

こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
ジャパニーズシングルモルトの中でも、長年にわたり“質実剛健”な造りを貫いてきた蒸溜所――それが「マルス駒ヶ岳蒸溜所」です。これまで、シングルモルトは毎年リミテッドエディションとしてリリースされ、その都度異なる個性と完成度でファンを魅了してきました。そして2025年、ついに定番ボトルとして生まれ変わり、駒ヶ岳ブランドの“現在地”を示す一本が登場します。
この記事では、新たに定番化された「シングルモルト駒ヶ岳」のテイスティングレビューを中心に、マルス駒ヶ岳蒸溜所の歴史や設備、原酒づくりの特徴、そして現在展開されている主要ラインナップまでを、ウイスキー専門ブログの視点から詳しく解説していきます。
マルス駒ヶ岳蒸溜所とは?

蒸留所の特徴
マルス駒ヶ岳蒸溜所(旧名称:マルス信州蒸溜所)
オーナー企業:本坊酒造
創業年(会社設立年):1872年
ウイスキー蒸留開始年:1985年
仕込水:蒸留所地下120mの井戸水(花崗岩層でろ過された天然水)
原料大麦:英国産/クリスプ社製など
麦芽のフェノール値:ノンピート、ピーテッド(20~50ppm)
モルトミル:カンゼル小型ミル(ドイツ、カンゼル製)×1基
ワンバッチ麦芽仕込量:1.1トン
年間生産能力:18万リットル
糖化槽(マッシュタン):ステンレス・フルロイタータン(三宅製作所製) 約6,000リットル(4,400リットル)
麦汁量:4,400リットル
イースト菌:ディスティラリー酵母、エール酵母
発酵槽(ウォッシュバック):ステンレス製×3基、木製(ダグラスファー)×3基/約7,000リットル(4,400リットル)
初留器:ストレート型(三宅製作所製)×1基/6,000リットル(4,400リットル)
再留器:ストレート型(三宅製作所製)×1基/8,200リットル
加熱方式:スチームケトル(パーコレーター)
冷却装置:初留器はシェル&チューブ 再留器はワームタブ
樽詰度数:60%
ウェアハウス/貯蔵タイプ:ラック式(5段)約5,800樽収容可能。(津貫や屋久島にエージングセラーを所有)
ボトリング設備:無し
蒸溜所見学:可能
マルス信州蒸溜所は、シングルモルトウイスキーブランド「駒ヶ岳」との統一性を図る目的で、2024年3月から蒸溜所名を「マルス駒ヶ岳蒸溜所」に変更しました。
オーナー企業は鹿児島県の老舗焼酎メーカー「本坊酒造」。ウイスキーの製造免許を取得したのは1949年。山梨県の石和にウイスキー蒸溜所(山梨工場)を開設します。
1985年にはウイスキーづくりのさらなる理想の土地を求めて、長野県宮田村の標高798 メートルの地に蒸留所を移設し、「マルス信州蒸溜所(旧名)」が誕生します。
1992年にウイスキーの生産を一時休止。その後2011年に再開されるまで19年間も生産がストップしていました。そして設備が老朽化したことからリニューアルを計画。2020年には1985年の開設以来、実に35年ぶりとなる大改修工事が終了しました。
このリニューアルには総工費12億円が投じられており、本坊酒造にとっての一大プロジェクトと言えます。

蒸留塔は新しい建物となり、ポットスチルも新設されます。岩井喜一郎が設計した初代のポットスチルに近いものへと変わっています。ウイスキーの増産も可能となりました。
また、新たにビジターセンターも建設。ジャパニーズウイスキーブームにより注目度が増した蒸留所には、多くの観光客を呼び込むできるような工夫が施されており、魅力的なショップの他、テイスティングルームでは希少な長期熟成シングルカスクを楽しむこともできます。

仕込み水は花崗岩層で濾過された天然の井戸水。ワンバッチの仕込み量は1.1トン。約6000 L の麦汁を採取。
大麦麦芽はクリスプ社・ベアード社のスコットランド産などを使用していますが、地元産の二条大麦による仕込みも行われています。ノンピーテッドから55 ppmのヘビリーピーテッドまで、数種類の異なるタイプで仕込みが行われています。
モロミを造るときに使用されてる酵母は、ウイスキー酵母以外にも様々なタイプが採用されており、老舗酒造メーカーらしいユニークな仕込みも挑戦的に行われています。
ポットスチルは大改修前の2014年から使っていた三宅製作所製を使用。初留器6000リットル。再留器8200リットル。再留は、初留器の2回分を合わせて行っています。
駒ヶ岳蒸溜所の主なラインナップ

シングルモルト駒ヶ岳
2025年9月にリリースされた定番のシングルモルトウイスキー。花崗岩層で濾過された雪解け水と冷涼な気候が育んだ、クリーンでリッチな味わいが特徴。アップルティーやあんず、熟した柿を想わせる華やかな香りと、スムースな口当たり、心地よい余韻が楽しめる。
シングルモルト駒ヶ岳2024
バーボンバレルで熟成した原酒をベースに、シェリーカスクやワインカスクなど様々な原酒をヴァッティングした、2024年限定のシングルモルトウイスキー。熟成樽には、バーボンバレル、シェリー、ワインカスクなどを使用。
シングルモルト駒ヶ岳 アサギマダラの里 2024
宮田村「ふるさと納税」返礼品および、長野県限定リリースボトル。長野県宮田村の「アサギマダラの里」で開催される「アサギマダラの里フォトコンテスト」の最優秀賞受賞作品をパッケージに採用したシングルモルトウイスキー。このウイスキーは、アサギマダラがフジバカマの花を目指して舞う姿をイメージし、甘く調和のとれた香りが特徴です。パッケージ写真は、2024年のフォトコンテストで最優秀賞とアートラベル賞を同時受賞した小林厚幸氏の「跳舞」という作品。
シングルモルト駒ヶ岳 IPAカスク フィニッシュ
南信州ビール駒ヶ岳醸造所で醸造されたIPAビールの空き樽でフィニッシングされたシングルモルトウイスキー。爽やかなミントやシトラスの香り、果実感とクリアな甘み、ホップ由来のビターで清涼感のある余韻が特徴で、特にハイボールとの相性が抜群。
【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト駒ヶ岳を評価

シングルモルト駒ヶ岳 Single Malt KOMAGATAKE
- 45% 700ml
- オフィシャルボトル
- 樽:バーボンバレル、シェリー、ポート、ワイン カスク 他
- 抜栓時期:2025年12月
- テイスティング時期:抜栓から2週間後
- 税込価格:7,920円
- whiskybaseでの評価:83.67/100
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「シングルモルト駒ヶ岳」が定番ボトルとして登場
マルス駒ヶ岳蒸溜所は、1985年に設立され、2009年のウイスキー需要低迷期に一度モルト原酒の蒸留を休止。しかし、2011年に蒸留を再開し、14年を経て、より安定したシングルモルトウイスキーの供給体制が整いました。再開後は長期熟成と原酒管理が進み、多彩な熟成年原酒が確保できるようになります。
そして2025年9月からは、これまでのリミテッドエディションが終了し、一貫性のある定番ボトル「シングルモルト駒ヶ岳」が誕生しました。
熟成樽はバーボンバレル、シェリー樽、ポートワイン樽などを使用。パッケージデザインは、日本の伝統文様や色彩を基調としており、中央アルプス山系の豊かな自然を表現。自然の清冽な空気と雪解け水を「薄い青」、雄大な自然林を「深緑」で表し、自然と調和する風景がデザインに取り入れられています。
香り
バニラ、レモンタルト、いちじく、青りんご、洋ナシ、ドライパイン、エールビール、白い花、ラベンダー、アロエ、アカシヤのはちみつ、メープルシュガー。
加水するとマスカット、ソフトキャンディー、青畳、石鹸水。
味わい
優しい甘みとモルトの風味。ミディアムライトボディ。スムースでフローラル。中盤以降にドライ。さわやかなハーブ、エキゾチックなエステリーが続き、余韻はやや短めながらも、クセがなく飲みやすいバランス。
加水後もなめらかでスムース。バニラとはちみつの風味が広がります。飲みやすいタイプですが、ボディもしっかりとしており、飲み方を選びません。
評価

「シングルモルト駒ヶ岳」の評価としては、「駒ヶ岳の定番ボトルここにあり!非常に飲みやすいバランス!大手スコッチにも負けない完成度の高さ」です。
これまで毎年リリースされてきたリミテッドエディションでは、毎回異なる味わいを楽しませてくれた駒ヶ岳蒸溜所ですが、原酒の確保にめどがついたのか、2025年からはついに定番ボトルとして登場。これからの駒ヶ岳蒸溜所を代表するブランドとして、テイスティングしないわけにはいきません。
率直に言って、「シングルモルト駒ヶ岳」は、これまでリリースされたボトルと比べても、クセが少なく、飲みやすいバランスに仕上がっています。熟成樽には、バーボンバレル、シェリー樽、ポートワイン樽などが使用されているとのことですが、大半はおそらくバーボンバレル由来の個性を感じます。
スムースでスッキリとしていながら、しっかりとした飲みごたえもあり、モルティー、フローラル、オーキーなアロマが絶妙にバランスよく調和し、心地よい味わいを楽しめます。不快な要素は全くありません。
スモーキーな風味は感じられず、原酒としてはノンピート100%と思われます。駒ヶ岳はこれまで、クセが少なくバランスの取れたウイスキーを提供してきましたが、今回の「シングルモルト駒ヶ岳」はその中でも最も飲みやすい個性を持っています。姉妹蒸溜所の「シングルモルト津貫」は「ピーティー&シェリー」の個性が際立っていますが、駒ヶ岳はその正反対ともいえるスタイルです。
スコッチで似たスタイルを挙げるとすれば、「グレンリベット」や「グレンフィディック」が最も近いブランドでしょうか。甘みも程よくあり、終盤にはドライに変化する点や、全体的にスッキリしている中でも一定の飲みごたえを感じさせる点が共通しています。ただし、「シングルモルト駒ヶ岳」の方が、全体的に甘みがやや強く感じられるため、その辺は、ジャパニーズウイスキー特有のフルーティーで優しいスイートさが際立っているように思います。
では、「シングルモルト駒ヶ岳」の品質の高さはどこから来ているのでしょうか。おそらくその要因は複数ありますが、最も言いたいのは、駒ヶ岳蒸溜所が特に突出した独自性を持っていないことです。つまり、王道のスコッチウイスキーを基盤とした製造スタイルを昔から貫いている点です。
つまり、基礎的なウイスキー造りの技術力の高さと、ブレンダーによる優れた商品開発が、「シングルモルト駒ヶ岳」の根本的な美味しさに繋がっていると思います。駒ヶ岳蒸留所は小規模生産(年間生産量18万リットル)ですが、ストック原酒が少ない中でも、世界的なスコッチと比べても甲乙つけがたい品質を生み出していることには驚かされます。これまで毎年リリースされてきたリミテッドエディションと比べても、「シングルモルト駒ヶ岳」は間違いなくトップレベルの美味しさを誇ります。
よく考えると、昨年の「シングルモルト駒ヶ岳2024」に似た構成が見受けられます。「駒ヶ岳2024」も、バーボン樽原酒をメインとしたクラシックな個性に仕上がっていますが、「駒ヶ岳2023」以前のボトルと比べると、未熟さや若さを感じる部分がありました。そのため、「あれ⁉ いい原酒使いすぎちゃったのかな?」と心配にもなりましたが、2025年にはその不安を一蹴する素晴らしいウイスキーが登場し、本当に良かったです(笑)。今回のボトルは「駒ヶ岳2024」よりも、熟成感、飲みごたえ、バランスの全てにおいてランクアップしています。
最後におすすめの飲み方ですが、ストレートかロックが最適です。
ハイボールや水割りでも骨格を失うことはありませんが、加水量が多すぎると若干、原酒の若さが引き立ってしまう場合があります。モルティーな風味が好きな方には、これらの飲み方もおすすめですが、個人的には「シングルモルト駒ヶ岳」の唯一の弱点として、加水によってその良さが薄れることを感じています。
初めて飲む際には、ストレートかロックで味わいを確かめ、その後、自分の好みの飲み方で楽しむと良いでしょう。

「シングルモルト駒ヶ岳」は、奇をてらうことなく、王道のモルトウイスキー造りを突き詰めた先にある完成度の高さを、あらためて実感させてくれる一本でした。突出した個性で驚かせるタイプではありませんが、だからこそ毎日でも向き合える安定感と、飲み進めるほどに伝わってくる確かな技術力があります。
リミテッドエディション時代を経て、原酒の厚みとブレンド精度が成熟した今、「シングルモルト駒ヶ岳」は、間違いなく蒸溜所の“顔”としてふさわしい存在と言えるでしょう。
「シングルモルト駒ヶ岳」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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