こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、シングルモルトスコッチウイスキー「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」のテイスティングレビューと、「オクトモア15」シリーズの発売日や、「15.3」の定価、ボトル評価についても解説致します。
「オクトモアの中のオクトモア」とも呼ばれている「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」は、過去2番目に高いフェノール値で仕込まれている話題のウイスキーです。詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
【ウイスキーレビュー】オクトモア 15.3 アイラ・バーレイの製造元「ブルックラディ蒸溜所」を解説
ブルックラディ Bruichladdich
- 地域:アイラ島
- 創業年:1881年
- 所有者:レミーコアントロー社
- 年間生産量:150万リットル
「オクトモア」を製造する「ブルックラディ(Bruichladdich)」蒸留所は、1881年創業。その歴史は多くのオーナー交代や生産と休止の繰り返しによって激動的でした。
現在のブルックラディの姿が形作られたのは、2000年頃から。この時期、蒸溜所はマーレイ・マクダビット社によって買収され、ジム・マッキュワンを蒸留所の責任者に迎えることで新たなスタートを切りました。
マッキュワン氏はアイラ島の出身で、「アイラの伝説の男」と呼ばれるウイスキー製造のプロフェッショナル。何を隠そう、「オクトモア」の誕生も彼のプロジェクトの一端であり、マッキュワン氏は「オクトモア」の生みの親でもあります。彼のリーダーシップの下で、ブルックラディの再建が始まります。
マッキュワン氏が特にこだわったのは、ウイスキー造りにおける「スコットランド産」を原材料にすることでした。スコッチウイスキーなのに外国産の大麦を使用することに疑問を持ち、アイラ島で大麦を育てる計画を推し進めます。
そして現在は、ブルックラディ蒸溜所で使用する大麦はすべてスコットランド産となり、さらにその内約50%がアイラ島産となりました。この取り組みにより、ブルックラディはウイスキーにおける「テロワール」の重要性を強調し、多くのウイスキーファンから支持を受けるようになります。
ブルックラディ蒸溜所の主力製品である「ブルックラディ・クラシックラディ(ノンピーテッド)」はもちろん、ヘビリーピーテッドタイプの「ポートシャーロット(フェノール値40ppm)」。そして、スーパーヘビリーピーテッドの「オクトモア」についても、ウイスキーの品評会で優秀な賞を数多く獲得します。
【ウイスキーレビュー】オクトモア 15.3 アイラ・バーレイを評価
オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ
- 容量:700㎖
- アルコール度数:61.3%
- フェノール値:307.2PPM
- 樽:ファーストフィル バーボン樽とスペイン、ヘレスのフェルナンド・デ・カスティージャ醸造所のファーストフィル オロロソシェリー樽
- 熟成年数:5年
- 発売日:2024年9月25日
- 抜栓時期:2024年9月末
- テイスティング時期:2024年11月
- whiskybaseでの評価:89.14/100
- 希望小売価格:26,500円(税抜)
- 楽天市場価格[2024年11月]:在庫なし
- Amazon価格[2024年11月]:64,500円
熟成樽
「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」の熟成樽は、ファーストフィルのバーボン樽(69%)と、スペイン・ヘレス地方に位置する「フェルナンド・デ・カスティージャ醸造所」製のファーストフィル・オロロソシェリー樽(31%)。2種類の樽で全期間(5年間)熟成し、それぞれの原酒をヴァッテッドしています。
オクトモアのエディションには大まかにルールが決められています。
1の位はリリースされた回数を表し、「15.3」は、15番目にリリースされたエディションにとなり、1桁が同じ数字であれば、同じ年にリリースされたことになります。
そして小数点以下ですが、こちらは数字によって以下のように分別できます。
- 「×.1」→バーボン樽原酒100%。
- 「×.2」→ワイン樽原酒とその他原酒の組み合わせ。
- 「×.3」→オクトモア農場産の大麦を使用。アイラ島産モルト100%。
- 「×.4」→ヴァージンオーク(新樽)を使用。樽材はアメリカンオーク、カリビアンオーク、リム―ザンオークなど。
オクトモアの基軸である「.1」は、これまでバーボン樽でのみ熟成させていますが、「.3」は毎回異なる樽を使用しており、バーボン樽100%の年が多い中で、ワイン樽やPXシェリー樽を用いることもありました。
「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」に関しては、フェルナンド・デ・カスティージャ醸造所製のオロロソシェリー樽が、キーとなっているのは明らかです。単に「オロロソシェリー樽」ではなく、わざわざシェリー樽の供給元まで公開していることを考えると、オクトモアが「フェルナンド・デ・カスティージャ」をかなり気に行っているのことが分かりますし、品質が良いことに間違いないでしょう。
フェルナンド・デ・カスティージャ社は、アンダルシア州で1837年に設立した会社で、シェリー酒よりも「シェリーブランデー」のメーカーとして有名です。しかし、近年はシェリーの大手「ヴァルデスピノ社」からボデガを購入するなどて、シェリー酒の生産にも力を注いでいます。
シェリー造りはまだ小規模ですが、すでに高品質な商品を数多く生産しています。古いソレラ・システムで造られた「アンティケ・シリーズ」は、名実共に最高級品として知られています。年季の入ったオロロソシェリー樽は、ウイスキー用に短期間でつくられたものと比べ、円熟した風味を付与することができます。
「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」にヴァッテッドしているオロロソシェリー原酒は31%。そこまで多くありませんが、ウイスキーの熟成としては一度目となる「ファーストフィル」の樽を使用しているので、3割程度の比率だとしても、シェリーの風味はしっかりと感じる仕上がりとなっています。
原料
「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」の原料には、ブルックラディ蒸留所から近くに位置する「オクトモア農場」で2017年収穫された、希少なアイラ島産のコンチェルト種大麦を100%使用しています。
「.3」バッチは、毎回必ずアイラ島の大麦ですが、フェノール値は一定ではなく、今回の「15.3」はオクトモア史上2番目に高い「307.2ppm」という、突出したフェノール値を記録しています。
これまでで、一番高いフェノール値を記録したのは、2018年にリリースされた「オクトモア 08.3 アイラバーレイ」の「309.0ppm」。このボトルは世界一スモーキーなウイスキーとしてギネスブックに認定されました。
ここで気になるのが、オクトモアの麦芽は一体どのように作っているのか?です。
通常、「ピート」だけでゆっくりと麦芽を乾燥させたとしても、フェノール値は80ppmくらいが限界と言われています。しかし、オクトモアは過去のリリースをみても100ppmを超えるのは当たり前で、今回の「307.2ppm」ともなれば、特殊な製法が用いられているのは明白です。
フェノール値を高くするには、まず基本として、燻煙時の温度を抑えながら、できるかぎりピートの煙で長時間乾燥することにあります。麦芽に燻煙が付くのは、水分を保持している時のみ。完全に乾いてしまったあとでは、どんなに煙を浴びせてもフェノール値は上がりません。
ここからは推測になりますが、「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」の麦芽は、ゆっくりと乾燥させるのに加え、ピートの煙を「循環」させることでフェノール値を高めていると考えられます。
また、原料である大麦の「粒の大きさ」も重要です。
実は、燻煙の香りが付くのは大麦の「外皮」で、内側の胚乳(でんぷん層)にピートの香りが付くことはありません。大麦の粒が大きいと外皮の面積が増えるため、大麦麦芽のフェノール値は上がりやすくなります。
麦芽のフェノール値は原料の大麦や、燻煙時の環境、ピートの質などによっても変化するため、毎回フェノール値が異なるのは自然なこと。定番品という概念がオクトモアにないのは、こうした特殊なモルティング(製麦)と、原料へのこだわりによるものでしょう。
香り
洋梨、青りんご、麦芽飴、せきどめシロップ、バニラ、メープルシロップ、燻煙、ヨードチンキ。
スモーキ―フレーバーがガツンと効いてくる印象はなく、フルーツやお菓子のスイートなアロマの奥に感じる程度。
トワイスアップ(1:1)まで加水すると、マスカット、エールビール、グラッパ。お花のようなフローラルな香りも開きます。
味わい
口に含むと甘みが強くて刺激的。パワフルな口当たり。その直後から燃えるようにピーティーでスモーキ―。中盤以降はオクトモアらしさ全開。ドライでビターに変化。フィニッシュにかけてもディープな燻製香が続きます。
トワイスアップにすると、クリーミーで口当たりは良くなりますが、原酒の未熟さ、ショートエイジングのモルトウイスキーにありがちな風味が現れます。スモーキーさも少し落ち着き、ややおとなしい印象に。
「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」の評価としては、「ガツンといっちゃえ!加水なしの方が、甘くてピーティー」です。
過去のオクトモアの中で歴代2位のフェノール値ですが、他のオクトモアと比べても圧倒的にスモーキーだという印象はありません。もちろん、アイラモルトの中ではヘビーなタイプなのは間違いありませんが…
「15.1」「15.2」の原料は「スコティッシュ・バーレイ」で、フェノール値も「108.2PPM」と、「15.3」の三分の一程度。
数値的にはかなり違いますが、単純に「15.3」が3倍スモーキ―なのかと聞かれれば、やはりそれは違います。フェノール値はあくまでも参考数値であり、ウイスキーの生産過程によって、完成するニューポットは変化します。また、スモーキー以外のアロマバランスもウイスキー全体のバランスに影響を与えるため、熟成樽の種類も重要です。
個人的にはスモーキーさよりも、甘さをリッチに感じました。ファーストフィルのオロロソシェリー樽由来のフルーティーさも影響をしているように思います。
単純に「煙臭い」だけではないのがオクトモアの良いところ。
ぜひ、「15.1」「15.2」と並行して「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」を飲み比べてみてください♪
オクトモア 15.3 アイラ・バーレイの公式テイスティングノート↓
色:ゴールデンシロップ
香り:燻したシンダートフィーとコクのある麦芽糖がくっきりと香り立ち、スピリッツの滑らかさの合間から、ドライフルーツとスイートオレンジの皮の風味が顔を出します。オクトモアの卓越したピートスモークが形作るフィニッシュに、ココナッツの繊細かつ新鮮な風味が寄り添います。
味わい:バタースコッチとクリーミーなバニラが滑らかなキャラクターを強調し、ドライフルーツと甘いオレンジの皮がアクセントを添えます。トーストしたオークと地元で育てられたバーレーシュガーがドライスモークの波が姿を表します。
フィニッシュ:焦げた砂糖、ココナッツ、そして繊細な海のスプレーがフィニッシュに存在感を示します。
「オクトモア15」シリーズの中で、とくに「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」は、生産量が少ないことに加え、過去2番目に高いフェノール値であることから話題となりました。
リリースと同時に即完売。現在では定価を上回る価格で取引されています。
破壊的なフェノール値の高さを持つ、「オクトモア 15.3 アイラ・バーレイ」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪
あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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