【スコッチウイスキーレビュー】グレンファークラス25年を評価

150年以上にわたり家族経営を守り続けるグレンファークラス蒸溜所。その伝統とこだわりが凝縮された長期熟成シングルモルトの代表格が「グレンファークラス25年」です。

この記事では、オロロソシェリー樽を駆使した繊細な樽使い、長期熟成ならではの滑らかさと複雑な味わい、さらに蒸溜所の歴史や独自の製法について詳しく解説します。25年という年月をかけて育まれた極上のシングルモルト、その魅力を余すところなくご紹介しますので、ぜひ最後までお楽しみください。

 

グレンファークラス蒸溜所とは？

グレンファークラス蒸溜所　Glenfarclas distillery

• 地域：スペイサイド
• 創業年：1836年
• オーナー：J&Gグラント社
• 蒸留器：初留ｘ3基、再留ｘ3基
• 仕込み水：ベンリネス山の伏流水（湧き水）
• 年間生産量：350万リットル

歴史と家族経営の伝統

グレンファークラスは、1836年にロバート・ヘイによって設立。1865年に初代「ジョン・グラント」が、約511ポンドで蒸留所を買収し、以来、現在に至るまでグラント家によって経営されています。スコッチウイスキー業界において、150年以上にわたり同じ家族が経営を続けている蒸溜所は大変珍しく、家族経営ならではのこだわりが随所に感じられます。

短期的な利益を追求するのではなく、長期的な品質向上を最優先する経営方針を貫いており、特にシェリー樽熟成へのこだわりが大きな特徴となっています。

伝統的な直火炊き蒸溜

グレンファークラス蒸溜所では、現在も「直火炊き」方式のポットスチルを採用しており、今では珍しいガスバーナーによる加熱にこだわり続けています。

一度はコストの低い「間接加熱（スチームコイル）」を試みましたが、求めるウイスキーの風味が得られず、従来の直火炊きを守り続ける決断。この直火炊きによる蒸溜は、火加減の調整が難しく、メンテナンスコストも高い方法ですが、キャラメルのような濃厚な甘みやオイリーな口当たりを生み出す要因の一つとなっています。

多くの蒸溜所が間接加熱へ移行する中でも、グレンファークラスならではの厚みのあるリッチな味わいを実現するため、この伝統製法を守り続けているのです。

オロロソ・シェリー樽熟成

グレンファークラス蒸溜所が誇る最大の特徴の一つは、シェリー樽熟成への揺るぎないこだわりです。直火炊き蒸溜と並び、蒸溜所が大切に守り続けている伝統的な製法の一環となっています。

シェリー樽は非常に高価ですが、グレンファークラスではフィニッシュのみの使用は一切行わず、100％シェリー樽熟成を貫いています。さまざまな種類のシーズニングシェリーを試した結果、最も理想的な風味をもたらすとして選ばれたのがオロロソシェリーでした。

グレンファークラス蒸溜所では、30年以上にわたり契約を結ぶスペインの生産者から、安定して高品質なオロロソシェリー樽の供給を受けています。

さらに、1stフィル（一回目）から4thフィル（四回目）までのオロロソシェリー樽を使い分けることで、多彩な風味を生み出し、幅広いラインナップを展開。多くの蒸溜所がバーボン樽とシェリー樽を併用する中、グレンファークラスはシェリー樽熟成に特化し続けています。

主なラインナップ

	度数	特徴	参考価格（2025年2月時点
8年	40%	フレッシュフルーツの香りが主体。リンゴやバニラの甘さとスパイスのバランスが良い。	¥4,876
10年	40%	シェリー樽熟成らしいバランスの取れた甘みとスパイス。麦芽の香りが特徴。	¥4,804
12年	43%	ドライフルーツやベリーの香り。甘みとスパイスのバランスが良く、コスパ◎。	¥5,930
15年	46%	濃厚なシェリー感。チョコレートやタンニンの深みがあり、ビターな余韻。	¥9,000～12,000
17年	43%	15年よりもなめらかで、まろやか。スパイス感も穏やかで上品な仕上がり。	¥12,000～14,000
21年　（終売）	43%	シェリーの風味が落ち着き、フローラルでエレガント。繊細な甘みと奥行きのある味わい。	¥26,000～32,000
25年	43%	25年熟成ながらコスパ抜群。シェリー樽由来の豊かな甘みと滑らかな舌触り。	¥25,000～48,000
105	60%	アルコール度数の高さが特徴。ドライでフルーティー。濃縮されたフレーバーがあり、ハイボールや水割りでも崩れにくい。	¥7,899

 

 

【スコッチウイスキーレビュー】グレンファークラス25年を評価

グレンファークラス 25年
Glenfarclas 25 year old

• 43％　700ml
• 正規販売ボトル（ミリオン商事）
• 樽：100％オロロソシェリー樽。25年以上の原酒を使用。
• 抜栓時期：2023年1月
• テイスティング時期：2025年12月
• whiskybaseでの評価：85.95/100
• 参考小売価格：50,000円（税別）
• 楽天市場価格[2025年12月]：26,178円 送料別
• Amazon価格[2025年12月]：26,980円 送料無料

 

「グレンファークラス 25年」とは？ 終売の噂について

「グレンファークラス 25年」は、長期熟成のシングルモルトウイスキーとして、特に重要な位置を占めているボトルです。実は「グレンファークラス 21年」が終売した後、この25年物がラインナップの中で最も長い熟成年数を誇るスタンダードボトルとなりました。

グレンファークラスは、通常ラインナップと限定ボトルに分かれており、25年物はそのスタンダードラインの中では最も長期間熟成されたウイスキーです。それ以上の熟成年数を持つボトルには「グレンファークラス レッド ドアシリーズ」などの限定品があり、こちらは30年以上の熟成を経ています。

近年、25年物についても終売の噂が流れることがありますが、2025年12月時点ではそのような確定情報は出ていません。この噂については予測に過ぎませんが、21年の終売により、グレンファークラスが25年物の原酒をより確保する意図があるのではないかと思われます。ですので、逆に25年物の終売の可能性は低いと予想しています。

もともと25年物の生産量は多くなく、需要も限定的な印象があります。しかし、もし原酒確保が難しくなった場合でも、数量限定で販売され続ける可能性は高いと考えられます。

定価と価格推移

「グレンファークラス 25年」は、2023年4月の価格改定により税込55,000円へ値上がりしました。2025年12月時点での値上げ情報はありません。

市場価格は26,000円～40,000円ほど。ショップによってかなり価格差があります。

 

香り

洋梨、オレンジピール、青りんごのグミ、レーズン、ドライアップル、ドライパイン、マスカット、イチジク、イチゴジャム、アップルパイ、ブラウンシュガー、トースト、シナモン、ミルクキャラメル、メープルシロップ。

加水すると、アップルミント、黒糖、はちみつ、かりん、ラズベリー。

 

味わい

まろやかで豊潤。ミディアムボディ。ドライで上品な苦み。ドライフルーツとオロロソシェリーの風味が広がります。フィニッシュにかけてはスムース。エステリー＆フローラル。複雑なアロマが長く続きます。シェリー樽の個性だけでなく、モルトウイスキーらしい芳ばしさもあります。

加水後もバランスは保たれています。味わいに大きな変化はなし。長期熟成でありながら、しっかりとしています。

 

評価

「グレンファークラス25年」の評価としては、「控えめな樽使いが原酒の個性を引き立てる！25年クラスで抜群のコスパを誇る一本」です。

グレンファークラスのスタンダードラインナップの中で最も長期熟成となる「グレンファークラス25年」。コストパフォーマンスの高さで知られ、近年こそ値上がりはしたものの、現在でも25年物としては最安クラスの価格帯を維持しています。そのうえ品質の完成度も高く、長期熟成シングルモルトの中でも非常に評価の高い一本です。

グレンファークラスでは、オロロソシェリー樽のファーストフィルからフォースフィルまでを組み合わせて熟成を行っています。25年物も同じ製法であり、ファーストフィルやセカンドフィルはシェリー由来の濃厚な甘味やスパイスが強く出る一方、サードフィルやフォースフィルではその影響は穏やかになります。そのため「グレンファークラス25年」はシェリー100％の熟成でありながら、過度に濃厚になりすぎず、原酒の個性を生かしたバランス型の風味となります。

このシェリー樽の使い方は、マッカラン、グレンドロナック、タムデューといった“シェリー樽100％（濃厚系）にこだわる蒸留所とは明確に異なります。複数のシェリー樽をバッティングすることで濃密なフルーツ香やスパイス感はしっかり持たせつつも、サードフィル以降の樽がもたらす「プレーンオーク熟成」に近いニュアンスが、モルト由来のフローラルさ、控えめなバニラ香、はちみつのような柔らかな甘さを引き出しているのです。力強い原酒と穏やかな原酒を絶妙に組み合わせることで、グレンファークラスは複雑かつ繊細な味わいを実現しています。

その中でも25年物は、まさに“繊細な樽使い”が際立つボトル。25年以上熟成されたシェリー樽原酒とプレーンオーク寄りの長熟原酒が緻密にまとめられ、上品でアロマティックなキャラクターが際立ちます。

グレンファークラスの場合、シェリー樽の存在感はむしろ「15年」や「21年」の方が強い印象を受けます。これは、酒齢（ボトル）によって樽の使い分けをしているから。25年物では、円熟した原酒の穏やかで落ち着いた味わいを際立たせるため、リフィル・シェリー樽（サードフィル以降の樽）が多く使われていると思います。

もちろん、濃厚なシェリー感にも魅力があります。ドライフルーツや黒糖、お菓子のような濃密な甘さはバーボン樽では生まれません。しかし、シェリー樽の主張が強すぎると、蒸留所の個性やモルト本来の香味が感じづらくなることもあります。その点、グレンファークラスはシェリー樽の魅力を生かしながら、モルトウイスキーとしての品格や軽やかさも大切にし、酒齢によって風味バランスを調整しているといえます。

「グレンファークラス25年」に話を戻すと、加水後のまとまりも見事です。一般的に25年クラスの長期熟成ウイスキーは、水を加えると風味が薄くなりがちですが、この25年物はしっかりとボディを残しつつ、オーク樽由来の複雑味が立ち上がり、長熟ならではの良さが際立ちます。

一般的に25年クラスの長期熟成ウイスキーは、ハイボールや水割りなど加水量の多い飲み方にはあまり向かないとされています。しかし「グレンファークラス25年」は例外で、そうした飲み方でも心地よい口当たりと、リッチで複雑な余韻をしっかりと感じられます。

とはいえ、初めて味わう方にはストレートがおすすめ。25年以上熟成した原酒ならではのなめらかさや、ソフトでスムースな飲み口は、10年程度のウイスキーでは決して得られない特別な魅力。まずはぜひ、そのままゆっくりとテイスティングしてみてください。

公式テイスティングノート

円みを帯びた芳醇な香り。とても滑らかなシルキーな口当たり。濃厚なダークチョコレートとビターな深煎り珈琲を合わせたような、濃厚で複雑な味わい。いつまでも続く長い余韻。リッチで重厚な味わいは食後酒に最適です。

 

 

「グレンファークラス25年」は、シェリー樽の個性を巧みに生かしつつ、モルト本来のフローラルやまろやかな甘みを引き立てた、長期熟成ならではの傑作です。加水しても崩れないバランスの良さや、ストレートで味わう際の滑らかさと複雑な余韻は、まさにプレミアム・シングルモルトの真骨頂。初めての方も、ウイスキー愛好家の方も、ぜひ一度はそのままの魅力をゆっくり味わってみてください。

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