

こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
芋焼酎「富乃宝山」で知られる西酒造が、本格的なウイスキー造りに挑戦していることをご存知でしょうか。
鹿児島市の高台に位置する御岳蒸留所では、焼酎造りで培った発酵技術と蒸留技術を活かし、独自のジャパニーズウイスキーが生み出されています。
今回は「JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025」を実際にテイスティングし、香りや味わいの特徴、ボトルとしての評価、定価や市場価格まで詳しく解説します。
また、西酒造がなぜウイスキー造りに挑戦したのか、その背景やこだわりにも触れながら、前作からさらに熟成が進み、高い評価を集めている最新リリース「御岳 2025」の魅力を掘り下げていきます。
御岳蒸留所とは?

①薩摩から生まれた「発酵系」シングルモルト
御岳蒸留所は、鹿児島の老舗焼酎蔵・西酒造が2019年に立ち上げた、比較的新しい蒸留所です。掲げているコンセプトは「発酵を極めるシングルモルト」と「シェリー古樽主義」というふたつの個性。
1845年創業の西酒造がウイスキーに踏み出したのは、単なる事業の多角化ではなく、焼酎づくりで磨いてきた発酵技術を、ウイスキーという新しい舞台でも表現したいという意志からでした。
蒸留所名の「御岳」は、桜島の古い呼び名です。敷地からは錦江湾越しにその姿を望むことができます。標高約400メートルの高台、かつてゴルフ場だった広大な丘陵地という珍しいロケーションで生まれる「薩摩の発酵系シングルモルト」として、御岳蒸留所は国内外から注目を集めています。
②西酒造という母体 焼酎180年の歴史から御岳を見る

御岳蒸留所の母体は、1845年創業の焼酎蔵・西酒造です。本社と蔵は鹿児島県日置市にあり、「富乃宝山」「吉兆宝山」「天使の誘惑」といった人気の芋焼酎ブランドに加え、日本酒やワインまで手がける、酒づくり一筋のメーカーです。現在は焼酎・日本酒・ウイスキー・ワインの4カテゴリーを自社で生産しており、ウイスキー部門を担うのが、鹿児島市の御岳蒸留所です。
焼酎蔵がウイスキーづくりに進出する例は国内でも増えていますが、西酒造の場合は少し事情が違います。彼らが繰り返し口にするのは「発酵するお酒を極めたい」という言葉。長年焼酎で発酵技術を磨いてきた同社は、20年以上前から世界各地のワイン・ウイスキー・ジンの造り手と交流を重ね、「発酵」という共通言語を軸に、お酒の個性がどのように生まれるかを研究してきました。
御岳蒸留所は、そうした積み重ねの延長線上にあるプロジェクトです。新たな収益源を求めてウイスキーに進出した、というよりも、自社の根幹である発酵技術を、麦芽と樽という新しい舞台で表現する試みと捉えると、わかりやすいかもしれません。
こう考えると、後で紹介する自社酵母の活用や、発酵由来の香りを重視した酒質設計、そしてシェリー古樽主義といった要素が、すべて一本の線でつながって見えてきます。
③御岳蒸留所のロケーションと環境
御岳蒸留所は、鹿児島市下福元町の高台にあります。かつてゴルフ場だった約300ヘクタールの広大な丘陵地を、ウイスキーづくりの舞台として再構成したのが、この蒸留所です。標高は約400メートル。錦江湾を見下ろし、その先に御岳(桜島)を望むことができる、南国の気候に高地の冷涼さが重なる独特の環境です。
丘陵地の地下約300メートルからは、毎分1,000リットルを超える湧水が湧き出しています。御岳蒸留所では、この天然の軟水を仕込み水として使用。「透明感があり、ウイスキーづくりに適した軟水」と表現されています。水が軟らかいほど、発酵や蒸留時にスピリッツへかかる負担が少なく、クリアでなめらかな酒質につながります。焼酎づくりでも水にこだわってきた西酒造が、この豊富な湧水の地を選んだ理由のひとつにしていることは想像しやすいところです。
また、旧ゴルフ場という広い敷地は、将来の熟成庫拡張やツーリズム展開の余白でもあります。風通しの良い丘陵地には海風も入り、樽の熟成にも良い影響を与えているようです。一方、標高による気温の低下が、南九州のなかでは比較的穏やかな熟成曲線を生み出していると考えられます。冷涼な北海道や東北の蒸留所とは違う「南国高地熟成」という独自の文脈で見ると、御岳のテロワールはより立体的に感じられます。
④設備とプロセス 発酵と蒸留の設計思想

御岳蒸留所の設備とプロセスには、西酒造が長年培ってきた発酵技術への信頼が色濃く表れています。
原料は二条大麦麦芽。ロリエットやプラネットといった品種を、英国・オーストラリア・ベルギーなど複数の産地から使用しています。
麦芽は基本的にノンピート(ピート=草炭の煙で燻す工程を行わないタイプ)で、スモーキーさよりも発酵由来のフルーティな香りを主役にしたスタイルを目指していることがうかがえます。
御岳の個性を語るうえで欠かせないのが酵母です。西酒造は焼酎づくりにおいて、長年自社で培養・選抜してきた独自の酵母群を持っています。
ウイスキーづくりにもその知見を活かした自社培養酵母が使われているとされ、ここに「発酵するお酒を極めたい」という思想が、もっとも色濃く表れています。発酵段階で生まれるエステル香(果実のような甘い香り成分)やフルーツ香を、いかに損なわず蒸留・熟成へ橋渡しするか。これが御岳の設計思想の核になっています。
蒸留設備には、国内メーカー・三宅製作所のポットスチルを採用。初留釜はストレート型、再留釜は胴の膨らんだバルジ型で、いずれもラインアーム(蒸留器の上部から冷却器へ蒸気を送る管)は上向きに設計されています。
上向きのラインアームは、重い成分を再びポット内に戻し、軽くて揮発性の高い香味成分を優先的に引き上げる効果があります。これにより、発酵由来の繊細な香りを生かした、フルーティでクリーンなスピリッツが得られやすくなります。
加えてバルジ型の再留釜は内部の対流を複雑にし、リフラックス(蒸気の一部が容器内で液体に戻り、再び蒸留される現象)を増やすことで、より精緻な酒質調整を可能にします。
⑤御岳の真骨頂 徹底したシェリー古樽主義

御岳蒸留所最大の特徴は、シングルモルトの熟成樽を「すべてシェリー古樽に限定する」という、徹底した樽戦略です。多くの蒸留所はバーボン樽をベースに、シェリー樽やミズナラ樽をアクセントとして組み合わせますが、御岳はシェリー古樽一本に絞り込んでいます。
しかも、ただのシェリー樽ではありません。「調整用シェリー」を入れただけの樽と、実際に飲用として出荷されるシェリーを長年育んできた「ソレラシェリーバット」を明確に区別し、後者だけを使うと宣言しているのです。
ソレラシステムとは、スペインのシェリー産地で行われる伝統的な熟成・ブレンド方法で、古い樽から新しい樽へ段階的に原酒を詰め替えていく仕組みのこと。その最終工程にある樽が、ソレラシェリーバットです。
スペイン・アンダルシア地方のボデガを一軒一軒訪ね歩き、実際に長年ソレラシステムで熟成されてきた樽の中から、香りと状態を確かめながら一樽ずつ選び抜く。重視されるのは樽のコンディションだけでなく、シェリーづくりに携わる人たちの哲学や人柄でもあるそうです。同じく「発酵するお酒」を追求してきた造り手同士の信頼関係から、御岳にふさわしい樽が選ばれていく、というわけです。
選ばれたソレラシェリーバットは、そのまま使われるわけではありません。必要に応じて職人がリペアや再組み立てを行い、樽板の状態を見ながら香りを損なわない範囲で補修・調整。一樽ごとに最適な状態にしてから原酒を詰めます。ここには、焼酎づくりで長年樽熟成に取り組んできた西酒造の経験とノウハウが生かされています。
なぜ、ここまでシェリー古樽にこだわるのか。ひとつは、御岳が大切にする「発酵由来のフルーティさ」を、熟成によって損なうのではなく、むしろ立体的に膨らませる手段としてシェリー樽を選んでいる、という点です。
ソレラシェリーバットの内側には、長年の熟成で染み込んだ酸化熟成のニュアンスや、ナッティな香り、ドライフルーツのような甘みが蓄積されています。そこに御岳らしいクリアでフルーティなスピリッツを注ぐことで、南国高地という環境とも響き合う、骨太でありながら透明感のあるシェリー系シングルモルトが生まれていきます。
南九州の温暖な気候は、樽内の熟成を早め、シェリー由来の成分の抽出もスピーディに進めます。一方で、標高と豊富な湧水に支えられた環境が、過度なアルコールの蒸発や樽負けを抑え、香味のバランスを取りやすくしている、とも考えられます。
こうした気候条件と自社スピリッツの個性を熟知したうえでの確信が、御岳蒸留所の「全量シェリー古樽」という選択につながっているのでしょう。結果として御岳は、ジャパニーズウイスキーの中でも「シェリー樽特化」という明快な個性を持つ、数少ない蒸留所として注目されているのです。
【ウイスキーレビュー】JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025を評価

JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025
- シングルモルト ジャパニーズウイスキー
- 43% 700ml
- 樽:ファーストフィルのソレラ・シェリーバット
- 抜栓時期:2026年2月
- テイスティング時期:2026年6月
- whiskybaseでの評価:82.60/100
- 定価:¥14,300(税込)
- 楽天市場価格[2026年6月]:14,300円(送料別)
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JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025とは?

御岳蒸留所のシェリー樽シングルモルト第二弾として2025年にリリースされたのが、「JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025」です。
2023年に発売された最初のリリース「御岳 THE FIRST EDITION 2023」は3年熟成でしたが、御岳2025は2019年の蒸留開始から5年間、ファーストフィルのソレラシェリーバットで熟成させた原酒のみをヴァッティングしています。熟成年数が2年伸びたことで、香味の深みと複雑さは、第一弾から明らかに数段階上がっています。
御岳2025は、ロンドンで開催された国際的な酒類品評会「ワールドウイスキーマスターズ2025」のJapan Single Malt部門で金賞を受賞。さらに、世界的なスピリッツコンペティション「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」でも金賞を獲得しています。
国内では、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)において、御岳蒸留所のシングルカスクがベスト・カテゴリー賞およびジャパングランプリを受賞するなど、稼働からわずか5年で、国内外の重要な品評会での評価が着実に積み上がっています。
香り
レーズン、ドライイチジク、ドライアップル、アプリコット、サクマドロップ、黒糖、オレンジピール、カルダモン、シナモン、カカオマス、梅酒。
加水すると焼きリンゴとオーク材の香りが現れ、オロロソシェリー(スペイン産の辛口シェリー酒。ナッティーで豊かな風味が特徴)らしいアロマがくっきりと引き立ちます。
味わい
口に含むとまろやかに広がり、ドライフルーツと砂糖菓子のような甘みが続きます。ミディアムボディ(重すぎず軽すぎない、ちょうどいい飲みごたえ)。
中盤以降はドライにしまり、ビターさが顔を出してくる。シェリー樽由来のカカオ、上品なスパイス、アーモンドの香ばしさも感じます。
フィニッシュ(飲み込んだあとに続く余韻)にかけてはキャラメルの香りが鼻を抜け、コクのあるオロロソシェリーの風味が長く続きます。
加水後もボディが崩れず、ほどよくドライ&ビターのままなのもポイント。
評価

「JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025」の評価としては、「これがソレラシェリー樽100%の実力だ!5年物と思えないリッチ感とバランスの良さが両立」です。
BAR WHITE OAKでは前作「THE FIRST EDITION 御岳2023」も入荷していて、まだ在庫もあります。ただ今回は、ISCなど国際コンペで評価の高い2025エディションをテイスティングしました。
まず、この蒸留所が使っているシェリー樽の話を少ししておきます。
全てファーストフィルのソレラシェリーバットを使っています。「ソレラ」というのは、スペインで古くから使われてきたシェリー酒の多段階熟成システムのこと。要するにこの樽は、実際にシェリー酒を熟成・出荷するために使っていた本物の樽「リアルシェリー樽」です。
ウイスキー業界では今、シェリーの風味をつけるためだけに作った「シーズニング樽」(シェリー酒を短期間入れてフレーバーをつけた樽)が主流。本物のリアルシェリー樽を調達しているのは、かなり希少なこと。
5年熟成という数字だけ見ると短く感じますが、鹿児島という温暖な気候の影響があるのか、それほど短期熟成とは感じません。
それでも、カバランのソリスト・オロロソシェリー(台湾の名門蒸留所が作る濃厚シェリーカスク)のような「ガツンとくる濃厚さ」ではなく、スコッチ寄りの落ち着いたシェリー感です。
「おだやか」とは言っても、あくまでカバランと比べれば、という話。ファーストフィルとしてのコクはちゃんとある。スコッチでファーストフィル5年というのは珍しいパターンですが、御岳2025はそれが成立しています。
御岳2023と飲み比べてみると

御岳2023と飲み比べると…
- 御岳2023 → グレンファークラス(1st〜4thのシェリー樽を使う蒸留所)のような、おだやかなシェリー感。
- 御岳2025 → マッカランやタムデューのような、どっしりとしたコクのあるシェリー感。
ぶっちゃけ、2023は少し期待外れな面がありました。ソレラシェリー100%を謳っているのに、シェリーの個性がやや物足りなかった。2025は熟成が2年進んだことで、その期待にしっかり応えてくれました。
創業から5年足らずのウイスキー蒸留所がここまでやれるのは、西酒造の背景があるからだと思います。1845年創業の老舗焼酎蔵が母体ですから、樽の調達から管理まで、酒造りへのこだわりが違う。コンセプトがぶれない一貫したウイスキー造りが、このボトルに表れています。さすがです。
おすすめの飲み方
まずはストレートで、その個性をじっくり確かめてみてください。
その次はロックか水割りがおすすめです。加水するとオロロソシェリーのコクがよりリッチになり、複雑さも増す印象があります。ストレートとはまた違う表情が楽しめます。ぜひ試してみてください。
シェリー樽100%のジャパニーズシングルモルト。このカテゴリーで一本おすすめするなら、今の御岳2025はまさに筆頭候補。今後も毎年リリースを重ね、いつかは定番ラインナップとしてシェリー100%のシングルモルトが登場する日を楽しみにしています。注目し続けたい蒸留所ですね。

「JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 御岳 2025」は、前作の物足りなさを一気に吹き飛ばしてくれるような、どっしりとした満足感のある仕上がりになっていました。シェリー樽熟成のジャパニーズウイスキーを探しているなら、今もっともおすすめしたい筆頭候補です。
この素晴らしい味わいを、実際に体験してみたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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マナー: 飲酒後は節度ある行動を心がけましょう。








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