

こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
富士山の麓、広大な自然の中に佇む「キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所」。1973年の創業以来、スコッチ、バーボン、カナディアンという世界のウイスキー技術を融合させた独自のスタイルでウイスキーを生産しています。
昨今のジャパニーズウイスキーブームの中で、現行のジャパニーズウイスキー「富士」シリーズが注目を集めていますが、かつて、この蒸溜所の実力を世界に知らしめた伝説のボトルが存在したことをご存知でしょうか。それが、2015年に惜しまれつつも終売となった「キリン 富士山麓 シングルモルト 18年」です。
この記事では、富士御殿場蒸溜所の歴史と製法の背景、すでに終売となった「キリンウイスキー 富士山麓 シングルモルト 18年」のテイスティングレビューし、現在の価格・評価までを徹底的に解説します。
キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所とは?

オーナー: キリンディスティラリー(キリンホールディングス)
創業年:1973年
所在地:静岡県御殿場市柴怒田970番地
公式HP:https://www.kirin.co.jp/experience/factory/gotemba/
富士御殿場蒸溜所は、1972年にキリンビール、シーグラム社、シーバスブラザーズ社の三社合弁企業によって設立されました。(旧名 キリンシーグラム御殿場工場)。
実際に本格的な生産がスタートしたのは翌年の1973年。良質な富士山の伏流水に恵まれ、ウイスキーの熟成に適した冷涼で湿潤な気候であることから富士御殿場の地が選ばれました。

仕込み水は地下100メートルの深井戸から汲み上げた、硬度55㎎の軟水。富士の伏流水。本場スコッチの目利きのプロであるシーバスリーガル社が成分を分析し、お墨付きをもらったウイスキーにとって良質な水です。
この仕込み水は富士山に降り注いだ雨水が地層にしみ込み、50年にも及ぶ長い期間を経て「ろ過」されたものが採取されています。富士御殿場は、富士山という名の「超巨大な浄水器」からの天然水を得ることのできる、ウイスキーにとっての理想郷といえる場所なのでしょうか。
富士御殿場蒸溜所にはカナダのシーグラム社により、グレーンウイスキーづくりのノウハウも活かされています。シーグラム社の特性マルチカラム。さらにバーボンの製造に用いられるラバーやケトルを採用。三つの蒸留器を使い分けることで、「ライト」「ミディアム」「ヘビー」といった3タイプの原酒を造り分けています。生み出されるグレーンウイスキーは世界的にも高く評価されています。
また、モルトウイスキーではスコッチの名門シーバスブラザーズ社の製造技術が採用されています。ウイスキーを生み出すキーマン「ポットスチル」は、シーバス傘下のストラスアイラ蒸留所に似た形状を採用。スペイサイドのようなクリーンで華やかなタイプのモルトを生産しています。

ポットスチルは全部で6基。初留器がストレート型2基、ランタン型2基。再留器はバルジ型2基。全て三宅製作所製。その他、旧蒸留器が2基ありますが、こちらは稼働を停止しています。見学コースを体感型にする際に、蒸留器を間近で体感してもらいたいとの思いから、2003年からウイスキーの蒸留はしていません。
富士御殿場蒸留所は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を生産している、世界でも数少ない複合蒸留所。日本国内ではグレーンの製造も始めている蒸留所が増えていますが、富士御殿場蒸留所がパイオニアといって間違いありません。
2015年に「富士山麓シングルモルト18年」が終売となってからは、しばらくシングルモルトやシングルグレーンを定番リリースしていませんでしたが、2020年からは自社原酒のみで構成されたウイスキーブランド「富士」シリーズをリリース。
そして2022年には、富士御殿場蒸留所のモルトとグレーンのブレンデッド「キリン シングルブレンデッド ジャパニーズウイスキー 富士」を発売。一つ蒸留所の原酒のみで構成されたブレンデッドウイスキー「シングルブレンデッド」という表記を初めて採用した銘柄として話題になりました。

富士御殿場蒸溜所の特徴的な部分の一つとして、樽詰めの際のアルコール度数が「50度」であることが挙げられます。一般的なウイスキー蒸留所の樽詰め度数は63度(スコッチでは63.5度が基本)。50度というのはかなり低いアルコール度数です。
この設定は富士御殿場の熟成環境と、18段の高層ラック式のウェアハウスが影響しているため。熟成が穏やかに進み、ボトリングの際にほとんど加水しなくても済むというメリットがあり、原酒本来の味わいをダイレクトに活かすことができます。世界でも類を見ないアルコール50%での樽詰めは、富士御殿場蒸留所の強いこだわりであり、蒸溜所の個性的を活かすウイスキー造りに欠かせない製法となっています。
主なラインナップ

キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士
カテゴリー: シングルモルト
特徴:キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士は、多彩なモルト原酒が絶妙に調和し、果実味あふれる芳醇な味わいを堪能できる一本。2023-2024年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)でゴールドメダルを受賞。完熟りんごやクリームブリュレの甘い香りが香り立ち、口に含むと熟した白桃とフルーツタルトの芳醇な風味が広がります。フィニッシュには、甘く複雑な熟成感が心地よく長く続き、ウイスキーの深みを感じさせます。
キリン シングルグレーンジャパニーズウイスキー 富士
カテゴリー: シングルグレーン
特徴:キリン シングルグレーンジャパニーズウイスキー 富士は、グレーン原酒をベースに、甘く華やかで複層的な味わいを楽しめる一本です。2020-2024年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)でゴールドメダルを受賞。ラズベリーやオレンジマーマレードのフルーティな香りとともに、パウンドケーキの甘い香りが広がります。口に含むと、白ブドウやオレンジピールの風味が複層的に感じられ、ほのかな甘さとウッディさ、スパイシーさが余韻として続きます。
キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士
カテゴリー: シングルブレンデッド
特徴:キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士は、モルト原酒とグレーン原酒が絶妙にブレンドされ、華やかで調和の取れたシルキーな味わいが特徴のウイスキーです。2023-2024年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)でゴールドメダルを受賞。ピーチやアプリコット、オレンジリキュールの華やかな香りがトップノートとして香り立ちます。シルキーで上品な甘い風味が口に広がり、洋梨タルトやハチミツのような香りが余韻として続きます。
【ジャパニーズウイスキーレビュー】キリン 富士山麓シングルモルト18年(終売)を評価

キリン 富士山麓シングルモルト18年
Kirin Fujisanroku Single Malt 18 Year Old
- シングルモルトジャパニーズウイスキー
- 43% 700ml
- 抜栓時期:2022年12月
- テイスティング時期:2026年1月
- whiskybaseでの評価:85.49/100
- 楽天市場価格[2026年1月]:48,500円 送料別
- Amazon価格[2026年1月]:在庫なし
キリン 富士山麓シングルモルト18年とは?

「キリン 富士山麓シングルモルト18年」は、ジャパニーズウイスキーの歴史において、キリンの持つ独自の蒸留技術と熟成理論が完璧な調和を見せた、一つの到達点と言える名作です。2015年に惜しまれつつ終売となりましたが、その魂は現在の「富士」ブランドや「富士山麓 シグニチャーブレンド」へと受け継がれています。
富士山麓18年は「シングルモルト」と「ブレンデッド」の2種類がある
富士山麓ブランドには「シングルモルト18年」と「ブレンデッド18年」の2種類が存在していました。
「シングルモルト18年」は、富士御殿場蒸留所のモルト原酒のみを使用した、シングルモルトジャパニーズウイスキーです。「ブレンデッド18年」は、モルトに加え18年以上熟成させたグレーン原酒をブレンド。海外原酒使用の有無は不明。「シングルモルト18年」と同じく、2015年に販売が終了し、それ以降は限定ボトルとして2016年・2018年などにリリースされています。
国際的な評価と終売後の市場価格
「キリン 富士山麓シングルモルト18年」は、2014年にインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)で金賞を受賞した際、審査員からは「洗練されたバランスと、他に類を見ないクリーンさ」が高く評価されました。
しかし、当時加速していたジャパニーズウイスキーブームによる原酒不足、そしてブランド戦略の再編により、2015年5月をもって販売終了。現在、市場で見かけることは極めて稀であり、オークションやコレクターズ市場では、当時の定価を遥かに上回る価格で取引されています。
- 定価:15,000円前後(オープン価格のため詳細不明)
- 楽天市場価格(2026年1月時点):48,500~55,000円
- ヤフーオークション価格(2025年9月落札):25,874円
香り
洋梨、レーズン、ドライアプリコット、ドライアップル、ドライパイン、ドライフラワー、イチジク、青りんご、石油製品、アーモンド、シナモン、ブランデーケーキ、シリアル、キャラメルポップコーン。
加水すると紅茶のリキュール、はちみつ、メープルシロップ。
味わい
甘くてまろやか。ミディアムボディ。バニラ、ドライフルーツ、ナッツの香ばしい風味。奥にはメープルシロップやキャラメル。穀物と樽香が混じりあった個性は、グレーンウイスキーに似ています。中盤以降はドライでオイリー。フィニッシュにかけては穏やかなスパイスと紅茶、葉巻のような熟成感。余韻の長さは中程度。
加水後も甘さがあり、クリーミーで心地よいバランス。加水に対しての強さもあります。
評価

「キリン 富士山麓シングルモルト18年」の評価としては、「富士御殿場蒸溜所の傑作!現行品では味わえない、厚みのあるシェリー感と深遠なエステリーさが共存する至高のシングルモルト」です。
一般的に「富士山麓」というブランドにはブレンデッドウイスキーのイメージが先行しますが、「キリン 富士山麓シングルモルト18年」は、かつての蒸溜所を象徴するフラッグシップの一つでした。18年以上の長期熟成原酒の確保が困難になったことで、惜しまれつつも終売となりましたが、その圧倒的なクオリティは、同蒸溜所が持つモルトウイスキーのポテンシャルを後世に語り継ぐ、極めて希少価値の高い1本といえます。
スペックを超えた個性:シェリーカスク由来の官能的アロマ
現在、富士御殿場蒸溜所のシングルモルトは「シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士」のみとなっています。しかし「シングルモルト ジャパニーズウイスキー 富士」はノンエイジ(NA)ボトルであり、18年熟成という重厚なスペックを持つこのボトルは、現在の定番ボトルと単純に比較はできないでしょう。
特筆すべきは、シェリーカスク(シェリー樽)由来の風味。現行の「富士」には見られないこの個性が「キリン 富士山麓シングルモルト18年」には鮮明に刻まれています。
富士御殿場のモルトやグレーンは、その多くがバーボン樽で熟成されます。しかし、この18年からは、シェリー樽由来のドライフルーツを思わせる濃密な風味、そして甘みとタンニンの絶妙なバランスを感じます。公式な構成原酒の詳細は明かされていませんが、長期熟成のプレミアムボトルという位置付けを鑑みても、シェリー樽原酒の配合比率を高め、重厚感を演出していることは想像に難くありません。(もしこれでシェリーカスクを使ってなかったら…どうしよう 笑)
バーボン樽の力強さと「クリーン&エステリー」の相克
もちろん、際立っているのはシェリー樽の個性だけではありません。バーボン樽由来の芳醇なバニラや、穀物感のある芳ばしいアロマもしっかりと液体の骨格を支えています。
特筆すべきは、バーボンや高品質なグレーンウイスキーに共通して見られる、石油製品や接着剤を連想させる独特のニュアンスが存在することです。これはウイスキー用語で「エステリー」と称されるアロマの一種。樽から溶け出した成分が、長期間の熟成による化学反応(エステル化)を経て変貌を遂げた姿であり、「フルーティー」や「フローラル」といった華やかな香りもこのエステルの一群に属します。
シングルモルトでありながら、なぜバーボンやグレーンのような力強いエステリーさを感じるのか。その鍵を握るのは、富士御殿場蒸溜所のこだわりである、樽詰めアルコール度数「50度」にあるかもしれません。
一般的な蒸留所よりも低い度数で樽詰めを行うことで、熟成が穏やかに進み、ボトリングの際にもほとんど加水を必要としません。その結果、原酒本来のエネルギーが薄まることなく、ダイレクトにボトルへと封じ込められているのです。
「キリン 富士山麓シングルモルト18年」は、新樽(バージンオーク)熟成を思わせるような力強くエネルギッシュなエステリーさと、シェリーカスク由来の官能的な個性が高次元で混ざり合うことで、他の追随を許さない複雑な味わいを構築しています。
緻密なブレンドがもたらす調和と、終売の背景
シェリー樽とバーボン樽、これら相反するほど強力なふたつの個性を高い次元で融和させたモルトウイスキーは、決して多くありません。
特に18年以上の熟成となれば、原酒の主張も激しくなるため、双方のバランスを整えるには膨大なストックの中から「適格な原酒」を選び出すことに加え、緻密なブレンディング技術も要求されます。こうした高難易度な選定基準と原酒不足こそが、このウイスキーを終売へと向かわせた要因かもしれません。
かつて蒸溜所見学の際に試飲した「富士御殿場蒸溜所 シングルモルト 17年」(2015年にDRINX等で限定発売された定価21,600円のボトル)と比較しても、その差は歴然です。17年の方はシェリー感よりもエステリーでスムースな味わいが際立っており、アイリッシュウイスキーにも似た、オイリーでユニークな個性がありました。
この比較から導き出されるのは、「富士御殿場のモルトは、酒齢を重ねるほどに劇的に個性が開花する」という事実。現行の「シングルモルト ジャパニーズウイスキー 富士」が持つ、洗練された万人に親しみやすいスタイルも魅力的です。しかし、それとは一線を画す「キリン 富士山麓シングルモルト18年」の重層的で深遠な個性は、他の蒸留所では決して味わえない唯一無二の存在感を放っています。
至福のひとときを演出する飲み方
最後におすすめの飲み方について。 「キリン 富士山麓シングルモルト18年」は、加水による変化もまた見事。劇的な変貌を遂げるというよりは、香り・味わい・余韻のすべてが高い水準を維持したまま、より芳醇に開いていく印象。
熟成樽からもたらされるリッチな風味と、蒸溜所が理想に掲げる「クリーン&エステリー」な精神が、これほどまでに見事に融合した例は他にありません。ストレートでその深淵に触れるのはもちろん、ロックや水割りにおいても、その気品ある骨格が崩れることはなく、最後まで贅沢な余韻を堪能させてくれるでしょう。

「キリン 富士山麓シングルモルト18年」は、単なる過去の銘柄ではありません。その「クリーン&エステリー」な精神と熟成のピークを見極める哲学は、現在の「富士」ブランドや「シグニチャーブレンド」の中にも脈々と息づいています。
現行の「シングルモルト 富士」が示す洗練された親しみやすさと、この「18年」が放つ重層的で深遠な個性。両者を知ることで、富士御殿場蒸溜所が歩んできた進化の軌跡をより深く理解できるはず。
終売から月日が流れ、出会える機会はますます少ない状況です。「キリン 富士山麓シングルモルト18年」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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