
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、閉鎖蒸溜所「キャパドニック」の希少なシングルモルト「キャパドニック21年」に焦点を当て、その魅力を詳しくご紹介します。
長い歴史を持ちながらも、2003年に惜しまれつつ閉鎖されたキャパドニック蒸溜所。現在は「シークレット スペイサイド コレクション」シリーズの一つとして、貴重な原酒が今なおリリースされています。
今回は、「キャパドニック21年」のテイスティングレビューを中心に、蒸溜所の背景や価格、市場での評価までをわかりやすく解説します。「キャパドニック21年」の味わいが気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
閉鎖蒸溜所 キャパドニック(Caperdonich)とは?
キャパドニック蒸溜所 Caperdonich Distillery
- 地域:スコットランド・スペイサイド
- 創業年:1898年(1901年〜1965年まで操業停止)
- 閉鎖年:2003年
- 名称の由来:ゲール語で「秘密の井戸」
歴史
1898年、キャパドニックはグレングラント蒸溜所の第2工場として建設され、当初は「グレングラント No.2」と呼ばれていました。ところが、ウイスキー不況の波を受け、わずか3年後の1901年に操業停止。その後60年以上もの休眠期間を経て、1965年に生産を再開し、この時に名称を「キャパドニック」へと改めます。
2000年にはペルノ・リカール社が買収しますが、2003年には閉鎖。その後、蒸溜所の建物はフォーサイス社に売却され、最終的には解体されました。
閉鎖後の動き
興味深いのは、閉鎖から約20年経った現在も、キャパドニックのオフィシャルボトルが販売されていることです。これは非常に珍しいケースで、原酒はペルノ・リカールが2000年の買収時に確保した樽ストックだと考えられます。
フォーサイス社には建物のみが売却され、貯蔵庫の原酒はペルノ・リカールの集中熟成庫に移されました。もともとキャパドニックの原酒は、ブレンデッドウイスキー「シーバスリーガル」の構成原酒として使用されていましたが、長期熟成された一部原酒はシングルモルトとして独自にボトリングされています。
現在のリリース
2023年、ペルノ・リカールは秘蔵モルトコレクション『シークレット スペイサイド』シリーズ(第一弾)の一環として、以下6種類を同時発売しました。これらは閉鎖蒸溜所の残された貴重な原酒を用いたものであり、在庫が尽きれば販売終了となります。
ボトル名 |
度数 | 税込価格 | テイスティングノート |
---|---|---|---|
キャパドニック 21年 | 48% | 41,800円 | オレンジピール、洋梨コンポート、バニラの甘み。フローラルなハーブ香が漂い、やわらかな余韻。 |
キャパドニック 25年 | 48% | 80,300円 | ブラックカラント、洋梨、ミルクチョコ。シナモンを思わせるスパイス感が広がる、贅沢で滑らかな口当たり。 |
キャパドニック 30年 カスクストレングス | ※ | 165,000円 | パイナップルや熟した果実、ハチミツ、温かみのあるスパイス。非常に長くシルキーな余韻。 |
キャパドニック ピーテッド 18年 | 48% | 22,000円 | スモーキーな焚き火の香り、ドライフルーツ、シトラスの明るい酸味。豊かな麦芽感と長い後味。 |
キャパドニック ピーテッド 21年 | 48% | 48,400円 | ピートスモークと熟した洋梨、ハチミツの甘みが調和。口当たりは滑らかで奥行きのある味わい。 |
キャパドニック ピーテッド 25年 カスクストレングス | ※ | 92,400円 | ピートの深いスモーク感、トロピカルフルーツ、ダークチョコ。複雑で重厚なフィニッシュ。 |
※カスクストレングス(無加水)のため、アルコール度数はバッチナンバーによって異なります。
【閉鎖蒸溜所のウイスキーレビュー】キャパドニック21年を評価
キャパドニック21年 Caperdonich 21year old
- 48% 700ml
- オフィシャルボトル
- 樽:アメリカンオークバレル
- 抜栓時期:2025年8月
- テイスティング時期:抜栓から1日後
- whiskybaseでの評価:88.03/100
- 参考小売価格:41,800円(税込)
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キャパドニック21年とは?
「キャパドニック21年」は、2023年7月に『シークレット スペイサイド』シリーズの一員として登場した、ノンピートモルト仕込みの21年物。スペイサイドらしいクラシックでエレガントなスタイルを持ち、長期熟成による深みと柔らかさが魅力です。
熟成にはファーストフィルのアメリカンオークバレル(バーボン樽)を使用。樽から引き出されたバニラやトフィーの豊かな甘みと、原酒由来の澄んだ果実味が絶妙に調和しています。21年間の熟成によりアルコールの角が取れ、まろやかな口当たりと奥行きのある味わいが生まれています。
アルコール度数は48%と、香りの広がりと飲みやすさを両立させた設定。ストレートで楽しめば、熟成がもたらす複雑なニュアンスが一口ごとに変化し、飲むたびに新たな発見があります。
香り
洋梨、青りんご、マスカット、レモングラス、花束、ハチミツ、メープルシロップ、マドレーヌ、カスタードクリーム、ドライアプリコット、ボディーソープ、クルミ。
加水すると、よりエレガントな印象に。フルーティーで高級フレグランスのような妖艶かスイートなアロマが開きます。
味わい
クリーミーで味わい深く、甘さがゆっくりと広がっていきます。中盤からはドライでスムース。ミディアムライトボディ。フィニッシュにかけてはワクシ―でパフューミー。余韻は中程度の長さ。ノンピートモルトでありながら、かすかにピーティーさを感じます。
加水するとよりクリーミーでオイリーな味わいとなり、アルコールの刺激はソフトになります。ドライ&スムース。よりスッキリとした個性に。
評価
「キャパドニック21年」の評価としては、「スペイサイドの奥ゆかしき教科書⁉控えめながらもエレガンスに語るウイスキー」です。
キャパドニック21年は、21年物らしいなめらかでソフトな口当たりが魅力です。甘さは控えめながら、心地よいアロマとスムースな飲み口があり、まさにスペイサイドモルトの教科書のような存在。もともとブレンデッドウイスキーの原酒として多く使われてきた経緯もあり、「ブレンデッドの中核を担いやすい個性」をしっかりと感じます。
ひと口にスペイサイドモルトといっても、その個性は多種多様。キャパドニックは控えめで繊細なタイプですが、中にはピーティーな香りが際立つものや、シェリー樽熟成で重厚な味わいを持つものもあり、「スペイサイドモルトはこうだ」と断言するのは難しいでしょう。
キャパドニックに関しては、決して個性が乏しいわけではありませんが、ノンピートで仕込まれるタイプの場合、繊細でおとなしい印象です。このような系統は、シングルモルト市場では同系統のライバルも多く存在します。現在は閉鎖蒸溜所ゆえの希少性とプレミアム感が評価されていますが、もし稼働蒸溜所だったとすれば、クラシックなスペイサイドモルトの中でも目立たない存在になっていたかもしれません。
ただし、この蒸溜所はノンピートとピーテッドの両タイプを生産していたという特徴があります。当時のスペイサイドでは、1960年代の再稼働から2003年の閉鎖まで、ピーテッド仕込みはそれほど一般的ではありませんでした。
この点で、キャパドニックは原酒の多様性に恵まれていたと言えます。しかし「キャパドニック21年」は、その特徴を活かすことなく、ノンピートモルト100%で仕上げられています。もし、この21年物にほんのわずかでもピーテッド原酒が加えられていたら――さらに複雑で、より飲みごたえのある味わいになっていたのではないか…そんな想像するのは私だけでしょうか。
実際の「キャパドニック21年」は、21年熟成ならではの上品でエレガントな風味を持ち、香りも多層的で不快な要素は一切ありません。ただし、やや余韻の複雑さに欠ける印象は否めません。繊細で落ち着いた味わいは、好みの分かれるところ。特にストレート以外の飲み方(ハイボールやオン・ザ・ロック)ではバランスが崩れやすく、飲み方次第ではその魅力が十分に伝わらない可能性があります。
日本では、多くの人がストレート以外の飲み方――例えばハイボールやオン・ザ・ロック――を好む傾向があります。そのため、「キャパドニック21年」のように繊細さとエレガンスを持つタイプは、残念ながら人気が広がりにくいのが現状です。実際、「キャパドニック21年」はよくできていますが、あまり話題にならないのは、そうした背景によるものでしょう。
「キャパドニック21年」を味わうならストレートで。途中からトワイスアップ程度に加水してみると、21年の熟成で育まれた繊細な個性がより一層際立ち、その魅力をじっくりと堪能できるでしょう。
閉鎖蒸溜所ならではの希少な原酒を用いつくられた「キャパドニック21年」。その繊細で上品な味わいは、まさにスペイサイドモルトのクラシックな魅力を体現しています。
ウイスキー市場では控えめな存在かもしれませんが、ウイスキー通ならぜひじっくり味わいたい一本。ストレートでの味わいを基本に、トワイスアップで優雅な変化を楽しみながら、閉鎖蒸溜所の歴史と情熱を感じ取ってみてください。今後もこうした希少なウイスキーが、多くの愛好家にその価値を伝え続けることでしょう。

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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