
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、余市蒸溜所のお土産ショップ限定販売「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」について、テイスティングレビューや評価、定価・流通価格などを詳しくご紹介します。
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」の味わいや、背景にある余市蒸溜所の魅力を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
余市蒸溜所とは?
余市蒸溜所
- オーナー:ニッカウヰスキー
- 創業年:1936年
- 所在地:北海道余市郡余市町黒川町7丁目6
ニッカウヰスキーの聖地「重要文化財」に指定
余市蒸溜所は、日本ウイスキーの象徴的な存在であり、ニッカウヰスキーの発祥地として国内外で高い評価を受けています。2021年11月に、建造物10棟が「重要文化財」に指定されることが発表されました。今回の指定には、これまで登録有形文化財や余市町指定文化財に指定されていた「旧事務所」「蒸溜棟」「貯蔵棟」などに加え、「第二貯蔵庫」を含む計10棟が含まれています。
歴史と創設者「竹鶴政孝」
余市蒸溜所は1934年、竹鶴政孝によって北海道余市町に設立されました。竹鶴氏は日本で“ウイスキーの父”と呼ばれる人物で、スコットランドで学んだ本格的なウイスキー製造の技術を日本に導入しました。
余市が選ばれた理由は、その自然条件にあります。スコットランドに似た冷涼な気候、清らかな水源、そしてピート(草炭)や石炭といった製造資源が豊富であることが、竹鶴氏の理想とするウイスキーづくりに適していたのです。
余市蒸溜所は、日本海と山々に囲まれた北海道余市町に位置しており、ウイスキーの製造や熟成に最適な環境を備えています。余市川から得られる清らかな雪解け水は軟水で、ウイスキーに柔らかい口当たりをもたらします。
また、この地域の冷涼な気候は四季ごとの寒暖差を通じて、ウイスキー熟成がゆっくり進むことにより、複雑で奥深い風味を生み出します。さらに、海風や川霧によって運ばれる湿潤な気候は、ウイスキーの樽熟成に最適な湿度を提供。
これらのウイスキー造りに適した環境が、余市ならではのスモーキーで重厚な味わいを支えています。
石炭直火蒸溜
余市蒸溜所の最大の特徴は、世界的にも希少な「石炭直火蒸溜」を採用していることです。ポットスチル(蒸溜器)の下部に石炭を直接くべて加熱するこの方法は、管理が非常に難しい一方で、個性的なモルト原酒を生み出します。
余市のモルト原酒は、力強く重厚な味わい。スモーキーな香りと相性が良く、ヘビーピーテッドタイプのモルト原酒は余市蒸溜所の基本的なスタイル。バーボン樽の他、新樽(バージンオーク)の熟成も行い、ウッディな香りやバニラの香りを備えながらも、原酒本来の重厚さを失わないバランスの取れた味わいに仕上げています。
ポットスチルは竹鶴氏がスコットランドで学んだ、直系のストレートヘッド型を採用。下向きのラインアームを持つ設計は、重厚で濃厚な蒸留液を得るための工夫が施されています。
世界的評価
余市蒸溜所のウイスキーは、国際的な品評会で多くの賞を受賞しており、日本のウイスキーが世界的に認知されるきっかけを作りました。特に「ニッカ シングルカスク余市10年」が「ワールド・ウイスキー・アワード」で世界一に選ばれたことで、その品質の高さが広く知られるようになりました。
主なラインナップ
シングルモルト余市
フラッグシップボトル。ピート香とスモーキーさを前面に押し出しつつ、フルーティーなアロマが引き立つ一本。
シングルモルト余市10年
2022年11月にリニューアル。熟成を重ねた余市モルトならではの力強く重厚な味わい。ピーティーで燻製を思わせる風味とコク深い余韻。
シングルモルト余市 グランデ
2022年3月にリリースされた国内の空港免税向け商品。余市の特徴である力強さと厚みを、ヘビーピートモルト原酒と新樽熟成モルト原酒によってさらに引き出したウイスキー。
【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト余市 ピーティ&ソルティを評価
シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ
Single Malt Yoichi Peaty & Salty
- シングルモルトジャパニーズウイスキー
- 55% 500ml(180mlボトルも有り)
- 抜栓時期:2024年11月
- テイスティング時期:2025年5月
- whiskybaseでの評価:87.37/100
- 参考小売価格:8,500円
- 楽天市場価格[2025年5月]:16,170円
- Amazon価格[2025年5月]:12,980円
蒸留所限定|シングルモルト余市 ピーティ&ソルティとは?
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」は、余市蒸溜所のショップでしか手に入らない現地限定ボトルです。一般の酒販店やBAR、ウイスキー専門店では基本的に流通しておらず、購入には実際に蒸溜所を訪れる必要があります。ただし、二次流通市場では出回ることもあります。
この「ピーティ&ソルティ」は、「ウッディ&バニラ」「シェリー&スイート」と並ぶ、3種類の蒸溜所限定シリーズのひとつです。
シリーズの中でも「ピーティ&ソルティ」は、余市らしい力強いピート香と潮気を持つ原酒にフォーカスしたボトルで、「ウッディ&バニラ」や「シェリー&スイート」が甘さや樽由来の香味を引き立てる一方、「ピーティ&ソルティ」はスモーキーでピーティーな風味を前面に押し出し、余市の個性を象徴する重要な要素を担っています。
「ピーティ&ソルティ」は、このボトルは、まさに伝統的なモルトウイスキーとしての余市の魅力をダイレクトに味わえる一本と言えるでしょう。
現在のボトルには熟成年数の表記はありませんが、かつては「12年物」として販売されていた時期もあります。アルコール度数は55%と高めで、「カスクストレングス」の表記こそないものの、加水はほとんどされていない、原酒そのままの濃厚な仕上がりとなっています。
他の余市との比較
ボトル名 | 特徴 | ピート感 | フルーティー | 樽香 |
---|---|---|---|---|
ピーティ&ソルティ | 強烈なスモーキーさと塩気 | ★★★★★ | ★ | ★ |
シェリー&スイート | ドライフルーツの甘さ | ★★ | ★★★★★ | ★★★★ |
ウッディ&バニラ | 樽香と甘さ | ★★ | ★★★★ | ★★★★★ |
シングルモルト余市(定番) | 定番品 | ★★★ | ★★★ | ★★★ |
定価と価格推移
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」500mlボトルの販売価格は8,500円。2024年に6,800円から8,500円に値上がりしています。
2025年5月現在、「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」は、オークション市場およびネットショップでは、8,000~19,000円前後で取引されています。価格は「ウッディ&バニラ」よりもやや高めで、「シェリー&スイート」とほぼ同水準となっています。
今後の販売数や供給状況は不透明ですが、希少性の高さから、今後さらに価格が上昇する可能性もあるでしょう。
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」オークションでの価格推移
- 2019年(定価6,800円):11,000円前後
- 2021年(定価6,800円):7,000~12,000円
- 2023年(定価6,800円):6,000~10,000円
- 2024年(定価8,500円):7,000~10,000円
- 2025年5月(定価8,500円):8,000~11,000円
香り
バニラ、マドレーヌ、レモングラス、青りんご、輪ゴム、アプリコット、ドライイチジク、ステンレス。
加水すると、メープルシロップ、スモークドナッツ、ラズベリージャム。
味わい
甘みがあって刺激的。ピーティーでスモーキ―。若干の酸味。中盤以降はおだやかな樽香。ミディアムボディ。ライトな味わいではなく、オイリーさとコクがあって、飲みごたえのあるバランス。フィニッシュにかけてもスモーキー。やや鉄分っぽさも。余韻はやや長め。
加水後はややマイルドにはなりますが、力強さは失いません。よりオイリーな個性。燻製、ゴム、石油製品、焼き魚。
評価
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」の評価としては、「余市のキーモルト⁉アイラモルトを凌駕するスモーキ―で重厚な1本」です。
これまで「ウッディ&バニラ」、「シェリー&スイート」の2種類をテイスティングしてきましたが、「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」が最も原酒の若さを感じる仕上がりです。
フェノール値が高い「ヘビリーピーテッドモルト」で仕込まれたウイスキーは、ノンピートモルトに比べ熟成のスピードは遅くなる傾向にあります。このシリーズは熟成年数の表記がないため、各ボトルの酒齢は確認できませんが、いずれにしても他2種類よりも、いきいきとした原酒の表情が前面に出ています。
名前のとおり、スモーキーさと塩気(ソルティ感)が際立ち、定番の「シングルモルト余市」と比べても個性の強さは段違い。例えるなら、余市が「個性派のハイランドモルト」だとすれば、この「ピーティ&ソルティ」は、まるでアイラモルトのような強烈なスモーキーフレーバーを持っています。
本場アイラモルトに匹敵するどころか、それをも凌ぐ美味しさ。香りのバリエーションこそ限定的ではありますが、コクのある甘みと、クセになるスモーキー&ピーティな風味が魅力的。ただ力強いだけではなく、複雑さと、どこか温もりを感じさせる包容力のある個性が印象に残ります。
具体的なアイラモルトに例えるなら、全体の個性は「ラガヴーリン」に近い感覚。ピートの強さという点では「カリラ」っぽさも感じますが、若い熟成年数ながらも厚みのある味わいを考えると、やはり「ラガヴーリン」を思わせる印象です。
ウイスキーにおける「ソルティ(塩気)」な要素についての表現は、なかなか一言で語れません。個人的な印象では、もともと余市のレギュラーボトルに強い塩気を感じることは少ないのですが、この「ピーティ&ソルティ」は、他の限定シリーズ2種(ウッディ&バニラ/シェリー&スイート)に比べると、明らかに潮気を感じる構成です。
とはいえ、ハイランドモルトの「プルトニー」や「ティーニニック」、あるいはアイラモルト・アイランズモルトのような明確な塩辛さまでは至っていない印象。ただ、全体的にはアイラモルトのようなクセの強さはあるので、余市蒸溜所のあらゆる商品の中では、最もピーティでソルティなのは確実です。
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」の熟成樽は、おそらくバーボンのホグスヘッド。「ウッディ&バニラ」はアメリカンオークの新樽、「シェリー&スイート」はシェリー樽ですから、「ピーティ&ソルティ」には、余市蒸溜所で最も多く使われているタイプであるホグスヘッドを使用しているでしょう。
ホグスヘッド樽は、既存のバーボンバレルを解体・再構成して作られるもので、樽の内側を再度焼き直す「リチャー」処理が施されるのが一般的。ただし、必ずしもすべての樽でリチャーが行われるわけではなく、ノンチャーのまま使用されるケースもあるようです。
「ピーティ&ソルティ」の場合、樽由来の風味が比較的控えめに感じられることから、ファーストフィル(1回目使用)に加えて、リフィル(2回目以降使用)のホグスヘッドも併用されていると推測されます。スモーキーさやピートの個性を際立たせるには、樽からの影響を適度に抑えることが重要ですから、その点でも、バーボン・ホグスヘッドの穏やかなキャラクターは理にかなっています。
他のスモーキ―なジャパニーズシングルモルトウイスキーとも比較しましょう。
日本のスモーキ―モルトで代表的な銘柄は「厚岸」と「三郎丸」ではないでしょうか。ドどちらも定番ボトルがないため、それぞれの商品で個性が異なるのは承知の上ですが、全体的な印象として申し上げると、スモーキーさは「厚岸」と同レベルで、「三郎丸」よりも強い印象。
さらに特筆すべきは、原酒そのものの力強さ。この点においては、「厚岸」や「三郎丸」を上回っている印象があります。これは、余市独自の石炭直火蒸溜によって生まれる重厚で芯のある酒質が、大きく寄与しているのかもしれません。
最後に、余市蒸溜所限定シリーズ3本に共通する魅力について触れておきましょう。
このシリーズ、驚くほど完成度が高いです。どれも「余市の構成原酒」としての位置づけながら、まず第一にウイスキーとして非常に美味しい。もしこれらが通常流通していたら、高値での転売が横行していたかもしれません。そう考えると、蒸溜所限定であることは、ある意味で「正解」です。アルコール度数は強めですが、飲みにくい印象は全く皆無。飲みごたえがありながらも、喉の落ちていく心地よい感覚。飲み応えとバランス感覚には、正直うなります…
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」は、余市らしさに欠かすことのできないスモーキ―原酒。余市を構成する「キー」となるウイスキーですので、飲んだことが無い方はぜひお試しください♪
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」は、余市らしさを象徴するスモーキーモルトの中核原酒。まさに、余市を語る上で欠かせない“キー”となる1本であり、本場アイラモルトに匹敵するどころか、それをも凌ぐクオリティです。
「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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