こんばんは。ユースケです。 自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキーライター。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定 ソムリエ。2022年1月20日 東京・銀座にBAR WHITE OAK(バーホワイトオーク)をオープン。
この記事ではウイスキーのテイスティング方法について、初心者向けにわかりやすく解説いたします。テイスティングとはいったいどんなものなのか?ティスティングの具体的なやり方なについてなど分かる内容になっています。
ウイスキーのテイスティングを理解することで、その重要性に気が付くことができます。 そして、テイスティングを実践することで、今までよりも多くの、ご自身の好みに合ったウイスキーを見つけることができるようになると思います。 そうなれば、ウイスキーが今よりも楽しいものになるはずです。
ウイスキーだけでなく、ほかのお酒にも応用できる内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について「テイスティング」とは?
ウイスキーのテイスティングとは: ウイスキーの利き酒のことで、すべての感覚をつかって品質を判断すること。
そしてテイスティングには大きく2つの型があります。同じテイスティングでも、この2種類だと、とらえ方が変わっていきます。
嗜好性型
テイスターの好みを反映させたティスティングの種類です。アンケートなどの市場調査はこちらになります。単純に「おいしいかどうか」を問う方式です。
分析型
主に品質検査の為のティスティングになります。より専門的なテイスティング能力と、分析能力が必要です。好みではないため、客観的にウイスキーの個性を判断することになります。ウイスキーの開発者(ブレンダー)などに必要とされる方式です。
一般的には嗜好性型でウイスキーの判断をすればいいとは思います。一番大事なのはご自身が好きかどうかですから。
ただ、ウイスキーに携わるプロ達は、専門的な知識と経験からウイスキーを分析しています。そのことを少しでも意識すると、また違った形でウイスキーと向き合えるのかもしれませんね。
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について テイスティングの準備
テイスティングを行うときに必要なものと、環境について解説します。
<必要なもの>
- テイスティングサンプル(ウイスキー)
- グラス (スニフターと呼ばれるウイスキーの試飲グラス)
清潔な状態の、匂いが付いていないものを使います。ウイスキーの色が分かるように、無色透明のグラスが良いです。ワインのテイスティンググラスでも大丈夫です。 家にストレート用グラスがない場合、透明なロックグラスで代用してもいいです。
- ミネラルウォーター(常温)
チェイサー用と、ウイスキーに加水するための水です。硬度は軟水が良いです。
- ティスティングコメントを書き写すノート
無くても大丈夫ですが、本格的にテイスティングをしたい方は用意しましょう。

私がバーテンダーを始めたころは、A6の小さなノートにテイスティングコメントをかきまくっていました。頑張っていたあの頃が懐かしい…
<テイスティングを行う為の環境>
- 気温が適温であること
寒いとウイスキーの温度も下がるので、香りが出にくいです。熱いと集中力が保てないので、過ごしやすい環境でテイスティングしましょう。
- 酔っていないこと
すでにお酒を飲んでいる状態だと、的確なテイスティングができない場合があります。
- 体調がよいこと
風邪をひいていたり、二日酔いの状態だと体調面でのコンディションが悪く、的確なテイスティングができない場合があります。
- できれば複数で…
テイスティング自体は一人でできますが、ほかの人の意見を聞くのも面白いです。ウイスキー好きの仲間を集めて、「ティスティング飲み会」をやるのも楽しいですよ。
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について 基本的なやり方
ウイスキーのテイスティングの、基本的なやり方についてです。
ティスティング方法は人によってさまざまな方法があります。ここで紹介するのは蒸留所で行われるウイスキーセミナーなどでも紹介される方法と、私が普段から実践しているやり方を合わせた方法になります。
ティスティングの基本
- 色をみる。
- 香りを嗅ぐ
- 味わう
- 余韻を感じる
- 加水する
- 加水後の香りを嗅ぐ
- 加水後の味わい
- テイスティングノートに記録する
1、色をみる。
ウイスキーの色を見ましょう。グラスを傾けて、光の当たる角度を少し変えたり、グラスとウイスキーの「淵の部分」を見ることで、より鮮明に色彩を見ることができます。
色彩の特徴をつかむことで、熟成年数や樽の種類を想像することができますよ。
また、ウイスキーの清澄度や濃淡、粘性を見ることも大切です。
同じシェリーカスク熟成のウイスキーだとしても、蒸留所の違いや、樽それぞれの個性によっても変わってくる部分なので注目して見てください。
2、香りを嗅ぐ(ノージング)
グラスを手に取って、ゆっくりと鼻に近づけて香りを嗅ぎます。
この時に、鼻を近づけすぎると、アルコールの刺激のほうを強く感じてしまうことがあるので、ゆっくりと近づけて適度な距離で香りを嗅いでください。
一度香りを嗅いだら、次は軽くグラスをふって(スワリング) ウイスキーを混ぜます。
そうすることで、ウイスキーのなかに小さな気泡(空気)が入り、それがウイスキーの液面にあがったときに割れて、グラスからさらに香りが放たれるのです。

香りを嗅ぐときに、口を少し開けてみよう!ウイスキーの香りが抜けて通るので、より感じやすくなります。
3、味わう
グラスと手に取って、唇に当てて、ゆっくりと少量だけ口に含みます。すぐに飲み込むのではなく、口内にとどまらせるようなイメージです。時間が少し経てば、自然に喉へ落ちていきます。口の中で感じる口あたり、舌触り、のどごしなどを感じてみましょう。
口にいれて味わうことで、香りを嗅いだ時とはまた違ったフレーバーを見つけることができます。

ウイスキーのセミナー(一般人向け)に参加したときは、ウイスキーのテイスティングをしてゲホゲホしていた人が結構いました。ストレートで飲みなれてないと、喉でウイスキーを飲んでしまう訳ですね。
4、余韻を感じる
ウイスキーだけじゃなく、すべてのお酒の醍醐味といえます。特にアルコール度数が高いウイスキーは、余韻が豊かに感じられます。鼻から、のどから、ゆっくりとアロマが巡っていきます。ノージングでは感じ取れなかったアロマを、不思議と余韻からは感じることができたりします。普段はウイスキーを飲む時にあまり意識しないかもしれませんが、テイスティングではちょっと飲む時間の感覚を空けて、感じ取ってみて下さい。
5、加水する
ウイスキーに少し水を入れて加水します。こうすることで、アルコール度数を下げて、ウイスキーの香りや味わいを感じやすい濃度にすることができます。入れる水の量はウイスキーによっても異なりますが、基本的にはウイスキーと同量程度です。(2,3滴だけ入れる場合もあります)
加水によってアルコール度数を20%くらいにして、再度テイスティングしていきます。
6、加水後の香りを嗅ぐ
アルコールの刺激が少なくなったので、最初には感じることのできなかったフレーバーを見つけることができます。そして、感じる香りのバランスが変わります。ものによっては印象がかなり変化するものもあります。
ウイスキーのテイスティングでは加水がとても重要なのです。
7、加水後の味わい
ストレートではアルコールの刺激が強かったため、舌で感じ取りにくかった味わい(甘み、塩味、酸味、渋み、うま味など)が、加水後にはよくわかるようになります。味わいに関しては、香りの変化よりもさらに大きく変わります。

加水することで、味わいの分析はしやすくなっても、「ウイスキーがおいしいかどうか」とは別の問題になります。ウイスキーによっては、加水後の味わいが弱く感じてしまうこともあるからです。その場合は「水割りには向かないウイスキー」ということになります。
8、テイスティングノートに記録する
飲んだウイスキーの情報や、感じたことを記録しておけば、ウイスキーのテイスティング向上に役立つと思います。また、日にちがあいてから再度テイスティングをしたときに、一回目との感じ方に差が出ていることが分かります。簡単でもいいので、何かしら記録するのをおすすめします。
テイスティングノートに記載する項目例
- 実施日
- 銘柄(できる限り詳細に)
- 熟成年数
- 樽のタイプ(わかれば)
- 値段、購入先
- 色、外観
- 香り
- 味わい
- 総合評価
10点満点などの、点数があったほうがいいです。単純においしいと思うかはもちろん、コストパフォーマンスに優れているかもポイントにしましょう。おすすめの飲み方も記載するのもいいでしょう。 自分で評価して点数をつけるのは結構たのしいですよ!
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について アロマの分類例
ウイスキーは「飲む香水」と呼ばれるくらい、豊富なアロマが存在しています。テイスティングでは、そのアロマを具体的な物に表現して評価していきます。
アロマの具体的な分類例は、ウイスキー文化研究所の書籍から引用させて頂きました。全てではなく、一部を抜粋して引用しています。
アロマ(香り)の分類例 ウイスキー文化研究所作成
(一部を抜粋して引用)
シリアル系・・・穀物由来の香り、穀物様
モルティ(麦芽様)、ハスキー(ハスク)、もみ殻、フスマ、マッシュポテト、コーン臭、コーンポタージュ、ライ麦、ライ麦パン、小麦粉、焼きたてのパン、オートミール、温野菜、段ボール(紙様)etc
※原料の大麦に関する、または大麦から連想される香り
フェノール系・・・ピート香、ピーティ
薬品、クレオソート、消毒液、リノリューム、ヨード、タール、スモーク(燻製)、焚火、バーベキュー、漁船、腐葉土 etc
※主として原料の大麦に付加されたピート香に由来する香り
エステル系・・・フルーティー、エステル香
柑橘系 / レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム
砂糖漬けシトラス / レモンピール、オレンジピール
赤い果実 / イチゴ、ラズベリー、チェリー、マラスキーノチェリー
黒い果実 / ブラックベリー、カシス
その他の果物 / ブルーベリー
核果 / アンズ、白桃、ビワ、梅
種子のある果物 / リンゴ(青りんご、紅玉)、梨、洋梨、メロン、ブドウ
加熱された果物 / ジャム(砂糖漬け)、コンポート、(シロップ漬け)
ドライフルーツ / 干しぶどう、干しアンズ、干しイチジク、プルーン
トロピカルフルーツ / ライチ、マンゴー、パイナップル、バナナ、パッションフルーツ
溶剤系(アルミ系)/ 溶剤、リムーバー、セメダイン、シンナー、ニス
※果実の香りは、同じ種類を指しても「新鮮な果実」と「熟した果実」に分けて表現する場合がある
アルデヒド・・・フローラル、花のよう
干し草様 / 干し草、青草、ワラ
葉っぱ様 / 青葉、シダ、シソ、枯れ葉
花様(フローラル) / 白い花、モクレン、ジャスミン、スミレ、バラ、ハナミズキ、梅、桜
ハーブ系 / ミント、ペパーミント、タイム、ローズマリー、バジル、セージ、ローリエ
スパイス系(ハーブ以外) / クミン、ナツメグ、クローブ(丁子)、シナモン、山椒、胡椒
香油系 / アマニ油、ユーカリ油、コーン油、オリーブオイル
※「白い花」、「黄色い花」、「赤い花」といったイメージで捉える場合もある。
甘い感じ
ハチミツ様 / ハチミツ、ヘザーハニー、蜜ろう
バニラ様 / バニリン
砂糖系 / ジャム、フルーツケーキ、キャンディー、マジパン、黒糖、人口甘味料(駄菓子)
グリセリン様 / 粘性甘味
フェインツ系・・・フェインティ、余留臭
なめし革、革製品(レザー)、たばこ、バター、ミルク、チーズ、ワックス、石鹸
※再留の後半の余留液から主に生じる香りで、特有のクセのある香りが多い。多量に感じると不快になるが、少量では複雑さに貢献する
サルファリー・・・硫黄系
硫黄、マッチ箱、ゴム、タイヤ、消しゴム、ゆで卵、温泉、ザワークラウト、イースト
ウッディ・・・樽由来の香り
バニラ、カスタード、メープルシロップ、トフィー、コーヒー、紅茶、香木(キャラ)、白檀
ワイン樽系
オロロソシェリー、ポート、チョコレート、ココナッツ、アーモンド、クルミ、バルサミコ酢
オイリー・・・脂肪系
ファッティー / 脂肪、油、油脂
バター様 / バター、マーガリン
ナッツ様 / アーモンド、クルミ、ココナッツ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ
酸化様 / 油の酸臭、バター油製品のむかつくような不快感
酸臭
酢酸様 / ワインビネガー、バルサミコ酢
チーズ様 / チーズ(青カビ、白カビ、その他)、ヨーグルト
その他
ネギ、玉ねぎ、パセリ、セロリ、ピーマン、ゴボウ、粘土、塩、魚、マニキュア、石油、石炭、ガソリン、モロミ、甘酒、かつお節、昆布、英国家具
ウイスキー文化研究所発行『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2018上巻』より引用
ウイスキーコニサー資格認定試験教本
↓2018上巻
↓2020中巻
↓2021下巻
ウイスキーのアロマ(香り)の表現の豊かさがわかって頂けたでしょうか?
バリエーションが多すぎて、正直にいうと私も「これなんだっけ?」とよく理解してないものがあります(笑)
ティスティングのコメントをするときに、かっこよく表現したい場合は、そのウイスキーに合ったものを上記から参考にして使ってみて下さい。
まとめ
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について「テイスティング」とは?
→ウイスキーの利き酒のことで、すべての感覚をつかって品質を判断すること。
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について テイスティングの準備
→ウイスキー、グラス、水、、ノートが必要。適切な環境で行う。
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について 基本的なやり方
→色をみる、香りを嗅ぐ、味わう、余韻を感じる、加水する、加水後の香りを嗅ぐ、加水後の味わい、テイスティングノートに記録する。
ウイスキー初心者向け講座 ウイスキーのテイスティング方法について アロマの分類例
→引用を参照。ウイスキーのアロマ(香り)の表現は非常に豊か。
ウイスキーのティスティングについて、何か「コツ」があるのか聞かれたことがあります。 私はこのように答えました。
「テイスティングは感じるのではなく、探していくこと。」
素直に感じたものも大切ですが、それ以上にウイスキーのアロマを積極的に探していくことが大事だと思います。それを意識するだけで、ティスティングの能力は格段に成長します!
テイスティングは奥が深くて、大変そうに思った方もいるかもしれませんが、最初は難しく考えず「こんな感じでやるのかー」と思うくらいでいいと思います。 この記事を参考にして、気軽に楽しくウイスキーテイスティングを始めてみてはどうでしょうか?

あなたの人生がウイスキーによって幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
コメント