【テネシーウイスキーレビュー】ジョージディッケル シグネチャーレシピを評価

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

ジャック・ダニエルと並び称される、テネシーウイスキーの老舗「ジョージ・ディッケル」。そのコアレンジを担うのが、今回紹介する「ジョージディッケル シグネチャーレシピ」です。

本記事では、創業者ジョージ・ディッケルの品質への強いこだわりが息づく蒸留所の歴史、テネシーウイスキー独自の製法「チルト・メローイング」を含む詳細な製造工程を解説。

さらに、旧「No.12」の後継とも目される「ジョージディッケル シグネチャーレシピ」のテイスティングレポートを中心に、その豊かなフレーバープロファイル、ライバルであるジャック・ダニエルとの比較、そして最適な飲み方に至るまで、深く掘り下げてご紹介致します。

 

 

 

カスケードホロー蒸留所(ジョージディッケル蒸留所)とは?

出典:https://www.georgedickel.com/who-is-george-dickel/

カスケードホロー蒸留所(ジョージディッケル蒸留所)
Cascade Hollow Distilling

  • アメリカ・テネシー州・カスケードホロー
  • 設立年:1877年(蒸留所は1958年に再建)
  • 所有者:ディアジオ社
  • ブランド:ジョージディッケル
  • マッシュビル:コーン84%、ライ麦8%、モルト8%

概要と歴史

カスケードホロー蒸留所(通称:ジョージディッケル蒸留所)は、ジャックダニエルと共にテネシーウイスキーを代表する銘柄「ジョージディッケル」を生産しているウイスキー蒸留所です。創業者のジョージ・ディッケルはドイツ出身。1844年からはテネシー州ナッシュビルに移住し、小売業を始めます。

1860年からは地元の蒸留所から買い付けたウイスキーを樽売りやボトリングして販売する会社を設立。卸業者として地位を築きます。そして1870年には自身の蒸留所をテネシー州タラホーマに設立。1879年にはカスケードホローに蒸留所を操業します。その後は禁酒法の影響により製造中止となってしまいます。

それから長年に渡り休止状態でしたが、第二次大戦を経て1958年にマスターディスティラーのラルフ・ダップスが再建を果たします。1990年頃には需要の増大による過剰生産が問題となり、再び生産休止。

2003年には再開されますが、長年の休止が影響したせいか、他のブランド(ライバルのジャックダニエル)から後れをとることになります。

ウイスキー(Whisky)表記の背景

出典:By Unknown author – Rock Island (IL) Argus, 23 March 1915, p. 3. Downloaded from the Library of Congress “Chronicling America” database., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=31765993

ジョージ・ディッケル氏は、スコットランドやカナダの「Whisky」に匹敵する品質を目指していたことから、アメリカンウイスキーの一般的な綴りである「Whiskey」ではなく、スコッチと同じ「Whisky」の綴りを採用しています。このスペル違いは、創業者の品質への強いこだわりを象徴するものとして、現在でも採用されています。

マッシュビル

ジョージ・ディッケルの「マッシュビル(原料配合)」は、以下通り。

原料       配合率 特徴
コーン(トウモロコシ) 84%  高い配合率がウイスキーに甘みとコクをもたらします。テネシー州産のコーンを主に使用しています。
ライ麦 8% スパイス感と複雑さを加えます。
大麦麦芽(モルト) 8% 糖化に必要な酵素を提供し、発酵を助けます。

「ハイ・コーン」なマッシュビルは、競合ブランドと比較しても高い甘さを生み出す基盤となります。

仕込み水とサワーマッシュ製法

  • 仕込み水(水源)

仕込み水には鉄分が少なく、石灰岩層を通ってろ過された「カスケード・スプリング(Cascade Spring)」の水を使用しています。このミネラルが豊富な水が、ウイスキーの最終的な風味に欠かせない要素の一つです。

  • サワーマッシュ製法

他の多くのバーボンウイスキーと同様に、ジョージ・ディッケル蒸留所でもサワーマッシュ製法を採用しています。これは、前回の蒸留で残った液(バックセット)の一部を新しいマッシュに加えることで、pH値を下げて雑菌の繁殖を防ぎ、安定した発酵を保証する手法です。

発酵と蒸留

自家培養の酵母を使用し、発酵期間は通常3〜4日間。発酵は温度管理を厳密に行わず、自然な環境下で進めることで、独自の風味プロファイルを構築しています。

蒸留器は42インチ(約107cm)径の連続式蒸留機(コラムスチル)を使用し、初留を行います。その後、ダブラー(Doubler)と呼ばれる単式蒸留機に似た工程を経て、アルコール度数を上げます。ニュースピリッツ(ホワイトドッグ)は、アルコール度数57.5%(115プルーフ)で樽詰めされます。

チルト・メローイング(特徴的な工程)

ジョージ・ディッケルの最も特徴的な工程としては、「チル・メローイング(Chill Mellowing)」と呼ばれる独自のチャコール・メローイング製法です。

  1. 冷却(Chill): 樽詰め前に、ニュースピリッツの温度を約4.4°Cまで冷却。
  2. ろ過(Mellowing): 冷却されたスピリッツを、サトウカエデを燃やして作った木炭(チャコール)の層で通過(ろ過)。

スピリッツを冷やすことで、ろ過の効率が高まり、蒸留後の余分な油分や「雑味」が効果的に除去されます。これにより、「月光のようになめらか」と評される、ジョージ・ディッケル特有のクリアでスムース、かつメープルシロップのようなほのかな甘さを持つ個性が生まれます。

熟成

ジョージ・ディッケルの「チャーレベル(Char Level)」は、胴部分(ステイヴ)と鏡面(ヘッド)で異なります。

  • 樽の胴部分には最も強い焦がし(No.4 Char
  • 鏡板はやや弱い焦がし(No.2 Char

主なラインナップ

ジョージディッケル クラシックレシピ

熟成年数は約5年。40%でボトリング。ブランドのエントリーボトルであり、非常にスムーズで飲みやすい味わい。

ジョージディッケル クラシックレシピ
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ジョージディッケル シグネチャーレシピ

熟成年数は約8〜10年。45%でボトリングされた、コアレンジボトル。熟成感と複雑さが増したバランス型。

ジョージディッケル シグネチャーレシピ
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ジョージディッケル ハンドセレクト

厳選されたシングルバレルをカスクストレングスでボトリング。クラシックレシピよりも力強く、樽の個性が際立つ。

 

 

【テネシーウイスキーレビュー】ジョージディッケル シグネチャーレシピを評価

ジョージディッケル シグネチャーレシピ
George Dickel Signature Recipe

ジョージディッケル シグネチャーレシピ
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香り

アプリコット、洋ナシ、オレンジキュラソー、アーモンド、ミントキャンディー、ヌガーグラッセ、はちみつ、メープルシロップ、パウンドケーキ、カルダモン、シナモン、イチジク、石油、オートミール。

加水すると、パイン飴、リンゴ、メロン。フルーティーなフレーバーが豊かに広がります。

 

味わい

バニラとフルーティーなフレーバーの後、すぐにドライ。引き締まった味わい。ミディアムボディ。徐々にスパイスとオーキーな個性が広がります。フィニッシュにかけてはフローラルで爽やかな風味も。余韻はやや短く、スッキリとまとまっていきます。

加水後は柔らかい口当たりに変化しますが、ボディに厚みがあることには変わらず、加水に対して強い印象。

 

評価

「ジョージディッケル シグネチャーレシピ」の評価としては、「ケンタッキーバーボンよりライト&スムース。リッチさとスムースさを両立したテネシーウイスキー」です。

旧「No.12」からのリブランド?

「ジョージディッケル」は「ジョージ・ディッケル No.12」が個人的に好きだったのですが、こちらのボトルはどこの店にも在庫がなく、日本市場では終売状態といった感じ。

この状況と「ジョージ・ディッケル クラシックレシピ」および「シグネチャーレシピ」の登場を鑑みると、本国アメリカでも「No.12」はリブランドによって「シグネチャーレシピ」に置き換わった可能性が高く、今後「No.12」を飲むことはできないかもしれません…(公式HPでもNo.12は確認できませんでした。)

シグネチャーレシピは、クラシックレシピの上位ボトルという位置づけであり、アルコール度数は旧「No.12」と同様の45%。近年のアメリカンウイスキーの傾向として、スタンダードボトルが40%でボトリングされるのに対し、上位レンジの商品は45%〜50%でボトリングされるケースが増加しており、シグネチャーレシピもその流れに沿っています。

ジャック・ダニエルとの比較

シグネチャーレシピを一言で表現するなら、「ジャック・ダニエルよりも深みと飲みごたえがあり、バーボンウイスキーよりもライトかつスムースで飲みやすい」という印象です。

同じテネシーウイスキーとして、世界的な販売量を誇る「ジャック・ダニエル」との比較は避けて通れません。

  • ジャック・ダニエル:良くも悪くも、「飲みやすさ」が最大の強み。クセや雑味が少なく、適度な樽香と、甘味・苦味のバランスが優れており、すっきりとしています。多くの人に受け入れられる個性ですが、ネガティブに捉えると、個性に乏しいという側面もあります。
  • ジョージ・ディッケル シグネチャーレシピ:テネシーウイスキーらしい飲みやすさに加え、フレーバーと余韻の複雑さがジャック・ダニエルよりもリッチです。さらに、ボディにも厚みがあり、飲みごたえがあります。

両者ともテネシーウイスキーの伝統である「チャコール・メローイング」を経ていますが、その製法は少し異なります。このろ過製法の違いが、ウイスキーに与える影響は非常に大きく、両者の個性は明確に差別化されています。

テネシーウイスキーの特質について

ジャック・ダニエルとシグネチャーレシピは、個性が異なりながらも、「飲みやすさ」という共通項を持っています。この飲みやすさは、全体的に雑味が少なく、スムースですっきりとした風味に起因します。

ケンタッキーバーボンが持つ力強さの裏側には、特に安価な銘柄に見られる「石油っぽさ」や「アルコール溶剤のようなネガティブな要素」が表に出やすい傾向がありますが、テネシーウイスキーでは、そうしたネガティブな要素がほとんど現れません。このことが、たとえ個性が控えめであっても、品質の悪さを感じさせない要因となっていると考えられます。ジャックダニエルが「安くて美味しい」と支持される理由にも繋がりますね。

ライウイスキーと似てる⁇

結論として、「ジョージ・ディッケル シグネチャーレシピ」は、テネシーウイスキー特有の飲みやすさに加え、ケンタッキーバーボンのような豊かな風味を併せ持つ、バランスのとれたウイスキーです。その個性を総合的に見てみると、類似しているのはバーボンウイスキーというよりも、ライウイスキーかもしれません。

ライウイスキーもタイプは様々ですが、一般的にバーボンよりも飲みやすい傾向があります。シグネチャーレシピはライウイスキーほどのスパイシーさはないものの、全体的にライトボディでスムースという点で共通しています。こうした個性から、シグネチャーレシピはライウイスキーのように、カクテルベースとしても幅広く利用可能です。

ジョージ・ディッケル シグネチャーレシピの優れた点の一つは、飲み方の幅が広いことです。ハイボール、ロック、水割りなど、様々な飲み方でその豊かな個性を楽しむことができます。

価格と流通の課題

ジョージ・ディッケル シグネチャーレシピの価格面には課題があり、現在、販売店舗が非常に少ないことから、市場価格が安定していません。流通量が不安定なため、相場は6,000円以上となっており、ショップによっては9,000円台という高値で取引されることもあります。この価格高騰の最大の要因は、他のバーボンウイスキーと異なり、日本国内に正規代理店が存在していないことにあると考えられます。

コストパフォーマンスの面で考えると、ライバルであるジャック・ダニエルには及ばないと言わざるを得ませんが、個人的にはジャック・ダニエルの味わいよりもシグネチャーレシピのほうが好き。

ただ、残念なのは、繰り返しになりますが、流通量が少ないために、やや割高な価格で購入せざるを得ない点。このボトルが正当な価格で広く流通するためにも、日本国内に正規代理店が誕生し、流通が安定することを切に願っています…

ジョージディッケル シグネチャーレシピ
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出典:By ProhibitOnions at the English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4446261

「ジョージディッケル シグネチャーレシピ」は、テネシーウイスキーの伝統であるスムースな飲みやすさを保ちながらも、ジャック・ダニエルを凌駕する複雑なフレーバーとボディの厚みを持たせた、バランスの取れた上級品として高く評価できます。

日本国内での正規代理店不在による流通の不安定さが、割高な市場価格と相まって、愛好家にとって大きな課題となっています。この傑出したテネシーウイスキーが、より多くの人々に正当な価格で販売される日を待ち望みたいですね。

「ジョージディッケル シグネチャーレシピ」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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