

こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
アイラ島を代表するスモーキーなウイスキー「カリラ12年」は、アイラモルトファンにとって欠かせない一本。スムーズでバランスの取れたピート香、そして豊かな風味が特徴であり、アイラ島のウイスキーを初めて試す方にも、長年の愛好者にもおすすめできる銘柄です。
この記事では、「カリラ12年」のテイスティングレビューを中心に、カリラ蒸留所の特徴やボトルの評価についても詳しくご紹介します。
「カリラ12年」についてもっと知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。
カリラ蒸溜所 Caol Ila Distillery とは?

出典:英語版ウィキペディアのCanthususさん – en.wikipedia からコモンズに移動されました。, GFDL, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4914649による
カリラ蒸留所 Caol Ila Distillery
- 地域:スコットランド・アイラ島
- 創業:1846年
- 創業者:ヘクター・ヘンダーソン
- 所有:ディアジオ(MHD モエ ヘネシー ディアジオ)
- 年間生産量:650万リットル
- ポットスチル:6基(初留3基/再留3基)
- 意味:「カリラ(Caol Ila)」=ゲール語で「アイラ海峡」
アイラ島最大の生産量を誇る蒸溜所
アイラ島北東部、ジュラ島を望む断崖に建つカリラ蒸溜所。その名の通り「アイラ海峡(Caol Ila)」を見下ろす立地にあり、晴れた日には対岸のジュラ山を一望できます。
創業は1846年。現在ではアイラ島最大の生産量を誇る、年間約650万リットルの巨大蒸溜所です。
外観は古典的な石造りというよりも、工場的で無骨な印象を与えるモダンな建物。これは1972年に全面的な建て替えが行われたためで、効率化と大量生産を意識した設計。それでも、窓から見える美しい海峡の風景は、訪れる人々を魅了してやみません。
製造と熟成 ― “造る島”と“熟す本土”
カリラのポットスチルは、背が高くスリムな形状を持ち、そのためスモーキーでありながらも“軽やかでクリーン”な酒質を生み出します。麦芽は、アイラ島のポートエレン製モルトハウスから供給されるヘビリーピーテッドモルト(約35~38ppm)を使用。
ラガヴーリンと同じ原料ながら、カリラはよりドライで軽やか。繊細なスモークが特徴です。熟成樽や年数、環境によって多彩に変化する酒質は、アイラ島の中でもカリラはユニークな存在です。
カリラ蒸溜所には熟成庫がほとんどありません。造られたニューポットはタンクローリーでスコットランド本土へ運ばれ、ディアジオが管理する集中熟成庫で長い眠りにつきます。これはアイラ島の中でも珍しい仕組みであり、「造りの島」アイラと「熟成の本土」スコットランドを繋ぐ独特の役割を担っています。
味わいの特徴 ― スモークと柑橘の調和
カリラの味わいをひとことで表すなら、「柔らかく、澄んだスモーキー」。熟成年数が増すと、蜂蜜やリンゴのような甘み、ナッツ香が現れ、バランスの取れたエレガンスを見せてくれます。
カリラの真価は、シングルモルトとしてだけでなく、ブレンデッドウイスキーの世界でも高く評価されています。特に、ジョニーウォーカー・ブラックラベル/ダブルブラックにおいては、カリラのスモーキー原酒が“味の骨格”を担っています。
そのため、カリラはディアジオ社のブレンド用モルト供給の中枢であり、多くのボトラーズブランドにも原酒を提供しています。この豊富な原酒供給のおかげで、インディペンデントボトラーズからもさまざまな樽熟成タイプのカリラが登場しており、ファンにとって“味わいの幅を楽しめる蒸溜所”として支持されています。
2022年 ― 改修後のカリラ蒸溜所
2019年から3年間、カリラ蒸溜所は大規模な改修のため一時休業しました。そして2022年、ディアジオによる約310億円規模のプロジェクト「スコットランド4つのコーナー蒸溜所計画」の最終章として再オープン。新設のビジターセンターは、かつての貯蔵庫を改装したモダンな空間で、ジョニーウォーカーとの関係を中心に展示が構成されています。
主なオフィシャルラインナップ

カリラ 12年:フラッグシップボトル。軽やかでクリアなスモーク、レモンや海風のニュアンスが調和。アイラモルト入門にも最適。
カリラ 18年:12年物よりオイリーでリッチ。まろやかさと複雑さを兼ね備えつつ、アイラらしいピートと潮の香りがほどよく残る。若いカリラ12年に比べてスモークが柔らかく、果実や樽由来の甘みとのバランスが良い。
カリラ 25年:長期熟成によるまろやかさと複雑な風味が特徴。ピートスモークは控えめで、アイラモルト特有の海藻や潮の香りが穏やかに感じられる。シェリー樽の甘みと樽由来のナッツやスパイスのニュアンスが織り交ざる。
カリラ ディスティラーズエディション:12年物と比べ、スモーキーさはやや控えめになる一方、ソーテルヌ樽由来のリッチな甘み、トロピカルフルーツやハチミツのニュアンスが加わる。ピート香と樽香の絶妙なバランスが楽しめる。
カリラ モッホ:「Mòine」はゲール語で“ピート”を意味。ヘビリーピーテッド(非常にスモーキー)で、海塩や海藻の香り、濃厚な煙のニュアンスが際立つ。バランスの取れたスパイシーさと麦芽の甘み。
【スコッチウイスキーレビュー】カリラ12年を評価

カリラ12年 Caol Ila 12 Years Old
- 700㎖ 43%
- 樽:セカンドフィルのバーボン樽
- 抜栓時期:2025年2月
- テイスティング時期:2025年11月
- whiskybaseでの評価:85.20/100
- 楽天市場価格[2025年11月]:5,247円 送料別
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カリラ12年とは?
カリラのフラッグシップボトル「カリラ12年」は、ミディアム~ヘビーピーテッド麦芽(フェノール値約25~30ppm程度)を使用。アイラらしいスモーキーさを持ちながらも、ラフロイグほど攻撃的ではなく、スムーズでバランスの取れたピート感が特徴です。
香り
オレンジ、レモングラス、蜂蜜、キャラメルナッツ、燻製、消毒液、シナモン、カルダモン、黒胡椒、ドライアップル、青りんご。
加水すると洋梨、アップルミント、メープルシロップ。
味わい
甘みがあってまろやか。すぐにスモーキーでピーティー。ドライフルーツ、バニラ、アプリコットジャム。徐々にビターでドライ。ミディアムボディ。中盤からフィニッシュにかけてもスモーキーさが続き、オイリーな口当たりに燻製、柑橘のアロマ。
加水するとクリーミーでなめらかに。骨格はしっかりとしており、多少の加水ではバランスが崩れません。スモーキーでピーティー。
評価

「カリラ12年」の評価としては、「ちょっとオイリー!クセがありながらも非常にバランスの取れたウイスキー」です。
アイラ島のスモーキーウイスキーの中で、「カリラ12年」は中程度のクセの強さとして知られていますが、実際に飲んでみるとそのスモーキーさはかなりしっかりと感じられます。クセの強さは「中程度」と言われることもありますが、そのピート感の強さは「ヘビリーピーテッド」と呼べるレベルであり、アイラモルトの中でも十分に個性が際立っています。
キルダルトン3兄弟(アードベッグ、ラフロイグ、ラガヴーリン)と比較すると、確かに「正露丸のような薬品香」や「焦げ臭い風味」は少し控えめですが、全体としてのスモーキーな個性はしっかりと中心にあることがわかります。ノーズでは少し穏やかに感じる部分もありますが、一口飲むとそのピート感はかなり強く感じられ、スモーキーな風味が一気に広がります。
また、「カリラ12年」はスモーキーさだけでなく、柑橘やバニラ、蜂蜜といった甘いフレーバーも程よく溶け込んでおり、これがキルダルトン3兄弟ほどの強烈な個性にはならない理由でもあります。クセが強いだけではなく、バランスが取れており、飲みやすさを保ちながらも、十分にアイラモルトらしいピーティーさが楽しめます。
「カリラ12年」の個性を語るのは、実は少し難しいです。なぜなら、このウイスキーはスモーキーなモルトの中でも非常にバランスが取れているから。一般的に、ウイスキーの個性が強烈だと、どうしてもその特徴に焦点を当てやすく、コメントもしやすい。ですが、「カリラ12年」のように適度に調和が取れたものは、そのバランスをうまく表現するのが難しく感じます。
特にサルファリー(硫黄のような香り)やフルーティーさ、オーキーさ、エステリー(華やかで熟成感のある)アロマが調和し、スモーキーな風味をうまく引き立てています。これらのアロマが複雑に絡み合いながらも、全体としてスムーズにまとまっているため、スモーキーさが過剰にならず、逆にその深みが心地よく感じられるのです。
口に含むと、甘みとなめらかさが際立ちます。これが「カリラ12年」らしい魅力。アイラ島のオフィシャルボトルの多くは、10年〜12年程度で熟成されることが一般的ですが、その中でも「カリラ12年」は、特になめらかさが際立っており、刺激が少なく、より滑らかな飲み心地を提供しています。
特に印象的なのは、そのオイリーな口当たり。これは他のアイラモルトと一線を画す独特の特徴であり、飲み心地の豊かさを感じさせます。このオイリーさが、飲みごたえにも大きな影響を与えており、しっかりとした飲み口を表現しながらも、無理なくスムーズに飲み進められるバランスを保っています。そのため、カリラ12年は滑らかでありながらも、飲み応えのあるしっかりとした骨格を感じさせる、非常に奥行きのあるウイスキーに仕上がっています。
「カリラ12年」の構成原酒は、全てバーボン樽で熟成されています。この情報は最新のものではない可能性もありますが、現行の製造方法では、すべてリフィル(セカンドフィル以降)のバーボン樽を使用しています。ファーストフィル(新樽)を使用していないのは、樽から直接的な木の風味を強く引き出さず、より繊細なバランスで表現するためでしょう。
シェリー樽を使わず、シンプルにリフィル・バーボン樽のみで熟成されているにもかかわらず、複雑なニュアンスが感じられるのは、この樽の使い方が非常に巧妙だから。リフィル樽は新しい樽に比べて、木のフレーバーが穏やかであり、ウイスキーの味わいにより洗練された深みを加えるため、樽の個性を際立たせるのではなく、繊細にウイスキーを整えます。
「カリラ12年」のクセの強さをアイラ島内で位置付けると、次のように考えられます。
まず、アイラ島の中でもクセが強いウイスキーとしては、キルダルトン3兄弟(アードベッグ、ラフロイグ、ラガヴーリン)がトップ。これらは「正露丸のような薬品香」や「焦げ臭い風味」、さらには非常に強いスモーキーさが特徴で、アイラモルトの中でも圧倒的です。
次にクセが強いのは、ブルックラディ蒸溜所のヘビリーピーテッドタイプ「ポートシャーロット」や、キルホーマン。これらもアイラモルトの中では相当なスモーキーさを持っています。
その次に来るのが「カリラ12年」でしょうか。クセが強いながらも、バランスの良いスモーキーさを持っているため、キルダルトン3兄弟やポートシャーロット、キルホーマンに比べると、少し穏やかに感じられる部分があります。それでも、スモーキーさや独特のピート香はしっかりと感じられます。
同じレベルでスモーキーさが感じられる銘柄としては、「ブナハーブンのピーテッドタイプ」や、2024年に初リリースとなった新銘柄の「アードナッホー」などがあります。カリラ12年に近いスモーキーさ、全体的なクセの強さが共通しています。
一方で、カリラ12年よりもクセが弱いウイスキーとしては、ボウモアが挙げられます。ボウモアはアイラ島内で比較的穏やかなスモーキーさを持ち、カリラ12年に比べるとそのクセは明らかに軽く、フルーティーでバランスの取れた味わいが特徴。私の意見だけでなく、ボウモアの方が穏やかだという感想は、多くの人に共通する見解でしょう。
最後にオススメの飲み方。「カリラ12年」は加水に対しても強いため、ストレート以外の飲み方でもOK。ハイボール、ロック、水割り、お湯割り、どんな飲み方でもその個性を発揮できると思います。


あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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