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こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
「ジャパニーズウイスキーはもうブームが終わった」——そんな声を、バー業界でも耳にする機会が増えてきました。SNSでも「山崎の価格が下がった」「以前ほど話題にならない」といった投稿が目立ちます。
一方で、財務省の貿易統計を見ると、2025年のウイスキー輸出額は前年比12.2%増と堅調に伸びています。現場で感じる印象と統計データには、少なからずギャップがあるのです。
結論から言えば、現在のジャパニーズウイスキー市場は「販売量は減速している一方、輸出額は回復している」という二面性を持っています。ブームそのものが終わったのではなく、投機目的の需要が落ち着き、市場が本来の姿へと戻りつつある段階と考えるのが最も実態に近いでしょう。
世界販売量データが示すジャパニーズウイスキーの現状

アルコール市場調査会社「IWSR」が2026年6月に公表したデータによると、2025年の世界のビバレッジアルコール消費量(TBA)は前年比2%減となり、3年連続のマイナスを記録しました。
IWSRのPresident and Managing Directorであるマーテン・ロデウィクス氏は、この状況を「業界全体の大きなリセット」と表現しています。
世界的な物価上昇や生活コストの高まりを背景に、消費者は飲酒の「頻度」と「量」の両方に対して、これまで以上に慎重になっていると分析しています。
そのような市場環境の中でも、ウイスキーカテゴリー全体の世界販売量は前年比2%増と、わずかながら成長を維持しました。ただし、この成長をけん引したのはインディアンウイスキーの存在が大きく、販売量は前年比4%増に伸びています。
一方で、ジャパニーズウイスキーの販売量は前年比3%減となり、スコッチウイスキー(2%減)やカナディアンウイスキー(1%減)を上回る減少率を記録。対照的に、アイリッシュウイスキーは2%増、インディアンウイスキーは4%増と、引き続き成長を続けています。カテゴリー全体が伸びているように見えても、その内訳には明確な差が生まれているのです。
また、同じIWSRのデータでは、中国の白酒(バイジュウ)などの「ナショナルスピリッツ」を除くと、世界のスピリッツ市場全体はほぼ横ばいだったことも報告されています。つまり、ジャパニーズウイスキーの減速は単独の問題ではなく、世界の酒類市場全体が転換期を迎えている中で起きている現象といえるでしょう。

さらに、ジャパニーズウイスキーの成長鈍化については、複数の海外メディアでも報じられています。
一部の報道では、世界販売量の成長率が2024年の17%から2025年には7%まで急減速したとされ、2020~2025年の年平均成長率(CAGR)は47%に達したとも紹介されています。(これらの数値は一次資料で確認できたものではなく、現時点では複数の海外メディアによる報道をもとにした情報)
仮にこれらの数値が事実であれば、現在起きているのは「市場が縮小した」のではなく、「異常な勢いで続いていた成長が落ち着き、正常な成長ペースへ移行した」と捉えるのが適切でしょう。
むしろ、過熱したブームが一巡し、ウイスキー市場が成熟へ向かう過程と考えるほうが実態に近いと言えます。
輸出統計と実売データが食い違う理由
失速の背景①:中国市場は拡大しているが、日本産は苦戦

「中国経済の低迷でウイスキー需要そのものが落ち込んだ」と考えられがちですが、実際はそうではありません。
中国酒業協会によると、2025年の中国のウイスキー輸入量は3,584万リットル(前年比22.78%増)と大幅に増加しました。輸入額も4億4,600万米ドル(前年比1.31%減)とほぼ前年並みを維持しており、市場全体は依然として成長を続けています。
『エコノミスト』誌でも、白酒(バイジュウ)の売上が約15%減少する一方、ウイスキーだけは例外的に伸びていると報じられました。
つまり、中国市場で起きているのは需要の減少ではなく、「日本産ウイスキーの競争力低下」が要因と言えそうです。
中国市場の主役はスコッチ
ロイター通信によると、中国のウイスキー輸入額の84%を英国産スコッチが占めています。JETROの2023年統計でも、スコッチのシェアは約85.6%とほぼ同水準で、日本産はもともと限定的なシェアしかありません。
さらに2026年には、中国政府がウイスキーの暫定輸入関税を10%から5%へ引き下げました。
輸入市場の大半を占めるスコッチウイスキーにとっては大きな追い風となる一方、日本産ウイスキーは相対的に価格競争力を失う形となります。
中国産ウイスキーも台頭

競争相手はスコッチだけではありません。
近年は中国国内でも、ウイスキー蒸留所の建設が相次ぎ、ディアジオも雲南省で大型蒸留所を建設しています。現地生産が拡大することで、中国市場は「輸入ウイスキー同士の競争」から「輸入品と国産品の競争」へ移りつつあります。

中国の巨大蒸留所は、たった1か所で日本全国の蒸留所に匹敵する生産能力を持つともいわれています。スケールの違いには驚かされるばかりです…
二次流通価格にも変化

この変化は日本国内にも波及しています。
日経アジアによると、「山崎18年」の買取価格は2024年前半の14万8,000円から後半には12万8,000円へ下落し、「白州12年」も3万3,800円から2万2,800円まで値下がったとのこと。
また、2023年には中国向け日本産ウイスキー輸出額が前年比35.9%減少しており、中国経済の減速に加え、ALPS処理水放出に伴う日本産食品への警戒感も影響したと考えられています。
現在の中国市場は、需要が消えたわけではありません。投機需要という追い風がなくなり、スコッチや中国産ウイスキーとの本格的な競争が始まった、と見るのが実態に近いでしょう。
バーテンダー視点で見るジャパニーズウイスキー市場

BAR WHITE OAKを経営する私自身も、日々の仕入れを通して市場の変化を実感しています。
2026年現在、山崎や白州のスタンダードボトルは、2~4年前と比べると定価で仕入れられる機会が明らかに増えました。もちろん、山崎25年のような希少ボトルは依然として入手困難ですが、12年やノンエイジについては以前ほど「まったく入荷しない」という状況ではなくなっています。
SNSを見ても、「山崎が買えない」という投稿より、「定価で見つけた」「普通に店頭に並んでいた」といった報告を目にする機会が増えました。一方で、「プレミア価格では売れ残っている」といった投稿も見かけるようになり、市場の空気が変わりつつあることを感じます。
しかしこれは、ジャパニーズウイスキーの人気がなくなったということではありません。
これまで市場を押し上げてきた投機や転売目的の需要が落ち着き、本当に飲みたい人、本当に価値を理解している人が購入する市場へと戻りつつあるのではないでしょうか。
バーテンダーとしては、その変化を前向きに捉えています。
本当においしいウイスキーは、価格や希少性だけで評価されるものではありません。グラスに注がれ、その香りや味わいを楽しんでこそ価値があります。
ジャパニーズウイスキー市場は今、「ブームの終わり」ではなく、「本当の価値が試される時代」の入口に立っているのかもしれません。
企業動向と今後の展望

ジャパニーズウイスキー市場は調整局面にありますが、大手メーカーの動向を見ると、「人気の低下」と単純に結論づけることはできません。
サントリーの2025年12月期決算資料では、「山崎」「響」「角瓶」「サントリーウイスキー 季(TOKI)」の販売数量はいずれも前年を上回ったと報告されています。一方で、スピリッツ事業全体の売上収益は前年を下回っており、数量は伸びているものの、金額ベースでは厳しい状況が続いていることがわかります。
これは、販売価格や商品構成、市場環境の変化などが影響し、「売れている=業績が大きく伸びている」という単純な構図ではなくなっていることを示しています。
一方で、品質に対する国際的な評価は依然として非常に高い水準を維持しています。
2025年9月にロンドンで開催された「International Spirits Challenge(ISC)2025」では、「山崎18年」が全部門最高賞となる「Supreme Champion Spirit」を受賞しました。
山崎ブランドは、2023年の「山崎25年」、2024年の「山崎12年」に続き、3年連続で最高賞を獲得しています。これはISC史上初の快挙であり、ジャパニーズウイスキーの品質が世界トップクラスであることを改めて証明した出来事と言えるでしょう。

ニッカウヰスキーも好調です。
飲料業界誌『Drinks International』が発表した「Brands Report 2026」では、「Best Selling Brands」と「Top Trending Brands」の2部門で2年連続の受賞を果たしました。
また、「ニッカ フロム ザ バレル」は世界のバーの約3軒に1軒で定番商品として採用されているとされており、海外のプロフェッショナルからも高い支持を集めています。
こうした国際的な評価を見る限り、「ジャパニーズウイスキーのブームは終わった」という見方には当てはまらない部分も少なくありません。
世界市場では競争がさらに激化する
一方で、今後の市場環境は決して楽観できません。
2026年7月15日には、英国とインドの包括的経済貿易協定(CETA)が正式に発効し、インドのスコッチウイスキーに対する輸入関税は150%から75%へ即時引き下げられました。さらに今後10年間で40%まで段階的に引き下げられる予定です。
現地報道では、州税や物品税などの負担が残るため、小売価格への反映には時間がかかるとの見方もあります。しかし、世界最大級のウイスキー市場であるインドにおいて、スコッチの価格競争力が大きく向上することは間違いありません。
さらに中国でも、ウイスキーの輸入関税引き下げによってスコッチが追い風を受けています。
つまり、今後は中国とインドという世界有数の成長市場の両方で、ジャパニーズウイスキーはスコッチとの競争がこれまで以上に激しくなる可能性があります。
求められるのは「ブランド力」から「実力」へ

これまでジャパニーズウイスキーは、「希少だから売れる」「価格が上がるから買う」という投機的な需要にも支えられてきました。
しかし、これからはそうした時代ではありません。
世界市場ではスコッチや新興国産ウイスキーとの競争が激しくなり、国内でも新しい蒸留所が次々と個性ある製品を投入しています。
だからこそ、今後のジャパニーズウイスキーに求められるのは、「ジャパニーズだから売れる」というブランドイメージではなく、品質や個性、ストーリーによって選ばれることです。
市場はブームの終焉ではなく、本当の実力が問われる新たな競争の時代へと入りつつあると言えるでしょう。
まとめ

ジャパニーズウイスキー市場は「正常化」の局面
「ジャパニーズウイスキーのブームは終わった」と言われることもありますが、実際には市場が崩壊したわけではありません。販売量は減速する一方で、輸出額は回復しており、投機需要が落ち着いて本来の市場へ戻りつつあります。
中国市場と世界市場の変化
中国のウイスキー市場は成長を続けていますが、日本産はスコッチや中国産ウイスキーとの競争が激化しています。世界全体でも販売量の伸びは鈍化しており、市場は転換期を迎えています。
人気は続くが、求められるものは変わる
山崎や白州のプレミア価格は調整されていますが、輸出や国際的な評価は依然として高水準です。今後は「ジャパニーズだから売れる」のではなく、品質や個性、ブランド力がこれまで以上に重要になるでしょう。
ブームが落ち着いた今、ジャパニーズウイスキーは「ジャパニーズだから売れる」時代を終え、本当の実力が試される新たなステージへと入りました。まさに、ジャパニーズウイスキー戦国時代の幕開けと言えるでしょう。

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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参考出典
1. IWSR「IWSR: Global Alcohol Market Shrinks for Third Consecutive Year」vino-joy(2026年6月18日)
https://vino-joy.com/2026/06/18/iwsr-global-alcohol-market-shrinks-for-third-consecutive-year/
2. 「Global alcohol consumption fell for a third straight year in 2025」Vinetur(2026年6月11日)
https://www.vinetur.com/en/20260611102523/global-alcohol-consumption-fell-for-a-third-straight-year-in-2025.html
3. ジャパニーズウイスキーインフォメーションセンター(JWIC)「ジャパニーズウイスキー輸出状況について【2025(令和7)年12月度】」https://jwic.jp/img/202512_whisky_statistical_data.pdf
4. Courrier Japon「中国で”ウイスキー”だけが売れている」(『エコノミスト』誌引用)
https://courrier.jp/news/archives/444038/
5. ロイター「中国、ウイスキー輸入関税を5%に引き下げ 英国に追い風」(2026年1月30日)
https://jp.reuters.com/markets/japan/UKFYXYGTZZIVLDMLF772NFHTZI-2026-01-30/
6. 中国国務院関税税則委員会「威士忌酒進口関税調整に関する公告(税委会公告2026年第1号)」(2026年1月30日)
https://finance.sina.com.cn/jjxw/2026-01-30/doc-inhkaqpm0609713.shtml
7. スコッチウイスキー協会(SWA)「Tariff on Scotch Whisky to China halved to 5%」(2026年1月29日)
https://www.scotch-whisky.org.uk/newsroom/tariff-on-scotch-whisky-to-china-halved-to-5/
8. JETRO「輸出品目別レポート(ウイスキー)」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/industry/foods/item/24.pdf
9. JREF「Japan’s whisky boom losing steam as demand from China declines」(日経アジア報道引用)
https://jref.com/threads/japans-whisky-boom-losing-steam-as-demand-from-china-declines.759443/
10. マイナビニュース「山崎25年の買取価格はどう変わった?鑑定士に聞く」
https://news.mynavi.jp/article/premium-HflxYFDI/
11. 日本経済新聞(nikkei4946)「ウイスキー製造免許・蒸留所数の推移」
https://www.nikkei4946.com/knowledgebank/visual/detail.aspx?value=279&page=3
12. マイナビニュース「三郎丸蒸留所・稲垣貴彦社長インタビュー」
https://news.mynavi.jp/premium/article/20250413-3147824/
13. サントリーホールディングス「2025年12月期決算コメント」
https://www.suntory.co.jp/company/financial/pdf/comment_202512.pdf
14. サントリー公式サイト「山崎18年がISC2025で全部門最高賞を受賞」(2025年9月25日)
https://www.suntory.co.jp/news/article/14905.html
15. Drinks International「Brands Report 2026: World whiskies」
https://drinksint.com/news/fullstory.php/aid/12139/Brands_Report_2026:_World_whiskies.html
16. Vinetur「India Cuts Scotch Whisky Tariffs to 75% Under New U.K. Trade Pact」(2026年7月13日)
https://www.vinetur.com/en/20260714104236/india-cuts-scotch-whisky-tariffs-to-75-under-new-uk-trade-pact.html












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