【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|新潟県

32,吉田電材蒸留所

新潟県村上市、日本一美しい河川に選ばれたこともある荒川のほとりに、日本のウイスキー界に一石を投じる非常にユニークな蒸留所があります。それが、2022年10月から本格稼働を開始した「吉田電材(よしだでんざい)蒸留所」です。
オーナーは、医療機器や産業機器の製造・販売を行う「吉田電材工業」。通常、蒸留所には地名を冠することが多いですが、あえて企業名を名乗っているのは、モルトウイスキーの蒸留所と差別化し、家業の誇りを込めるためだといいます。
最大の特徴は、「日本初のクラフト・グレーンウイスキー(アメリカンタイプ)蒸留所」であること。3代目社長の松本匡史氏は、後発としての差別化を追求し、あえてバーボンスタイルのグレーン造りを選択しました。ゆくゆくは、他のクラフト蒸留所に質の高いグレーン原酒を供給する「黒子」のような役割も担いたいという、壮大なビジョンを描いています。
心臓部となる蒸留器は、ドイツのコーテ社製ハイブリッドスチルです。5,000リットルのヘルメット型ポットスチルと、コラムスチル(7段〜8段)を組み合わせたタイプ。これは世界基準の技術。アメリカ・シカゴの有名蒸留所「コーヴァル(KOVAL)」とほぼ同型の設備で、初蒸留の際にはコーヴァルの創業者ロバート・バーネッカー氏も駆けつけたほど。
仕込み水には荒川の地下水(硬度57前後の軟水)を使用し、5,800リットルの大型ステンレス発酵槽6基でじっくりと発酵を行っています。

出典:https://yoshidadenzai-distillery.com/distillery/
原料へのこだわりも並外れています。現在は北海道産のデントコーンを主軸に、ライモルトや海外産モルトを組み合わせていますが、最終的な目標は「原材料の100%国産化」です。
すでに新潟県内の農家と協力し、デントコーン、大麦、小麦、ライ麦を地元で育てるプロジェクトがスタートしています。2024年には、初の製品として北海道産デントコーンを使用した「シングルグレーン 1year 1st」を限定4,000本でリリース。その実力の片鱗を世界に示しました。

昨今のジャパニーズブレンデッドウイスキーの需要拡大に伴い、質の高い国産グレーン原酒は圧倒的に不足しています。吉田電材蒸留所が生み出す、力強くも繊細なグレーン原酒は、今後の業界にとってなくてはならない「フレーバーの要」になるかもしれません。
生産が軌道に乗るにつれ、見学の受け入れなども計画されているとのこと。村上の清流が育む「日本流バーボンスタイル」の進化から、今後も目が離せませんね!
吉田電材蒸留所|おすすめのウイスキー
吉田電材蒸留所 シングルグレーン1year 1st
33,新潟亀田蒸留所

出典:https://kameda-distillery.com/
新潟県新潟市、JR新潟駅から車で10分ほどの「亀田工業団地」。そこに、印章メーカー最大手の一つである「株式会社大谷(はんこの大谷)」が、ハンコ倉庫の一部を大改造して造り上げたのが「新潟亀田蒸溜所」です。ペーパーレス化が進むハンコ業界からの異業種参入という驚きの背景を持ちつつも、その実力はすでに世界的に認められ始めています。
創業者の堂田氏は、自身のウイスキー好きが高じてプロジェクトを開始。単なる趣味に留まらず、縮小傾向にあるハンコ業界に代わる、世界へ通用するビジネスとしての可能性をウイスキーに見出しました。コロナ禍の影響で開始が1年遅れましたが、2021年2月、情熱と共にその生産がスタートしました。
製造工程には、小さな蒸留所ならではの実験的でユニークな工夫が詰まっています。
イタリア製アカシア発酵槽。これは、一般的なウイスキー造りではあまり見られない「アカシア材」の発酵槽を使用しており(現在はホワイトオーク製と合わせ計6基)、独特の香味を追求しています。ポットスチルも独自のもの。初留2,000リットル、再留1,400リットルの釜を使い分け、2022年からは補助冷却器を導入して夏場の安定した製造も可能にしています。
熟成場所もユニークで、敷地内に設置した輸送用コンテナを熟成庫として活用。内部にダンネージ式で3〜4段積み上げるという、工業団地らしい独創的なスタイルをとっています。

2025年は、この蒸留所にとって大きな飛躍の年となりました。「TWSC2025(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)」において、ニューボーンのシェリーカスクフィニッシュがジャパングランプリを受賞する快挙を達成。さらに、待望の3年熟成シングルモルトが、創業者の名を冠した「Ohtani Whisky」ブランドとしてリリースされました。
その他、星座シリーズ(Zodiac Sign Series)もユニーク。「もしもウイスキーを人に例えたら……」という情緒的なコンセプトのもと、3月には第1弾の「うお座(Pisces)」、12月には第2弾の「山羊座(Capricorn)」を発売。ノンピートとピーテッド、それぞれの個性を男女のイメージに重ね合わせた遊び心あるシリーズとして注目を集めています。
2022年には新たな生産棟も建設され、米を原料としたグレーンウイスキーやラムの製造も始まるなど、その好奇心は留まるところを知りません。ハンコという「日本の伝統文化」を支えてきた企業が、新潟の地から世界へ向けて放つ「Ohtani Whisky」。これからの展開がますます楽しみな一軒です!
新潟亀田蒸留所|おすすめのウイスキー
OHTANI WHISKY 新潟亀田 zodiac sign series 「Capricorn」
OHTANI WHISKY 新潟亀田 zodiac sign series 「Capricorn」
34,深沢原蒸留所

日本を代表する銘酒「八海山」を醸す八海醸造。その創業100周年記念事業の一環として、新潟県南魚沼市の複合施設「魚沼の里」内にある「深沢原(ふかさわわら)蒸溜所」が、世界のウイスキー界に新たな風を吹き込んでいます。
深沢原蒸溜所はもともと、2005年から本格米焼酎や粕取り焼酎を製造してきた場所です。その蒸留技術を礎に、2016年から着手したのが「ライスグレーンウイスキー」。主原料に「米」を使用するスタイルは、世界的に見ても極めて珍しい試みです。
仕込み水には八海山伝統の「雷電様の清水(らいでんさまのしみず)」を使い、さらに「清酒酵母」を用いることで、日本酒蔵にしか出せない清らかな個性を追求しています。

「目標とする品質に妥協しない」という職人魂により、じっくりと8年間の熟成期間を経て、2025年4月に待望の第1弾がリリース。製品名は「Hakkaisan シングルグレーン 魚沼8年 ライスウイスキー 2025LIMITED」。琥珀色の液体からはバニラや花のような甘い香りが立ち上がり、米由来のほのかな甘みとドライフルーツ、ナツメグのようなスパイシーさが複雑に絡み合います。
八海醸造の挑戦はこれだけではありません。このライスグレーンウイスキーの知見を活かし、2021年には北海道にグループ会社「ニセコ蒸溜所」を設立して本格的なモルトウイスキー造りも進めています。将来的には、魚沼の「ライスグレーン」とニセコの「モルト」をブレンドした、究極のブレンデッド製品の上市も見据えているとのこと。
新潟の豊かな実りと熟練の技、そして8年という「時間」が作り出した、まさに唯一無二のウイスキー。日本酒の枠を超え、蒸留酒の新たな地平を切り拓く深沢原蒸溜所の進化は、これからも目が離せませんね!
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|富山県
35,三郎丸蒸留所

北陸・富山県で本格的なウイスキーづくりを行っている三郎丸蒸留所の創業は1952年。「サンシャインウイスキー」は富山を代表する地ウイスキーとして長年愛されています。
2000年には設備の老朽化から一時的に生産休止。2016年にクラウドファンディングで寄付を募り、2017年に大規模な改修を行い完全リニューアル。その後18年にはマッシュタンを最新鋭のものに入れ替え、19年6月に世界初の鋳造製(ちょうぞうせい)のポットスチル「ZEMON」を導入しています。
「ZEMON」は三郎丸の稲垣貴彦氏と高岡の老子製作所が共同開発した蒸留器。鋳物(いもの)・鋳造(ちゅうぞう)とは、材料に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属を使用し、融点よりも高い温度で熱して液体にしたあとに専用型に流し込んで、目的の形状に固める加工方法の一つ。
鋳造(ちゅうぞう、英: casting)は、材料(主に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属)を融点よりも高い温度で熱して液体にしたあと、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法です。
三郎丸ではこの技法でつくったポットスチルに対して、2020年に特許を取得(特許第6721917号)。その高い技術から、経済産業大臣賞などの数々の賞を受賞。ポットスチルとしては前代未聞の挑戦となっており、製造されるウイスキーに世界中が注目しています。

ZEMONは初留・再留の2基。錫(すず)が約8%配合された独自の配合でつくられた超合金となります。初留器は2600リットル。再留器は3800リットル。加熱方式は「スチーム間接式パーコレーター」で、初留器のみ「スチーム直噴式」と併用しています。
発酵槽は容量6000 L の木桶製で、木材はカナダ産のダグラスファーでつくられたもの。ホーロータンクで発酵させたもろみを移し替え、24時間木桶で発酵させています。これによって乳酸菌発酵が安定し、木桶には独自の乳酸菌が住み着くこととなります。乳酸菌やあらゆる微生物がウイスキーの香気成分に大きな影響をもたらします。
仕込み水は庄川の地下水で硬度60度の軟水。ワンバッチの仕込み量は1トン。
大麦麦芽はスコットランド本土のピートを用いてつくられた50 ppmのヘビリーピーテッドや、アイラ島産のピートを炊き込んだ麦芽を使用。フェノール値は45ppmと本土の物より数値が低いものですが、潮気と複雑さが感じられる全く異なるタイプのピーテッド麦芽となっており、本土のものと明らかに個性が違うようです。2種類のピーテッド麦芽から異なるタイプの原酒を生み出しています。

熟成庫は、これまで蒸留棟にの空きスペースを利用していましたが、2020年にウッドラック式の第一熟成庫が完成。さらに2021年には屋根にスプリンクラーを付けて地下水を散布できるように改築しています。
蒸留所はスタンディングバー、レストラン、ショップなどのビジター設備が充実。見学ツアーも一日数回行われています。
三郎丸蒸留所|おすすめのウイスキー

三郎丸VII THE CHARIOT
三郎丸VII THE CHARIOT
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|石川県
36,オリエンタル金沢蒸留所

石川県初のウイスキー蒸留所。オーナー企業のオリエンタルブルーイングは金沢で地ビールを造る会社で、提携する飲食店も経営しています。
コロナ禍でビールの消費量が落ちたときに、賞味期限が短いビールよりもウイスキーのほうが扱いやすく、海外向けにも展開できるチャンスがあるとのことに気が付き、ビール醸造所に併設する形で蒸留所を開設。
大麦麦芽はドイツ産のピルスナーモルトを使用。将来的には蒸留所の近くの畑で自社栽培の大麦を育てる計画もあるそうです。仕込み量はワンバッチ700㎏。ノンピーテッド麦芽を基本とし生産しています。
オリエンタル金沢蒸留所の発酵槽はビールと併用。3000リットルのステンレス製1基と、4000リットルのイタリア製の木桶が3基。4000リットルの日本酒用ホーロー桶が3基。
蒸留器は中国製のハイブリッドスチルで、3000リットルのポットスチルと6段コラムスチル、ジンを蒸留するためのスチルも連なっています。コンデンサーはウイスキー用とジン用の2つがあり、香りが混ざらないように配。このハイブリッドスチル1基で初留、再留を行っています。
2024年にはクラウドファンディングにて「1口瓶オーナー」を募集し、リターン限定の1年熟成を出荷しています。本格的なシングルモルトは2026年中にリリース予定。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|山梨県
37,Far Yeast 源流蒸留所

出典:https://faryeast.com/
2015年に日本クラフトビールから社名を「 Far Yeast Brewing」に変更したビール製造メーカー。2022年にウイスキーの免許を取得し生産をスタートさせています。蒸留器はジンと共用しています。
38,富嶽蒸留所
山梨県富士吉田市、霊峰富士の北麓に位置する「富嶽(ふがく)蒸溜所」。ここは、2023年11月に産声を上げたばかりの注目のクラフト蒸溜所です。
標高800mから1,000mにおよぶこの地は、数多くの採水工場が立ち並び「ミネラルウォーター街道」と呼ばれるほど良質な水に恵まれた場所。そんな「水の聖地」で、伝統的なスコッチスタイルを追求する彼らのこだわりを紐解いていきましょう。
富嶽蒸溜所の根幹を支えるのは、富士山が100年近い歳月をかけて溶岩層で濾過した「富士の伏流水」です。深さ180mの井戸: 約3,000万円を投じて掘削された専用の井戸から、超軟水の天然水を直接採取しています。この純度の高い水が、クリーンかつ複雑な味わいの土台となります。
木製発酵槽での乳酸発酵もこだわりの一つ。オレゴンパイン製の木製発酵槽を採用。あえて96時間という長期間の発酵を行うことで、木桶に住み着いた乳酸菌による「乳酸発酵」を促し、キレの良さとフルーティーな厚みを生み出しています。
また、効率的なスチーム加熱が主流の現代において、初留釜(容量5,000〜6,000L)にはガスによる「直火加熱」を採用。高温で加熱することで、重厚で力強いテクスチャと豊かな香気成分を引き出しています。
蒸溜所の建物は、将来のビジター受け入れを強く意識した機能美あふれる設計。全面ガラス張りの施設内は、マッシュタン(三宅製作所製)、木製発酵槽、ポットスチル、そして研究ラボが段差のないフラットなフロアに並び、一目で製造工程を見渡せます。また、晴れた日には、2基のポットスチルの冷却器の間から富士山の山頂が顔を出すよう設計されているという、心憎い演出も。
熟成樽の約90%はバーボン樽ですが、スタッフが現地で厳選したシェリー樽や、鏡板をミズナラ材に組み替えた特注樽など、長期熟成を見据えた多彩な試みが進んでいます。さらに、5,000樽規模の「第3貯蔵庫」の計画も動き出しており、その規模は拡大の一途をたどっています。
富士の麓で100年先を見据えた「ネクスト・ジャパニーズウイスキー」。伝統的な手法と科学的な探求が融合したその一滴が、どのような物語を紡ぐのか期待が止まりませんね。
39,富士北麓蒸留所

オーナー: 井出醸造店
創業年:2020年
所在地:山梨県 南都留郡富士河口湖町船津8
公式HP:https://kainokaiun-webshop.easy-myshop.jp/c-fpage?fp=Whisky
江戸時代末期から富士山の麓で日本酒を造り続ける老舗蔵元「井出醸造店」が、2020年に新たな挑戦として始動させたのが「富士北麓(ふじほくろく)蒸留所」です。
河口湖の南岸という絶好のロケーションに位置するこの蒸留所、日本酒蔵ならではの個性が随所に光っています。
まず驚くのが、仕込み水。使われているのは地元の水道水なのですが、その正体は硬度35度の清らかな「富士山の伏流水」。水道水としてこれほどの銘水が使えるなんて、ウイスキー造りには羨ましすぎる環境ですよね。また、発酵には日本酒メーカーとしてのこだわりが詰まった「清酒酵母を100%」使用しています。ワンバッチに2kgもの酵母を投入し、4日間かけてじっくりと発酵を進めることで、独自の華やかな香りを引き出しています。
面白いのがその製造サイクルで、日本酒の仕込みがお休みになる4月〜10月上旬までがウイスキーの製造期間。年間約45回、集中して仕込みが行われるんです。
製造設備は、日本酒や焼酎の機器メーカーとして知られる薮田産業に依頼した特注品。ステンレス製の焼酎用蒸留器をベースに、内部に「銅製の邪魔板」を取り付けたハイブリッド仕様。モルトウイスキーは「常圧蒸留」で重厚に。一方、「米」を主原料とするグレーンウイスキーは「減圧蒸留」を行うことで、1回で度数を60%近くまで高めています。この常圧・減圧を切り替えられる同じスチルで、モルトとグレーンの両方の原酒を生み出しているのが特徴です。
4段ラック式の熟成庫には約600樽が眠っていますが、中でも注目は富士の樹海で伐採された樹齢350年のミズナラの巨木から作られた特別な樽。この地ならではの歴史が、原酒に深い風味を与えています。
2024年にはバーボン樽の新樽で45か月熟成させた待望の「シングルモルト ファーストリリース」を限定発売。その翌年は、麦芽と米、そして清酒酵母の個性を最大限に活かした「シングルライスグレーン シグネチャー」が登場します。
富士北麓蒸留所では、日本酒の蔵見学とセットになった有料ツアー(1,500円・事前予約制)を不定期で開催しています。見学の後は、併設のショップでこだわりのお酒を直接購入することもできますよ。
富士山の伏流水と清酒酵母、そして「米」という素材が織りなす、日本酒蔵だからこそ到達できたウイスキーの新しい境地。河口湖を訪れた際は、ぜひその挑戦の足跡を五感で確かめてみてくださいね。
富士北麓蒸留所|おすすめのウイスキー

富士北麓蒸留所 シングルモルト ファーストリリース
富士北麓蒸留所 シングルモルト ファーストリリース
40,サントリー白州蒸溜所

オーナー: サントリーホールディングス
創業年:1973年
所在地:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
公式HP:https://www.suntory.co.jp/factory/hakushu
南アルプスの山々に抱かれた山梨県北杜市。甲斐駒ケ岳に抱かれた約82万平方メートルの広大な森の中に白州蒸留所があります。大自然の恵みによってつくられる、サントリー第2のモルトウイスキー蒸留所。
白州の誕生は山崎蒸留所の創業から50年が過ぎた1973年。建設を指揮したのは鳥居信次郎の息子「佐治敬三」。同氏は「二代目マスターブレンダー」でもあり、二つの蒸留所で多様な原酒作りを行う必要があると考えていました。
白州の地から湧き出る清らかな水は、ウイスキー造りにうってつけの硬度が低い名水。仕込み水だけでなく、冷涼湿潤な気候も理想的。山崎とは異なるクリーンで清涼感のある原酒を生み出すことに成功したのです。

初期の蒸留所はスチーム加熱蒸留で、ポットスチルはランタン型が12基あり、すべて同じ形状・サイズとなっていました。(現在でもそのまま保管されているので見ることができます。)しかし、理想とは異なる原酒が生み出されていたため、品質向上を目指して1981年に蒸留棟を閉鎖。新たに蒸留棟を建設します。
新しい蒸留棟では初留器がすべてガス直火による直接加熱に変更され、ポットスチルの大きさも以前よりも小さいサイズとなりました。
ちなみに、旧蒸留棟は「白州西蒸留所」、新蒸留棟は「白州東蒸留所」と呼ばれていました。現在の白州蒸留所は東蒸留所にあたります。

現在の白州蒸留所は2014年に4基のポットスチルが増設されており、合計16基が稼働中。原酒不足を解消するためにフルタイム・フル稼働となっています。形状・サイズ・ラインアームの向きなどは統一されておらず、全てがバラバラ。多彩な原酒造りを可能としています。
また、2010年にグレーンウイスキーの設備を導入し、2013年から本格的に稼働させています。グレーンの蒸留器はいわゆる「カフェ式連続式蒸留器」。蒸留塔の高さは14m。モロミ塔18段。精留塔40段。
愛知県にある知多蒸留所と比べると生産能力は1/10以下となる小規模な蒸留器であることから、「試験的」なウイスキー造りをするのに適しているとのこと。また、トウモロコシ以外の原料で製造することもできる設計で、知多蒸留所とは異なるグレーンウイスキーを生み出すことができます。
この蒸留器を使用した数量限定の「シングルグレーンウイスキー」はすでにいくつかボトリングされており、既にその実力の一端はすでに明らかとなっています。

白州蒸留所で造られているモルトウイスキーは「ノンピート麦芽」と「ライトピート麦芽」が基本。毎年一定期間だけ「ヘビリーピーテッド麦芽(フェノール値40ppm)」の原酒造りも行われています。
発酵槽は全て北米産のダグラスファー製。ディスティラリー酵母とビール酵母を使用して醗酵が行われています。

樽詰めのアルコール度数は63%未満に設定。熟成環境によって変化させて、最適な度数でエントリーしています。ニューポットを詰めた樽は、白州蒸留所のラック式熟成庫の他に、山崎蒸留所にある熟成庫や、サントリーの集中熟成庫「近江エイジングセラー」に運ばれて熟成させています。
熟成樽はアメリカンホワイトオークのバーボンバレルとホグスヘッドがメイン。シェリーカスクも使用しますが、山崎蒸留所よりも積極的に詰めていることはなさそうです。樽は白州蒸留所に併設しているクーパレッジ内で加工しています。

蒸留所には生産設備の他、ファクトリーショップ、ウイスキー博物館、レストランなどがあり、家族連れでも一日中、森の中で森林浴をしながら楽しむことができます。しかし2022年12月~23年秋ごろまでビジター施設の改修が行われており、蒸留所見学とショップの営業は休止となっています。
2021年には販売休止となっていた「シングルモルト白州12年」の販売が再開。待ちに待った12年物の復活に全国の白州ファンが喜びを上げました。ところが流通量は依然として少ない状況で、入手できれば「かなりラッキー」と言えるでしょう。白州12年を、昔のように「ハイボール」で飲める時代は戻ってくるのでしょうか…
白州蒸留所|おすすめのウイスキー

シングルモルト白州
シングルモルト白州
白州12年
白州12年
白州18年
白州18年
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|長野県
41,野沢温泉蒸留所

オーナー:Nozawa Onsen Distillery
創業年:2023年
所在地:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9394
公式HP:https://nozawaonsendistillery.jp
野沢温泉蒸留所は長野県北部にあり、新潟県との県境に近い「野沢温泉村」で2021年に設立しました。
蒸留所は野沢温泉村で多くの飲食店や土産物店、ホテルを経営するオーストラリア人と、地元の日本人メンバーからなる多国籍チームによって設立。建物は野沢温泉の中心街にある元々缶詰工場として使われていたものを再利用しています。
野沢温泉蒸留所は日本で初めてマッシュフィルターを導入。(スコットランドではインチデアニーとティーニニックが使用)麦汁の濾過をきめ細かく行うことで、より透明な麦汁を採取することができ、クリーンで高品質なニューポットを造っています。また、小型の米国製ハンマーミルを導入しており、これによって様々な穀物を粉砕して原料にすることが可能となっています。
仕込は1バッチあたり400kg。蒸留設備には、ドイツ・カール社製の容量1,000リットルの初留1基と再留1基。初留は単純なシェル&チューブのコンデンサーですが、再留には4段のコラム塔とジン用のボタニカルチャンバーが付いており、ジンの製造を行うこともできます。
蒸留所には蒸留設備だけでなく、観光客向けのギフトショップ、試飲室、クラフトバーもあり、将来的にはハーブガーデンなどの施設も予定されています。
2026年にウイスキーの初リリースを予定しています。
野沢温泉蒸留所|おすすめのクラフトジン
野沢温泉蒸留所 CLASSIC DRY GIN
野沢温泉蒸留所 CLASSIC DRY GIN
42,小諸蒸留所

長野県小諸市に誕生した蒸留所。社長は企業家の島岡高志氏。ウイスキーのマスターブレンダー 兼 副社長には、元カバラン蒸留所マスターブレンダーであるイアン・チャン氏が就任しています。
同蒸留所の社長である島岡高志氏は、かつてアメリカ系金融会社の執行役員も務めた経歴を持つ人物。島岡氏は長年の夢であったウイスキー製造に適した土地を探し、小諸市に適切な場所を見つけて建設計画を開始。コロナ禍の中での建設には様々な困難がありましたが、計画から4年後の2023年7月に蒸留を開始しました。
小諸蒸留所の仕込み量は、1バッチあたり麦芽1トン。ノンピート麦芽を輸入して行っており、毎年の12月にはピート麦芽(フェノール値は25ppm)での使用も行う予定。
マッシュタンにはフォーサイス社製のロイタータンを使用。麦汁の抽出量は5,000リットル。発酵槽はステンレス製の5基と、ダグラスファー製の5基の合計10基。ポットスチルはフォーサイス社製。初留1基、再留1基の計2基。
小諸蒸留所の特徴として、「再留釜」の方が「初留釜」よりも大きいことにあります。(通常は初留釜の方が大きい)
モロミ約5,000リットルを初留釜に入れ、初留を行い、その後、再留釜には初留2回分(約7,000リットル)を合わせて蒸留。作業効率はよくありませんが、蒸留時間が長くすることでリッチな酒質を目指しています。

ビジターセンターも充実。お客様にウイスキー造りを身近に感じてもらいたいという想いから、ガラス越しに蒸留所内が見えるように設計されています。蒸溜所見学ツアーは約1時間おきに開催され、初心者から愛好家向けの「ウイスキーアカデミー」も行われています。
2024年には「ワールド・ウイスキー・フォーラム」の開催を記念し、数量限定のリミテッドエディション3種を予約販売(商品到着は2027年以降)。その他、栗樽・桜樽熟成ウイスキーやふるさと納税限定ウイスキーの予約販売も実施しています。オフィシャルボトルのシングルモルトウイスキーは2026年の冬頃発売を予定しています。
43,御代田蒸留所

オーナー:戸塚酒造
創業年:2023年
所在地:長野県北佐久郡御代田町馬瀬口953-4
公式HP:なし
御代田蒸留所は、長野県北佐久郡御代田町に位置しており、建物はもともとJA(全農)の銀行だったものを蒸留所として改装して創業。戸塚酒造が「軽井沢ウイスキー蒸溜所」と共に創業しました。
この蒸留所は軽井沢ウイスキー蒸留所から車で20〜30分の距離にあり、閉鎖した「メルシャン軽井沢蒸留所」の近くにあります。2023年にウイスキー製造免許を取得。

蒸留所には、焼酎用蒸留器が設置されており、元銀行だった奥のスペースには、アメリカ製のハイブリッドスチルが2基導入されています。ウイスキーだけでなく、アクアヴィットの「とりのす(北海道産ジャガイモで製造)」や、クラフトジン、その他のスピリッツなども製造しています。
御代田蒸留所では、軽井沢ウイスキー蒸留所とは異なり、他社原酒をブレンドした製品や、リーズナブルなウイスキーの生産と、研究・実験的な仕込みも行われる予定。
小学校や中学校、公民館、古民家などをウイスキー蒸留所に改装しているところはありますが、銀行をそのまま利用した蒸留所は日本初。軽井沢ウイスキーの復活と共に、蒸留所を見学に来た人達に大きなインパクトを与えることでしょう…
44,軽井沢ウイスキー蒸留所

出典:https://www.karuizawa-whisky.co.jp/
オーナー:軽井沢ウイスキー(戸塚酒造)
創業年:2022年
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町発地2785-318
公式HP:https://www.karuizawa-whisky.co.jp
1653年創業の戸塚酒造の16代目、戸塚繁氏が2019年に軽井沢ウイスキー蒸留所の計画を立ち上げ、2022年冬から生産開始しています。
軽井沢といえば、閉鎖した「軽井沢蒸留所」を真っ先に思い浮かべると思います。軽井沢蒸留所は1976年に日本初となるシングルモルトウイスキーを発売したことでも有名。しかしウイスキー不況からオーナー企業が次々とかわると、最後のオーナーであるキリングループ内の事業再編の対象となってことで、2012年に完全に閉鎖となりました。
2015年にはウイスキーの製造設備の一式が、ガイアフローへと売却。ガイアフロー静岡蒸溜所で見ることができます。
軽井沢ウイスキー蒸留所は、メルシャン時代に軽井沢蒸留所で勤めていた最後のモルトマスター、内堀氏を顧問とし、ディスティラーであった中里氏を工場長に迎い入れて始動。
仕込はワンバッチ麦芽1トン。ポットスチルはフォーサイス社製で、初留1基、再留1基の合計2基。どちらもランタンヘッド型。このデザインは旧軽井沢蒸留所のものを踏襲しています。
年間の生産量は「ホグスヘッド樽」に換算すると約250樽。熟成庫は旧軽井沢蒸留所の近くにある倉庫と、その他にもいくつかの環境の異なる貯蔵庫を用意しています。
10年間はウイスキーの販売を行わず、一部のカスクオーナー制のみを採用。すでに約250樽のカスクが販売済みで、カスクオーナーにも10年間は瓶詰めしないで欲しいとお願いしているようです。
旧軽井沢蒸留所とは全く異なる生産設備ですが、昔の風味を知る人物がウイスキーの製造に関わっているので、期待したいですね。
45,マルス駒ヶ岳蒸溜所

マルス信州蒸溜所は、シングルモルトウイスキーブランド「駒ヶ岳」との統一性を図る目的で、2024年3月から蒸溜所名を「マルス駒ヶ岳蒸溜所」に変更しました。
鹿児島県の老舗焼酎メーカー「本坊酒造」がウイスキーの製造免許を取得したのは1949年。その後、山梨県の石和に蒸溜所(山梨工場)を開設。1985年にはウイスキーづくりのさらなる理想の土地を求めて、長野県宮田村の標高798 メートルの地に蒸留所を移設し、「旧名:マルス信州蒸溜所」が誕生します。
信州蒸溜所は1992年にウイスキーの生産を一時休止。その後2011年に再開されるまで19年間も生産がストップしていました。そして設備が老朽化したことからリニューアルを計画。2020年には1985年の開設以来、実に35年ぶりとなる大改修工事が終了しました。リニューアルに総工費12億円を投じており、本坊酒造にとっての一大プロジェクトと言えます。

マルス駒ヶ岳蒸溜所の蒸留塔は新しい建物となり、ポットスチルも新設。ウイスキーの増産が可能となりました。岩井喜一郎が設計した初代のポットスチルに近いものへと変わっています。また、新たにビジターセンターも建設されており、ジャパニーズウイスキーブームにより注目度が増したことで、観光客を呼び込むできるよう改修されています。
仕込み水は花崗岩層で濾過された天然の井戸水。ワンバッチの仕込み量は1.1トン。約6000 L の麦汁を採取。大麦麦芽はクリスプ社・ベアード社のスコットランド産を使用していますが、地元産の二条大麦による仕込みも行われています。

マルス駒ヶ岳蒸溜所では、ノンピーテッドから55 ppmのヘビリーピーテッドまで、数種類の異なるタイプで仕込みが行われています。モロミを造るときに使用されてる酵母は、ウイスキー酵母以外にも様々なタイプが採用されており、老舗酒造メーカーらしいユニークな仕込みが挑戦的に行われています。
ポットスチルは大改修前の2014年から使っていた三宅製作所製を使用。初留器6000リットル。再留器8200リットル。再留は初留器の2回分を合わせて行っています。
マルス駒ヶ岳蒸溜所|おすすめのウイスキー

シングルモルト駒ヶ岳
シングルモルト駒ヶ岳
シングルモルト駒ヶ岳 2024 エディション
シングルモルト駒ヶ岳 2024 エディション
シングルモルト 駒ヶ岳 IPAカスクフィニッシュ2023
シングルモルト 駒ヶ岳 IPAカスクフィニッシュ2023
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|岐阜県
46,飛騨高山蒸留所

高山市高根町で廃校となった「旧高根小学校」を活用する形で、岐阜県初となるウイスキー蒸留所が2023年に誕生予定。2022年3月にクラウドファンディングを実施し、3760万円の支援を集めました。オーナーは日本酒蔵の「舩坂酒造店」。飛騨高山蒸留所では、ウイスキーの製造期間を日本酒の仕込みが最盛期となる12月~3月頃まではお休みとしています。
岐阜の観光地として名高い、飛騨高山にウイスキーの蒸留所ができることだけでも話題になっていますが、もう一つ注目を集めているのが導入する蒸留器。飛騨高山蒸留所は富山県の老子製作所がつくる、世界初鋳造(ちょうぞう)製ポットスチル「ZEMONⅡ」が設置されています。
三郎丸で使用しているZEMONを一部改良。旧高根小学校の体育館ステージに設置されています。おそらく体育館に蒸留器が設置されたのは世界初のことでしょう…不思議と外観とマッチしていて面白いですね。
初留器は2600リットル。再留器は2200リットル。共にランタンヘッド型のラインアームが下向きの仕様。ワンバッジの仕込み量は500㎏。ノンピーテッド麦芽を基本として生産。貯蔵庫は教室の一部を利用していましたが、旧小学校のグランドに可動式ラックの貯蔵庫を建設中。その他、ダムやトンネルなどのあらゆる場所を活用しています。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|静岡県
47,富士御殿場蒸溜所

出典:https://www.kirin.co.jp/experience/factory/gotemba/
オーナー: キリンディスティラリー(キリンホールディングス)
創業年:1973年
所在地:静岡県御殿場市柴怒田970番地
公式HP:https://www.kirin.co.jp/experience/factory/gotemba/
キリンビール、シーグラム社、シーバスブラザーズ社の三社合弁企業によって1972年に蒸留所が建設。
実際に本格的な生産がスタートしたのは翌年の1973年。良質な富士山の伏流水に恵まれ、ウイスキーの熟成に適した冷涼で湿潤な気候であることから富士御殿場の地が選ばれました。
仕込み水は地下100メートルの深井戸から汲み上げた、硬度55㎎の軟水。富士の伏流水。本場スコッチの目利きのプロであるシーバスリーガル社が成分を分析し、お墨付きをもらったウイスキーにとって良質な水です。
この仕込み水は富士山に降り注いだ雨水が地層にしみ込み、50年にも及ぶ長い期間を経て「ろ過」されたものが採取されています。富士御殿場は、富士山という名の「超巨大な浄水器」からの天然水を得ることのできる、ウイスキーにとっての理想郷といえる場所なのでしょうか。

富士御殿場蒸溜所にはカナダのシーグラム社により、グレーンウイスキーづくりのノウハウも活かされています。
シーグラム社の特性マルチカラム。さらにバーボンの製造に用いられるラバーやケトルを採用。三つの蒸留器を使い分けることで、「ライト」「ミディアム」「ヘビー」といった3タイプの原酒を造り分けています。生み出されるグレーンウイスキーは世界的にも高く評価されており、近年注目されています。
また、モルトウイスキーではスコッチの名門シーバスブラザーズ社の製造技術が採用されています。ウイスキーを生み出すキーマン「ポットスチル」は、シーバス傘下のストラスアイラ蒸留所のものに似た形状を採用。スペイサイドのような華やかなタイプのモルトを生産しています。
ポットスチルは初留器がストレート型2基とランタン型2基。再留器はバルジ型2基、ストレート型とランタン型が1基ずつ。全て三宅製作所製。

富士御殿場蒸留所は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を生産している、世界でも数少ない複合蒸留所。日本国内ではグレーンの製造も始めている蒸留所が増えていますが、富士御殿場蒸留所がパイオニアといって間違いありません。
2015年に「富士山麓シングルモルト18年」が終売となってからは、しばらくシングルモルトやシングルグレーンを定番リリースしていませんでしたが、2020年からは自社原酒のみで構成されたウイスキーブランド「富士」シリーズをリリース。
そして2022年からは自社のモルトとグレーンのブレンデッド「キリン シングルブレンデッド ジャパニーズウイスキー 富士」が発売されます。
一つ蒸留所の原酒のみで構成されたブレンデッドウイスキー「シングルブレンデッド」という表記を初めて採用した銘柄として、ジャパニーズウイスキーの歴史に名を刻むことでしょう。

また、富士御殿場蒸溜所の特徴的な部分の一つとして、樽詰めの際のアルコール度数が「50度」であることが挙げられます。一般的なウイスキー蒸留所の樽詰め度数は63度(スコッチでは63.5度が基本)。50度というのはかなり低いアルコール度数です。
この設定は富士御殿場の熟成環境と、18段の高層ラック式のウェアハウスが影響しているため。熟成が穏やかに進み、ボトリングの際にほとんど加水をしなくても済むというメリットがあり、原酒本来の味わいをダイレクトに活かすことができます。世界でも類を見ないアルコール50%での樽詰めは、富士御殿場蒸留所の強いこだわりであり、個性的なウイスキー造りには欠かせない製法となっています。

出典:https://www.kirin.co.jp/experience/factory/gotemba/
蒸留所のビジター設備は充実。休館日以外は毎日見学ツアー実施しており、プロジェクションマッピングでの蒸留所紹介や、各製造設備の見学、ショップ、有料試飲コーナーなどがあります。JR御殿場駅からは無料のシャトルバスが1日5便ほど運行しており、気軽に蒸留所を訪れることが可能です。
富士御殿場蒸溜所|おすすめのウイスキー

キリンウイスキー 陸
キリンウイスキー 陸
キリン シングルモルトウイスキー 富士
キリン シングルモルトウイスキー 富士
キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士
キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士
キリン シングルグレーンウイスキー 富士
キリン シングルグレーンウイスキー 富士
48,Distillery Water Dragon

オーナー: Whiskey&Co.(ウイスキーアンドコー)
創業年:2023年
所在地:静岡県三島市
公式HP:https://whiskey-and-co.com/
「ディスティラリー・ウォーター・ドラゴン(Distillery Water Dragon)」は、静岡県三島市にある、築97年の看板建築物「旧・懐古堂ムラカミ屋」を改装して誕生したウイスキーの蒸留所。2023年5月31日に酒造免許を取得し、三島市内初のウイスキー蒸留所として、ウイスキー原酒(ムーンシャイン)とクラフトジンの製造しています。
「ウォータードラゴン」という蒸留所名は、三島の町を流れる複数の川にちなんでいます。風水で川の流れを象徴する「水龍」の名前が選ばれました。
この蒸留所は、長年リノベーション会社を経営してきた大森章平氏によって設立されました。大森氏はもともとバーボン好きであり、2020年7月から蒸留所の構想を練っており、ジンで有名なエシカルスピリッツ社の山口歩夢氏と出会い、協力して蒸留所を設立することになりました。

蒸溜所では、限られたスペースの中に、バーボンタイプのウイスキーを製造するためのクッカーやファーメンター、そしてハイブリッドスチルが、立体パズルのように収納されています。
ウイスキーはアメリカンバーボンスタイルで製造。マッシュビルの配合は、デントコーン67%、ライ麦20%、大麦麦芽13%。輸入穀物を使用しています。
スチルはドイツのホルスタイン社製のハイブリッド型。ウイスキーだけでなく、クラフトジンやその他のスピリッツも蒸留できます。
創業から間もない蒸留所ですが、すでに見学ツアーも行っています。ツアーでは、三島でのウイスキー製造の歴史や、なぜ三島が選ばれたのか、ディスティラリー・ウォーター・ドラゴンの由来などについてのほか、蒸留所に併設されたバーで、クラフトジンやニュートラルスピリッツ原酒の試飲が可能となっています。
また、Distillery Water Dragonでは、2025年に新ウイスキーブランド『Little K』を立ち上げています。このブランドは、あえて「2年未満」という若さでボトリングされた、いわゆるニューボーン・スタイルのウイスキー。2025年6月に第1弾が登場して以来、その勢いのままに第2弾もリリースされるなど、ファンの間でも熱い注目を集めています。
まだ幼い原酒ながらも、その中に秘められた将来の可能性や個性をダイレクトに味わえるのが魅力ですね。
Distillery Water Dragon|おすすめのクラフトジン
ウォーター ドラゴン スピリッツ ジン
ウォーター ドラゴン スピリッツ ジン
49,井川蒸溜所

南アルプスの最深部、静岡県最北端の秘境に、日本一高い場所にある蒸留所をご存じでしょうか?それが「井川蒸溜所」です。
標高は約1,200メートル。あの「信州マルス蒸留所(798メートル)」を遥かにしのぐ高地に位置しています。運営会社の「十山(じゅうざん)」は、大手製紙メーカー・特種東海製紙のグループ会社で、異業種からの挑戦として大きな話題となりました。
この蒸留所の何よりの驚きは、そのロケーションです。一世紀以上にわたって保護されてきた、日本一の広さを誇る社有林(なんと244平方キロメートル!)のど真ん中にあるんです。国立公園やユネスコエコパークにも指定されているこの広大な森は、まさに手つかずの大自然。仕込み水には、100年以上前から地元の人々を支えてきた南アルプス・大井川源流部の清らかな天然湧水を使用しています。
井川蒸溜所は、高地ならではの「沸点の違い」が生む味わいが特徴です。2020年から稼働している設備は、すべて三宅製作所製で統一。ポットスチルは初留(6,000リットル)と再留(3,000リットル)の2基があり、どちらもストレート型を採用。
面白いことに、これほどの高地だと気圧が低いため、平地よりも沸点が約4度低くなるのだそうです。この温度差が蒸留工程にどう作用し、どんな独自の酒質を生み出すのか、ウイスキー好きにはたまらないポイントですよね。
熟成へのこだわりも並外れています。バーボン樽やシェリー樽をメインにしつつ、2021年からは自社林のミズナラや栗を伐採して作った「自家製樽」での熟成もスタートさせています。南アルプスや「オクシズ(奥静岡)」の恵みをそのまま樽にして原酒を眠らせる……まさにこの土地でしかできないウイスキー造りを追求しています。
2023年には3年未満のウイスキーとして「ニューボーン」のピーテッド(30ppm/50ppm)とノンピートの3種をリリース。2024年には初のシングルモルトとなる「デッサンシリーズ フローラ2024」が誕生。翌25年には「デッサンシリーズ フローラ2025」をリリース。
夏は高温多湿、冬は極寒という、山の厳しい寒暖差の中でゆっくりと眠りにつく原酒たち。アクセス困難な「秘境」だからこそ実現できる長期熟成が、これからどんな複雑で奥深いフレーバーを私たちに届けてくれるのか。南アルプスの静寂の中で育まれる一滴に、期待が膨らみますね!
井川蒸溜所|おすすめのウイスキー
デッサンシリーズ フローラ2025
デッサンシリーズ フローラ2025
デッサンシリーズ フローラ2024
デッサンシリーズ フローラ2024
50,ガイアフロー静岡蒸溜所

ガイアフローはウイスキーの輸入インポートする会社。2013年にはブラックアダー・インターナショナル社の正規輸入元となります。2014年にガイアフローディスティリング株式会社を設立。ウイスキーの生産の準備を本格的に開始します。
そして2016年、静岡県初となる本格的なウイスキー蒸留所として「ガイアフロー静岡蒸溜所」を操業。蒸留所はJR静岡駅から車でおよそ40分のところにある、オクシズ(奥静岡)と呼ばれる自然豊かな土地に建設されました。蒸留所の外観には静岡産のヒノキが使用され、周りには冷却水用のため池があり、スコットランドの蒸留所のような景観です。
ガイアフローは2015年3月に、閉鎖した軽井沢蒸留所のウイスキー製造設備を購入。設備は老朽化してはいたものの、適正なメンテナンスを施すことで再利用可能となり、静岡蒸留所へ移設されました。

ガイアフロー静岡蒸溜所のポットスチルは2種類で計3基。軽井沢蒸留所から移設した初留釜「K」(直火炊き蒸留)と、フォーサイス社製の新しいポットスチル「W」(初留・再留 各1基)があります。
「K」は日本蒸溜工業製のランタン型で、スチームパイプでの間接蒸留。ライトボディな原酒を生み出します。軽井沢蒸留所から移設した蒸留器であることから、頭文字の「K」が名付けられています。
「W」はフォーサイス社製のバルジ型。800度の高温で加熱する、世界初となる「薪」の直火焚き蒸留器。「W」の文字は「Wood fired still」から。直火焚きによって間接加熱よりもボディに厚みがあり、長期熟成にも向く原酒を造り出すことができます。

仕込み量はワンバッジ1トン。ノンピート麦芽からヘビリーピーテッドタイプ(フェノール値40ppm)まで幅広く使用。発酵槽は静岡県産の杉材と、オレゴンパイン材でつくられたものの2種類。熟成庫は伝統的なダンネージ式と移動ラック式を採用しています。
2020年には念願だった3年物のシングルモルトウイスキー「プロローグK」をリリース。軽井沢のポットスチル「K」のみで仕込まれた原酒を、ファーストフィルのバーボン樽で熟成させたもので、原料には国産大麦麦芽が50%以上使用されています。

そして 2021年にはプロローグKに次ぐ第2弾「プロローグW」をリリース。Kと同様の3年物。熟成樽はファーストフィルのEXバーボン・バレルをメインに、アメリカンホワイトオークの新樽、EXバーボンのクォーターカスクを使用。薪直火焚き蒸留でつくられた初のジャパニーズウイスキーとなりました。
その他、2022年には「K」のシングルモルト第2弾として、「ポットスティルK 純日本大麦 初版」をリリース。この製品は、100%国産麦芽にこだわっており、2,500本限定発売されました。また、「W」のシングルモルト第2弾として「ポットスティルW 純外国産大麦 初版」も発売。こちらは、スコットランド産のピーテッド麦芽や、ドイツ産のピルスナー麦芽などで仕込まれたものとなっています。販売本数は5,000本。
蒸留所は見学ツアーが可能。全ての工程を近い距離から見ることができ、説明もしっかりとしてもらえるのが、コンパクトな蒸留所の魅力ですね。Wが蒸溜している最中であれば、薪の炎を見ることもできます。
静岡蒸留所|おすすめのウイスキー

シングルモルト日本ウイスキー 静岡 ユナイテッド S 2024 サマー
シングルモルト日本ウイスキー 静岡 ユナイテッド S 2024 サマー
シングルモルト日本ウイスキー 静岡 ポットスティル K 純日本大麦 2024
シングルモルト日本ウイスキー 静岡 ポットスティル K 純日本大麦 2024
シングルモルトウイスキー 静岡 プロローグK
シングルモルトウイスキー 静岡 プロローグK
シングルモルトウイスキー 静岡 プロローグW
シングルモルトウイスキー 静岡 プロローグW
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|愛知県
51,清洲桜醸造 本社蒸留所

出典:https://onikoroshi.co.jp/aichi-craft/whisky/
「清洲城信長 鬼ころし」という名前、日本酒好きなら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?愛知県清須市、織田信長の居城として名高い清洲城のすぐそばに構えるのが、1853年創業の老舗「清洲桜醸造(きよすざくらじょうぞう)」です。2024年時点で東海4県ナンバーワンの出荷量を誇るこの巨大な酒蔵が、新たにウイスキー造りに情熱を注いでいます。
江戸末期から木曽川の良質な水と濃尾平野の米で酒を醸してきた清洲桜醸造。「日本酒の蔵が造るべきウイスキーとは何か?」を突き詰めた結果、社長の強いこだわりで「清酒酵母」を使った仕込みが行われています。現在はモルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を製造していますが、そのプロセスがとにかくユニーク。
通常のマッシュタン(糖化槽)や発酵槽は使わず、なんと日本酒の仕込みに使っていた「液化タンク」1基で糖化から発酵までを行っています。温度調節が極めて細かくできるため、理想の味わいを追求しやすいのだとか。
蒸留器は焼酎用のステンレス製ですが、ウイスキーには欠かせない「銅」との接触を増やすため、ラインアームのパイプ内に螺旋状の銅の棒を忍ばせるという、職人技が光る工夫が施されています。
熟成は酒蔵の地下室で静かに行われており、樽詰め度数を52〜55%に抑えることで、清酒酵母由来の繊細な風味を大切に守っています。
清洲桜醸造は、地元愛知県だけでなく、都営バスや大阪シティバスなど全国各地の路線バスに広告を掲示していることでも知られています。旅先でふと見かけるあの「鬼ころし」の広告の裏側で、実はこんなにストイックなウイスキー造りが行われているなんて、ちょっと意外で面白いですよね。
伝統の日本酒造りで培った「発酵の技」と、既存の設備を活かす「創意工夫」。清州の歴史ある空気の中で熟成されるウイスキーは、まさに唯一無二の存在と言えるでしょう。
52,サントリー知多蒸溜所

出典:https://www.suntory.co.jp/chitadistillery/company/index.html
オーナー: サントリー知多蒸溜所(サントリーホールディングス)
創業年:1973年
所在地:愛知県知多市北浜町16番地
公式HP:https://www.suntory.co.jp/chitadistillery
愛知県西部の知多半島は、大手食品飲料メーカーなどの工場が立ち並ぶ工業地帯。その一角にあるのが1972年に建設されたサントリー知多蒸溜所(本格稼働は1973年)。
サントリーグループと全農グループが共同で設立しており、現在も持ち株比率は50%ずつとなっています。2019年からは社名を「サントリー知多蒸溜所株式会社」へと変更しています。

「オールド」や「角」「響」「トリス」など、サントリーのブレンデッドウイスキーには欠かすことのできないグレーンウイスキーを生産しています。グレーンウイスキーの主原料はトウモロコシ。知多という土地は、原料を大量に積んだタンカーが入港することができ、原酒を熟成させる貯蔵庫「近江エージングセラー(滋賀県)」や「白州蒸留所(山梨県)」の中間地点にあたるため、グレーンウイスキーの製造拠点としてはとってつけの立地となっています。
2015年には「シングルグレーンウイスキー知多」が発売され、その名は全国に知れ渡るようになります。これまで縁の下の力持ちとして、サントリーのウイスキーを支える存在でしたが、モルト原酒の不足をきっかけに商品開発がスタート。
通常のグレーン原酒とは異なる仕込み、熟成樽を使用することで、華やかで飲みごたえのある味わいのグレーンウイスキーを完成させました。グレーンウイスキーは「サイレントスピリッツ」と言われており、風味が少ないことが特徴ですが、知多はこれまでのグレーンウイスキーとは異なる複雑で力強い個性をもっており、これまでのグレーンのイメージを払拭させるウイスキーとして人気となっています。
蒸留器は全高30メートルにもなる、まるで巨大なビルのようなサイズの連続式蒸溜機。モロミ塔、抽出塔、精留塔、精製塔の4塔からなる連続式蒸留器からは、「ヘビー」「ミディアム」「クリーン」の3タイプのグレーン原酒が24時体制で蒸留されています。

2022年に設備の増強がおこなわれており、カフェ式蒸留器が新設。粉砕機、クッカー、糖化タンクなども新たに設置されました。カフェ式蒸留器を導入することで、これまで以上に多様なグレーン原酒を生み出すことができるようになりました。
蒸留期間中も、日々厳格に原酒のチェック。こだわり抜かれてつくられたグレーンスピリッツは、ホワイトオーク樽やスパニッシュオーク、ワイン樽など、モルトウイスキーのように様々な樽を利用されています。

気になるサントリー知多蒸溜所の「仕込み水」ですが、「愛知用水」を使用しています。この水は木曽川上流から水を引いている用水となっており、硬度は18㎎の軟水。原料はトウモロコシを使用。アメリカ産のイエローデントコーンと、フィンランドなどから仕入れる大麦麦芽と糖化酵素として利用しています。
知多蒸留所は設備上の関係で一般見学は行っていません。いつの日か、日本を代表する巨大グレーンウイスキーの製造基地をこの目で見てみたいものです…
知多蒸留所|おすすめのウイスキー

サントリー ウイスキー 知多
サントリー ウイスキー 知多
53,碧南蒸留所
愛知県碧南市(へきなんし)にある「碧南蒸留所」。ここは、歴史の荒波に揉まれながらも、70年という長い歳月を経て「夢」を復活させた、非常にドラマチックな物語を持ちます。
物語の始まりは、戦後まもない1949年にまで遡ります。当時、碧南でみりんや清酒を造っていた先人たちは、「世界を知りたい」という強い好奇心と志を胸にウイスキー造りを開始しました。順調にノウハウを蓄積し、1953年には200本もの樽を貯蔵するまでになりましたが、そこで悲劇が襲います。
1953年の台風13号による浸水、そして追い打ちをかけるように1959年の伊勢湾台風が直撃。甚大な被害を受けたことで、自社蒸留の道は一度断絶してしまいました。
その後、海外原酒をブレンドした地ウイスキー「レインボー」の伝統を守りながら、志半ばで潰えた先人の遺志を継ぎ、2019年、ついに70年越しの自社蒸留再開を果たしたのです。
運営する「相生(あいおい)ユニビオ」は、2004年にみりん造りの老舗「相生味淋」、焼酎の「愛知酒精工業」、清酒の「相生酒造」の3社が合併して誕生しました。
2022年には創立150周年を迎えたこの「造りのプロ」たちが、それぞれの技術を惜しみなく注ぎ込んでいるのが碧南蒸留所の大きな強みです。
製造設備は非常に個性的で、まさに「クラフト」を体現しています。ワンバッチわずか425kgというマイクロサイズ。清酒の仕込みが終わった時期にだけ造るため、年間の生産量も限られています。また、ステンレス製のマッシュタンで「メッシュの布」を使って麦汁を濾したり、清酒用のタンクを温度調整機能付きの発酵槽として代用したりと、既存の酒造設備を巧みに活用しています。
発酵には100%清酒酵母を使用。蒸留器は焼酎用をベースにしていますが、内部に無数の穴が開いた「銅板」を設置することで、ウイスキーに適した複雑な反応を引き出す独自仕様になっています。そのほか、排出される麦芽粕は、全量を発酵肥料として地域の農家へ提供され、植物の命へと循環しています。
2024年10月には待望の「シングルモルト 一碧(いっぺき)ファーストエディション」をリリース。2025年12月に第2弾となる「Limited Edition 02 東雲(しののめ)の花」を数量限定で発売しました。
先人たちの悔しさと情熱を70年かけて熟成させ、ようやく形になった碧南のウイスキー。三河の風土と酒造りの伝統が溶け込んだその味わいは、まさに「皆様と共に、地域と共に」歩む、新しい未来の象徴と言えるでしょう。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|三重県
54,伊勢蒸留所

伊勢神宮の内宮前、賑やかな「おかげ横丁」にある小さな酒蔵。参拝の際に、清酒「おかげさま」の看板を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
その酒蔵を運営する「伊勢萬(いせまん)」が、いまウイスキー界で熱い注目を集めています。三重県伊勢市にある「伊勢蒸留所」は、歴史ある酒造りの技を活かし、伊勢志摩初のジャパニーズ・シングルモルトを生み出しました。
蒸留所がある本社工場は、近鉄宇治山田駅から車で10分ほど、陸上自衛隊明野基地のすぐ隣に位置しています。面白いのがその敷地で、なんと旧日本軍の巨大な飛行機格納庫や兵舎が今も残っているんです。かつてはその高い天井を活かし、巨大な連続式蒸留機で焼酎などを造っていましたが、2021年6月にウイスキー製造免許を取得。長年の夢だった「伊勢のウイスキー造り」へと大きく舵を切りました。
伊勢蒸留所の設備は、非常にコンパクトで「最小規模」と言えるもの。ワンバッチの麦芽はわずか400kg。カナダ産やスコットランド産の麦芽を使い、清流・宮川の伏流水で仕込みます。発酵槽はステンレス製のものが2基のみ。蒸留器はもともとの焼酎用1基に、横山エンジニアリング社製のモルトウイスキー用銅製スチル1基を加えて運用。月・火曜に仕込み、水曜に再留を行うという丁寧なサイクルで、伊勢の風土を原酒に閉じ込めています。
すでに、世界的な酒類品評会「IWSC 2024」において、ワールドブレンデッドウイスキーの「神路(KAMIJI)」が、98点という部門最高得点を獲得。日本のウイスキーで唯一の最高金賞(Gold Outstanding)に輝くという快挙を成し遂げました。ちなみに「神路」という名は、西行法師が詠んだ「神路山 月さやかなる……」という和歌から取られた風雅な名前とのこと。

そして2025年12月、伊勢志摩初のシングルモルト「伊勢 -2025 Edition-」がリリースされました。このボトルは「一期一会のシングルカスク」。熟成中のバーボン樽の中から、ブレンダーが「今」最高だと感じた1樽だけを選び抜いた希少品です。
デザインは、これまでの製品が「月(神路)」や「天体(ステラ・光年)」をモチーフにしてきたのに対し、「太陽」がシンボル。伊勢の神秘的な光を表現しているそうです。限定250本という非常に貴重なこのボトルは、おかげ横丁内の「内宮前酒造場」と公式オンラインストアのみで販売されています。
小さな酒蔵の大きな夢が詰まった伊勢のウイスキー。これからの熟成でさらにどんな変化を遂げていくのか、目が離せない蒸留所です。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|滋賀県
55,長濱蒸溜所

琵琶湖のほとり、滋賀県北東部に位置する長浜市はかつて水運の町としても栄えた宿場町で、歴史情緒あふれる街なみが漂う城下町でもあります。市街地の周辺には、浅井長政の居城「小谷城跡」や、関ヶ原の合戦で活躍した「石田三成の出生地」、織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍が激突した「姉川の合戦跡」など、戦国時代の武将たちの足跡を辿ることができます。
そんな観光都市としても有名な長浜市に2016年、初のウイスキー蒸留所となる長濱蒸留所が操業を開始。日本の蒸留所としては最小規模となるクラフトウイスキー蒸留所は、1996年創業の長濱浪漫ビールが二十周年の記念事業としてスタート。ビール造りのノウハウを活かし個性的で本格的なウイスキーを生産しています。
蒸留所はレストラン兼ビール醸造所となる江戸時代の米倉を改装した建物の中にあります。レストランからはガラス越しにポットスチルを見ることが可能。こんな蒸留所は海外でも存在していません(笑)

ポットスチルはポルトガルのホヤ社製のアランビックスチル。容量は1000リットル。高さ2メートル程の小さな蒸留型です。
当初は2基で生産していましたが2018年に増設し、現在は初留2基、再留1基の3基で蒸留しています。
仕込みは1バッジ麦芽400 kg。モロミは発酵までの工程がビール造り兼用となっており、ノンピーテッドのドイツ産麦芽と、スコットランド産のピーテッド麦芽を使用。今後は滋賀県産や地元長浜の大麦麦芽をつかって生産する予定もあるそうです。
熟成樽はさまざななタイプが使用されており、メインはバーボン樽。そのほかシェリー樽、アイラ島のクオーターカスク、フィノシェリー、赤ワイン、白ワイン、アメリカン・モルトウイスキーのリフィルバレルなど、バリエーション豊富。
貯蔵庫は2018年から利用している長浜市内の「廃道トンネル」や、廃校となった小学校校舎を使用。さらに琵琶湖に浮かぶ「竹生島(ちくぶじま)」や、県外では沖縄でも一部の原酒を熟成させています。
クラフト蒸留所ならではの挑戦的でユニークな熟成スタイルがいいですね!
2020年には3年物となる、自社原酒100%の「シングルモルト長濱」シリーズをリリース。バーボン樽、シェリー樽、ミズナラ樽を巧みに使用したシリーズは第三弾まで発売されました。そして022年10月に初のシングルモルト「THE FIRST BATCH」を発売。2023年5月には「THE SECOND BATCH」がリリースされています。

その他、長濱蒸溜所では他社とのコラボ商品も多くリリースしています。2021年に登場した「INAZUMA」シリーズでは、最初のリリースで「三郎丸蒸留所」とコラボ。第2弾は「江井ヶ嶋蒸留所」。2022年5月に登場した第3弾は、長濱、三郎丸、江井ヶ嶋の原酒をブレンドした「エディションNo.3」。このボトルは2種類が発売されており、1つは3つの蒸留所の原酒のみを使用した「ジャパニーズプレンデッドモルト」の「SYNERGY」。そしてもう1つは、海外の原酒も加えたワールドブレンドタイプの「EXTRA」。
2022年12月に発売された「Powered by AMAHAGAN サジタリアスアイオロス」は、アニメ『聖闘士星矢』とのコラボレーションシリーズの第1弾でした。それ以降、毎月新作がリリースされ、2023年9月には第10弾までがリリースされています。

シングルモルトの前に発売された「AMAHAGAN(アマガハン 反対から読むと長濱)」も、長濱蒸溜所を代表する人気シリーズです。このシリーズは海外のモルトウイスキーをベースに、長濱蒸溜所でつくられたモルト原酒をブレンドしたもので、レギュラーシリーズ4本のうち3本がWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)で賞を獲得しています。
これまで、大手メーカー以外がつくった、海外原酒をブレンドしたウイスキーは高評価されることがほとんどありませんでした。多彩な熟成樽を使用することで、これまでにない新しいウイスキーを完成させ話題になったことは素晴らしいことですね。
長濱蒸溜所|おすすめのウイスキー

シングルモルト長濱 ザ・シックス バッチ
シングルモルト長濱 ザ・シックス バッチ
- 500ml・50%
- ボトリング数:4,000本
- 参考小売価格(税抜):11,000円
- 楽天市場価格[2026年2月]:12,500円 送料無料
- Amazon価格[2026年2月]:12,100円 送料別
シングルモルト 長濱 THE FIFTH BATCH
シングルモルト 長濱 THE FIFTH BATCH
シングルモルト 長濱 THE THIRD BATCH ザ・サードバッチ
シングルモルト 長濱 THE THIRD BATCH ザ・サードバッチ
56,琵琶湖蒸留所
滋賀県で2番目の蒸留所として、琵琶湖の西側「湖西地区」に誕生したのが琵琶湖蒸溜所です。2023年7月から蒸留を開始した、小規模ながらも非常に志の高い本格モルトウイスキー蒸溜所です。
こちらのオーナーである「川島酒造」は、慶応元(1865)年創業という160年近い歴史を持つ老舗です。日本酒「松の花」で地元の方々に長く愛されてきたこの蔵を引き継いだのが、京都で茶の問屋を営む北川直樹氏でした。北川氏は、この歴史ある酒蔵の次なる一歩としてウイスキー造りへの参入を決意したそうです。
当初は地名を付けた「高島蒸留所」という名前も検討されていたそうですが、あえて「琵琶湖蒸溜所」と名乗ることに決めました。そこには、「琵琶湖の湖西地区から世界を目指すウイスキーを造りたい」という、地域への愛と世界への挑戦心が込められているんですね。
ウイスキーの命ともいえる仕込み水には、酒蔵の井戸水(硬度約20度の軟水)を使用しています。実はこの水の性質、本場スコットランドのスペイサイド地区の水質にとてもよく似ているのだとか。そんな恵まれた水質を活かし、目指しているのはスペイサイドの名酒「クラガンモア」のような、華やかでスイートなウイスキー。滋賀の豊かな風土の中で、どのようなエレガントな原酒が育っていくのか、想像するだけでワクワクしますね。
蒸留棟に並ぶ設備は、粉砕機からマッシュタン、スチルに至るまで、発酵槽以外はすべて信頼の三宅製作所製で統一されています。仕込みはワンバッチの麦芽は400kg。約2,000リットルの麦汁を造り出します。
発酵にはこだわりのアメリカンオーク製「木桶発酵槽」を使用。現在は3基ですが、将来的には5基まで増やす計画。ポットスチルは現在1基で、これで初留と再留の両方を行っています。こちらも今後、2基体制へと増設される予定です。
面白いのは、マッシュタンなどの操作の一部をあえて「手動」で行っている点です。試行錯誤を楽しみながら、理想の一滴を追求する……まさにクラフト蒸留所ならではの情熱が感じられますね。
熟成環境もまた個性的です。杉の木で建てられた温かみのある木造の熟成庫(ウェアハウス)では、伝統的なダンネージ式の3段積みで、400〜420樽ほどが静かに眠りについています。
滋賀の美しい自然と、日本酒・お茶という日本の伝統文化に精通した作り手たちが生み出す「琵琶湖のウイスキー」。世界へ羽ばたくその日が、今から待ち遠しいですね!
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|大阪府
57,サントリー山崎蒸溜所

オーナー: サントリー(サントリーホールディングス)
創業年:1924年
所在地: 大阪府三島郡島本町山崎5丁目2−1
公式HP:https://www.suntory.co.jp/factory/yamazaki
ジャパニーズウイスキーの歴史を紐解くとき、その「始まりの場所」としてまず名前が挙がるのは、大阪府にあるサントリー山崎蒸溜所。1923年に建設が開始され、翌1924年に蒸留棟が完成。そして2023年には、記念すべき創業100周年を迎えました。
この節目を祝して、限定ラベルの「山崎」や「山崎12年」、さらには贅沢な「プレミアムハイボール〈山崎〉」の缶製品が発売されたことも記憶に新しいですね。まさに、日本のウイスキー造りの原点であり、現在も進化を続ける、正真正銘のトップランナーです。

サントリーの創業者・鳥居信治郎は、理想のウイスキーを造るため全国各地を歩き回りました。そして最終的にたどり着いたのが、京都の南西に位置する山崎の地でした。
名水の地: かの千利休が茶室「待庵(たいあん)」を構えたほど、古くから名水の地として知られています。仕込み水には、京都西山水源から湧き出る地下水(硬度約90mg)を使用しており、この水が山崎特有の深く、華やかな味わいの土台となっています。
理想的な気候: 桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流するこの場所は、一年を通じて湿潤な霧が立ち込め、ウイスキーの熟成を穏やかに進めるために最適な環境でした。
1929年に本格国産ウイスキー第1号の「白札」を世に送り出して以来、日本を代表する「角瓶」や「オールド」、そして1984年には2代目ブレンダー佐藤乾氏らの手によって現在の「シングルモルト山崎」の原点となる「ピュアモルト山崎」が誕生。ここから「YAMAZAKI」の名は世界へと轟いていくことになります。

山崎蒸溜所が世界中の専門家から驚嘆される最大の理由は、その「原酒のバリエーション」にあります。通常、1つの蒸留所では1〜2種類のタイプの原酒を造るのが一般的ですが、山崎ではなんと100タイプ以上の異なる原酒を一つの蒸留所内で造り分けているんです。
多彩な発酵と蒸留、こだわりの樽熟成
- 発酵槽: 清潔なステンレス製と、複雑な乳酸菌の働きが期待できる伝統的な木桶(ワッシュバック)の2種類を併用しています。これは本場スコットランドでも珍しい手法です。
- ポットスチル(蒸留器): 2013年の増設により現在は合計16基が稼働しています。形状もサイズもバラバラで、加熱方式(ガス直火・間接スチーム)や、冷却方式(シェル&チューブ・ワームタブ)を巧みに組み合わせ、重厚な原酒から華やかな原酒まで自在に生み出しています。
- こだわりの樽熟成:
サントリーが誇る自家製の「スパニッシュオークシェリー樽」や、独特の伽羅(きゃら)のような香りを生む「ミズナラ樽」など、多様な樽に詰められた原酒が、天王山を背負った熟成庫で静かに時を待っています。

現在、シングルモルトは「ノンエイジ」から「12年」「18年」「25年」までがラインナップされています。また、私たちが親しんでいる「角瓶」「オールド」「ローヤル」といったボトルも、実は山崎・白州・知多の国産原酒のみで構成された「正真正銘のジャパニーズウイスキー」です。
さらに、2025年には以下のような特別なボトルが登場し、話題をさらいました。
ミズナラ樽原酒をベースにした「山崎 Story of the Distillery 2025」や、桜樽で後熟させたグレーン原酒をブレンドした「響 BLOSSOM HARMONY 2025」。40年以上の熟成を経た原酒のみをブレンドした「響40年」。限定100本、1本440万円という価格はウイスキー業界に大きな衝撃を与えました。

2023年にリニューアルされた山崎蒸溜所は、現在「完全予約制」となっています。アクセスはJR山崎駅、または阪急大山崎駅から徒歩約10分。静かな住宅街を抜けた先に広がるレンガ造りの建物は圧巻の佇まいです。
見学ツアー(抽選制):
- 「山崎蒸溜所 ものづくりツアー(3,000円)」: 製造工程を間近で見学し、テイスティングも楽しめます。
- 「山崎蒸溜所 プレステージツアー(10,000円)」: より深く知りたい方向け。通常のツアーでは入れないエリアや職人の作業風景が見学できるプレミアムな体験です。
- 山崎ウイスキー館(無料・先着順予約):
ツアーに外れてしまっても、こちらを予約すれば展示やショップ、そしてテイスティングラウンジが利用可能です。1,700種類もの原酒がずらりと並ぶライブラリーを眺めながら、貴重な原酒を1杯から愉しめるのは至福のひとときです。
2025年5月からは大阪・梅田の「サントリーウイスキーハウス」でも、特別なシアター鑑賞と山崎12年のマリアージュが楽しめる体験型コンテンツがスタートしています。
100年の歴史を受け継ぎながら、次の100年へと歩みを始めた山崎蒸溜所。その空気感に触れるだけで、ウイスキーという飲み物が持つ「時間の魔法」を実感できるはずです。
山崎蒸溜所|おすすめウイスキー

シングルモルト山崎
シングルモルト山崎
山崎12年
山崎12年
山崎18年
山崎18年



58,泉州蒸留所
オーナー:利休蔵
創業年:2025年
所在地:大阪府岸和田市土生町6-10-15
公式HP:https://rikyugura.jp/
だんじり祭りで有名な大阪府岸和田市に、2025年3月、新たなウイスキーの聖地が誕生しました。その名も「泉州蒸溜所」です。運営するのは、堺市で唯一の日本酒メーカーである「利休蔵(りきゅうぐら)」。
蒸留所を率いるのは、上海出身の社長、加藤堅(かとう・けん)さんです。20代で来日し、堺市で整体師として働きながら医療用テープの会社を設立するなど、実業家として歩んできました。そんな加藤さんに転機が訪れたのは約6年前のこと。経営に行き詰まっていた利休蔵の先代社長から「経営手腕を見込んで、蔵を買い取ってほしい」と頼まれたのです。「畑違いだ」と迷った加藤さんでしたが、自分を育ててくれた地域への恩返しの思いから引き受けることを決意しました。
社長就任後は、日本酒の海外輸出を強化し、現在では販売量の約7割が国外というまでに成長。そんな海外の顧客からの「ジャパニーズウイスキーを造ってほしい」という熱い要望に応えるため、そして「利休蔵を100年先も残る会社にする」という使命感から、今回の新規参入を決めたのだそうです。
泉州蒸溜所の最大の特徴は、ワンバッチ麦芽200kgという、いわゆる「マイクロディスティラリー(極小規模蒸留所)」であることです。しかし、その中身は驚くほど本格的。
元サントリーの主席ブレンダーである冨岡伸一さんの助言により、あえて管理の大変なフランス製オーク材の木桶発酵槽(4基)を採用しました。「ステンレスよりも発酵が面白くなり、いろんな出会いが生まれる」という冨岡さんの提案が決め手になったそうです。
蒸留器は中国製の初留・再留用ポットスチルに加え、将来的にクラフトグレーンウイスキーも造れるよう、ハイブリッドスチルも1基備えています。シングルモルトの年間製造量は約2万リットルと控えめですが、加藤社長は「5年後には規模を10倍にしたい」と意気込んでいます。
熟成に使う樽についても、バーボン樽、シェリー樽、そして人気のミズナラ樽などをしっかり調達しています。ちなみに、ミズナラの樽オーナーを募集したところ、既に完売したというから驚きですね。
さらに面白いのが、地元の特産品を活かすアイデアです。岸和田市包近(かねちか)地区は、ギネス認定されるほど甘い桃の産地。加藤社長は、将来的にこの桃の木」を使った樽での熟成にもチャレンジしたいとか。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|兵庫県
59,西山酒造場
兵庫県丹波市市島町。緑豊かな山裾に170年以上の歴史を刻む老舗蔵元、「西山酒造場」があります。
俳人・高浜虚子が命名した清酒「小鼓(こつづみ)」で全国的に知られるこの酒蔵は、近年、焼酎やジン、ブランデーなど多岐にわたる蒸留酒に挑戦する非常にアグレッシブな蔵元としても注目を集めています。そんな西山酒造場が2022年から本格的に始動させたのが、丹波の風土を存分に活かしたウイスキー造りです。
西山酒造場の敷地内には、国の登録有形文化財に指定された建物が3棟あり、かつては高浜虚子をはじめ多くの文人や画人が集う文化サロンとしても愛されていました。
2024年には、酒・発酵・芸術をテーマにした複合施設「鼓傳(こでん)」をオープン。歴史ある建物の中にはカフェや宿泊施設、ギャラリーが備わっており、事前予約をすればガイドの案内による酒蔵見学も楽しめます。直売所では、かつて日本酒を搾るのに使われていた「木製の槽(ふね)」や酒樽も再利用しています。
そんな伝統ある酒蔵がなぜウイスキー造りにこだわるのでしょうか。きっかけは2014年と2018年にこの地を襲った豪雨災害でした。
裏山の土砂崩れを目の当たりにした西山酒造場は、その原因が森林の荒廃にあると知り、「地元の木を使うことで森を守りたい」という強い想いを抱くようになりました。そして、カフェのメニューブックやトレーに県産のヒノキを採用することから始まり、ついにその情熱はウイスキーの熟成樽へと繋がります。
2025年2月、丹波市の製材所「ウッズ」の協力を得て、これまでにない全く新しい樽が完成しました。樽の「鏡面(円形の蓋の部分)」に使われたのは、なんと蔵の庭先で170年の歩みを見守ってきた樹齢100年のヒマラヤスギ。この新樽には、まず自社の日本酒を注いで「樽酒」として熟成させ、その後ウイスキーを熟成させるという、西山酒造場ならではのスタイルです。
ヒマラヤスギの樽材としての活用は世界的にも珍しく、切り分けた瞬間に広がった甘い芳香が、ウイスキーにどのような魔法をかけるのか期待が高まりますね。現在は海外のシェリー樽などでの熟成も進んでいますが、今後は地元のスギやヒノキを使った樽作りにも挑戦していく計画です。
丹波の山を守り、歴史を紡ぎ、そして新しい価値を生み出す。伝統ある酒蔵で静かに眠る、丹波生まれの「酒カスク」ウイスキー。数年後、その封が切られる時が今から待ち遠しくてなりません。
60,丹波蒸溜所

出典:https://kizakura.co.jp/tamba/
カッパのCMや「黄桜 呑」でおなじみ、京都・伏見の老舗蔵元「黄桜」が所有する「丹波(たんば)蒸留所」。日本酒の名門がなぜ、兵庫県の丹波篠山でウイスキーを造っているのか……そこには、老舗ならではのこだわりと深い物語があるんです。
京都市伏見に本社を置く黄桜ですが、ウイスキー造りの拠点に選んだのは兵庫県丹波篠山市の山の中でした。ここは、日本酒造りのプロ集団「丹波杜氏」の故郷として知られる場所です。この地は、標高は約300メートル。周囲を深い緑に囲まれており、澄んだ空気と盆地特有の激しい寒暖差(年間で30度以上!)、そして深い霧が出るほどの湿度が特徴です。
この「厳しいけれど豊かな気候」こそが、ウイスキーが樽の中で静かに眠り、熟成を深めるための理想的な環境だったのです。

出典:https://kizakura.co.jp/tamba/
黄桜のウイスキーが唯一無二なのは、その「水」に秘密があります。蒸留所は丹波にありますが、仕込み水には黄桜の財産ともいえる伏見の名水「伏水(ふしみず)」をそのまま使用。硬度61mgのこの軟水は、黄桜の日本酒を支えてきたものと同じ。京都の柔らかな水が、丹波の厳しい自然の中でウイスキーへと形を変えていく……なんとも贅沢なコラボレーションですね。
黄桜のウイスキー造りは2018年頃から始まりましたが、当初は焼酎やジンを造るためのステンレス製蒸留器を使用していました。その後、より本格的なモルトウイスキーを目指し、2021年に世界的な名声を誇るスコットランドのフォーサイス社製ポットスチルを2基導入しています。初留釜はストレート型。再留釜はバルジ型。この最新のスチルが2021年11月からフル稼働し、香り高く芯のある原酒が生み出されています。

2022年に初の3年熟成シングルモルト「丹波 1st edition」を発売して以来、毎年魅力的なボトルをリリースしています。
シングルモルトシリーズは、毎年「1st」「2nd」と継続的にリリース。そして、丹波シングルモルト スタンダード(価格は9,900円)は、これまでの知見と技術を結集した、まさに黄桜ウイスキーの「顔」ともいえる一本です。
丹波蒸留所|おすすめのウイスキー
ジャパニーズウイスキー丹波 シングルモルト
ジャパニーズウイスキー丹波 シングルモルト
61,神戸蒸溜所

出典:http://kobe-distillery.com/
神戸の奥座敷、大自然に囲まれた複合レジャー施設「道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢(おおぞう)」。ホテルや温泉、遊園地まで併設されたこの広大な施設の一角に、2022年に誕生したのが「神戸蒸留所」です。酒類の卸や輸入を手がける貿易会社「グロースターズ」が、「神戸の新たな名産品を作りたい」という熱い想いから設立しました。
神戸蒸留所の最大の特徴は、なんといっても「ウイスキー用」と「ブランデー用」の二種類の蒸留器が並んでいるという、世界的にも非常に珍しいスタイルにあります。さらに、これらを駆使してクラフトジンの製造も行います。
蒸留器はフランスから直輸入された「アランビック・シャラント」と呼ばれる単式蒸留器。実はこれ、28年前に一度製造を止めていたものを復活させたもの。1,000℃以上の炎で直接釜を温める「直火(じかび)蒸留」という伝統的な手法で、厚みのある香りのブランデーを生み出します。
ポットスチルは、ウイスキーを造っていない時期にはジンの製造にもフル活用されています。神戸蒸留所のジンはすでに販売も開始されており、ウイスキーの熟成を待つ間にも、その蒸留技術の高さを味わうことができます。
熟成を促す「神戸の山」の気候も特徴的。神戸蒸留所がある場所は山に囲まれており、一年を通して寒暖差が大きく、かつ多湿な環境です。この「気候の激しさ」が、樽の中で眠るウイスキーの熟成をぐっと早めてくれる理想的な条件となっています。
ウイスキーの仕込みには、主に英国クリスプ社のノンピート麦芽を使用。ディスティラリー酵母にエール酵母をブレンドすることで、香りに深みを持たせています。熟成樽にもこだわっており、定番のバーボン樽やシェリー樽だけでなく、日本らしいミズナラやサクラの木を使った樽での熟成も進められています。
2024年には初のニューボーン「神戸蒸留所 Newborn 2024」をリリース。神戸の新しい風土を感じさせるウイスキー、そして歴史ある蒸留器で蘇ったブランデーや香り高いジン。道の駅を訪れた際は、ぜひその多彩なラインナップをチェックしてみてください。
神戸蒸留所|おすすめのクラフトジン
神戸ジン ウミ
神戸ジン ヤマ
62,六甲山蒸溜所
オーナー: アクサス(アクサスホールディングス)
創業年:2021年
所在地:兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲1034-229
公式HP:https://rokkosan-distillery.com
神戸港を見下ろす美しい山々、「六甲山」。その標高800mという、まさに雲の上のような場所に2021年7月にオープンしたのが「六甲山蒸留所」です。六甲ケーブルで山上へ向かい、そこからバスに揺られて数分。オーナーは徳島を拠点に化粧品やお酒の輸入販売を行うアクサス(アクサスホールディングス)。
こちらの蒸留所、実は元々「製薬会社の保養所」として使われていた3階建ての建物を改装して造られました。山頂という立地ゆえに、巨大なポットスチルを搬入・設置する際には、かなりの苦労があったそうです。
ウイスキーの命ともいえる水には、山頂の浅井戸から汲み上げる硬度44mgの天然水を使用しています。古くから「灘(なだ)の水」としてお酒造りに愛されてきた六甲の恵みが、そのまま仕込み水として使われているなんて贅沢ですよね。
製造のこだわりも独特。スコットランド産のピート麦芽(フェノール値50ppm以上)を使用。日本のビール会社で粉砕された状態で納入される、こだわりの原料です。
仕込みはワンバッチ麦芽200kg。年間生産量は1万1,000リットルほどという、まさに「マイクロディスティラリー」。スロベニア製のステンレスタンクで糖化・発酵を行い、ドイツ・ホルスタイン社製のポットスチル(1,800リットル)1基で、初留と再留の両方をまかなっています。
自社蒸留原酒としては、2021年に発売されたニューポット「THE FIRST」がその第一歩となりました。「ピュアモルトシリーズ」は、スコットランド産のモルト原酒を、六甲山でミズナラ樽や杉樽を使って後熟(ウッドフィニッシュ)させたもの。ミズナラ由来のオリエンタルな香りと、六甲山の清らかな水のハーモニーが楽しめます。2022年には、東京に直営ウイスキーショップ「青山WHISKY」もオープンしています。
標高800mのひんやりとした空気と湿潤な環境は、ウイスキーが静かに眠るのに最高のコンディション。神戸の街を見下ろしながら熟成を深める「六甲山のシングルモルト」が、数年後にどんな姿で登場するのか、今から期待が膨らみますね!
63,海峡蒸溜所

オーナー:明石酒類醸造(マルシアビバレッジ[オランダ])
創業年:2017年
所在地:兵庫県明石市大蔵八幡町1-3
公式HP:https://akashisakebrewery.com/ja/the-kaikyo-distillery
兵庫県明石市、瀬戸内海の潮風を感じる絶好のロケーションに位置するのが「海峡蒸留所」です。
母体となるのは、1856年創業の老舗蔵元「明石酒類醸造」。代表銘柄の清酒「明石鯛」は、豪華客船クイーンエリザベス号でも採用されるほど世界的な評価が高いことで知られています。そんな名門酒蔵が、2017年に新たな挑戦として立ち上げたのがこの蒸留所なのですが、その歩みはなかなかにドラマチックです。
海峡蒸留所を語る上で欠かせないのが、スコットランド・スカイ島にある「トルベイグ蒸留所」との関係。実は、蒸留所の開設前には技術不足や資金難といった大きな危機に直面していました。その窮地を救ったのが、トルベイグのオーナー企業であるマルシアビバレッジ社(オランダ)だったのです。
これを機に両者は「姉妹蒸留所」となり、社長の米澤仁雄氏自らが現地で研修を受けるなど、本場スコットランドのノウハウをダイレクトに吸収するという、日本のクラフト蒸留所としては非常に稀な体制を築き上げました。

老舗酒蔵のウイスキー蒸留所となると「酒造りの技術を応用しているのでは?」と思われがちですが、実はお酒の性質が全く異なるため、あえて日本酒の製法は取り入れていないそうです。
蒸留器はスコットランド・フォーサイス社製のバルジ型ポットスチルを導入。現在は「どんな環境下でもぶれない蒸留スタイルを確立する」ため、あえてノンピーテッド麦芽のみに絞って仕込んでいます。
仕込み水は、海が近いため地下水が使えず、市水を丁寧にろ過して使用。これも「明石海峡」という土地ならではの選択です。発酵は、ステンレス製2基に加え、木桶1基を併用。この組み合わせがどんな複雑な風味を生むのか、期待が膨らみます。

現在は、地元明石に現存する旧灯台にちなんだ**「波門崎(はとざき)」ブランドを展開しています。これは、将来のシングルモルト発売に向けてブレンディング技術を高めるため、海外原酒を活用して造られているシリーズです。また、東経135度が明石を通ることにちなんだクラフトジン「東経135度」も、その洗練された味わいで人気を博しています。
気になる自社蒸留のシングルモルトですが、2026年〜2027年頃の発売を目指して、今まさに明石の海辺で原酒が熟成を深めています。老舗のプライドとスコッチの伝統が融合した「海峡蒸留所」。明石から世界へと羽ばたく本格的なシングルモルトが届く日まで、あともう少しです。楽しみに待ちましょう!
海峡蒸溜所|おすすめのウイスキー
波門崎ピュアモルトウイスキー
波門崎ピュアモルトウイスキー
64,江井ヶ嶋蒸留所

出典:http://www.ei-sake.jp/tours.html
江井ヶ嶋酒造は江戸時代となる1888年に創業した老舗の酒蔵。酒造りを340年以上続けています。そんな歴史のある江井ヶ嶋酒造がウイスキーの製造免許を取得したのは1919年。
寿屋(現在のサントリー)よりも古くからウイスキーの製造に乗り出していました。記録上、免許を取得した年は古いものの、ポットスチルを導入して自社蒸留が行われたのは1961年となっており、1923年に創業した山崎蒸留所よりも後の話。つまり、日本で本格的なウイスキーを一番初めにつくったのは江井ヶ嶋酒造ではなく、サントリー山崎蒸留所ということになります。
生産設備が強化され、ウイスキーの製造が本格化したのは1984年のこと。敷地の一角に「ホワイトオーク蒸留所」(現在の「江井ヶ嶋蒸溜所」)を開設しました。

「あかし」というブランド銘でリリースされたウイスキーは、数ある地ウイスキーの中では頭一つ抜ける存在となります。かつては日本酒づくりの閑散期である夏の間のみ、ウイスキーの仕込みが行われていましたが、ウイスキーブームがきっかけとなり販売量が増加した影響で、現在は年200回程度仕込みが行われています。
2019年に三宅製作所の新しいポットスチルを2基導入。それまでは中古の国産スチルを使用していたそうで、新しいものはこの古いポットスチルに似せて作成しています。初留器5000リットル。再留器3000リットル。スコットランドや日本の他蒸留所とくらべ、シェル&チューブのコンデンサー(蒸留液の冷却装置の一部)が太くなっているのも江井ヶ嶋蒸留所の特徴的なところとなっています。
1バッジの仕込み量は1トン。マッシュタンはステンレス製。仕込水は地下100メートルの深井戸から汲み上げた、硬度60mlの井戸水。大麦麦芽は基本的にノンピートですが、フェノール値50ppmのヘビリーピーテッドタイプも使用しています。

江井ヶ嶋蒸留所では2009年から「あかし」ブレンドを展開。低価格帯のウイスキーを中心に販売してきました。しかし近年は高級ウイスキーの生産にも力を入れており、2020年から蒸留所名を冠した上位ブランド「シングルモルト江井ヶ嶋」シリーズの発売を開始。
「あかし」と「江井ヶ嶋」で造られているウイスキーの種類が明確に分かれている訳ではありませんが、「シングルモルト」か「ジャパニーズ」の表記が見つからない商品は「、海外原酒をブレンドしています。
とくに「シングルモルト江井ヶ嶋シェリーカスク」や「江井ヶ嶋ブレンデッド シェリーカスクフィニッシュ」などのシェリー樽にこだわったボトルの評価が高く、入手困難になるほどの人気。かつては老舗の酒蔵がつくる「生産量が多い地ウイスキー」という扱いでしたが、現在では主要なジャパニーズウイスキー蒸留所として認知されています。
2022年には三郎丸蒸留所との原酒交換によって製造した「あかしジャパニーズウイスキー ピュアモルト ダブルディスティラリーズ」をリリース。新しい試みにもチャレンジして革新的なウイスキー造りを続けています。
2023年8月にリリースされた「シングルモルトあかし PX5年 Heavily Peated」は、フェノール値50ppmのヘビリーピーテッドモルトを使用し、ペドロヒメネス(PX)樽で5年間熟成させた商品。これまでの「シングルモルトあかし」とは異なる個性を持つボトルとして注目されました。
江井ヶ嶋蒸溜所|おすすめのウイスキー

シングルモルト あかし
シングルモルト あかし
シングルモルト江井ヶ嶋 シェリーカスク 7年
シングルモルト江井ヶ嶋 シェリーカスク 7年
シングルモルトあかし PX5年 Heavily Peated
シングルモルトあかし PX5年 Heavily Peated
65,養父蒸溜所
養父蒸留所が位置している兵庫県養父市は、鳥取県と接する但馬地方の一部。この地域の清流である若杉川のそばにあり、周囲は豊かな森に囲まれています。
この蒸留所は、大阪に本社を構える酒の卸売りおよび小売り企業「ウィズワン」によって設立。8,000㎡の養鶏場跡地に、蒸留施設と2つの倉庫が建設されました。蒸留所の建物は一部がガラス張りであり、モダンなデザインで周囲の景観と調和しています。
仕込は麦芽1トンを使用。一括製造方式が採用されています。原料は主にオーストラリア産のノンピート麦芽。麦汁の抽出量は5,000リットルであり、発酵槽は日本製で、現在は4基のオレゴンパイン製がありますが、将来的には6基まで増設することが可能となっています。
ポットスチルはイタリアのフリッリ社製。初留・再留が1基ずつ。日本のー蒸留所では珍しく、ウォッシュチャージャーが採用されています。ウォッシュチャージャーは、発酵槽とスチルの間に配置され、蒸留プロセスを最適化し、モロミの熟成を促進させる効果があります。
養父蒸留所の特徴としては、蒸留後に「濾過」を行ってから樽詰めしているところにあります。この濾過は、特許技術を用いた特別な方法で行われ、貯蔵期間を最適化(短くなる??)することを目的としています。
樽詰め前に濾過するウイスキーといえば、テネシーウイスキーが最も有名です。「ジャックダニエル」や「ジョージディッケル」では、サトウカエデの木炭で濾過する「チャコールメローイング」という製法が伝統的に続けられています。
もちろん、養父蒸留所はテネシーウイスキーとは異なるスタイル。(そもそもモルトウイスキーとバーボンウイスキーで違うし)国内の蒸留所では基本的に行われていない製法で造られるモルトウイスキーが、数年の熟成を経てどうなるのか…注目されています。
2025年からは蒸溜所見学ツアーを開始。蒸溜設備を目の前に見渡せるゲストルームでは、ガイドや造り手から直接ウイスキー造りの奥深い物語を聞くことができ、さらに無数の樽が眠る圧巻の貯蔵庫も間近で見学いただけます。
ここでしか体験できない貴重な原酒の飲み比べは、まさに愛好家垂涎のひととき。ツアー参加者だけが購入できる特別なオリジナルボトルや限定グッズも販売しています。








































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