【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITIONを評価

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」のテイスティングレビューをはじめ、ボトルの評価や、シリーズ全体を彩る「二十四節気シリーズ」について詳しく解説します。

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」の味わいや、厚岸蒸溜所の魅力を知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】嘉之助蒸溜所とは?

嘉之助(かのすけ)蒸溜所
オーナー: 小正嘉之助蒸溜所(小正醸造)
創業年:2017年
所在地:鹿児島県日置市日吉町神之川845-3
公式HP:https://kanosuke.com

小正酒造は1883年に創業した老舗の本格焼酎メーカー。鹿児島県日置市の吹上浜の丘上に建てられたのが「嘉之助蒸溜所」。

世界に通用するウイスキーを造りたいと強い決意で始めた嘉之助は、社長 小正芳嗣氏の祖父の名前が名付けられています。2017年ウイスキー免許を取得し、同年11月から生産を開始しています。

仕込みは1バッチ麦芽1トン。6000リットルの麦汁を抽出できます。大麦麦芽はイギリス産をメインに、オーストラリア産や日本産も使用。ノンピーテッドから50ppmのヘビリーピーテッドまで、幅広いタイプを仕込んでいます。

生産設備の多くは三宅製作所のものが使われており、マッシュタン、ステンレス製の発酵槽、ポットスチルとすべて三宅製。発酵槽は床に埋め込まれているのスタイルで、焼酎の蔵と同じように作成されたことによるもの。どの蒸留所へ見学に行っても見ることのない、焼酎メーカーだからこその設計ですね。

 

ポットスチルはサイズが異なる3つのタイプあり、それぞれ容量、形状、ラインアームの角度が微妙に異なっており、多彩な原酒を生み出すことができるように工夫されています。一番大きいものは容量6000リットルのストレート型。中型は3000リットルのストレート型。小型は1600リットルのランタンヘッド型。大は初留のみ。小は再留のみ。中型は初留・再留どちらにも使用しています。

冷却装置は3基とも「屋内ワームタブ」となっており、日本の蒸留所としては珍しい方式です。これは、昔から使用している焼酎蒸留器がワームタブであるから。老舗焼酎蔵元として、ウイスキーに焼酎造りのエッセンスを採り入れることも目的となっています。

貯蔵庫はラック式が5棟あり、約3800樽を寝かせることができます。ボトリング設備は嘉之助蒸留所の中にはないため、車で10分ほどの場所にある小正醸造で行っています。

また、小正醸造では日置にある焼酎蔵でグレーンウイスキーの製造も行っています。焼酎用のステンレス蒸留器を使い、自社のモルトとグレーンの原酒をブレンドしたウイスキー(シングルブレンデッド・ジャパニーズウイスキー)を将来的にリリースする予定とのこと。

その他、「メローコヅル」と呼ばれるオーク樽熟成を施した米焼酎もつくっており、全量を樽熟成させた初となる商品として話題になっています。焼酎メーカーとしても新たな挑戦を続け、ウイスキー造りも積極的に行っています。

2018年にはニューポットを数量限定で発売し、その後8ヵ月間貯蔵した「嘉之助ニューボーン2018」を発売。2019年には16ヵ月間貯蔵の「嘉之助ニューボーン2019」。2020年にはイギリス産ピーテッド麦芽を使用した24ヵ月間貯蔵の「嘉之助ニューボーン2020ピーテッド」を発売。

 

2021年6月、待望の3年熟成「シングルモルト嘉之助2021 FIRST EDITION」をリリース。「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2022(TWSC2022)」では最高金賞を受賞。この年にはウイスキー製造部門を分社化し、「小正嘉之助蒸溜所株式会社」を設立し、ウイスキー大手「ディアジオ社」との長期的なパートナーシップを結んでいます。

2022年には「シングルモルト嘉之助 2022 LIMITED EDITION」の他、「嘉之助 蒸溜所限定ボトル#002~004」などを発売。

そして2023年1月には定番商品となる「シングルモルト嘉之助」をリリース。ノンピート麦芽で仕込まれたタイプで、熟成樽はアメリカンオークのリチャーカスクを主体に、複数の異なる樽で熟成した原酒をヴァッテッドしています。

2024年には、嘉之助のモルトウイスキーと日置蒸溜蔵のグレーンウイスキーをブレンドした「嘉之助 DOUBLE DISTILLERY」を発売。TWSC2024(東京ウイスキースピリッツコンペティション2024)では最高金賞を受賞しています。

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITIONを評価

 

シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION

 

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」の特徴

「​シングルモルト嘉之助2023 LIMITED EDITION」は、嘉之助蒸溜所が2023年に限定発売したシングルモルトジャパニーズウイスキー。このシリーズとしては第4弾にあたるボトルです。

原酒は​2018~2019年にピーテッドモルトで仕込まれたもの。嘉之助蒸溜所では、基本的にノンピートモルトでの仕込みがメインであるため、「​シングルモルト嘉之助2023 LIMITED EDITION」は、これまで登場してなかった、スモーキーでクセのあるタイプになります。

このウイスキーは、焼酎造りで培った技術を活かして、焼酎リチャーカスクやシェリー樽を中心に、3年以上熟成した複数の原酒をブレンド。アルコール度数59%のカスクストレングス・ノンチルフィルタードでボトリングしています。 ​

 

香り

洋梨、キャラメル、アーモンド、カカオマス、オレンジビターズ、レーズン、バナナチップ、マドレーヌ、焼き魚、燻製、ヘーゼルナッツ、カルダモン、ビスケット、若干ニューポッティーなアロマ。

加水すると、加水前に感じていたアルコール臭はなくなり、フルーティーでモルティー。アロマバランスは崩れず、むしろ全体的にまとまっているような感覚。

 

味わい

甘くてアルコールの刺激を強く感じます。フルボディ。トロピカルフルーツ、バニラ、ミディアムなスモーキーフレーバー。奥にはモルティーな風味も。フィニッシュにかけてはピーティーでシトラシー。余韻も複雑で、飲むたびに違った味わいが見つかるような、奥深い味わいです。

加水後はまろやかになり、フレーバーのも豊かに変化。甘さの後にすぐドライ。タンニン分は目立つわけではなく、オーク樽由来の個性も程よく感じます。

 

評価

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」の評価としては、「若いハイランドパークかよ!嘉之助」です。

このウイスキーの特徴としては、嘉之助としては初のピーテッドモルトを主体に仕込まれたボトルであること(たぶん初)。これまでのリミテッドエディションはノンピートモルトで造られており、その他の限定ボトルも基本的にはノンピーテッドの原酒です。そのため、これまで嘉之助を飲んだ経験があれば、「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」は、これまでにない個性的なウイスキーであることに気が付くと思います。

スモーキ―さは、アイラモルトのように強烈ではなく、ハイランドやスペイサイドのピーテッドモルトのような、燻製香に華やかさが含まれているような印象。フェノール値は公開されていませんが、嘉之助蒸溜所で使用されているのピーテッドモルトは「50ppm以下」とのことです。

個性的なのはピーテッドモルトでの仕込みの他、メインの熟成樽にシェリー樽を使用しているところ。ウイスキーの色調からもわかる通り、シェリー樽からの個性をはっきりと感じる、フルーティーでリッチな仕上がりです。

また、シングルモルト嘉之助の独自性を生み出している「焼酎リチャーカスク」の原酒も使用しているため、焼酎っぽいフルーティーさや、フレッシュな柑橘など、複雑な香りを形成しています。

さらに、基本となるバーボン樽の原酒も合わせていることから、バニラやキャラメルといったアメリカンオーク由来の風味も旨く調和しています。原酒の酒齢は3~4年くらいだと思いますが、熟成期間が短いとは思えないほど、複雑かつ飲みごたえのあるバランス。

 

良質な熟成樽が調達できるのは、洋樽製作の名門・有明産業と特別なパートナーシップを結んでいることから。同社の熟成米焼酎「メローコヅル」で築いてきた長年の信頼関係があってこそですね。

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」は、ピーテッドモルトによるスモーキ―さに加え、シェリー樽のリッチなフルーティーさと、焼酎リチャーカスク、バーボン樽などから複雑なアロマが融合することで、短期熟成ながらも複雑で個性的な味わいを生み出しています。

スコッチで言えば、どの蒸溜所が似ているかと言うと…一つ思いついたのは「ハイランドパーク」でしょうか。クセの強さとシェリー樽のニュアンスは、オフィシャルボトルのハイランドパークっぽい感じ。まぁ、似てるというか、近しいタイプをあえて答えるのなら、という程度の類似性ですが(笑)

個人的にはノンピート仕込みの嘉之助よりも、「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」のように、ほどよいスモーキーさを持っているタイプの方が好みでした。ピーテッドモルトは嘉之助の酒質と相性が良いと思います。

こういった意見をもつのはどうやら私だけではないらしく、2025年5月22日に「嘉之助 シングルモルト PEATED」が新たに発売されます。フラッグシップボトル「シングルモルト 嘉之助」と、どの程度個性が違うのかが気になりますね。そのうち飲んでみたいと思います。

最後に「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」の飲み方ですが、アルコール度数が59%とかなり高めなので、人によってはロックで愉しむのもありでしょう。ストレートだと熟成の未熟さを若干感じるので、少し加水したほうが安定します。

 

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」公式テイスティングノート↓

COLOUR 深みのあるイエローアンバー
AROMA バナナ、カスタードクリーム、ニッキ飴、いぶりがっこ
PALATE 塩キャラメル、紅茶、八ツ橋、ブラッドオレンジ
FINISH 夏みかん、花椒、焚火の残り香が穏やかに続く

 

 



 

 

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」は、単なる限定品という枠を超えた、嘉之助の現在地と未来を示す一本と言えます。ピーテッドモルトのスモーキ―な個性と、シェリー由来の奥行きある甘味、焼酎カスクからは鹿児島らしい和のニュアンスが感じられ、幾重にも重なり合った多層的な味わいを生み出しています。

嘉之助のような新興蒸溜所が、ピーテッドモルト

挑戦的な姿勢は、まさに国産ウイスキーの新たな希望といえるでしょう。

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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