この「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」に関しては、やはりそのポートエレンの素晴らしさを認めざるを得ません(笑)
ボトラーズも老舗の「ゴードン&マクファイル」ということで、安定した美味しさを提供してくれますし、輸入元が「ジャパンインポートシステム」さんということもあって、品質面でも安心して楽しめますね。
「ウイスキーベース」での評価は88点。平均価格は1,509ユーロ、日本円で約24万4千円となっています。ポートエレン全体と比較すると、まずまずの評価と言えるでしょう。数多くの名作が存在するポートエレンの中では、エントリー向けとして初めてポートエレンを楽しむ方にもおすすめのボトル。
期待を裏切らず、素晴らしいシングルモルトウイスキーです。
かつて静かにその役目を終えたポートエレン蒸溜所。その原酒が今なお多くの人を魅了し続けているのは、単なる希少性だけでなく、そこに詰まった時代の空気と、アイラの風土が生み出した唯一無二の個性。
今回ご紹介した「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」もまた、そんな記憶と情景を閉じ込めた1本でした。新たなポートエレンの時代が幕を開けた今だからこそ、オールドボトルの味わいを愉しみたいですね!
「ポートエレン 1981‐2000 ゴードン&マクファイル コニサーズチョイス」を、まだ試したことがない方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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