【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト宮城峡ピーテッドを評価

この記事では、ニッカウヰスキーのシングルモルトジャパニーズウイスキー「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」のテイスティングレビュー、ボトル評価、定価や流通価格、「シングルモルト宮城峡」との違いについても解説致します。

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」の味わいと「宮城峡蒸溜所」を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】宮城峡蒸溜所とは？

宮城峡蒸溜所

• 設立年：1969年
• 創業者：竹鶴政孝（ニッカウヰスキー創業者）
• 所有者：ニッカウヰスキー
• 所在地：〒989-3433 宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地

ニッカウヰスキー第二の蒸溜所

宮城峡蒸溜所は、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝が、余市蒸溜所とは異なるタイプのウイスキーを生み出すために設立した蒸溜所です。広瀬川と新川の清流に恵まれた宮城県仙台市郊外の谷間に位置しており、周囲を奥羽山脈に囲まれた冷涼かつ湿潤な環境が、ウイスキーの熟成に穏やかで優雅な特性をもたらします。

この地を訪れた竹鶴氏は、川の水をすくい取り、「ブラックニッカ」で割って飲み、その場で蒸溜所の建設を決意したと伝えられています。

 

宮城峡と余市の違い

宮城峡蒸溜所のウイスキー造りは、余市蒸溜所（北海道）とは対照的なスタイル。余市のヘビーでピートの効いたモルトウイスキーとは異なり、宮城峡ではライトピーテッド、またはノンピートの麦芽を使用し、スコットランドのローランド地域を意識した、華やかでクセの少ないモルトウイスキーを生産しています。

また、余市とは蒸溜方法も異なり、宮城峡では間接加熱式（スチーム加熱）を採用。バルジ型ポットスチルを使用し、ラインアームを上向きにすることで、フルーティーでクリーンな酒質を実現。

発酵には木桶発酵槽とステンレス発酵槽の両方を用い、木桶発酵槽では微生物の働きによって複雑なエステル香（リンゴや洋ナシ、トロピカルフルーツのような香り）を生み出しています。宮城峡は余市よりも周辺に森林の多いことで、木桶発酵槽との相性がよく、この違いも宮城峡独自の個性に繋がっています。

また、熟成環境も宮城峡に独特の風味を与える要素の一つ。余市の寒冷な「海洋性気候」ですが、宮城峡は比較的湿潤な「内陸性気候」。夏は湿度が高く、冬の冷え込みも適度なため、ウイスキーはまろやかで調和の取れた味わいに仕上がります。

熟成庫は余市と同様の伝統的なダンネージ式（三段積み）24棟。その他、2021年には24段からなる「ラック式オートメーション貯蔵庫」が完成したことで、宮城峡蒸溜所内での貯蔵能力が大幅に増加しています。

ちなみにこの熟成庫は、周辺住民から「マンション」や「社宅」と勘違いされたほ。宮城峡蒸溜所内でも存在感のある建物なので、見学に訪れた際に確認してみてください。

 

カフェ式連続式蒸溜機

 

宮城峡蒸溜所には日本で唯一カフェ式連続式蒸溜機（Coffey Still）が備えられており、グレーンウイスキーの製造も行っています。カフェ式スチルは通常の連続式蒸溜機と比べ、低温でゆっくりと蒸溜し、穀物由来の甘みとオイリーな質感を持つ豊かな風味のグレーンウイスキーを造ることができます。

この蒸留器は1963年に西宮工場（大阪）で導入され、その後1999年に宮城峡へ移設されました。カフェグレーンの原酒はニッカウヰスキーのブレンデッドウイスキー「フロム・ザ・バレル」「ザ・ニッカ」などの、多くの銘柄に使用されています。

 

見学必須・車があった方がアクセスは便利

宮城峡蒸溜所では予約制の見学ツアーを実施しています。自然豊かな宮城峡の地で、ウイスキー造りの工程からテイスティングまで、一通り学ぶことができます。

見学時間は9:00～14:30の間。約70分のツアーとなります。（蒸溜所見学50分＋無料試飲20分）。

1～9名までの予約は前日まで。WEB予約は前日11:59、電話予約は前日16:00まで受け付けています。当日予約はできません。10年くらい前は、当日予約なしでも、少しの待ち時間でツアーに参加できました。

アクセスには、最寄り駅であるJR仙山線「作並駅」から土・日・祝日に宮城峡蒸溜所行きの無料シャトルバスが運行されています。JR仙台駅から電車で約40分、作並駅からバスで約7分くらいの時間で宮城峡蒸溜所に到着します。

作並駅から徒歩での移動は、30～40分くらいかかるためオススメできません。バスが運行しない平日は、車は必須です。

また、宮城峡蒸溜所内にはレストランがなく、周辺には食事ができるお店やコンビニすらないため、その辺もしっかりと計画しましょう。車を利用できれば、蒸溜所から15分圏内に飲食店がチラホラとあります。

 

予約なしで利用可能な施設

ビジターセンター（9:00～16:00）
ウイスキーの製造工程やニッカの歴史を学べる展示を自由に見学できます。

有料テイスティングバー（9:15～16:15 L.O.16:00）
蒸溜所限定ウイスキーを含む多彩な銘柄を試飲でき、自分でハイボールや水割りも作れます。

ギフトショップ（9:15～16:15 最終入場16:00）
蒸溜所限定のウイスキーやグッズ、お菓子などを販売しています。
ウイスキーは購入制限があります。

ウイスキー貯蔵庫（9:15～16:00）
低層貯蔵庫内で、樽の種類や熟成による色の変化を観察できる展示があります。

宮城峡が好きならぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか♪

 

宮城峡蒸留所｜ライナップ

シングルモルト宮城峡

シングルモルト宮城峡

 

シングルモルト宮城峡 グランデ

シングルモルト宮城峡 グランデ

空港免税店向け商品として2022年4月に発売開始。参考小売価格は10,000円(税抜)。

 

ニッカ カフェグレーン

ニッカ カフェグレーン

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト宮城峡を評価

シングルモルト宮城峡 ピーテッド　SINGLE MALT MIYAGIKYO PEATED

• シングルモルトジャパニーズウイスキー
• 48％　700ml
• 発売日：2021年9月28日
• 抜栓時期：2022年10月
• テイスティング時期：2025年3月
• whiskybaseでの評価：87.45/100
• 参考小売価格：22,000円(税込)
• 楽天市場価格[2025年3月]：19,000円
• Amazon価格[2025年3月]：27,800円

 

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」とは？

『シングルモルト宮城峡 ピーテッド』は、ニッカウヰスキーが展開する“NIKKA DISCOVERYシリーズ”の第1弾商品として、「シングルモルト余市 ノンピーテッド」と同時に眼底発売されたウイスキーです。

このシリーズは、2024年に創業90周年を迎えるニッカウヰスキーの伝統と革新を象徴しており、これまでにない試みで各商品が生み出されています。特に原材料や製造工程がウイスキーに与える影響に焦点を当てて造られています。

『シングルモルト宮城峡 ピーテッド』は、通常の『シングルモルト宮城峡』とは異なり、あえて「ピーテッドモルト」のみを使用することで、スモーキーさを際立たせた商品。ピートがしっかりと感じられる一方、宮城峡特有の甘み、ソフトな飲み口が絶妙に調和しています。

 

定価と価格推移

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」は、定価22,000円(税込)。1万本限定で発売されました。

限定ボトルの割には販売本数が多かったこともあり、2025年現在は、定価を下回る価格で取引されています。

 

「シングルモルト宮城峡」との違い

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」と「シングルモルト宮城峡」は、同じ宮城峡蒸溜所で造られたウイスキーですが、そのキャラクターには大きな違いがあります。

1.原料の違い
最大の違いとなるのがモルト（大麦麦芽）のピートレベル。「シングルモルト宮城峡」は、ノンピートまたはごく控えめなピート麦芽を使用しており、フルーティーで華やかな味わいが特徴ですが、「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」は、明確にピートを効かせた麦芽を使用しており、スモーキーな香りが際立っています。

2. 香りと味わいの違い
「シングルモルト宮城峡」は、洋梨やリンゴのようなフルーティーな香りに、バニラやキャラメルの甘み、ほのかにナッツのような香ばしさが感じられます。スムースで優しい飲み口が特徴。「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」は、燻した木や焚き火のようなスモーキーな香りが強く、加えてドライフルーツやスパイスのニュアンスもあり、スコッチのような複雑な個性をもっています。

香り

洋梨、青りんご、レーズン、アプリコット、マーマレード、アップルパイ、カスタードクリーム。奥底にピートを少しだけ感じますが、主体のアロマはフルーティーさと洋菓子のようにスイートな個性。

加水すると、バニラ、ハチミツ、マスカットが開きます。

 

味わい

口に含むと甘くてまろやか。すぐにピーティーでライトなスモーキ―。甘みと若干の酸味。ミディアムボディ。徐々にドライで上品なビターさ。カカオ、ピート、リンゴ。

フィニッシュにかけてもドライでスムース。余韻はやや長め。

加水後は、なめらかさが増しますが、通常の宮城峡と比べるとボディに厚みがあります。

 

評価

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」の評価としては、「少しクセある系ハイランドモルト？新しい宮城峡には賛否両論か…」です。

宮城峡は、通常「ライトリーピーテッド」で造られており、ほのかに感じるピート香は「スペイサイドモルト」を彷彿とさせる個性ですが、「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」に関しては、やはり別物と言わざるを得ないほどスモーキ―さが増しています。

ノージングの時点では、そこまでスモーキーさをはっきりと感じませんが、一口飲めばスタンダードとは全く異なる個性。宮城峡らしいフルーティーさがありながら、スペイサイドモルトというより、ハイランドモルトの個性的に似た味わいのように感じます。

具体的に似ている蒸溜所を語るのは難しい所ですが、個人的にはハイランドなら「アードモア」に近いピート感。スペイサイドなら「ベンロマック」のようなボディ厚めのスモーキ―さのように思います。

また、単にスモーキーさがあるだけでなく、ジャパニーズらしい甘みもあり、通常の宮城峡よりも全体的に飲みごたえも充実。本格的なスコッチモルトウイスキー造りを目指したマッサンの精神、ニッカウヰスキーらしい伝統を感じる１本ですね。

通常版よりも「美味しいのか？」といった、皆さんが最も気になる評価ですが、こればかりは賛否両論ではないかと思います。

なぜなら、「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」は宮城峡らしい一面があるものの、やや強めのピーテッドモルトで仕込まれているため、これまでの宮城峡とは全くの別物だからです。宮城峡が好きな方なら、飲みなれたライトリーピーテッドのスタンダードが美味しいを思ってしまうのは納得です。

かといって、「シングルモルト余市」のようなスモーキーさや重厚な味わいがある訳でもなく、正直言って「余市」と「宮城峡」、どちらが好きな方にとっても「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」はド真ん中から外れてしまっている感じもあります。

ニッカウヰスキーとしては、シングルモルトのリミテッドエディションはさほど多くありませんし、久しぶりの限定生産ボトルに期待しまくった方もいると思いますが、このウイスキーに関しては、これまでの宮城峡ではなく、新しい宮城峡として捉えるべきでしょう。

宮城峡ファンにとっては賛否両論あると思いますが、私個人としては、「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」は、これまでにないシングルモルトジャパニーズウイスキーであり、本場スコットランドのハイランドモルトに劣らないどころか、むしろ多くの銘柄よりもよくできているような印象です。仮にブラインドテイスティングでこのウイスキーを飲んだとしても、宮城峡おろかジャパニーズだと気が付く人はまずいないでしょう。

日本の蒸溜所では「ライトリーピーテッド」や「ヘビリーピーテッド」のウイスキーを造るところはありますが、その中間にあたる、少しクセが強めのシングルモルトは意外と少ないように思います。

その点で思い浮かぶのが、鹿児島県のマルスウイスキー「津貫」。2016年創業と歴史は浅いものの、何度か飲んだ印象では日本の蒸溜所の中でも明らかにスモーキーな個性を持っています。宮城峡を「クセ強めのハイランド」とするなら、津貫は「クセ弱めのアイラモルト」でしょうか…いや、なかなか例えるのは難しいですね（笑）

さて、「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」に話を戻すと、このウイスキーは宮城峡らしさを残しつつも、スタンダードとはまったく異なるタイプ。ジャパニーズウイスキー好きというよりも、むしろシングルモルトスコッチを好む方におすすめしたい1本。

宮城峡の新たな一面を感じられる、美味しく個性的なウイスキーだと思います。

 

 

 

 

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」は、従来の宮城峡とは異なる新たな挑戦を感じさせる一本でした。スモーキーでありながらフルーティーなバランスが絶妙で、ジャパニーズウイスキーの枠を超えた個性的な味わいが楽しめます。宮城峡ファンにとっては賛否が分かれるかもしれませんが、新たな発見として試してみてはどうでしょうか。

「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

 

 

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