【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト余市ノンピーテッド2021を評価

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」は、ニッカウヰスキーの新たな挑戦を感じさせる特別なウイスキーです。「NIKKA DISCOVERY」シリーズの第一弾として、原料モルトの新たな一面を引き出すべく、ピートを使わずノンピーテッドモルトのみを使用して生み出されています。

この記事では、隠れた魅力を引き出した限定ボトル「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」のテイスティングレビューを中心に、ボトルの評価や価格推移についても詳しくご紹介いたします。

 

余市蒸留所(Yoichi Distillery)とは?

余市蒸溜所

  • オーナー:ニッカウヰスキー
  • 創業年:1936年
  • 所在地:北海道余市郡余市町黒川町7丁目6

ニッカウヰスキーの聖地「重要文化財」に指定

余市蒸留所(Yoichi Distillery)は、北海道にあるニッカウヰスキーの本拠地であり、日本のウイスキー業界において非常に重要な存在です。この蒸留所は、創業者である竹鶴政孝氏によって1940年に設立され、日本のウイスキー文化の礎を築いた場所としても知られています。

竹鶴政孝氏は、スコットランドのウイスキーの聖地、スぺイサイドで学び、ウイスキー作りの技術を習得した後、日本に帰国。ニッカウヰスキーの前身となる「大日本果汁株式会社」を設立し、ウイスキーの製造に乗り出しました。余市蒸留所は、その出発点として選ばれました。

竹鶴氏が余市を選んだ理由は、スコットランドの気候に似た環境があるから。冷涼で湿度が高く、温度差が大きいこの地域は、ウイスキー熟成に最適な環境として理想的でした。

2021年11月に、建造物10棟が「重要文化財」に指定されることが発表されました。これまで登録有形文化財や余市町指定文化財に指定されていた「旧事務所」「蒸溜棟」「貯蔵棟」などに加え、「第二貯蔵庫」を含む計10棟が含まれています。

歴史と創設者「竹鶴政孝」

余市蒸溜所は1934年、竹鶴政孝によって北海道余市町に設立されました。竹鶴氏は日本で“ウイスキーの父”と呼ばれる人物で、スコットランドで学んだ本格的なウイスキー製造の技術を日本に導入しました。

余市が選ばれた理由は、その自然条件にあります。スコットランドに似た冷涼な気候、清らかな水源、そしてピート(草炭)や石炭といった製造資源が豊富であることが、竹鶴氏の理想とするウイスキーづくりに適していたのです。

余市蒸溜所は、日本海と山々に囲まれた北海道余市町に位置しており、ウイスキーの製造や熟成に最適な環境を備えています。余市川から得られる清らかな雪解け水は軟水で、ウイスキーに柔らかい口当たりをもたらします。

また、この地域の冷涼な気候は四季ごとの寒暖差を通じて、ウイスキー熟成がゆっくり進むことにより、複雑で奥深い風味を生み出します。さらに、海風や川霧によって運ばれる湿潤な気候は、ウイスキーの樽熟成に最適な湿度を提供。

これらのウイスキー造りに適した環境が、余市ならではのスモーキーで重厚な味わいを支えています。

石炭直火蒸溜

余市蒸溜所の最大の特徴は、世界的にも希少な「石炭直火蒸溜」を採用していることです。ポットスチル(蒸溜器)の下部に石炭を直接くべて加熱するこの方法は、管理が非常に難しい一方で、個性的なモルト原酒を生み出します。

余市のモルト原酒は、力強く重厚な味わい。スモーキーな香りと相性が良く、ヘビーピーテッドタイプのモルト原酒は余市蒸溜所の基本的なスタイル。バーボン樽の他、新樽(バージンオーク)の熟成も行い、ウッディな香りやバニラの香りを備えながらも、原酒本来の重厚さを失わないバランスの取れた味わいに仕上げています。

ポットスチルは竹鶴氏がスコットランドで学んだ、直系のストレートヘッド型を採用。下向きのラインアームを持つ設計は、重厚で濃厚な蒸留液を得るための工夫が施されています。

世界的評価

余市蒸溜所のウイスキーは、国際的な品評会で多くの賞を受賞しており、日本のウイスキーが世界的に認知されるきっかけを作りました。特に「ニッカ シングルカスク余市10年」が「ワールド・ウイスキー・アワード」で世界一に選ばれたことで、その品質の高さが広く知られるようになりました。

主なラインナップ

シングルモルト余市

フラッグシップボトル。ピート香とスモーキーさを前面に押し出しつつ、フルーティーなアロマが引き立つ一本。

シングルモルト余市10年

2022年11月にリニューアル。熟成を重ねた余市モルトならではの力強く重厚な味わい。ピーティーで燻製を思わせる風味とコク深い余韻。

シングルモルト余市 グランデ

2022年3月にリリースされた国内の空港免税向け商品。余市の特徴である力強さと厚みを、ヘビーピートモルト原酒と新樽熟成モルト原酒によってさらに引き出したウイスキー。

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト余市ノンピーテッド2021を評価

シングルモルト余市ノンピーテッド2021
Single Malt Yoichi Unpeated 2021

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シングルモルト余市ノンピーテッド2021とは?

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」は、ニッカウヰスキーが2021年9月に発売した数量限定のウイスキーで、2024年に創業90周年を迎えるニッカの新シリーズ「NIKKA DISCOVERY」の第1弾として登場しました。販売本数は1万本限定(国内向け)です。

この「NIKKA DISCOVERY」シリーズは、ニッカウヰスキーが保有する多様な原酒や製造工程に焦点を当て、ウイスキーの多様性、奥深さ、そして意外性を「発見する」ことをテーマにしています。

パッケージには「余市」のロゴが大きく配置され、シングルモルトであることを強調。通常のスモーク瓶ではなく、透明な瓶を採用することで、ウイスキー本来の個性がより鮮明に表現されています。

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」の最大の特徴は、ピートを使用せず、ノンピーテッドモルト原酒のみで作られている点です。これにより、余市モルトに隠れていたフルーティーでやわらかな果実味や、なめらかでコクのある甘さが引き出されています。スモーキーさの代わりに、ベリー、洋ナシ、リンゴのような甘酸っぱさと、しっかりとしたモルトのコク、華やかなフルーティーな余韻が感じられます。

余市ならではの特徴的な風味に、ノンピーテッドモルト原酒による新たな香味が加わり、これまでにないバランスの取れた味わいを楽しめる特別な1本となっています。

定価と価格推移

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」の定価は、22,000円(税込)。販売当初は、一時的に5万円台にまで高騰しました。その後、市場価格は落ち着き、2025年12月時点では、26,000~40,000円程で取引されています。

香り

青りんご、洋ナシ、かりん、バニラ、ドライアプリコット、いちじく、バターケーキ、ヨーグルト、アーモンド、モルトスナック。

加水すると、マスカットグミ、パパイヤ、ドライマンゴー、スイカ味のキャンディー。

 

味わい

甘くてフレッシュ。すぐにドライで清涼感のあるフルーティーさが広がります。ミディアムボディ。スムースでクセのない味わい。フィニッシュにかけては、かすかにスパイシーで香ばしい風味もありますが、ピートによるスモーキーさはありません。

加水後はまろやかになり、変わらずドライ&スムースな印象。

 

評価

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」の評価としては、「まるで違う!余市蒸留所の隠れた魅力を引き出した、実験的かつ挑戦的なウイスキー」です。

「NIKKA DISCOVERY」シリーズの第1弾として限定発売された希少なボトル「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」。このウイスキーの試みをわかりやすく表現すると、「余市」と「宮城峡」における原料モルトの交換。つまり、余市蒸留所では宮城峡由来のノンピートモルトを使用し、宮城峡蒸留所では余市のピーテッドモルトを用いるという、通常とは逆の仕込みが行われました。こうした実験的な試み自体は、これまでも内部的には行われていた可能性がありますが、実際に商品として世に出たのは本作が初めてと考えてよいでしょう。

率直な第一印象は、「余市でありながら、余市らしさを感じさせない不思議なシングルモルト」。スモーキーフレーバーが一切存在しないため、余市らしくないのはもちろん、かといって宮城峡に似ているわけでもなく、どちらにも属さない独特の個性を備えています。このボトルは、ピートがウイスキーのキャラクター形成にどれほど大きな影響を与えているかを、改めて実感させてくれる1本です。

香りはエステリーでフレッシュなフルーツが主体。加水すると、ややトロピカルフルーツ寄りのジューシーなニュアンスも。一方で、ピーティーさがない分、アロマの幅や複雑さという点ではやや物足りない印象。口当たりはクセがなくスムースで、全体にアロマティック。熟成樽はバーボン樽主体と思われますが、バニラの主張は控えめで、かすかなソルティーさと麦芽由来の香ばしさが残ります。

「シングルモルト余市」に見られるスモーキーさやピーティーさ、重厚なボディとは方向性が異なり、全体としてスムース&ソフト。原料由来の麦汁の個性が前面に感じられる点は、まさに本作のコンセプト通りと言えるでしょう。

ただし、余市の代名詞とも言えるフレーバーが意図的に抑えられているため、「余市らしくない味わい」になっているのも事実。コンセプトを理解したうえで評価するか、ウイスキー単体としてフラットに見るかで、好みが分かれるところです。

ポジティブな要素として特に印象的なのは、加水後のフレーバーの変化。マンゴーやパパイヤ、ココナッツ系シロップ、さらにはヨーグルトを思わせるニュアンスが現れます。これらは主に酵母由来の香味だと思われますが、通常の余市ではピートの存在感に押され、あまり表に出てこない要素です。

個人的には、余市の持つ控えめながら芯のあるスモーキーさと重厚感、そして「余市10年」に見られるシェリーカスク由来のリッチでフルーティーな個性を好んでいます。そのため、「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」を飲んだ本音としては、「美味しいけどなんか違う」といったもの。ただし、余市蒸留所の造る「原酒の一部」と割り切るなら、このウイスキーは十分に評価できる味わいだとも感じます。

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」は、こうした余市に潜んでいたアロマを可視化したウイスキーとして、非常にユニークで意義深い1本だと言えるでしょう。

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「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」は、余市蒸留所が持つ原酒の新たな可能性を見せてくれる、挑戦的でユニークなウイスキーです。ピートを使用しないことで、余市の新たな側面が引き出され、その独自のフルーティーさや滑らかな甘さが際立っています。

余市の従来のイメージに縛られることなく、ファンに新たな発見をもたらすでしょう。実験的な仕込みが形となり、今後のウイスキー文化における新しい潮流を感じさせるこの1本を、ぜひ試してみてください。

「シングルモルト余市ノンピーテッド2021」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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