こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、サントリーが製造する国産ウイスキーの中で最も売れている「サントリーウイスキー角瓶」のテイスティングレビューと、価格情報、ボトル評価、角瓶の構成原酒の他、ジャパニーズウイスキーの定義についても解説致します。
「角瓶」は、「2023年世界ウイスキー売上ランキング」で17位に位置しており、年間420万ケースを販売するビッグブランド。ジャパニーズウイスキーの中で最も売れている銘柄となります。
また、2021年のジャパニーズウイスキーの定義施行以降、「角瓶」は「ワールドブレンデッドウイスキー」のカテゴリーから、純日本製となる「ジャパニーズウイスキー」への切り替えが行われています。
「角瓶」の味わいや、ジャパニーズウイスキーとなった経緯についても気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
サントリーウイスキー角瓶とは?
「サントリーウイスキー角瓶」は、「角ハイ」のブームによって再び注目を浴び、日本で最も売れているウイスキーとなりました。2020年の統計では、年間約520万ケースの販売実績を誇り、2023年世界ウイスキー売り上げランキングでは17位。その勢いは留まることを知りません。
ジャパニーズウイスキー(海外原酒を含む)の輸出金額は、この20年程でだいぶ伸びていますが、2000年まではアジアへの輸出が多く、割合としては実に9割ほどでした。しかしここ数年はヨーロッパと北米への輸出の割合も増えており、角瓶も順調に売上を伸ばしています。
ちなみに、2015年度ウイスキー輸出金額は約104億円でしたが、2021年度の輸出金額は約462億円。わずか6年で4倍にまで増加しました。(酒類全体では2015年に比べて2021年は約3倍)
角瓶は1937年(昭和12年)にサントリーの前身である「寿屋」の時代に発売開始。寿屋は当初、「白札」として市場に投入した国産初のウイスキーが支持されず、「赤札」も価格を下げても不調でした。
苦境に立たされた寿屋は、喫煙者向けの歯磨き粉「スモカ」やカレー粉などを販売し、ウイスキー事業の費用を捻出。しかし1931年には資金不足で山崎蒸溜所の仕込みを中止する事態にまでなります。この苦境の中で、鳥井信治郎は角瓶を開発し、その後ウイスキー事業は成長を遂げます。
鳥井氏は日本人の繊細な味覚に合ったウイスキーを目指しました。数えきれないほどのブレンドを試作し、技術者をスコットランドに派遣して研究を積み重ね、ついには満足のいく品質にたどり着きます。
初めは「サントリーウイスキー12年物」として発売された「角瓶」は、高級ウイスキーとして庶民には手の届かない存在でしたが、徐々に評価を受けます。
亀甲紋からインスピレーションを得た角型のボトルが特徴的であったことから、愛称として角瓶の名が広まり、1950年代に正式名称として「サントリー角瓶」と改名。
角瓶は順調に売り上げを伸ばしますが、1980年頃からは出荷量が減少し、一時的に厳しい時期を迎えます。しかし、2009年頃から始まった「ハイボールブーム」で再び注目を浴び、ここ数年は安定した地位を築いています。
角瓶のラインナップは、発売当初から変わらない黄色いラベルの「角瓶」、和食に合うように改良された淡麗辛口「白角」、発売当時と同じアルコール度数に設定している「角瓶〈黒43°〉」などがあります。
誕生から80年以上が経過しても、ボトルの亀甲カットと鳥井の直筆サインは変わることなく、角瓶はその伝統を守り続けています。
サントリーウイスキー角瓶はいつから「ジャパニーズウイスキー」になったのか?
ジャパニーズウイスキーの定義について
現在はジャパニーズウイスキーとなった「角瓶」ですが、かつては海外輸入原酒と国内製造のウイスキーをブレンドした、「ワールドブレンデッド」のカテゴリーに属する商品でした。
消費者の多くは、過去の「角瓶」を日本のウイスキーだと認識していたと思いますが、実際は純国産のジャパニーズウイスキーではなかったのです。このような、「ジャパニーズっぽいけど実は違う商品」は、現在でも多数存在しています。
「ジャパニーズウイスキー=日本産」とは限らない…
消費者が誤解を招く、ウイスキーへの表示義務に待ったをかけたのが、これまで存在していなかった「ジャパニーズウイスキーの定義」になります。
「日本洋酒酒造組合」により、2021年4月1日からジャパニーズウイスキーの定義適用の開始が始まりました。日本国内でウイスキー製造免許のある80社以上がウイスキーの定義に賛同しており、この基準を遵守することになっています。
しかし、この定義に賛同していない企業も数多く存在しており、定義自体に法的な縛りもないことから、ウイスキー業界が取り決めた一つの基準にしかすぎません。
国際的なジャパニーズウイスキーへの期待値と評価が急速に高まっている中で、「純国産のジャパニーズウイスキー」と「輸入原酒と含むジャパニーズウイスキー」をはっきりと区別するための法律(法定義)の制定が、今後の重要な課題と言えます。
「ジャパニーズウイスキー」と表記するための基準
ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準 |
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原材料 | 原材料は、麦芽、穀類、及び日本国内で採水された水に限ること。なお、麦芽は必ず使用しなければならない。 |
製造 | 糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする。 |
貯蔵 | 内容量700リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めの日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること。 |
瓶詰 | 日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること。 |
その他 | 色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。 |
原材料
ジャパニーズウイスキーの原料は、麦芽、穀物、日本国内で採取された水に限定されます。特に麦芽の使用が義務付けられており、これはウイスキーの国際的定義に準じたもの。国内採取の水を使用することは、ジャパニーズウイスキーの独自性を保つための重要な条件となります。
製造場所
糖化、発酵、蒸留はすべて日本国内の蒸留所で行う必要があります。この基準はスコッチやアイリッシュなど主要なウイスキーの国際基準と一致しており、国内での製造が求められます。一部でも海外で行われた場合、ジャパニーズウイスキーとして認められません。
蒸留条件
蒸留の際、アルコール度数は95%未満に制限されています。この基準はスコッチ(94.8%以下)と同様で、通常の製造工程で達成可能な範囲に設定されています。この基準によって、工業用蒸留器の使用や、ウイスキーに適さない設備での製造を防ぐことが可能となります。
熟成条件
熟成は700リットル以下の木製樽に詰め、樽詰め日の翌日から起算して3年以上を日本国内で行う必要があります。この条件もスコッチやアイリッシュと共通しており、通常使用される樽のサイズ範囲内に収まります。
樽の下限容量に制限はなく、小型樽を使用した実験的な熟成も可能。
瓶詰条件
瓶詰は日本国内で行い、アルコール度数は40%以上とすることが求められます。アルコール度数の基準は国際的なウイスキーの基準と一致していますが、「国内で瓶詰めを行う」というルールはジャパニーズウイスキー独自のもの。スコッチやアイリッシュと比べて厳しい条件に設定されています。
カラメルの使用
瓶詰時の色調整にはカラメルの使用が認められています。この基準はスコッチやアイリッシュでも同様であり、カラメル以外の添加物は禁止。カラメル色素を加えない「ノンカラーリング」の商品は増加傾向にありますが、オフィシャルボトルでは現在も色調整が一般的に行われています。
カラメルは風味に影響を与えないため、品質への懸念はありません。
角瓶がジャパニーズウイスキーに切り替わったのは「2021年4月以降」
角瓶がジャパニーズウイスキーの基準に沿った商品として切り替わったのは、2021年4月から。ジャパニーズウイスキーの定義適用開始と同時に、順次切り替わりが行われました。
この定義には、2021年3月31日以前に販売されたウイスキーに関しては、表記の変更まで3年間の猶予期間が与えられています。つまり、角瓶の場合は、2024年4月までに完全に切り替えが終われば定義には反しないことになります。
したがって、角瓶がジャパニーズウイスキーに切り替わったのは2021年~2024年までの間となり、完全に切り替わりが完了したのは2024年4月出荷分から、ということになります。
冒頭でもお伝えした通り、角瓶は日本で最も売れているウイスキーです。国内外の流通量は膨大であり、また、ラインナップや容量の異なるボトルも複数あることから時間をかけて切り替えが行われました。
角瓶(700ml)の定価
「サントリーウイスキー角瓶」の定価(希望小売価格)は1,910円。(2024年12月現在)
ウイスキーの値上げは毎年のように繰り返されていますが、角瓶の価格改定が直近で実施されたのは、2023年7月出荷分からで、1,590円から1,910円に値上がりしています。改定率20%。
値上がりの要因としては原材料、資材、輸送費等のコストアップによるもの。完全にジャパニーズウイスキーへと切り替わったことで、国産原酒(山崎、白州。知多)のみを使用することになったことから、海外原酒をブレンドしていた以前と比べ、コストアップしているのは確実です。
度重なる値上げに厳しい意見を持っている方もいると思いますが、生まれ変わった角瓶は、純粋なジャパニーズウイスキーでありながら2000円以下。これ以上、贅沢かつコスパに優れたジャパニーズウイスキーはどこにもないと思います。
角瓶(700ml)以外の定価
- 角瓶 180ml 希望小売価格:630円
- 角瓶 1920mlペット 希望小売価格:4,870円
- 角瓶 2700mlペット 希望小売価格:6,630円
- 角瓶 4000mlペット 希望小売価格:9,390円
【ジャパニーズウイスキーレビュー】サントリー角瓶を評価
サントリーウイスキー角瓶
- ジャパニーズブレンデッドウイスキー
- アルコール度数:40%
- 容量:700ml
- 抜栓時期:2023年10月
- テイスティング時期:2024年11月
- whiskybaseでの評価:78.83/100
- 参考小売価格:1,910円
- 楽天市場価格[2024年12月]:1,698円
- Amazon価格[2024年12月]:2,500円
香り
アプリコット、メロン、スイカズラ、洋梨、風邪薬シロップ、ドライアップル、オーク材、パウンドケーキ。フルーティーで甘やか。山崎と白州のモルトウイスキー由来のフレッシュな風味と、知多のグレーンウイスキーからはおだやかなバニラ香、オーキーさも感じます。
加水すると、アーモンド、キャラメルナッツ、ドライレーズン。
味わい
甘やかでフレッシュ。刺激は少なく、穏やかにフルーティーさが広がります。中盤からはドライに変化し、フィニッシュにかけてはモルティー。スモーキーフレーバーはありません。
後半にかけてはシンプルで、余韻は短め。全体的にスムースでさっぱりしていますが、飲みごたえに欠けた印象はなく、ほどよく骨格があります。
2000円台に位置するブレンデッドウイスキーとしては、落ち着きがありながらもストレートで飲める味わい深さもあります。この価格帯に見合わない、素晴らしいバランス。
加水すると少し水っぽく感じる部分もありますが、角瓶の持つ優しい個性は健在。ボディも崩れません。
評価
「サントリーウイスキー角瓶」の評価としては、「2000円台のジャパニーズに栄光あれ!サントリーウイスキーの集大成は「響」に非ず」です。
山崎、白州、知多の原酒の特性が見事に融合。安くてうまいジャパニーズウイスキーは「角瓶」で決まり。以前の角瓶も良かったのですが、ジャパニーズウイスキーに生まれ変わってからは、さらにクオリティーが上がったような気もします。
サントリーのブレンデッドウイスキーの最高峰は、ご存じの通り「響」ですが、高級酒となった「響」を自宅で気軽に飲むことはできません。多くの人に行き渡り、その良さを身近に感じることのできるリーズナブルな「角瓶」こそが、サントリーウイスキーの集大成ではないでしょうか。
「角瓶」は、なんといってもサントリーウイスキーの特徴である「甘さ」が秀でており、ブレンデッドスコッチにはない、上品でなめらか、クセが少なく、万人に飲みやすい味わい。これは、鳥居信治郎が目指した日本人に合うウイスキーの完成形。
「角瓶」といえば、有無言わさず飲み方は「角ハイボール」というイメージが大変強い訳ですが、正直言って、今の「角瓶」に関しては、炭酸で割る必要もないような…
ストレート、トワイスアップ、オンザロックのような、アルコール度数の強い飲み方でも十分に美味しいと思います。
正直言って「角瓶」は、ウイスキー愛好家からは「安酒」といったイメージもあるかもしれませんが、その価格に見合わないクオリティを持っています。是非とも、ハイボール以外の飲み方、特にストレートがおすすめですので、食後にゆっくりと、シングルモルトを飲む前、晩酌の前哨戦として「角瓶」を愉しんでみてはどうでしょうか。
「サントリーウイスキー角瓶」は、その特徴的なボトルデザインとともに、日本人にとって親しみやすいジャパニーズウイスキーの象徴として長い間愛され続けてきた存在です。その歴史は昭和の時代から続き、多くの人々の食卓や特別なひとときに寄り添い、世代を超えて受け継がれてきました。
サントリーのブレンド技術の粋を集めて作られるその味わいは、芳醇さと飲みやすさが絶妙に調和し、幅広い飲み方に対応できる柔軟性も魅力のひとつ。ウイスキー初心者から愛好家まで、誰もがその価値を見出せる「角瓶」は、まさに日本のウイスキー文化を象徴する一本と言えるでしょう。
その深い味わいと豊かな歴史の背景に思いを馳せながら、改めて「角瓶」を愉しんでみてください♪
あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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