ウイスキー用語「ま」
マッシュ(Mash)
粉砕した麦芽や穀物に温水を加え、デンプンを発酵可能な糖へ変える糖化工程、または糖化中・糖化後の仕込み液を指す言葉。
モルトウイスキーでは、粉砕した麦芽であるグリスト(Grist)をマッシュタンへ入れ、温水を加えて糖化を行う。アメリカンウイスキーでは、トウモロコシ、ライ麦、小麦、大麦麦芽などを使った穀物の仕込み全体を指して使われることも多い。
マッシュタン(Mash Tun)
麦芽や穀物を糖化するための槽。粉砕した原料に温水を加え、酵素の働きによってデンプンを糖へ分解する。
モルトウイスキーでは、糖化後に得られた甘い液体を麦汁(Wort)と呼ぶ。麦汁は熱交換器で冷却された後、ウォッシュバックへ送られ、酵母を加えて発酵させる。
マッシュビル(Mash Bill)
ウイスキーの原料に使用する穀物の配合比率。特にバーボン、ライウイスキー、ウィートウイスキーなど、アメリカンウイスキーの製造でよく使われる言葉。
バーボンはトウモロコシを51%以上使用する必要があり、残りにはライ麦、小麦、大麦麦芽などが使われる。ライ麦を多く使う配合はスパイシー、小麦を使う配合は柔らかく甘い酒質として説明されることが多いが、酵母、発酵、蒸留、熟成も最終的な香味に影響する。
マスターブレンダー(Master Blender)
ブレンデッドウイスキーの原酒選定、ブレンド設計、品質管理などを統括する責任者に用いられる肩書。
原酒の香味を評価するだけでなく、熟成在庫、樽の状態、製品ごとの品質基準、将来の原酒計画などを踏まえて、ブランドの味わいを維持・設計する。会社によって担当範囲や役職の位置づけは異なり、世界共通の資格名称ではない。
マスターディスティラー(Master Distiller)
蒸留所の製造責任者、または蒸留工程を統括する職人に用いられる肩書。特にアメリカンウイスキーの蒸留所でよく使われる。
原料選定、糖化、発酵、蒸留、熟成、品質管理などに関わる場合があるが、実際の職務範囲は蒸留所ごとに異なる。法的に定められた資格や、世界共通の役職ではない。
マチュレーション(Maturation)
蒸留した原酒を樽に詰め、時間をかけて香味を変化・発展させる熟成工程。エイジング(Aging)と近い意味で使われる。
熟成中には、樽材由来成分の抽出、蒸発、酸化、成分同士の反応などが進む。樽の材質、容量、前詰め酒、使用回数、熟成庫の温湿度、保管位置、熟成年数によって進行の仕方は異なる。
マチュリティ(Maturity)
原酒が熟成を経て、飲用や瓶詰めに適した状態へ達したことを表す言葉。日本語では「熟成の完成度」「熟成のピーク」などと説明されることがある。
熟成年数が長いほど必ずマチュリティが高いとは限らない。原酒の性格、樽の状態、熟成環境、蒸発量、樽由来の渋味などを総合して判断される評価語であり、法的な定義はない。
マデイラカスク(Madeira Cask)
ポルトガル領マデイラ島でつくられる酒精強化ワイン、マデイラの熟成に使用された樽。ウイスキーでは、通常熟成後の追加熟成やフィニッシングに使われることがある。
ハチミツ、オレンジピール、アプリコット、ナッツ、ドライフルーツ、甘いスパイスなどを連想させる香味が語られることがある。ただし、実際の影響は樽の使用履歴、容量、状態、後熟期間、原酒の個性などによって変わる。
マリッジ/マリーイング(Marriage / Marrying)
複数の原酒をブレンドまたはヴァッティングした後、一定期間なじませる工程。日本語の業界用語では「マリッジ」と呼ばれることが多く、英語ではマリーイング(Marrying)やマリッジピリオド(Marriage Period)などと表現される。
時間を置くことで、異なる原酒の香味をなじませ、味わいを安定させることを目的とする。タンク、ヴァット、樽など、使用する容器や期間は製品・生産者によって異なる。
ウイスキー用語「み」
水割り
ウイスキーを水で割る飲み方。英語ではウイスキー&ウォーター(Whisky and Water)に相当する。
日本では、食事とともに楽しむ定番の飲み方として広く親しまれている。ウイスキー、水、氷の量や順番、水温、混ぜ方によって香りや口当たりが変わるため、好みに合わせて濃さを調整できる。
ミドルカット(Middle Cut)
ポットスチル蒸留で、熟成用原酒として回収するハートの採取範囲、またはその前後の切り替え操作に関する表現。
ヘッドからハートへ、またはハートからテールへ切り替える時点はカットポイントと呼ばれる。ミドルカットはハートと近い意味で使われる場合もあるが、厳密にはハートそのものではなく、留出液の分離・選別に関する考え方として捉えると分かりやすい。
ミル/モルトミル(Mill / Malt Mill)
麦芽を粉砕し、糖化に適したグリスト(Grist)をつくる設備。モルトミルとも呼ばれる。
モルトウイスキーでは、粉砕した麦芽がハスク、グリッツ、フラワーの適切な比率になるように調整される。粉砕状態は、マッシュタンでの糖化効率や麦汁のろ過に影響する。
ミズナラ(Mizunara Oak)
日本を含む東アジアに分布するオークの一種。ウイスキー熟成用の樽材としては、一般に Quercus mongolica var. crispula がミズナラとして扱われる。
加工や製樽が難しく、液漏れの課題が語られることもある。一方で、長期熟成では白檀、伽羅、香木、ココナッツ、スパイスなどを連想させる香味が得られるとされ、ジャパニーズウイスキーを象徴する樽材の一つとして知られる。
※「ミズナラ」は、す行にも掲載する場合は、どちらかを主項目とし、もう一方はリンク参照にすると重複を避けられる。
ウイスキー用語「む」
ムーンシャイン(Moonshine)
歴史的には、アメリカで非合法に蒸留された酒を指す言葉。禁酒法時代に広く知られるようになったが、密造酒の文化は禁酒法以前から存在していた。
特に未熟成のコーン由来蒸留酒などと結び付けて語られることが多い。現代では、合法的に販売される未熟成蒸留酒の商品名やカテゴリー表現として使われる場合もある。
ムーンシャインは、ニュートラルスピリッツと同義ではない。また、ニューメイク、ニューポット、ホワイトドッグ、ホワイトウイスキーとも意味が重なる部分はあるが、歴史的・文化的な含意が異なる。
ウイスキー用語「め」
メイク(Make)
蒸留直後で、まだ樽熟成をしていない原酒を指す略称・慣用表現。「ニューメイク(New Make)」の一部として使われることが多い。
単独で「メイク」と表記されることは多くないため、用語集では「ニューメイク/ニューポット」の項目を主な参照先とする構成でよい。
ウイスキー用語「も」
モルト(Malt)
発芽させた後に乾燥させた穀物を指す言葉。ウイスキーの文脈では、通常は大麦麦芽、すなわちモルト化した大麦を意味する。
大麦を製麦してモルトにすることで、デンプンを糖へ分解する酵素が活性化する。モルトウイスキーでは、主原料として大麦麦芽が使われる。
モルトウイスキー(Malt Whisky)
主に大麦麦芽を原料としてつくられるウイスキー。詳細な定義は生産国やカテゴリーによって異なる。
スコッチのモルトウイスキーは、モルト大麦、水、酵母を原料とし、単一蒸留所でポットスチル蒸留したものがシングルモルト・スコッチウイスキーとなる。複数蒸留所のモルトウイスキーだけを組み合わせたものは、ブレンデッドモルトウイスキーと呼ばれる。
モルティング(Malting)
大麦から麦芽をつくる製麦工程。一般に、浸麦、発芽、キルン乾燥という順で行われる。
まず大麦を水に浸して吸水させ、発芽によって酵素を活性化させる。キルンで乾燥して発芽を止めたものが麦芽となる。発芽を終え、キルン乾燥前の湿った麦芽はグリーンモルト(Green Malt)と呼ばれる。
モルトスター(Maltster)
麦芽づくりに携わる職人、製麦事業者、または製麦会社を指す言葉。大規模な製麦会社を指す場合は、モルティングカンパニー(Malting Company)やコマーシャルモルトスター(Commercial Maltster)と呼ばれることもある。
現在、多くの蒸留所は専門の製麦会社から麦芽を調達している。一方で、一部の蒸留所ではフロアモルティングなどにより、自社で麦芽の一部を製造している。
モルトマン(Maltman)
製麦工程、特にフロアモルティングで大麦の管理を担う職人。吸水させた大麦を床に広げ、発芽の進行を見ながら定期的に攪拌する。
大麦の温度、湿度、発芽状態を管理し、均一な麦芽づくりを支える役割を持つ。現在は製麦工程の機械化が進んでいるが、伝統的なフロアモルティングを行う蒸留所では重要な仕事である。