
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、2025年5月に登場したアメリカンバーボンウイスキー「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」について、テイスティングレビューやボトルの評価、定価・流通価格、そして「I.W.ハーパー 12年」との比較も交えて詳しく解説します。
「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」の味わいが気になる方は、ぜひ最後までお読みください。
高級バーボンの礎を築いた革新者「I.W.ハーパー」とは?
バーボンウイスキーといえば、アメリカンウイスキーを象徴する存在。その中でも、「I.W.ハーパー(アイ・ダブリュー・ハーパー)」は、単なる銘柄にとどまらず、バーボンの「格」を変えた存在として知られています。洗練された味わいとエレガントな佇まいで、バーボンに“高級”という新たな価値をもたらした1本。その誕生の歴史には、移民としてアメリカへ渡った一人の青年の挑戦がありました。
誕生とブランド名の意味とは?
「I.W.ハーパー」の誕生は1877年。弱冠19歳でドイツからアメリカに渡ったアイザック・ウォルフ・バーンハイムが、自身の名を冠したブランドとして創業しました。
当時のバーボンは、荒削りで庶民的な酒というイメージが一般的。しかし彼は、顧客と品質を最重視する哲学のもと、ラベルやボトルにまでこだわった“見せる”バーボン造りを展開。品質を直接確認できる透明瓶を用いるなど、販売方法にも革新をもたらします。
ブランド名の「I.W.」は創業者バーンハイムのイニシャル。そして、「ハーパー」の由来については諸説あります。親友の「フランク・ハーパー」の名を借りたという説や、営業担当の「トーマス・ハーパー」にちなんだという説があります。
いずれにしても「“ドイツ系”よりも“アメリカ人らしい”響き」が、「ハーパー」を名乗った理由に繋がっており、その結果「I.W.ハーパー」は広く知られるようになります。
世界を魅了した5つの金メダルと洗練の美学
「I.W.ハーパー」の評価を決定づけたのは、1885年のニューオーリンズ万国博覧会での金賞受賞を皮切りに、シカゴ(1893年)、パリ(1900年)、セントルイス(1904年)、サンフランシスコ(1915年)と続いた計5回の金メダル獲得。これを象徴するように、ボトルのラベルには5つのメダルがあしらわれています。
一方で、優雅な広告ビジュアルやクリスタルボトル入りのギフト展開(1949年開始)など、ブランドの“都会的なイメージ戦略”も特筆すべきポイントです。燕尾服とシルクハットの紳士像に代表されるデザインは、当時としては革新的で、贈答用としての地位も確立しました。
こだわりのマッシュ比率!トウモロコシ90%に裏打ちされた味わい
アメリカのバーボン規定では、原料の51%以上がトウモロコシでなければいけませんが、「I.W.ハーパー」ではその割合が約90%。かなり高い割合でトウモロコシを使用。この比率こそが、クセの少ない甘やかさと丸みのある口当たりを生み出しています。
「I.W.ハーパー」の主なラインナップ
I.W.ハーパー ゴールドメダル
5つの万博金賞を冠したスタンダードボトル。華やかでやわらかな甘味が広がり、どんなシーンにも寄り添う万能な1本。
I.W.ハーパー 12年
12年間熟成されたプレミアムバーボン。熟成による複雑味と奥深さを持ちながら、雑味のないクリーンな仕上がりは、熟成バーボンの完成形と称されるほど。
【バーボンウイスキーレビュー】I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブを評価
I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ
I.W. Harper Cabernet Cask Reserve
- アメリカンバーボンウイスキー
- 45% 750ml
- 抜栓時期:2025年5月
- テイスティング時期:抜栓から2時間後
- whiskybaseでの評価:評価なし
- 参考小売価格:7,000円(税抜)
- 楽天市場価格[2025年5月]:6,380円
- Amazon価格[2025年5月]:6,580円
「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」とは?
赤ワイン樽での追加熟成
I.W.ハーパーは、1870年代にケンタッキーで誕生した老舗のバーボンブランドです。アメリカ禁酒法の時代も生き抜き、現在はディアジオ社がそのブランドを所有しています。1990年代にはアメリカ市場から姿を消しましたが、その後は日本市場で「高級バーボン」としての地位を確立。洗練された味わいや美しいボトルデザインが評価され、多くのウイスキー愛好家に支持されてきました。
そして2015年、ディアジオ社はI.W.ハーパーをアメリカ市場に再導入。その流れの中で登場したのが「I.W.ハーパー カベルネ・カスク リザーブ」です。
このボトルは、アメリカンオーク樽で4年間熟成させた原酒を、さらにカリフォルニア産カベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワイン樽で追熟させたもの。
近年注目を集めている「ワイン樽フィニッシュ」という手法が用いられています。これにより、伝統的なバーボンの風味に、赤ワイン由来のタンニンやベリーのような繊細なニュアンスが加わります。
「I.W.ハーパー カベルネ・カスク リザーブ」は、ブランドが目指す“再ラグジュアリー化”を象徴する1本。日本市場で培われた上質感と、アメリカ本国で再評価されているクラフトバーボンのトレンドを融合させることで、往年のファンから新世代のウイスキー愛好家まで、幅広い層へのアプローチを図っています。
I.W.ハーパー 各ボトルのブランド戦略
商品名 | 役割 | ターゲット層 | おすすめの飲み方 |
I.W.ハーパー ゴールドメダル |
新規顧客の取り込み | 25-34歳男女。手頃で高品質なウイスキーを求めるカジュアルな飲み手。 | ハイボール、カクテルなど |
I.W.ハーパー 12年 |
トレードアップ | 35-49歳男女。ウイスキー愛好家やコレクター、熟成ウイスキーにこだわりを持つ層。 | ストレート、ロック、水割り |
I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ |
バーボン初心者向け。珍しいウイスキー好む層。 | バーボン初心者~ユニークな製品を求めるウイスキー探求者や愛好家まで幅広く | ストレート、ロック、カクテル |
定価・流通価格について
「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」の定価は税込7,700円。
2025年5月現在、楽天市場やAmazonでは、ほぼこの定価に近い価格で購入することができます。
香り
バニラ、アプリコット、ドライアップル、杏、レーズン、イチジク、ラズベリー、シナモン、オレンジビターズ、アーモンドキャラメル。
加水するとフルーツキャンディー、スポーツドリンク、洋梨、花束、かすかに白コショウ。
味わい
アルコールの刺激が少なく、フルーティーで上品な印象。ミディアムライトボディ。中盤以降にドライ。少しビター。アプリコットブランデー、バニラ、ベリー系のソース。フィニッシュにかけての香りは控えめ。ソフトでやや繊細な味わい。余韻は中程度の長さ。
加水後はさらに柔らかい味わいとなり、甘さと渋みのバランスは優れていますが、余韻の伸びは感じません。少しさっぱりとした印象。
評価
「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」の評価としては、「赤ワイン樽の風味は控えめ。バーボン初心者でも飲みやすい 新・ハーパー」です。
「I.W.ハーパーに新作が登場!」というニュースを耳にしたとき、私は迷わず帳合酒屋の担当者に連絡を取り、即注文しました。というのも、個人的に「I.W.ハーパー12年」がけっこう好みで、この新たなボトルにも大きな期待を寄せていたから。
実際にテイスティングしてみた感想を率直に言えば、評価は「ゴールドメダル以上、12年物未満」といったところ。
価格帯もその中間に位置しており、味わいの完成度もそれに見合ったもの。熟成年数は非公開ですが、アメリカンオークの新樽で4年、その後カベルネソーヴィニヨンのワイン樽でさらに同じくらい寝かせていると仮定すれば、トータルで8年ほどの原酒と推察しています
もちろん、ウイスキーにおいて酒齢がすべてではありませんが、こうした背景からも、このボトルがブランドの中で「中間的なポジション」を担っていることが見えてきます。
ハーパー3兄弟、「ゴールドメダル」「カベルネカスク」「12年」ともに、それぞれの良さがありますから、どれが好きかは好みにもなります。ただ、個人的な印象としては、「カベルネ・カスク・リザーブ」が「12年物を超える」と評価する声は、あまり多くないのではないかと。バランスの取れた1本ではありますが、やはり熟成による奥行きや風格という点では、12年のほうに軍配が上がると感じる人が多いのではないでしょうか。
まずは「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」の良い点から紹介しましょう。フラッグシップである「ゴールドメダル」と比べると、よりしっかりとした熟成感があり、バーボンらしいコクや香ばしさを感じさせつつも、ワイン樽由来のフルーティーさとマイルドな口当たりが特徴です。
安価なバーボンにありがちな、アルコールのツンとした刺激や木樽の雑味といった要素はほとんど感じません。高級感があります。香りも滑らかで豊か。ハーパー3兄弟の中でも、最も飲みやすく親しみやすい個性と言えるでしょう。
とはいえ、「飲みやすい」だけで終わらないのも、このウイスキーの魅力です。加水してもワイン樽由来の独特な風味はしっかりと残り、バーボンとしての骨格やバランスも損なわれません。
一方で、やや物足りなさを感じたのがアロマの部分。
「I.W.ハーパー12年」と比較すると、全体的な香りの個性は控えめで、余韻もやや短めに感じられました。ワイン樽を使用しているわりには、香りのボリュームや複雑さ、余韻の深さといった点で、そこまで強い印象は受けません。
これは、おそらくバーボンとしてのバランスを重視した結果とも捉えられますが、ワイン樽フィニッシュという新たな挑戦であれば、もう少し個性が際立っていてもよかったのでは…と感じたのも正直なところ。もちろん、ワイン樽由来の風味が全く感じられないわけではありませんが、想像していたよりも控えめでした。
ワイン樽フィニッシュのバーボンウイスキーの銘柄はまだ少ないものの、比較対象として挙げられるのが「エンジェルズ・エンヴィ」です。「エンジェルズ・エンヴィ」はポートワイン樽でフィニッシュされており、税別価格で10,880円。一方、「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」は税別7,000円前後と、価格には差があります。
価格差を踏まえれば、クオリティに違いがあるのは当然かもしれませんが、やはり総合的な完成度では「エンジェルズ・エンヴィ」に軍配が上がります。特に、「エンジェルズ・エンヴィ」はワイン樽由来の個性がよりしっかりと感じられ、赤系果実を思わせる芳醇なアロマが特徴的。
どちらも口当たりのなめらかさは共通していますが、香りの豊かさや味わいの奥行きといった点では、「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」はやや控えめに感じます。
とはいえ、4,000円程度の価格差を考慮すれば、単純な比較は難しいところでもあります。コストパフォーマンス重視の方にとっては、「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」も十分に魅力的です。
いずれにしても、「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」がゴールドメダルよりも飲みやすく、親しみやすい味わいであるのは間違いありません。どちらかといえば、バーボンに慣れ親しんだ“古参ファン”向けというより、これからバーボンを試してみたい初心者や、少し違ったニュアンスの味を求めている人におすすめです。
ハーパー3兄弟は、それぞれ狙っているターゲット層が異なっており、この新商品も、あえて従来の延長線上にない方向性で開発されています。さすがはマーケティング巧者のディアジオ社といったところ。
最後に飲み方ですが、「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」は、その飲み方でも大きく印象が変わりそうです。
ウイスキー上級者には、ソフトな口当たりなので、ストレートがおすすめ。初心者向けならハイボールや水割りでも悪くありませんが、加水が多いと、ワイン樽のフルーティーさや飲みごたえが失われてしまいそうなので、ハイボールでも少し「濃いめ」につくるとか、水割りよりも「ハーフロック」で飲むのが良いと思います。
ワイン樽を使った少し個性的なバーボンウイスキー「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」。「I.W.ハーパー」が好きな方はもちろん、普段バーボンを飲まない方にも、一度は飲んで欲しいと思っています。
「I.W.ハーパー カベルネ カスク リザーブ」は、150年以上の歴史を持つ老舗ブランドが、現代のバーボンファンに向けて送り出す、挑戦的でありながら洗練された一本です。クラシックなケンタッキーバーボンの力強さを残しつつ、赤ワイン樽熟成によって果実味やタンニンのニュアンスが加わり、ひと味違った個性を楽しめます。
「I.W.ハーパー12年 カベルネカスク リザーブ」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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