【スコッチウイスキーレビュー】オーヘントッシャン12年を評価

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

「オーヘントッシャン12年」は、スコットランド・ローランドのオーヘントッシャン蒸留所が手掛ける代表作。独自の3回蒸留製法により、その洗練された味わいで知られるこのウイスキーは、クセが少なく飲みやすい一方で、深みと複雑さを持つ魅力的な一本です。

この記事では、「オーヘントッシャン12年」のテイスティングレビューを中心に、オーヘントッシャン蒸溜所の歴史や特徴、オフィシャルボトルの魅力まで詳しくご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。

 

 

 

オーヘントッシャン蒸留所(Auchentoshan Distillery)とは?

出典:By Wee Bugger, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53691687

オーヘントッシャン蒸留所(Auchentoshan Distillery)

  • 地域: ローランド
  • 設立年: 1823年
  • オーナー:サントリーグローバルスピリッツ社(旧 ビームサントリー社)
  • 蒸留器: 初留、中留、再留 各1基
  • 仕込み水:カトリン湖の水
  • 年間生産量:200万リットル

オーヘントッシャン蒸留所(Auchentoshan Distillery)は、スコットランド・ローランド地方に位置しています。この蒸留所では特に3回蒸留という特長的な製法を採用しており、ローランドモルトの特徴を色濃く反映したシングルモルトを生産しています。

蒸留所はグラスゴーから車で約20分の距離にあります。この立地は都市部に近い一方、自然に囲まれた環境でもあり、観光地としても非常にアクセスは良好。ローランド地域はスコットランドの中でも比較的温暖で、ウイスキーの生産に適した条件を備えていますが、オーヘントッシャン蒸留所は特にそのアクセスの良さも魅力の一つです。

歴史

オーヘントッシャン蒸留所の歴史は、1823年に創業され、元々はジョン・ブロック氏によって設立されました。オーヘントッシャンという名前は、ゲール語で「野原の片隅」または「平野の角」を意味し、その地域的な特徴を反映しています。

創業当初、蒸留所はジョン・ブロック氏とその息子アーチボルド氏によって運営されていましたが、1834年にはブロック家が破産。当時は「ダントチャー蒸溜所」という名前でしたが、「オーヘントッシャン」に改名され、新たなオーナーの手に渡ります。

その後、蒸留所は幾度も所有者が変わり、特に戦時中の1941年には爆撃によって設備が破壊され、しばらくの間操業を停止していました。1948年に再開し、1960年代にはウェルパーク醸造所やその後の所有者の手に渡り、1984年にはモリソン・ボウモア社に買収され、その後は日本のサントリーに所有権が移ります。

2014年には、ビーム・サントリー社、現在の「サントリーグローバルスピリッツ社」に統合され、現在に至っています。

3回蒸留とは?製法の特徴

出典:By No machine-readable author provided. Nicor assumed (based on copyright claims). – No machine-readable source provided. Own work assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=616969

オーヘントッシャン蒸留所の特徴のひとつである「3回蒸留」は、スコッチウイスキーの製法の中でも特にユニークであり、ウイスキーの風味に大きな影響を与えます。スコットランドのほとんどの蒸留所は、2回蒸留を行うのが一般的ですが、オーヘントッシャンはローランド地方にある少数の蒸留所の中で、伝統的な3回蒸留を採用しています。

基本構造

「3回蒸留」とは、ウイスキーの原料である発酵液(ウォッシュ)を3度の蒸留で分けて処理する方法です。これに対し、一般的な2回蒸留ではウォッシュを2度に分けて蒸留します。

  • 1回目の蒸留(初留): 発酵液(ウォッシュ)は初留用のポットスチルに投入され、加熱されます。この蒸留で得られるのは、アルコール度数が低い液体で、まだ多くの雑味が残っています。
  • 2回目の蒸留(中留): 初留で得られた液体は中留用のポットスチルに移され、再度蒸留されます。この段階では、不純物や不要な成分が取り除かれ、アルコール度数が上がり、ウイスキーの「心臓部」部分が抽出されます。
  • 3回目の蒸留(再留): 中留で得られた液体は、最後に再留用のポットスチルで蒸留されます。この最終的な蒸留で、ウイスキーの中で最も純度が高く、クリーンな成分が得られます。再留の過程では、アルコール度数が80%前後に達し、雑味やフレーバーがさらに精製されます。

メリット

クリーンで軽やかな風味

3回蒸留により、より純度の高いアルコール成分が得られるため、ウイスキー全体の風味がクリーンでライトな仕上がりになります。これにより、オーヘントッシャンは「アーバンモルト」としても知られ、フルーティでエステリーな味わいを楽しむことができます。一般的な2回蒸留に比べて、風味が洗練され、雑味が少なくなることが特徴です。

バランスの取れた口当たり

クリーンで軽やかな酒質により、オーヘントッシャンは飲みやすく、まろやかな口当たりを持っています。これにより、ウイスキー初心者から上級者まで広く愛される特徴を持っています。

香りの豊かさ

蒸留回数が多いと、香り成分がより精製され、2回蒸留とは異なる繊細なアロマが加わります。オーヘントッシャンのウイスキーは、フルーティな香りや、ナッツ、キャラメル、オーク香など、複雑ながらも心地よい香りが感じられます。

蒸留所の設備

出典:By No machine-readable author provided. Nicor assumed (based on copyright claims). – No machine-readable source provided. Own work assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=616964

ポットスチル(初留、中留、再留)

オーヘントッシャンは3基のポットスチルを用いて蒸留を行い、各ステージでアルコール度数を厳密に調整しています。初留のウォッシュスチル、次に中留のローワインスチル、最終的には再留のスピリッツスチルにかけて蒸留が行われます。

発酵

オレゴンパイン製のウォッシュバックを使用し、約50〜120時間という比較的長い発酵時間をかけて、軽やかな酒質を作り上げます。発酵にはディスティラーズ酵母が使用され、その発酵過程は非常に繊細で、結果的にエステリーでフルーティーなフレーバーを引き出します。

仕込み水

オーヘントッシャン蒸留所では、スコットランドの清らかな水源であるカトリン湖から仕込み水を得ています。この水は軟水であり、ウイスキーに優れたまろやかさと繊細さを与えます。

樽熟成

熟成に使用される樽のほとんどは、アメリカンオークのバーボン樽。キャラメルやトーストオークの風味が引き出され、オーヘントッシャンの特徴的な甘みや滑らかさが生まれます。シェリー樽やワイン樽での熟成も行われることがあり、これにより複雑でバランスの取れた原酒を造っています。

代表的なオフィシャルボトル

出典:https://www.auchentoshan.com/whiskies

オーヘントッシャン 12年

最も代表的なボトル。3回蒸留によって非常にスムーズで軽やかな風味が特徴で、シトラスやバニラ、アーモンド、蜂蜜などのエステリーでフルーティな香り。フレッシュで軽やかな口当たりで、余韻もクリーン。

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オーヘントッシャン 18年

熟成の深さが増し、より複雑で深みのある味わいを楽しめるボトル。バーボン樽とシェリー樽とのバランスも見事で、香りが豊かで芳醇なトーンが特徴。18年の熟成により、フルーツやスパイス、チョコレートのようなリッチな香りが広がり、複雑でリッチな味わい。

オーヘントッシャン アメリカンオーク

ファーストフィルとセカンドフィルのバーボン樽で熟成。クリーンな口当たりで、香りはバニラやキャラメルの甘さ、柑橘類やトロピカルフルーツのフレッシュさが広がる。バーボン樽由来のウッディネスやバニラ香、キャラメル、ダークフルーツが感じられ、余韻は穏やかでフルーティ。

オーヘントッシャン スリーウッド

バーボン樽で熟成後、オロロソシェリー樽とペドロヒメネスシェリー樽で熟成。3種類の樽による熟成が、ウイスキーに複雑さと深みを与えている。ドライフルーツやシェリーの甘さ、スパイスのニュアンスが感じられ、味わいはリッチでまろやか。フルーティで甘さもある。

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【スコッチウイスキーレビュー】オーヘントッシャン 12年を評価

オーヘントッシャン12年 Auchentoshan 12 Year Old

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香り

バニラ、レモン、ラベンダー、洋梨、青りんご、パパイア、青畳、ラズベリー、プラスチック、アーモンド、蜂蜜、黒糖のど飴、グラッパ。

加水後は、キャンディーや砂糖菓子のような甘いアロマが開きます。

 

味わい

甘くてなめらか。フレッシュでスムース。ライトボディ。中盤以降はドライ。スッキリとしており、フルーティーさとエステリーな風味が広がります。余韻は短め。ブレンデッドウイスキーのような、後に残らないクリアな味わい。

加水後もやわらかい口当たり。よりさっぱりと飲めるバランスに変化。ドライで引き締まった後味。

 

評価

「オーヘントッシャン12年」の評価としては、「単なる飲みやすいウイスキーじゃない⁉繊細かつ複雑なローランドモルト」です。

オーヘントッシャンには複数のラインアップがあり、それぞれ異なる熟成方法や原酒のブレンドによって個性が生み出されています。その中でも12年物は、特にその個性が際立つ一本。シリーズ全体に共通するスタイルを持ちながらも、ボトルごとに異なる魅力を楽しめる点こそが、オーヘントッシャンというブランドの魅力と言えるでしょう。

実はオーヘントッシャンの「3回蒸留」という製法は、現在ではローランド地域でも珍しく、その伝統はウイスキーの独特な個性に大きな影響を与えています。教科書通りならば、3回蒸留によってスムーズでクリアな味わいが生まれるとされていますが、私の考えは少し異なります。

確かにオーヘントッシャンはクセが少なく飲みやすいですが、その飲みやすさだけではなく、独特の個性と飲みごたえが感じられます。余韻は長くないものの、どこか複雑な味わい…

オーヘントッシャンの飲みやすさが、必ずしも3回蒸留に直接結びついているわけではないと考えています。むしろ、蒸留回数よりも蒸留所が目指すウイスキーのスタイルが大きな要因だと思います。実際、2回蒸留でもスムーズで飲みやすいシングルモルトはたくさんありますから、「3回蒸留だから飲みやすい」という考え方には一概には言えないのです。

オーヘントッシャンの場合、3回蒸留によって香り成分が精製され、その結果、非常にバランスの取れた飲みやすさが実現しています。こうした精緻な蒸留プロセスによって、ウイスキー通をも納得させる独特な味わいが生まれています。決して派手ではなく、むしろ洗練された深みを持ちつつ、個性を失わずにいる点が、このウイスキーの魅力と言えるでしょう。

重ねて言いますが、蒸留回数がウイスキーの特徴に与える影響は確かに存在します。しかし、それ以上に重要なのは、その蒸留所がどんなウイスキーを目指しているのか、という点です。

少し話が逸れるかもしれませんが、キャンベルタウンの「スプリングバンク」を例にとってみましょう。スプリングバンクは業界でも珍しい「2.5回蒸留」を行っていることで知られています。この製法自体がユニークで、通常の蒸留方法よりも0.5回多く蒸留をしても、決してスムーズで飲みやすいタイプではなく、むしろ個性豊かなウイスキーです。

さらに、同じ蒸留所で製造されている「ヘーゼルバーン」を見ても、こちらはオーヘントッシャンと同じ「3回蒸留」かつ「ノンピート仕込み」という特徴を持ちながら、オーヘントッシャンとはまったく異なる個性。スプリングバンク蒸留所製品の中では穏やかですが、「本当に3回蒸留しているの?」と思うほど、キャンベルタウンらしい独特で豊かな風味をもっています。

これらの例からも分かるように、蒸留回数の数が直接的に「飲みやすさ」や「スムースさ」を生み出すわけではありません。ウイスキーの個性や独自性は、蒸留回数だけでなく、製造過程や使用する原材料、さらには蒸留所が目指すスタイルなど、さまざまな要因が絡み合っています。したがって、3回蒸留はその一つの要因に過ぎないと言えるでしょう。

その事実を踏まえた上で、「オーヘントッシャン12年」をテイスティングして改めて感じたのは、その独特な個性。香りにピートのニュアンスが一切ないため、スコッチにありがちなスモーキーさや薬品香は全く感じられません。こうした特徴から、一般的には「クセのないウイスキー」と分類されがちですが、このウイスキーには他とは異なる面白さがあります。

スモーキーさが皆無でありながら、ハイランドモルトのようにフルーティーなアロマも控えめ。これにより、モルト(大麦麦芽)の本来の風味が際立っています。樽香や熟成樽由来の個性は穏やか。

全体的にバランスが取れた印象ですが、特に特徴的なのはその「エステル香」です。

エステル香は、リンゴ、バナナ、洋梨などの果実を思わせる香りで、発酵由来の香り、つまり酵母が放つ香りが強く感じられます。まるで「ビール酵母」や「浅漬け」のようなニュアンスが漂い、このユニークな香りが「オーヘントッシャン12年」を他のシングルモルトと一線を画す存在にしています。

これらの要素が、単なる「クセのないノンピートウイスキー」として片付けることを許さず、むしろモルトの個性を存分に活かすことで、他のウイスキーにはない味わいを引き出しているのです。

「オーヘントッシャン12年」は、12年物のウイスキーとしては比較的熟成感が控えめであり、この点が興味深いところ。おそらく、その理由はファーストフィルの樽使用比率が低いためで、セカンドフィル以降の樽がメインで使用されているからでしょう。

バニラやウッディな香りが控えめになり、その代わりにモルティでエステリーな個性が際立ちます。その結果、エステル香が強く現れることによって、全体的にフルーティーでありながらも、繊細で複雑な味わいを引き出しています。

最後におすすめの飲み方は、ストレート、トワイスアップ、水割り、です。特に水割りでは、「オーヘントッシャン12年」のモルティーな飲みごたえと、なめらかでクリーミーな味わいを体感できます。

ハイボールのようにソーダ割りをすると、これらの特徴が引き出されにくくなるため、ぜひ水で割って、その繊細な味わいをじっくりと堪能してください。

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「オーヘントッシャン12年」は、その独特な個性と洗練された味わいから、ウイスキー通をも納得させる一本。3回蒸留によるクリーンでライトな風味は、初心者にもおすすめですが、熟成感やモルトの個性をしっかりと感じられるため、ウイスキー愛好者にもおすすめ。

「オーヘントッシャン12年」を味わってみたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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