【バーボンウイスキーレビュー】フォアローゼズ ブラックを評価

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

「フォアローゼズ ブラック」は、日本市場向けに特別に作られたバーボンウイスキーで、その豊かな香りと繊細な味わいが多くのウイスキー愛好者に愛されています。アメリカ・ケンタッキー州の名門、フォアローゼズ蒸留所から生まれたこのウイスキーは、オーク樽で熟成されたことで、スパイシーかつフルーティーな風味が広がります。

この記事では、「フォアローゼズ ブラック」の魅力をテイスティングレポートを元に紹介し、さらにフォアローゼズ蒸留所の歴史や製法のこだわりについても詳しく解説します。また、現在噂されている売却の可能性が日本市場に与える影響についても触れていきます。

 

フォアローゼズ蒸留所(Four Roses Distillery)とは?

出典:By Fourroses – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8433732

フォアローゼズ蒸留所(Four Roses Distillery)は、アメリカ・ケンタッキー州ローズタウン(Lawrenceburg)に位置する、伝統的なバーボンウイスキーの蒸留所で、その革新的な製法とこだわり抜かれた品質で世界中に名を馳せています。バーボンウイスキーの深い魅力と豊かな風味を持つフォアローゼズは、そのユニークな歴史と技術的なアプローチによって、他の蒸留所とは一線を画しています。

フォアローゼズ蒸留所の歴史

フォアローゼズは、1865年に創業者ポール・ジョーンズJr.氏が、父親とともにアトランタでバーボン造りを開始したことに始まります。初期からそのウイスキーは好評を博し、1888年にはフランクフォート蒸留所を買収し、「フォアローゼズ」というブランド名で販売が開始されました。

ブランド名は、ポール氏の心温まる愛の物語に由来しています。ある晩、ポール氏は舞踏会で絶世の美女と出会い、一目で恋に落ちました。迷わずプロポーズしたポール氏に対し、彼女は「次の舞踏会までお待ちください。その時、プロポーズを受けるなら、薔薇のコサージュをつけて参ります」と答えました。

そして約束の日、舞踏会の夜に彼女は真紅の薔薇4輪を胸に飾り、ポール氏の前に現れました。このエピソードにちなんで、ブランド名は「フォアローゼズ」と名付けられ、ラベルには二人を結んだ「真紅の薔薇」のコサージュが描かれたと言われています。

フォアローゼズは、禁酒法時代には医療用のウイスキー製造が許可され、蒸留所は存続できましたが、その後カナダのシーグラム社に買収され、バーボンではなく安価なブレンデッドウイスキーの生産が行われました。

2001年には、日本のキリンビールがフォアローゼズを買収。ウイスキーの品質向上や新ラインナップの開発に取り組みました。この取り組みによって、フォアローゼズはアメリカ国内での需要を開拓し、さらなるグローバル展開へと進みました。特に2010年代半ばからは、生産能力を倍増させるため、約5,400万ドル(約82億円)を投じて設備を増強。ボトリング施設や観光施設の充実が進み、観光業の強化と売上の向上が期待されています。

原材料へのこだわりと製法

出典:https://www.fourrosesbourbon.com/our-process

フォアローゼズのウイスキーが特別なのは、原材料への徹底的なこだわりと製法にあります。主原料のトウモロコシは、インディアナ州の契約農家から、50年以上にわたり安定して調達しています。ライ麦は西ヨーロッパ産を使用し、これがウイスキーにスパイシーなアクセントを加える重要な要素となっています。

また、発酵(ファーメンテーション)では複数のイースト菌(酵母)を使用することもこだわりの一つ。同じ原材料でも異なる風味を生み出し、複雑で多層的な香りと味わいが楽しめます。

マッシュビル(穀物配合)においても、以下の2つの異なるレシピを使用しており、それぞれがユニークな味わいを作り上げています。

・マッシュビル1(75% コーン、20% ライ麦、5% 大麦)
・マッシュビル2(60% コーン、35% ライ麦、5% 大麦)

これらのレシピに加え、10種類の異なるイーストを使用することで、原酒をつくり分けることが可能となり、より複雑で豊かな風味を生み出すことができます。

ウエアハウス(熟成庫)

フォアローゼズの熟成には、シーグラム時代に建てられた「低層のウェアハウス」を使用しています。通常、大手バーボンメーカーのウェアハウスは高層ビルのような10階建ての施設が多いですが、フォアローゼズは「一階建て」の倉庫を採用しており、これにより熟成樽に過度な負担をかけないようにしています。

また、バーボンでは珍しく、スコッチウイスキーで一般的な「ダンネージ式」での貯蔵も採用。6段積みのウェアハウスによって、段の違いによる気温の変化はほとんど起こらないため、位置変え(ローテーション)をする必要がないとのこと。

フォアローゼズの多彩なラインナップと革新性

フォアローゼズは、その豊富なラインナップと革新的な製法でウイスキー業界において独自の地位を確立しています。代表的な製品には「イエローラベル」「ブラックラベル」「シングルバレル」「プラチナ」などがあり、各ラインはそれぞれ異なる特徴と魅力を持っています。

特に注目すべきは「プラチナ」です。バーボンでありながら、モルトウイスキーのようなフローラルなテイストが感じられるこの製品は、他のバーボンとは一線を画しています。そのユニークな風味は、フォアローゼズの製造過程におけるこだわりの結果であり、多彩な原酒を使い分けることで異なる特徴を持つバーボンを生み出す技術に裏打ちされています。

フォアローゼズの製品は、品質、風味、革新性の三拍子が揃っており、その独自性が世界中での支持を集めています。今後も多くのウイスキー愛好者に愛され続けることでしょう。

1. フォアローゼズ バーボン

フォアローゼズのスタンダードなバーボンで、香りと個性が異なる10種の原酒をブレンドして作られています。花や果実を思わせる華やかな香りと、まろやかな味わいが特徴です。バーボン初心者から愛される、バランスの取れた優れたエントリーラベル。

  • 熟成年数: 5年以上
  • アルコール度数: 40%

フォアローゼズ ブラック(日本限定販売)

日本市場向けボトル。個性豊かな香りを持つ原酒を選び抜き、やや長めの熟成にこだわっています。スパイシーな味わいと熟した果実香、オーク樽の香りが絶妙に調和。

  • 熟成年数: 6年以上
  • アルコール度数: 40%

3. フォアローゼズ シングルバレル

マスターディスティラーが厳選した1種の原酒だけをボトリング。クラフトマンシップの真髄を体験できる一本。アルコール度数は強めで、樽本来の複雑で力強いボディ感と芳醇な味わい。

  • 熟成年数: 7年以上
  • アルコール度数: 50%

フォアローゼズ プラチナ(日本限定販売)

日本限定で販売される最上級品。時間を惜しまず熟成させた限りある原酒を贅沢に使用。驚くほど洗練された味わいと、長い余韻が特徴で、バーボンの枠を超えたフローラルなテイストが楽しめます。

  • 熟成年数: 8年以上
  • アルコール度数: 43%

フォアローゼズ スモールバッチ(数量限定販売)

マスターディスティラーが厳選した4種の原酒を特別にブレンドした、数量限定商品。果実を思わせる甘い香りとスパイシーな味わいが特徴で、深みと複雑さを兼ね備えた逸品。

  • 熟成年数: 6年以上
  • アルコール度数: 44~45%

 

 

【2025年10月発表】キリンHDが「フォアローゼズ」の売却を検討⁉

出典:By King4120 – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=78588790

キリンが「フォアローゼズ」売却検討

キリンホールディングスが、ケンタッキー州ローレンスバーグにある名門バーボン「フォアローゼズ」の売却を検討していることが報じられました。評価額は10億ドル(約1,530億円)。2025年12月時点で、売却の成否は定かではありません。

評価額の妥当性

現在、年換算の調整後利益は約7,000万ドル(約107億円)ですが、ウイスキー業界では熟成在庫や観光施設の価値も含めて評価が決まるため、10億ドルの評価額は妥当と言えます。バーボン市場の拡大やブランドの成長を背景に、高い評価を受ける可能性がある一方で、熟成樽税(エイジング樽税)などのコスト要因が影響することも懸念されています。

日本市場への影響

「フォアローゼズ ブラック」や「フォアローゼズ プラチナ」など、日本限定ボトルの生産や供給に影響が出る可能性があります。売却後も品質やレシピは維持されることも予想されますが、他企業に経営が変われば、リブランドによる「終売」や、販売が継続されたとしても、供給量や価格変更(値上げ)もあるかもしれません…

今後の注目ポイント

  • レシピと設備の維持 – フォアローゼズの特徴的な製法や設備が引き継がれるか。
  • 供給と価格 – 日本市場への割当量や価格の動向。
  • 観光施設の運営 – 観光施設の運営方針や直販限定ボトルの扱いに変化がないか。

 

 

【バーボンウイスキーレビュー】フォアローゼズ ブラックを評価

フォアローゼズ ブラック FOUR ROSES BLACK

香り

オレンジ、バニラ、マカダミアナッツ、ドライアップル、レーズン、ミルクチョコレート、カカオパウダー、シナモンシュガー、カルダモン、黒糖のど飴。

加水すると、スパイシー&ナッティーなフレーバーがやや増します。

 

味わい

まろやかで甘さがあります。クリーミーでドライ。ミディアムライトボディ。中盤からフィニッシュにかけては少しビターでドライ。スパイシーさと樽香の個性がバランスよく広がります。余韻は中程度の長さ。クセは少なく比較的飲みやすいバランス。

加水後も優しい味わい。バーボンとしての個性もありながら、ソフトで優雅なバランス。

 

評価

「フォアローゼズ ブラック」の評価としては、「キリンHDよ、売却しないでくれ!日本人の好みに寄り添った安定感のある味わい」です。

このウイスキーは日本限定ボトルということもあり、日本人の嗜好に寄り添った味わいに仕上がっている印象があります。つまり、多くの日本人が好むハイボールやロックとの相性が非常に良く、飲み方の幅が広いバランス型の一本です。

まずストレートについて触れると、そのままでも十分に楽しめます。角のあるアルコール感はなく、雑味も少ない。甘味・苦味・わずかな酸味がほどよく調和しており、バーボンとしての完成度は高いと言えます。

やや辛口に評価するのであれば、ストレートで感じられる余韻の長さや、深い複雑さという点では、5,000円以上のプレミアム・バーボンには及びません。飲みやすさが長所である一方で、ストレートでの重厚さは控えめです。

しかし、「フォアローゼズ ブラック」は3,000円台という価格帯を考えると、コストパフォーマンスは非常に優秀。同価格帯のバーボンは競合が多く乱立気味ですが、その中では間違いなく上位に入る実力を備えています。そもそも5,000円以上のボトルと単純に比べること自体が酷な話で、価格基準で見れば十分すぎるクオリティでしょう。

冒頭でも述べた通り、このウイスキーは加水後に真価を発揮するタイプ。

ロックではアルコールの刺激がさらに穏やかになり、バニラや果実由来の甘やかな香味がふわりと広がります。アルコール感や雑味が立たないのも好印象。

ハイボールにすると、軽やかながらも柑橘やナッツのようなリッチなフレーバーが表れ、ほんのりビターでドライ&スムースな仕上がり。安価なバーボンにありがちな“ただ軽いだけのクリーンさ”とは違い、しっかりとした味わいとフォアローゼズらしい個性も感じます。

このあたりの完成度は、さすがブラック。日本限定ボトルとして磨かれた味わいが楽しめ、フラッグシップ「フォアローゼズ バーボン」の上位版として、満足できるクオリティです。

一点だけ気がかりなのは、2025年10月時点のニュースで、キリンホールディングスが「フォアローゼズ」を10億ドルで売却する方向で検討しているという話題。背景には、日本国内で苦戦する酒類事業からヘルスケア領域へ軸足を移したいという経営戦略があるようで、その流れの中で、他社への売却が浮上していると伝えられています。

現時点では売却が確定しているわけではありません。しかし、仮に他社へ事業が引き継がれた場合、日本限定ボトルである「フォアローゼズ ブラック」や「フォアローゼズ プラチナ」の生産体制がどう変化するのかは読めません。この点については、今後の動向をしっかり注視していきたいところです。



 

「フォアローゼズ ブラック」は、バランスの取れた味わいと優れたコストパフォーマンスで、バーボン初心者から経験豊富な愛好者まで楽しめる一本です。加水やロック、ハイボールといった多彩な飲み方ができる点も魅力のひとつ。今後、日本市場での供給にどのような影響が出るかは予測できませんが、その品質や製造技術が変わらないことを期待したいですね。

「フォアローゼズ ブラック」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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