
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
ウイスキーの世界には多くの銘柄がありますが、その中でも「グレンフィディック12年」は、シングルモルトの中でも特に人気が高い銘柄です。フルーティーでスムーズな飲み口が特徴のこのウイスキーは、初心者から上級者まで、幅広い層に愛されてきました。
この記事では、「グレンフィディック12年」のテイスティングレビューを中心に、グレンフィディック蒸溜所の歴史や特徴、オフィシャルボトルの魅力まで詳しくご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。
グレンフィディック蒸溜所とは?

出典:Richard Harvey – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10826710による
グレンフィディック蒸留所 Glenfiddich Distillery
- 創業年:1887年
- オーナー会社:ウィリアム・グラント&サンズ社
- 地域:スペイサイド(ダフタウン地区)
- 年間生産量:2,100万リットル
- 蒸留器:初留×14基・再留×28基
- 仕込み水 ロビーデューの泉
歴史と概要
グレンフィディックは1886年に、スコットランドのフィディック川の渓谷に位置するダフタウンで設立。創業者「ウィリアム・グラント」によって、翌年となる1887年のクリスマスの日に最初の蒸留が行われました。グレンフィディックの名前は、ゲール語でフィディック川の谷間、「“鹿(FIDDICH)”」と「“谷(GLEN)”」を合わせたものに由来しています。
1920年代には、アメリカで禁酒令が施行された影響によって、スコットランドの蒸留所は閉鎖や休業が相次ぎ、その中でもグレンフィディックは生産を続ける少数の蒸留所の一つでした。
禁酒令の廃止後、ウイスキーの需要は急増。グレンフィディックは生産を続けていたことから、ウイスキーを即座に出荷することができました。現在に至るまでの地位を、この時代に固めることとなります。
1950年代に入ると、ポットスチルなどの製造設備や、専門の樽職人を維持するなど、ウイスキー造りの組織を整備。
グレンフィディック蒸溜所では、現在でも創業当時と同じ形のポットスチルを使用し続けています。1957年以来、このポットスチルの手入れを行う銅器職人を常駐。最高品質のウイスキーを生産するために重要な「樽」の管理を自社で行うため、蒸溜所内に専用クーパレッジ(樽製作工場)を設置しています。
グレンフィディック蒸溜所の歴史は、創業者ウィリアム・グラント氏が1886年に建設を開始し、1887年のクリスマスの日にウイスキーの生産を始めたところから始まります。ウィリアムは、業者を雇う余裕がなかったため、自身の9人の息子とともに、わずか371日で蒸溜所を完成させたというエピソードはあまりにも有名です。その強い情熱と努力が、今日の世界的な成功に繋がりました。
現在でもグレンフィディックは、一貫してグラント家の手で運営されており、その信念と伝統は蒸溜所のブランドに色濃く反映されています。

出典:Oyoyoy – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20981161による
製法と特徴
グレンフィディック蒸溜所の製法は、伝統的な技術と革新を融合させたものです。特に、使用する原料や製造過程においては、細部にこだわりが見られます。
製麦(モルティング): 1958年まではフロアモルティングを行っていましたが、現在は系列のバルヴェニー蒸溜所や専門業者からモルトを仕入れています。使用されるモルトはノンピートタイプで、華やかなフルーツの香りが特徴。発酵にはダグラスファー製のウォッシュバックを使用し、発酵時間は68時間。比較的長めの発酵時間がウイスキーのすっきりとした味わいを生み出します。
グレンフィディック蒸溜所の生産量については、非常に大きな規模を誇ります。年間生産量はおおよそ2,100万リットルに達し、これは世界のウイスキー業界でもトップクラスの生産量を誇ります。この生産量の規模を実現するため、ポットスチルは14基の初留釜、21基の再留釜を使用。蒸気間接加熱とガス直火加熱の両方を取り入れ、複雑で深い香味を生み出します。
また、グレンフィディックを含むウィリアム・グラント&サンズ社の蒸留所は、同じ敷地内にグレンフィディック、キニンヴィ、バルヴェニーの三か所があり、現在の総生産量は3600万リットルを超えています。これはスコッチモルトウイスキー全体の10%に相当しています。
熟成樽とソレラシステム
グレンフィディック蒸溜所の熟成樽は、その特徴的な風味を生み出す重要な要素です。グレンフィディックは、ウイスキーの熟成において使用する樽に対して非常にこだわりを持っており、アメリカンオークのバーボン樽をはじめ、シェリー樽やラム樽など、さまざまなタイプの樽を使用しています。この多様な樽の使用が、グレンフィディックウイスキーの豊かで複雑な味わいを作り上げるための要因となっています。
また、グレンフィディックではソレラシステムという独自の熟成方法を採用しています。この方法は、シェリー酒の熟成法を参考にしており、樽の中身を枯らさないように充填とボトリングを繰り返す仕組みです。
グレンフィディック蒸溜所は、スペイサイド地方で130年以上の歴史を持つ老舗蒸溜所であり、今なお革新と伝統を融合させた製法でウイスキーを生産しています。その豊かな香り、深い味わい、滑らかな口当たりは、世界中のウイスキー愛好家に愛され続けています。グレンフィディックは、スコッチウイスキーの象徴的な存在として、今後もその名を世界中に広めていくことでしょう。
代表的なオフィシャルボトル
グレンフィディック 12年 スペシャルリザーブ
代表的なエントリーモデル。フレッシュでフルーティーな味わいが特徴的で、シングルモルト初心者にも適した一本。清涼感あふれるアロマがバランスよく広がり、軽やかな味わい。
グレンフィディック 15年 ソレラリザーブ
ソレラシステムを使って熟成されたユニークなウイスキー。複数の樽で熟成し、豊かな香りと深みのある味わいが楽しめる。シェリーの甘さが絶妙に調和し、スムーズで複雑な風味。
グレンフィディック 18年 スモールバッチリザーブ
小規模で特別なバッチで仕上げられた18年もの。熟成による深い味わいと滑らかな口当たりが特徴。シェリー、オーク、スパイスの複雑な香りが広がり、長く続く余韻。
グレンフィディック 21年 グランレゼルヴァ
特別なラム樽で熟成された21年もの。非常にリッチでエレガントな味わいで、複雑さが際立つ。トロピカルフルーツ、バニラ、ナッツ、シナモンの香りが広がり、長い余韻が続く。
グレンフィディック 23年 グランクリュ
高級ラインの23年熟成。グランクリュとは「特別な収穫」という意味で、精緻な樽熟成と長年の熟成が生み出した極上の味わい。
グレンフィディック IPAエクスペリメント
スペイサイド地方のクラフトビールメーカーとのコラボレーションによるユニークなウイスキー。インディアペールエール(IPA)のビール樽で後熟させ、ホップの香りとビターさを取り入れた革新的な味わい。
【スコッチウイスキーレビュー】グレンフィディック12年を評価
グレンフィディック 12年 スペシャルリザーブ
Glenfiddick 12 Years Special Reserve
- 国内正規ボトル(ブラウンフォーマンジャパン)
- 700㎖ 40%
- 樽:バーボン樽、シェリー樽
- 抜栓時期:2023年5月
- テイスティング時期:2025年10月
- whiskybaseでの評価:80.25/100
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グレンフィディック12年とは?
「グレンフィディック12年 スペシャル リザーブ」は、伝統的な製造工程で12年以上熟成させたモルト原酒を使用。アメリカンオークとスパニッシュオークで最低12年間熟成。
「グレンフィディック12年」は、60年代からシングルモルトとしての長い歴史のあるブランド。これまでにエイジング表記やパッケージが変更されてきました。直近では、2020年4月のリニューアルで、ボトルの形状やラベルデザインが大幅に変更されています。
現在のボトルも、以前と同じグリーンカラーで三角形のデザインですが、より尖った三角形に変更されています。かつて流通していた「グレンフィディック8年」や、ブレンデッドウイスキーの「グランツ」を彷彿させるシャープなデザインとなりました。
また、ラベルはグリーンからホワイトになり、全体的にスマートな印象。年数表記は特に大きく表示され、トレードマークの鹿も新しい「V字シェイプ」の上に配置されました。
ボトルデザインに関しては、ラベルチェンジからすでに4年も経っていることから、もはや昔のボトルがどうであったか覚えている人も少ないかもしれません。しかし味の違いに関しては、変更された直後に感じて、今もなお「昔とちがうよね」と思っているかたもいるかと思います。
正規販売代理店の変更
これまで、日本市場におけるグレンフィディックの正規販売代理店は、サントリーが担当していました。しかし、2025年1月からは、ブラウンフォーマンジャパン株式会社へ切り替わっています。
この変更は、ウィリアム・グラント&サンズ社が日本市場での販売戦略を再構築する一環として行われたものであり、ブラウンフォーマンジャパンがグレンフィディックをはじめとする同社のウイスキー群を独占的に取り扱うことになります。
この代理店変更により、グレンフィディックの流通経路や価格、販売戦略にも変化が生じる可能性があり、同社が今後どのような新しい取り組みをするのか、注目が集まっています。
香り
洋梨、青りんご、オレンジスライス、ホワイトチョコレート、バニラ、ドライアップル、ドライイチジク、アニスキャンディー、メロンシロップ、レーズン、シナモン、アップルパイ。
加水後はマスカット、サクマドロップ。甘くてフレッシュなフルーティーさが広がります。
味わい
甘くてなめらか。フルーティーでスムース。クセが少なく飲みやすいバランス。ミディアムライトボディ。中盤からフィニッシュにかけても穏やかで、アルコールの刺激や苦味はかなり少なめ。余韻はシンプルでやや短め。
加水後もクリーミーでソフトなタッチ。特に大きな変化はありません。
評価
「グレンフィディック12年」の評価としては、「甘くてスムース!初心者にもおすすめの、飲みやすさが際立った一本」です。
シングルモルトスコッチウイスキーとして毎年「グレンリベット」と共に売上で1、2位を争っているグレンフィディックですが、特に大衆に支持されている理由は、そのバランスの良さです。フルーティーでクセが少なく、全体的に飲みやすいのが特徴です。
一般的に、シングルモルトウイスキーはブレンデッドウイスキーに比べてクセが強くなることが多いですが、グレンフィディック12年はその限りではありません。もちろん、ブレンデッドウイスキーの方が一般的にはクセが少なく飲みやすいとされていますが、ブレンデッドにもピーティーでクセの強いものがあり、一概に「飲みやすい」と言えるわけではありません。
実際、「飲みやすさ」とはスモーキーなフレーバーにとどまらず、全体のバランスに関わります。例えば、ノンピートの原酒を使っていても、甘さが少なくドライで若干きつい味わいのブレンデッドウイスキーもあります。ですので、ブレンデッドだからといって必ずしも飲みやすいとは限らず、最終的にはどのように原酒がブレンドされているかがポイントです。
「グレンフィディック12年」に関しては、個性が比較的強い「シングルモルト」のカテゴリーでありながら、スコッチ特有のクセがほとんどありません。むしろ、ブレンデッドウイスキーよりも初心者向けに感じるほど。甘みが豊かで、樽由来のフレーバーが程よく感じられ、ストレートでも刺激が少なく、飲みやすさが際立っています。
また、スコッチウイスキーにありがちな「甘みが後に苦みへと変わる」という特徴があまり見られません。グレンフィディック12年の場合、最後までソフトなバランスが続き、飲んだ後も穏やかな印象。このように「苦み」が少ないウイスキーは、どちらかと言えばジャパニーズウイスキーに近い個性でしょうか。
最初から最後まで、落ち着きのある味わいが広がり、優しいフレーバーと緻密な甘さが感じられます。さすがは世界でもトップクラスの売上を誇るブランドですね。
ネガティブな点はほとんど見当たりませんが、敢えて挙げるなら、少し飲みごたえに欠ける部分があります。これは、スコッチを長年愛飲している「上級者」の方は、そう感じるかもれません。飲みやすさを追求するあまり、シングルモルトとしてはやや個性に乏しい印象を受けます。
このような特徴から、「グレンフィディック12年」はスコッチ初心者に最適なウイスキーです。ハイボールやロックで飲めば、さらにスムースで飲みやすくなります。普段からスコッチを飲んでいる方には、ストレートかトワイスアップがおすすめ。フルーティーで爽やかな香りがしっかりと楽しめます。
個人的には久しぶりに「グレンフィディック12年」をテイスティングしてみましたが、予想以上に美味しかった。たまにはオフィシャルボトルに原点回帰するもの、大切なことだと改めて思いました。
「グレンフィディック12年」は、その飲みやすさとバランスの良さで、多くのウイスキー愛好者に親しまれています。シングルモルト初心者でも楽しめる優しい風味ながら、深みと奥行きが感じられるため、どんなシーンでも楽しめる一本。ウイスキーの原点に立ち返りたくなった時、また日常のちょっとしたひとときにぴったり。
「グレンフィディック12年」を味わってみたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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