ウイスキー用語「あ」
アイラ(Islay)
スコットランド西岸、インナー・ヘブリディーズ諸島(Inner Hebrides)に位置する島。日本では「アイラ島」と呼ばれることが多い。
アイラでつくられるスコッチウイスキーは、ピート由来のスモーキーな香味で広く知られる。ただし、島内のすべての蒸留所が強いピート香を持つウイスキーだけをつくっているわけではなく、ノンピートまたは軽いピートの原酒も生産されている。
アイラ島の蒸留所数は、新設、操業開始準備、休止蒸留所を含めるかどうかで変動する。蒸留所名については別途、アイラ蒸留所一覧ページで整理すると分かりやすい。
アイリッシュ・ウイスキー(Irish Whiskey)
アイルランド共和国および北アイルランドでつくられるウイスキーの総称。スコッチウイスキーと並ぶ長い歴史を持ち、かつては世界最大級のウイスキー生産地として栄えた。
主なカテゴリーは、モルトウイスキー、シングルポットスチルウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーの4つ。一般に3回蒸留のイメージが強いが、すべてのアイリッシュウイスキーが3回蒸留ではない。
法律上、アイルランド島内で糖化、発酵、蒸留、熟成され、木製樽で3年以上熟成された蒸留酒がアイリッシュウイスキーとして認められる。
アイリッシュ・シングルモルト(Irish Single Malt Whiskey)
単一蒸留所でつくられる、100%モルト大麦を原料としたアイリッシュウイスキー。ポットスチルで蒸留される。
「シングル」は単一蒸留所の原酒であることを示し、「単一樽」を意味する言葉ではない。代表例にはBushmills(ブッシュミルズ)などがある。
アイリッシュ・シングルグレーン(Irish Single Grain Whiskey)
単一蒸留所でつくられるグレーンウイスキー。モルト大麦以外の穀物を原料に使用でき、連続式蒸留器(Column Still)で蒸留されることが多い。
名称に「シングル」とあるが、単一の穀物のみを使用するという意味ではなく、単一蒸留所で生産された原酒であることを示す。
アイリッシュ・シングルポットスチル(Irish Single Pot Still Whiskey)
アイルランド固有の伝統的なウイスキーカテゴリー。モルト化した大麦と未モルト大麦を主原料とし、単一蒸留所のポットスチルで蒸留する。
かつて日本では「ピュアポットスチルウイスキー(Pure Pot Still Whiskey)」と呼ばれることが多かったが、現在の正式なカテゴリー名は「Irish Single Pot Still Whiskey」。スパイシーさ、オイリーさ、クリーミーな口当たりが特徴として挙げられることが多い。
アウトターン(Outturn)
1樽、または1バッチから最終的に瓶詰めされた本数・数量を指す言葉。とくにシングルカスクやインディペンデントボトラーズのボトルで見かける。
たとえば「Outturn: 248 bottles」と記載されている場合、その樽から248本がボトリングされたことを意味する。熟成中の蒸発、樽からの漏れ、サンプル採取などにより、同じ容量の樽でもアウトターンは大きく異なる。
アクアヴィッテ(Aqua Vitae)
ラテン語で「生命の水」を意味する言葉。中世ヨーロッパでは蒸留酒一般を指す名称として使用された。
1494年のスコットランド王室財務記録には、修道士ジョン・コー(Friar John Cor)へ蒸留酒製造用の麦芽を支給した記録が残る。この記録に「aqua vitae」という語が登場するため、スコッチウイスキー史の初期資料としてよく引用される。
ただし、当時のアクアヴィッテが現在のような樽熟成ウイスキーと同じものだったとは確認できない。
アクティブカスク(Active Cask)
樽由来の香味を原酒に比較的強く与える状態にある樽を指す業界用語。比較的新しい樽、使用回数が少ない樽、または再活性化処理を施した樽などに対して使われることが多い。
ただし、アクティブカスクに法的な統一定義はない。同じ表現でも、蒸留所やボトラーによって、樽の使用履歴、内面の処理、前に入っていた酒類などが異なる場合がある。
アフターテイスト(Aftertaste)
ウイスキーを飲み込んだ後、口の中や鼻に残る香味の余韻を指す言葉。フィニッシュ(Finish)とほぼ同じ意味で使われることも多い。
余韻は長さだけでなく、香味がどのように変化するかも重要である。たとえば、甘さからスパイスへ移る、ピート香が遅れて現れる、樽由来の渋みが残るといった変化も評価の対象となる。
アメリカン・オーク(American Oak)
主に北米産のホワイトオーク、学名 Quercus alba を指す。バーボン樽の代表的な材であり、スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーの熟成樽にも広く再利用される。
一般にバニラ、ココナッツ、キャラメル、甘いスパイスなどを連想させる香味を与えやすいとされる。ただし、実際の香味は樽の製造方法、乾燥、トーストやチャーの強さ、使用回数、熟成期間によって大きく変わる。
アメリカン・シングルモルト(American Single Malt Whiskey)
アメリカ国内の単一蒸留所で、100%モルト大麦を原料としてつくられるウイスキー。アメリカではクラフト蒸留所を中心に成長してきたカテゴリーである。
現行の米国規格では、米国内の1蒸留所で糖化、発酵、蒸留、熟成、瓶詰めを行い、700リットル以下のオーク樽で熟成することなどが要件となる。スコッチのシングルモルトとは異なり、ピート使用の有無や最低熟成年数は一律に規定されていない。
アメリカンウイスキー(American Whiskey)
アメリカ合衆国で生産されるウイスキーの総称。バーボンウイスキー(Bourbon Whiskey)、ライウイスキー(Rye Whiskey)、ウィートウイスキー(Wheat Whiskey)、コーンウイスキー(Corn Whiskey)、アメリカン・シングルモルトなどが含まれる。
カテゴリーごとに原料比率、蒸留度数、樽、熟成方法などの規定が異なる。たとえばバーボンは原料の51%以上がトウモロコシであり、新しい内側を焦がしたオーク樽で熟成させる必要がある。
アルコール度数(Alcohol by Volume / ABV)
飲料全体に含まれるアルコールの容量比率。海外ラベルでは「ABV(Alcohol by Volume)」、日本の酒類表示では「アルコール分」と表記されることが多い。
たとえば「46% ABV」は、飲料100ml中にエタノールが46ml含まれることを示す。ウイスキーでは加水して40%台から40%後半に調整する製品が多いが、樽出しに近い度数で瓶詰めするカスクストレングス製品もある。
アルコール収率(Alcohol Yield)
原料の大麦や穀物から、どれだけ効率よくアルコールを得られるかを示す考え方。蒸留所では原料の品質、糖化効率、発酵状態、蒸留時の回収効率などが収率に影響する。
麦芽の品質を語る際には、エキス分や抽出率と混同されることがある。アルコール収率は、最終的に得られるアルコール量に焦点を置く指標である。
アロマ(Aroma)
ウイスキーの香りを表す言葉。テイスティングでは、グラスに注いだ直後の香り、加水後の香り、口に含んだ後に鼻へ抜ける香りなどを総合的に評価する。
「ノーズ(Nose)」はグラスから鼻で感じる香り、「フレーバー(Flavour)」は口に含んだ際に感じる味わいと香りを含む広い概念として使われることが多い。
アンチルフィルタード/ノンチルフィルタード
(Non-chill Filtered)
冷却濾過を行わずに瓶詰めしたウイスキーを指す。日本語では「ノンチルフィルタード」または「非冷却濾過」と表記されることが多い。
冷却濾過は、低温時や加水時に脂肪酸エステルなどが析出して液体が白く濁る現象を抑え、見た目を安定させるための工程である。非冷却濾過では香味成分や油性の質感を残せると考えられる一方、低温での濁りが起こる場合がある。
なお、ノンチルフィルタードであることが、必ずしも香味の優位性を保証するものではない。
アンピーテッド(Unpeated)
ピートで乾燥させていない麦芽、またはその麦芽を使用してつくられたモルトウイスキーを指す。日本語では「ノンピート」と表記されることも多い。
ピート由来のフェノール香がほとんどない、または非常に弱いタイプを示す際に使われる。ただし、原料麦芽がアンピーテッドであっても、熟成庫の環境、樽、他の原酒とのブレンドなどにより、わずかなスモーキーさを感じる場合はある。
ウイスキー用語「い」
イチローズモルト(Ichiro’s Malt)
株式会社ベンチャーウイスキー(Venture Whisky Ltd.)が展開するウイスキーブランド。創業者である肥土伊知郎氏の名前に由来する。
埼玉県秩父市の秩父蒸溜所(Chichibu Distillery)で生産されるシングルモルトのほか、閉鎖した羽生蒸溜所(Hanyu Distillery)の原酒、海外原酒を使用したブレンデッドウイスキーなどを展開している。
羽生蒸溜所の原酒を使用した「カードシリーズ(Card Series)」は、国内外のオークション市場でも高い評価と価格を得ている。
インディアンウイスキー(Indian Whisky)
インド国内で製造されるウイスキーの総称。インドは世界有数のウイスキー消費・生産国だが、日本やスコットランド、アイルランドなどのウイスキー規定と同じ考え方で分類できない製品も多い。
インドでは、糖蜜などを原料とする中性スピリッツにモルトウイスキーなどをブレンドした製品が、広く「ウイスキー」として流通してきた。一方で近年は、大麦麦芽を原料とする本格的なシングルモルトも増加している。
Amrut(アムルット)、Paul John(ポール・ジョン)、Rampur(ランプール)などは、海外市場でも知られるインド産シングルモルトの代表例である。
インデペンデントボトラー(Independent Bottler)
蒸留所から樽単位で原酒を買い付け、自社のブランド名で瓶詰め・販売する独立系の瓶詰業者。略して「IB」「ボトラーズ」とも呼ばれる。
蒸留所公式のオフィシャルボトルと異なり、樽の選定、熟成期間、フィニッシュ、瓶詰め度数、冷却濾過の有無などを独自に決められる点が特徴。同じ蒸留所名の原酒でも、ボトラーごとに個性が大きく異なる。
ウイスキー用語「う」
ウイスキー(Whisky / Whiskey)
穀物を原料とし、糖化、発酵、蒸留を経てつくられる蒸留酒の総称。熟成の有無、最低熟成年数、使用できる樽、原料、蒸留度数などの規定は、生産国・地域・カテゴリーによって異なる。
綴りは、スコットランド、カナダ、日本などでは「Whisky」、アイルランド、アメリカでは「Whiskey」が一般的。ただし、ブランドごとの歴史的な表記例外も存在する。
ウイスキー検定
ウイスキー文化研究所が実施する、ウイスキーの知識を学ぶための検定試験。初学者向けの級から上級者向けの級まで設けられている。
開催日程、実施級、受験方式などは変更される場合があるため、受験前には公式サイトで最新情報を確認したい。
ウイスキーコニサー(Whisky Connoisseur)
ウイスキー文化研究所が認定する資格制度。「コニサー(Connoisseur)」は、鑑定家・目利き・愛好家を意味する言葉である。
資格はウイスキーエキスパート、ウイスキープロフェッショナル、マスター・オブ・ウイスキーなどの段階で構成される。試験制度や実施時期は改定される場合がある。
ウイスキーフェスティバル(Whisky Festival)
ウイスキー文化研究所が主催する試飲・展示イベント。国内外の蒸留所、輸入業者、ボトラーズ、酒販店などが参加し、ウイスキーを中心としたスピリッツを試飲・購入できる。
開催地、開催回数、出展者、チケット制度は年ごとに変わるため、参加時は公式発表を確認したい。
ウイスキー文化研究所
ウイスキー評論家・土屋守氏が代表を務める、ウイスキーの調査・情報発信・教育活動を行う団体。旧称はスコッチ文化研究所。
ウイスキーコニサー資格、ウイスキー検定、ウイスキーフェスティバルなどを運営している。
ウエアハウス(Warehouse)
ウイスキーを樽のまま熟成・保管する倉庫。熟成庫、エージングセラー(Aging Cellar)とも呼ばれる。
ダンネージ式、ラック式、パラタイズ式などがあり、建物の構造、温湿度、通気性、樽の保管位置が熟成に影響する。なお、一般的な熟成庫を指す「warehouse」と、保税・税務管理下の「bonded warehouse」は、必ずしも同義ではない。
ウォッシュ(Wash)
糖化した麦汁に酵母を加えて発酵させた液体。ビールに近い性質を持つことから、ウォッシュは「蒸留前のビール」と説明されることもある。
モルトウイスキーでは、ウォッシュは一般にアルコール度数7~10%程度まで発酵させ、その後にウォッシュスチルで初回蒸留を行う。
ウォッシュスチル(Wash Still)
モルトウイスキーのポットスチル蒸留において、ウォッシュを最初に蒸留する蒸留器。日本語では「初留釜」ともいう。
ウォッシュスチルで得られる蒸留液はローワイン(Low Wines)と呼ばれ、次のスピリットスチルで再蒸留される。
ウォッシュバック(Washback)
麦汁に酵母を加え、発酵を行うための槽。発酵槽、ファーメンター(Fermenter)とも呼ばれる。
材質は木製、ステンレス製などがあり、容量、形状、発酵時間、酵母の種類、洗浄・衛生管理などがウォッシュの香味形成に関わる。
ウシュク・ベーハー(Uisge Beatha)
ゲール語で「生命の水」を意味する言葉。ラテン語の「アクアヴィッテ(Aqua Vitae)」に対応する表現とされる。
この語が英語化・短縮され、現在の「ウイスキー(Whisky/Whiskey)」という名称につながったと説明されることが多い。表記には「ウシュクベーハー」「ウシュク・バハ」などの揺れがある。
ウッドフィニッシュ(Wood Finish)
通常の熟成を終えた原酒を別の樽へ移し、追加熟成を行う製法。フィニッシュ(Finish)、後熟(こうじゅく)とも呼ばれる。
使用される樽には、シェリー樽、ポート樽、マデイラ樽、ワイン樽、ラム樽、ビール樽などがある。期間は数か月程度の短期から、数年以上に及ぶ例まであり、樽由来の香味を加えることが主な目的となる。
ウイスキー用語「え」
エージングセラー(Aging Cellar)
ウイスキーを樽のまま熟成させる施設。熟成庫、ウェアハウス(Warehouse)とほぼ同じ意味で使われる。
熟成中の原酒は、樽材を通じて外気の影響を受けながら、蒸発、酸化、樽成分の抽出、成分同士の反応を重ねる。温度、湿度、通気、建物の構造、保管場所は、熟成の進行に影響する。
エライジャ・クレイグ(Elijah Craig)
18世紀のケンタッキー州で活動したとされる牧師・蒸留者。「バーボンの祖」と呼ばれることがある。
焦がした新樽を使用するバーボン製法を最初に考案した人物という伝承で知られるが、それを決定的に裏付ける一次史料は確認されていない。現代では、Heaven Hill Distillery(ヘヴン・ヒル)が「Elijah Craig」のブランドを展開している。
エンジェルズシェア(Angel’s Share)
熟成中に樽から蒸発して失われる原酒を指す言葉。「天使の分け前」と訳される。
蒸発量は、気温、湿度、熟成庫の構造、保管する階層、樽材、樽の大きさ、熟成期間などで変わる。スコットランドでは年間およそ2%前後と説明されることが多いが、一定ではない。インドや台湾など高温の地域では、より大きな蒸発率になる場合がある。
ウイスキー用語「お」
オーク(Oak)
ブナ科コナラ属(Quercus)に属する樹木の総称。ウイスキーの熟成樽に使われる最も重要な木材である。
ウイスキー用の樽材には、アメリカンオーク(主に Quercus alba)、ヨーロピアンオーク(主に Quercus robur、Quercus petraea)などが用いられる。樹種、産地、乾燥方法、製樽方法、トーストやチャーの程度によって、原酒へ与える香味は異なる。
オールドボトル(Old Bottle)
一般に、過去に流通していた古い時代のウイスキーボトルを指す言葉。終売品、旧ラベル、旧ボトル形状、旧スペックの製品などが含まれる。
同じ銘柄名であっても、蒸留所の操業状態、原酒構成、樽の調達、熟成環境、ブレンド方針、瓶詰め仕様が時代により異なる。そのため、オールドボトルは現行品と別の個性を持つ場合がある。
オクタブ(Octave)
小型の熟成樽の一種。語源は、シェリーバット(Sherry Butt)のおよそ8分の1に相当するサイズであることに由来する。
容量は製樽業者などによって異なるが、おおむね50リットル前後とされる。樽が小さいほど液体と木材の接触面積の比率が大きくなるため、一般に短期間で樽由来の香味が出やすい。
オプティック(Optic)
ウイスキー用大麦の品種名。2000年代以降、スコットランドの蒸留用大麦として広く使用された品種の一つ。
ただし、蒸留所が使用する大麦品種は、時代、契約農家、麦芽会社、収穫年、収率、香味方針などによって変化する。品種名だけで最終的なウイスキーの味わいを断定することはできない。
オン・ザ・ロックス(On the Rocks)
氷を入れたグラスにウイスキーを注いで飲むスタイル。「ロック」「ロックスタイル」とも呼ばれる。
氷が溶けることで温度が下がり、加水も進むため、時間の経過とともに香り、甘味、アルコール感、口当たりが変化する。大きく硬い氷を使うと、溶ける速度を比較的ゆるやかにできる。