こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
最新の記事は【2024年版】日本のウイスキー蒸留所114か所解説|おすすめ銘柄も紹介↓
2021年現在、日本国内で本格的なウイスキーをつくっている蒸留所を解説致します。なお、一部の準備中、または情報のない地ウイスキーなどは除外しております。各蒸留所が発売している、おすすめのウイスキーや商品も合わせてご紹介しております。
※この記事は『ウイスキーガロア2021年4月号』を参考にし作成しています。
ウイスキーガロア2021年4月号
日本全国のウイスキー蒸留所解説【全24か所】おすすめ銘柄も紹介
1ページ目
1. 余市蒸留所 (ニッカウヰスキー)
2. 宮城峡蒸溜所 (ニッカウヰスキー)
3. 山崎蒸溜所 (サントリー)
4. 白州蒸留所 (サントリー)
5. 知多蒸留所 (サントリー)
6. 富士御殿場蒸溜所 (キリンディスティラリー)
7. マルス信州蒸溜所 (本坊酒造)
8. マルス津貫蒸溜所 (本坊酒造)
9. 厚岸蒸留所 (堅展実業)
10. 遊佐蒸留所 (金龍)
11. 安積蒸留所 (笹の川酒造)
12. 八郷蒸留所 (木内酒造)
13. 鴻巣蒸留所 (光酒造)
14. 秩父蒸留所 (ベンチャーウイスキー)
15. 秩父第二蒸留所 (ベンチャーウイスキー)
16. ガイアフロー静岡蒸留所 (ガイアフローディスティリング)
17. 新潟亀田蒸留所 (新潟小規模蒸溜所)
18. 三郎丸蒸留所 (若鶴酒造)
19. 長濱蒸留所 (長濱浪漫ビール)
20. 江井ヶ嶋蒸留所 (江井ヶ嶋酒造)
21. 岡山蒸留所 (宮下酒造)
22. 桜尾蒸留所 (サクラオブルワリーアンドディスティラリー )
23. 尾鈴山蒸留所 (尾鈴山蒸留所)
24. 嘉之介蒸留所 (小正醸造)
日本全国のウイスキー蒸留所解説 余市蒸留所
余市蒸留所
オーナー:ニッカウヰスキー
創業年:1936年
所在地:北海道余市郡余市町黒川町7丁目6
公式HP:https://www.nikka.com/distilleries/yoichi/
主な商品:シングルモルト余市
スコットランドの蒸留所のよう⁉日本で最も美しい北の大地の蒸留所
竹鶴政孝の目指したウイスキー造りが今もなお受け継がれ、本場スコットランドにも引け劣らないモルトウイスキーをつくっているのが余市蒸留所。石炭直火焚き蒸留、煉瓦造り、キルン塔、鉄道駅に近い場所、良質な仕込み水とウイスキー造りに適した気候…。蒸留所を見学すると、マッサンのこだわりが随所に感じられます。ウイスキーブーム以降、余市の需要は高まるばかりですが、無理に生産拡大をはかるのではなく、坦々とこれまで通りウイスキーの生産を続けているところも魅力的です。天国からマッサンが「ウイスキー造りには時間がかかる」と睨みを利かせているのかも知れません(笑)
北海道・余市町の年間平均気温はスコットランドと同じ約8℃。冷涼で湿潤な気候はウイスキーにとって最適な環境です。ポットスチルは1936年当時から変わらない、ラインアームが下向けとなっているストレートヘッド型。竹鶴がロングモーン蒸留所から技術を学び導入した、石炭直火焚きの加熱方式によって、高温で蒸留が行われています。直火焚きや下向けラインアームの影響により、重厚で芳ばしい酒質のウイスキーを生み出すことができるのです。
蒸留所には製造設備の他、現在は使用されていませんが麦芽を造る際に使われるキルン塔があります。そのほか、おみやげショップ、レストランバー、ウイスキー博物館、熟成庫(見学不可)、竹鶴とリタ夫人が共に暮らした旧竹鶴邸(見学不可・重要文化財)があり、ウイスキー好きなら1日中愉しむことができます。
現在はコロナ禍にあり見学が難しくなっていますが、平常通りに戻った際には必ず訪れたほうが良い蒸留所です。ウイスキーがもっと身近になるでしょう。おみやげ売り場には蒸留所でしか購入できない限定品もあるのでチェックしてみて下さい。
おすすめのウイスキー
シングルモルト余市
日本全国のウイスキー蒸留所解説 宮城峡蒸溜所
宮城峡蒸溜所
オーナー:ニッカウヰスキー
創業年:1969年
所在地:宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地
公式HP:https://www.nikka.com/distilleries/miyagikyo/
主な商品:シングルモルト宮城峡
マッサンが選んだもう一つの聖地 木々を極力切らずに建てられた蒸留所
宮城峡蒸留所は、余市と異なるタイプのウイスキーをつくるためにつくられました。穏やかな空気をまとった、緑豊かな森に囲まれた蒸留所。こうした環境で育ったウイスキーは間違いなくおいしくなります。
竹鶴の理想とするブレンデッドウイスキーの原酒には、余市のようなヘビーなピーテッドタイプの他、ライトでクセの少ない華やかなタイプのモルトウイスキーも必要でした。そんなウイスキーをつくるため、数ある候補地の中からマッサンが選んだのは宮城県にある広瀬川と新川という二つの清流に恵まれた土地。初めて訪れた際に、川の水でブラックニッカを割って飲み、その場で蒸留所の建設を決めたというエピソードはあまりにも有名。
ピート麦芽での仕込みを行う余市に対し、宮城峡で使用する麦芽はほぼノンピート。 クセの少ないスコットランド・ローランド地方のモルトウイスキーを意識して造られています。ポットスチルも正反対で、余市は小さなストレートヘッド型のスチルで蒸留を行っていますが、宮城峡は巨大なバルジ型ポットスチル。ラインアームも上向き。スチームでの間接加熱で蒸留されたスピリッツは、フルーティーでモルティー。柔らかな味わいでクリーン。すっきりとしたニューポットを生み出します。
蒸留所の特徴としてはモルトウイスキーの他、現在は世界的にもあまり利用されていない「カフェ式連続式蒸溜機」でグレーンウイスキーの生産も行っているところ。この蒸留器は1963年、当時の西宮工場に導入された後1999年2年に宮城峡へ移設。カフェ式連続式蒸溜機は通常のものよりもフレーバーを豊かに抽出する特性をもっており、グレーンウイスキーはもちろん、モルトウイスキー、ジン、ウォッカの蒸留にも使用されています。
蒸留所の最寄り駅はJR仙山線「作並駅」。仙台駅から40分程。土・日・祝日は、JR作並駅から宮城峡蒸溜所行きの無料シャトルバスが運行しており、片道約7分で行くことができます。2017年にはビジターセンターが新設され、プロジェクションマッピングを駆使したシアターや、宮城峡蒸溜所の歴史、ウイスキーの製造工程が学ぶことができます。楽しくて魅力的な蒸留所ですね。余市と同様、おみやげ売り場には限定ボトルやオリジナルのおつまみを販売しています。
おすすめのウイスキー
シングルモルト宮城峡
日本全国のウイスキー蒸留所解説 山崎蒸溜所
山崎蒸溜所
オーナー:サントリー
創業年:1923年
所在地:大阪府三島郡島本町山崎5丁目2−1
公式HP:https://www.suntory.co.jp/factory/yamazaki/
主な商品:シングルモルトウイスキー山崎、山崎 リミテッドエディション、山崎12年、山崎18年、山崎25年、山崎50年
日本人のウイスキー 世界が認めるジャパニーズウイスキーの最高峰
蒸溜所の建設着手は1923年。サントリーの創業者「鳥居信治郎」は、全国各地の建設候補地から蒸留所に最適な場所を探していました。そして最終的に選ばれたのは、京都と大阪に挟まれた「山崎」の地。湧き水は名水として知られており、千利休が茶室を開くほどでした。山崎はウイスキー造りにとって理想的な環境だったのです。
蒸留所ではステンレス発酵槽と木桶発酵槽の2種類を使用。2パターンの発酵槽が利用されることは本場スコットランドでもあまり見られないことです。蒸留器は基本となるストレートヘッド型から、形状もサイズも様々なポットスチルを使っています。蒸留の加熱方式も、直火と間接スチームの両方。冷却方式も「シェル・アンド・チューブ」と伝統的な製法の「ワームタブ」の2種類が組み合わせられています。山崎蒸留所では多種多様な方法でバラエティ豊かな原酒が造られているのです。
2013年、蒸留所に4基のポットスチルが増設されました。現在は合計16基のポットスチルがあり、休日返上でフル稼働生産を行っています。熟成樽はサントリーご自慢の自家製樽「スパニッシュオークシェリー樽」や、日本固有の木材「ミズナラ樽」など、様々な種類の樽が使用されています。熟成のプロセス、熟成樽の種類を組み替えることで、100タイプ以上の異なるウイスキー原酒を生み出しており、スコットランドやその他の地域をみても、これほど多彩な原酒造りを一つの蒸留所でおこなっているのは「山崎」と「白州」以外にはありません。
コロナ禍における新たな試みとして、山崎蒸留所では2021年1月からオンラインによる「リモート見学ツアー」を開始しています。ズームを使用し、動画で蒸溜所を解説しています。また、事前に送付されるテイスティングサンプルも愉しむことができ、自宅にいながらして山崎蒸留所に居るかのようなツアーを体験することが可能です。リモート見学ツアーはコロナ収束後も続ける予定とのこと。
おすすめのウイスキー
シングルモルト山崎
山崎12年
山崎18年
山崎25年
日本全国のウイスキー蒸留所解説 白州蒸留所
白州蒸留所
オーナー:サントリー
創業年:1973年
所在地:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
公式HP:https://www.suntory.co.jp/factory/hakushu/
主な商品:シングルモルトウイスキー白州、白州12年、白州18年、白州25年
山崎とは異なる個性のウイスキーを生み出す 森の中につくられた蒸留所
南アルプスの山々に抱かれた山梨県北杜市。甲斐駒ケ岳に抱かれた約82万平方メートルの広大な森の中に白州蒸留所があります。大自然の恵みによってつくられる、サントリー第2のモルトウイスキー蒸留所。白州の誕生は、山崎蒸留所の創業から50年が過ぎた1973年。建設を指揮したのは鳥居信次郎の息子「佐治敬三」。同氏は「二代目マスターブレンダー」でもあり、二つの蒸留所で多様な原酒作りを行う必要があると考えていました。白州の地から湧き出る清らかな水は、ウイスキー造りにうってつけの硬度が低い名水。仕込み水だけでなく、冷涼湿潤な気候も理想的。山崎とは異なるクリーンで清涼感のある原酒を生み出すことに成功したのです。
2014年に4基のポットスチルが増設され、現在は合計16基が稼働。モルトウイスキーの仕込みは「ノンピート麦芽」と「ライトピート麦芽」が基本で、毎年一定期間だけ「ヘビリーピーテッド麦芽」の原酒造りも行われています。モルトウイスキーの他に、白州では操業40周年を迎えた2013年に連続式蒸留器が新たに導入。グレーンウイスキーの生産もスタートしました。このオリジナルとなる小型の連続式蒸留機は、知多蒸溜所のものと比べると生産能力は1/10以下。規模が小さいことで、様々な原料の風味をスピリッツに反映させることが可能となり、試験的な蒸留も容易に行うことができます。この蒸留器を使用した限定品のシングルグレーンウイスキーはすでにボトリングされており、既にその実力の一端が明らかとなっています。
2021年には販売休止となっていた「シングルモルト白州12年」の販売が再開。 出荷本数こそ少ないものの、待ちに待った12年物の復活に全国の白州ファンが喜びを上げました。蒸留所には生産設備の他、ファクトリーショップ、ウイスキー博物館、レストランなどがあり、家族連れでも一日中、森の中で森林浴をしながら楽しむことができます。白州の森で白州ハイボールを飲めたなら…これ以上の至福はありません。
おすすめのウイスキー
シングルモルト白州
白州12年
白州18年
白州25年
日本全国のウイスキー蒸留所解説 知多蒸留所
知多蒸留所
オーナー:サントリー
創業年:1973年
所在地:愛知県知多市北浜町16番地
公式HP:https://www.suntory.co.jp/chitadistillery/
主な商品:シングルグレーンウィスキー知多、エッセンス・オブ・サントリーウイスキー知多 桜樽後熟ブレンド
「脇役」から「主役」へ ブレンデッドに欠かせないグレーンウイスキーの蒸留所
愛知県西部の知多半島は、大手食品飲料メーカーなどの工場が立ち並ぶ工業地帯。その一角にあるのが1972年に建設されたサントリー知多蒸溜所(本格稼働は1973年)。「オールド」や「角」「響」「トリス」など、サントリーのブレンデッドウイスキーには欠かすことのできないグレーンウイスキーを生産しています。グレーンウイスキーの主原料はトウモロコシ。知多という土地は、原料を大量に積んだタンカーが入港することができ、原酒を熟成させる貯蔵庫「近江エージングセラー(滋賀県)」や「白州蒸留所(山梨県)」の中間地点にあたるため、グレーンウイスキーの製造拠点としてはとってつけの立地となっています。
2015年に「シングルグレーンウイスキー知多」が発売され、その名は全国に知れ渡るようになります。これまで縁の下の力持ちとして、サントリーのウイスキーを支える存在でしたが、モルト原酒の不足をきっかけに商品開発がスタート。通常のグレーン原酒とは異なる仕込み、熟成樽を使用することで、華やかで飲みごたえのある味わいのグレーンウイスキーを完成させました。グレーンウイスキーは「サイレントスピリッツ」と言われており、風味が少ないことが特徴ですが、知多はこれまでのグレーンウイスキーとは異なる複雑で力強い個性をもっており、これまでのグレーンのイメージを払拭させるウイスキーとして人気となっています。
蒸留器は全高30メートルにもなる、まるで巨大なビルのようなサイズの連続式蒸溜機。モロミ塔、抽出塔、精留塔、精製塔の4塔からなる連続式蒸留器からは、「ヘビー」「ミディアム」「クリーン」の3タイプのグレーン原酒が24時体制で蒸留されています。蒸留期間中も、日々厳格に原酒のチェック。こだわり抜かれてつくられたグレーンスピリッツは、ホワイトオーク樽やスパニッシュオーク、ワイン樽など、モルトウイスキーのように様々な樽を利用されています。
知多蒸留所は設備上の関係で一般見学は行っていません。いつの日か、グレーンウイスキーの製造基地をこの目で見てみたいものです。
おすすめのウイスキー
シングルグレーンウイスキー知多
日本全国のウイスキー蒸留所解説 富士御殿場蒸溜所
富士御殿場蒸溜所
オーナー:キリンディスティラリー
創業年:1973年
所在地: 静岡県御殿場市柴怒田970番地
公式HP:https://www.kirin.co.jp/entertainment/factory/gotemba/
主な商品:シングルグレーンウイスキー富士、ウイスキー陸、 富士山麓シグネチャーブレンド
富士山の恩恵を受けた複合蒸留所
1972年、キリンビール、シーグラム社、シーバスブラザーズ社の三社合弁企業によって蒸留所は建設されました。実際に本格的な生産がスタートしたのは1973年。良質な富士山の伏流水に恵まれ、ウイスキーの熟成に適した冷涼で湿潤な気候であることから富士御殿場の地が選ばれました。仕込み水は地下100メートルの深井戸から汲み上げた、富士の伏流水。この硬度約60度の軟水は、本場スコッチの目利きのプロであるシーバスリーガル社が成分を分析し、お墨付きをもらったウイスキーにとって良質な水となっています。この仕込み水は富士山に降り注いだ雨水が地層にしみ込み、50年にも及ぶ長い期間を経て「ろ過」されたものが採取されています。富士御殿場は、富士山という名の「超巨大な浄水器」からの天然水を得ることのできる、ウイスキーにとっての理想郷といえる場所なのです。
富士御殿場蒸溜所にはカナダのシーグラム社により、グレーンウイスキーづくりのノウハウも活かされています。シーグラム社の特性マルチカラム。さらにバーボンの製造に用いられるラバーやケトルを採用。三つの蒸留器を使い分けることで、「ライト」「ミディアム」「ヘビー」といった3タイプの原酒を作り分けています。生み出されるグレーンウイスキーは世界的にも高く評価されており、近年注目されています。また、モルトウイスキーにはスコッチの名門シーバスブラザーズ社のモルトウイスキーづくりの技術が採用されています。ウイスキーを生み出すキーマン「ポットスチル」は、シーバス傘下のストラスアイラ蒸留所のものに似た形状を採用。スペイサイドのような華やかなタイプのモルトを生産しています。富士御殿場蒸留所は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を生産している、世界でも数少ない複合蒸留所となっているのです。
富士御殿場蒸溜所の特徴的な部分の一つとして、樽詰めの際のアルコール度数が「50度」であることが挙げられます。一般的なウイスキー蒸留所の樽詰め度数は63度(スコッチでは63.5度が基本)。50度というのはかなり低いアルコール度数です。この設定は富士御殿場の熟成環境と、高層ラック式のウェアハウスが影響しているため。熟成が穏やかに進み、ボトリングの際にほとんど加水をしなくても済むというメリットがあり、原酒本来の味わいをダイレクトに活かすことができます。世界でも類を見ないアルコール50%での樽詰めは、富士御殿場蒸留所の強いこだわりであり、個性的なウイスキー造りには欠かせない製法となっています。
おすすめのウイスキー
シングルグレーンウイスキー富士
ウイスキー陸
富士山麓シグネチャーブレンド
富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー
日本全国のウイスキー蒸留所解説 マルス信州蒸溜所
マルス信州蒸溜所
オーナー:本坊酒造
創業年:1985年
所在地:長野県上伊那郡宮田村4752-31
公式HP:https://www.hombo.co.jp/
主な商品:シングルモルトウィスキー駒ヶ岳 リミテッドエディション
大改修工事によってリニューアル 日本一標高の高い場所にある蒸留所
鹿児島県の老舗焼酎メーカー、本坊酒造がウイスキーの製造免許を取得したのは1949年。その後山梨県の石和に蒸溜所を開設し、1985年にはウイスキーづくりのさらなる理想の土地を求めて、長野県宮田村の標高798 メートルの地に蒸留所を移設。マルス信州蒸溜所が誕生しました。
2020年には1985年の開設以来、実に35年ぶりとなる大改修工事が終了。リニューアルに総工費12億円を投じており、本坊酒造にとっての一大プロジェクトと言えます。蒸留塔は新しい建物となり、ポットスチルも新設。岩井喜一郎が設計した初代のポットスチルに近いものとなっています。また、新たにビジターセンターも建設されており、ジャパニーズウイスキーブームにより注目度が増した信州蒸留所に多くの観光客を呼び込むできるよう改修されています。
信州蒸溜所は1992年にウイスキーの生産を一時休止。その後2011年に再開されるまで19年間も生産がストップしていました。使用する麦芽は主にスコットランド産。仕込みは1バッチ麦芽1.1トン。約6000 L の麦汁を採取。ノンピーテッドから55 ppm のヘビリーピーテッドまで、数種類の異なるタイプで仕込みが行われています。モロミを造るときに使用されてる酵母は、ウイスキー酵母以外にも様々なタイプが採用されており、老舗酒造メーカーらしいユニークな仕込みが挑戦的に行われています。
マルスウイスキーでは信州蒸留所の他、2016年に創業した鹿児島県の「マルス津貫蒸溜所」もあります。さらに、屋久島にもエージングセラーを構えており、集中熟成庫としては日本で最も温かい場所に位置しています。
おすすめのウイスキー
シングルモルトウィスキー駒ヶ岳 リミテッドエディション
日本全国のウイスキー蒸留所解説 マルス津貫蒸溜所
マルス津貫蒸溜所
オーナー:本坊酒造
創業年:2016年
所在地:鹿児島県南さつま市加世田津貫6594
公式HP:https://www.hombo.co.jp/
主な商品:シングルモルト津貫THE FIRST、シングルモルト 津貫 PEATED
第2の蒸留所は創業の地 鹿児島の温暖な気候でつくられる
マルス信州蒸留所に次ぐ第2の蒸留所として、本坊酒造の創業の地である鹿児島県につくられたのがマルス津貫(つぬき)蒸溜所。 2016年11月からウイスキー造りは本格始動しています。津貫は信州(長野県)と対照的な気候です。標高798 メートルの地にある信州は、年間平均気温11℃と冷涼なのに対し、本土最南端の鹿児島県にある津貫の平均気温は年間18℃と温暖。気温だけでみるとウイスキーの熟成には不向きに思えるかもしれませんが、津貫は周りを山々に囲まれた盆地であり、夏は暑く、冬が寒いのが特徴。寒暖差があることで、ウイスキーは信州とは異なった熟成スピードに。その差は原酒の個性に影響を与え、幅のある原酒造りを可能にすることができます。また、新設された「マルス屋久島エージングセラー」の平均気温は19℃となっており、これはマルスウイスキーの生産拠点3か所の中で最も高い数値。海に近い温暖な気候は、どのようなウイスキーを生み出すのかが注目されています。
津貫蒸留所の仕込みは1バッチ麦芽1.1トン。信州は背の高いスチルによって「クリーン&ライトボディ」な原酒を蒸留していますが、津貫は背が低い形状で、ラインアーム も下向き。「リッチ&ヘビーボディ」な力強い原酒を生み出しています。また、ウイスキー以外にも「ハイブリッドスチル」で鹿児島県のボタニカルを使用したドライジン「和美人」も造っています。
2020年4月には津貫蒸留所初となる3年熟成のボトル「シングルモルト津貫ザ・ファースト」が発売され、あっという間に完売。2021年には第2弾のピーテッドタイプが発売されこちらも好評でした。熟成期間の若さを感じさせない、完成度の高いウイスキー。特殊な熟成環境によって、ジャパニーズウイスキーの新しい「常識」が作り出されるのは時間も問題かもしれません…
おすすめのウイスキー
シングルモルト津貫
シングルモルト津貫THE FIRST
シングルモルト 津貫 PEATED
2ページ目はすでに世界から高評価を受けている北海道の蒸留所が登場!
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