
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
ウイスキーの味わいを決める大きな要素である「熟成年数」と「樽の影響」。長く熟成すれば濃厚になるとは限らず、短期間でも樽の種類によって個性が大きく変わります。
特にシェリーカスクの場合、ファーストフィルなら力強い風味を。フォースフィルのような使い込まれた樽であれば、穏やかな味わいを生み出します。
そんな樽の魅力を存分に楽しめるのが、150年以上続く家族経営の蒸溜所が手がける「グレンファークラス17年」。本記事では、その味わいの特徴やボトルの評価、さらに蒸溜所の魅力について詳しく解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
グレンファークラス蒸溜所解説
グレンファークラス蒸溜所 Glenfarclas distillery
- 地域:スペイサイド
- 創業年:1836年
- オーナー:J&Gグラント社
- 蒸留器:初留x3基、再留x3基
- 仕込み水:ベンリネス山の伏流水(湧き水)
- 年間生産量:350万リットル
歴史と家族経営の伝統
グレンファークラスは、1836年にロバート・ヘイによって設立。1865年に初代「ジョン・グラント」が、約511ポンドで蒸留所を買収し、以来、現在に至るまでグラント家によって経営されています。スコッチウイスキー業界において、150年以上にわたり同じ家族が経営を続けている蒸溜所は大変珍しく、家族経営ならではのこだわりが随所に感じられます。
短期的な利益を追求するのではなく、長期的な品質向上を最優先する経営方針を貫いており、特にシェリー樽熟成へのこだわりが大きな特徴となっています。
伝統的な直火炊き蒸溜
グレンファークラス蒸溜所では、現在も「直火炊き」方式のポットスチルを採用しており、今では珍しいガスバーナーによる加熱にこだわり続けています。
一度はコストの低い「間接加熱(スチームコイル)」を試みましたが、求めるウイスキーの風味が得られず、従来の直火炊きを守り続ける決断。この直火炊きによる蒸溜は、火加減の調整が難しく、メンテナンスコストも高い方法ですが、キャラメルのような濃厚な甘みやオイリーな口当たりを生み出す要因の一つとなっています。
多くの蒸溜所が間接加熱へ移行する中でも、グレンファークラスならではの厚みのあるリッチな味わいを実現するため、この伝統製法を守り続けているのです。
オロロソ・シェリー樽熟成
グレンファークラス蒸溜所が誇る最大の特徴の一つは、シェリー樽熟成への揺るぎないこだわりです。直火炊き蒸溜と並び、蒸溜所が大切に守り続けている伝統的な製法の一環となっています。
シェリー樽は非常に高価ですが、グレンファークラスではフィニッシュのみの使用は一切行わず、100%シェリー樽熟成を貫いています。さまざまな種類のシーズニングシェリーを試した結果、最も理想的な風味をもたらすとして選ばれたのがオロロソシェリーでした。
グレンファークラス蒸溜所では、30年以上にわたり契約を結ぶスペインの生産者から、安定して高品質なオロロソシェリー樽の供給を受けています。
さらに、1stフィル(一回目)から4thフィル(四回目)までのオロロソシェリー樽を使い分けることで、多彩な風味を生み出し、幅広いラインナップを展開。多くの蒸溜所がバーボン樽とシェリー樽を併用する中、グレンファークラスはシェリー樽熟成に特化し続けています。
主なラインナップ
度数 | 特徴 | 参考価格(2025年2月時点 | |
---|---|---|---|
8年 | 40% | フレッシュフルーツの香りが主体。リンゴやバニラの甘さとスパイスのバランスが良い。 | ¥4,876 |
10年 | 40% | シェリー樽熟成らしいバランスの取れた甘みとスパイス。麦芽の香りが特徴。 | ¥4,804 |
12年 | 43% | ドライフルーツやベリーの香り。甘みとスパイスのバランスが良く、コスパ◎。 | ¥5,930 |
15年 | 46% | 濃厚なシェリー感。チョコレートやタンニンの深みがあり、ビターな余韻。 | ¥9,000~12,000 |
17年 | 43% | 15年よりもなめらかで、まろやか。スパイス感も穏やかで上品な仕上がり。 | ¥12,000~14,000 |
21年 (終売) | 43% | シェリーの風味が落ち着き、フローラルでエレガント。繊細な甘みと奥行きのある味わい。 | ¥26,000~32,000 |
25年 | 43% | 25年熟成ながらコスパ抜群。シェリー樽由来の豊かな甘みと滑らかな舌触り。 | ¥25,000~48,000 |
105 | 60% | アルコール度数の高さが特徴。ドライでフルーティー。濃縮されたフレーバーがあり、ハイボールや水割りでも崩れにくい。 | ¥7,899 |
【ウイスキーレビュー】グレンファークラス17年を評価
グレンファークラス 17年
Glenfarclas 17 year old
- 43% 700ml
- 正規販売ボトル(ミリオン商事)
- 樽:100%オロロソシェリー樽。17年以上の原酒を使用。
- 抜栓時期:2022年10月
- テイスティング時期:2025年3月
- whiskybaseでの評価:86.00/100
- 参考小売価格:18,000(税別)
- 楽天市場価格[2025年3月]:12,408円
- Amazon価格[2025年3月]:12,295円
終売の噂??「グレンファークラス 17年」とは?
オロロソシェリーカスクで17年以上熟成された「グレンファークラス17年」。かつて存在した「グレンファークラス21年」が終売して以来、ラインナップの中で重要な役割を担うボトルとなっています。
2021年頃までは、「グレンファークラス21年」が1万円以内で手に入る、シェリーカスク好きにとって理想的なウイスキーでした。しかし、終売後は21年物の代わりに17年物が注目されるようになり、存在感は以前よりも増していると思います。
近年、グレンファークラスに限らず、オールシェリーカスク熟成のシングルモルトは価格が高騰しており、17年クラスの熟成年数になると1万円を超えるのが一般的になっています。21年は価格が上昇したものの、クオリティを考えれば依然として優れたシェリーカスクウイスキーであることに変わりありません。
「グレンファークラス17年」の終売が噂される理由としては、主に2つの要因があると考えられます。
1. グレンファークラス21年の終売
すでにラインナップから姿を消した21年と同様に、17年以上の原酒を使用した17年物も、現在のウイスキー市場ではリッチなアイテムであることに変わりありません。原酒の供給量が難しくなれば、17年も21年のように突如として終売が発表されてもおかしくないはず…(ミリオン商事さんいわく、21年の終売は突然だったとのこと・)
さらに、グレンファークラスには15年という王道の熟成年数のボトルが存在するため、ラインナップ整理の一環として、17年も終売になる可能性があるのでは、という憶測が広がっています。
2. 値上げと在庫不足
グレンファークラス全体で価格上昇が続いており、特に熟成年数の長いボトルほど流通量が減少しています。そのため、店頭で17年物を見かける機会が以前よりも少なくなったことで、終売の噂が加速しているようです。
ただし、こうした値上げや原酒不足はスコッチ業界全体の傾向であり、グレンファークラスだけに限った話ではありませんし、現在の流通価格を見ても、2年程前からほぼ変動がないことから、一時期と比べると在庫不足はやや解消できているようにも思えます。
しかし、原酒の供給状況や市場の変化によっては、今後も価格上昇やラインナップの見直しが進む可能性もあります。現在のうちに確保しておくのも一つの選択肢かもしれません。
定価と価格推移
「グレンファークラス 17年」は、2023年4月の価格改定により13,000円(税抜)から18,000円(税抜)へ値上がりしました。2025年3月時点での値上げ情報はありません。
税込価格推移
- 2023年1月 定価14,300円
- 2023年4月 定価19,800円:流通価格16,000円前後 ※値上げ直後
- 2024年4月 定価19,800円:流通価格12,000円~17,000円前後
- 2025年3月 定価19,800円:流通価格12,000円~17,000円前後
並行輸入品は12,000円台で販売されていますが、正規輸入ボトルは若干高めで取引されており、ショップによっては18,000円程で販売されています。
香り
ミルクキャラメル、ハチミツ、レーズン、バニラ、アプリコット、オレンジビターズ、マーマレードジャム、レモングラス、アーモンド、洋梨、ヌガーグラッセ。香りは豊かでバリエーションも豊富。
加水すると青りんご、ビスケット、シナモン。
味わい
甘くて柔らかい味わい。ミディアムボディ。少しオイリー。中盤以降はドライで上品なビター。キャラメル、カカオ。フィニッシュにかけてはシェリーカスクらしい、フルーティーさとスパイス、コクのある余韻が続きます。
加水すると甘みが増して、飲みごたえがあるなかにもスッキリとした印象。トワイスアップまでの加水では、余韻の長さに変化がなく、心地よいアフター。
評価
「グレンファークラス17年」の評価としては、「原酒をバランスよくブレンド!高品質な17年物」です。
シェリーカスク由来の風味を感じつつも、「シェリー・シェリー」してない個性。シングルモルトとしてのバランスがとれています。これは、グレンファークラスが1st~4thまでのシェリーカスクをバランスよく合わせてる製法の影響でしょう。シェリーカスクの風味が強すぎる訳でもなく、モルト由来の風味と、スパニッシュオークとアメリカンオークが生み出す樽香が上品に溶け込んでいます。
シェリーカスクの風味をどのように表現するかは、各蒸留所やラインアップごとの「酒齢」によっても変わると思いますが、「グレンファークラス17年」の場合、「グレンファークラス15年」が割としっかりシェリーの風味を感じるタイプだったことから、17年物は、熟成年数の長さをより感じやすくするために、あえてソフトに感じるようにつくっているのかも。
ウイスキーの「熟成年数」と「樽からの影響」は非常に奥が深く、単純に熟成期間が長いほど味が濃くなるわけではありません。逆に、熟成期間が短いからといって、必ずしもシンプルな味わいになるとも限りません。
たとえば、ファーストフィルの樽であれば、比較的短期間でもしっかりと樽の風味がウイスキーに移ります。一方、フォースフィルまで使い込まれた古樽では、樽の影響が穏やかになり、ウイスキーの個性に優しく寄り添うような熟成が進みます。
「グレンファークラス17年」は、ファーストフィルからフォースフィルまでの原酒をバランスよくブレンドすることで、シェリーカスクの特徴を活かしつつ、17年熟成ならではのまろやかさを生み出しています。
以前に比べてやや高級な価格帯になりましたが、その品質の高さは折り紙付き。口当たりは上品で、12年や15年とはまた違った個性が感じられます。
おすすめの飲み方としてはストレートを推奨しますが、ハイボールも悪くありません。「グレンファークラス15年」よりは、シェリーカスク由来の個性が整っているので、ハイボールでもバランスは崩れず、エステリーでフルーティーなアロマが楽しめます。
公式テイスティングノート
ふんわりと広がるシェリーの甘美な香り。アタックはソフトで、バランスの取れた滑らかな口当たり。とてもリッチなボディ。長期熟成による複雑で深い味わいの余韻へと続きます。
グレンファークラス17年は、シェリー樽熟成の魅力を存分に楽しめる一本でありながら、シェリーの主張が強すぎず、バランスがとれています。オロロソシェリー樽の影響を受けたリッチなフレーバーと、17年熟成ならではのまろやかさが調和し、ストレートはもちろん、ハイボールでも楽しめる優れたシングルモルトウイスキーです。
シェリーカスク好きの方や、エレガントで落ち着いたウイスキーを求める方には、試していただきたい1本。シングルモルトスコッチウイスキー「グレンファークラス17年」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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