【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washbackを評価

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

福島県郡山市に位置する「安積蒸溜所」は、クラフト蒸溜所ならではの自由な発想と挑戦心が息づく造り手です。

この記事では、「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」のテイスティングレビューを中心に、安積蒸溜所の魅力やボトルの評価についても詳しく解説していきます。

ヘビリーピーテッドモルトとしてアイラモルトに匹敵するスモーキーさを持ちながらも、独自の個性を放つこのボトル。是非その特長を一緒に探っていきましょう。

 

 

 

笹の川酒造|安積(あさか)蒸溜所とは?

蒸溜所の歴史と特徴

笹の川酒造は1765年に福島県郡山市で創業した老舗の蔵元。終戦直後の1946年にウイスキーの製造免許を取得し、代表的な銘柄「チェリーウイスキー」は1980年代に一世を風靡しました。

当時は「北のチェリー」と称された笹の川酒造でしたが、その後80年代以降はウイスキー需要の低下に伴い、1989年にはウイスキーの製造を停止。そしてウイスキーの需要増加を受け再び生産開始に乗り出します。

 

苦難の時代を経て、戦後の混乱から高度成長期にかけてはウイスキーの黄金時代が訪れます。1980年代、「北のチェリー、東の東亜、西のマルス」と称され、笹の川酒造が生み出した「チェリーウイスキー」は、北の代表として大きな人気を博しました。

しかし、嗜好の変化とともに、再びウイスキー不遇の時代が訪れます。ウイスキーの販売量は減り、熟成樽に多くの樽が積み重なったといいます。

この時代は笹の川酒造だけでなく、他社のウイスキーも苦境に立たされていました。2003年には「東の東亜酒造(旧羽生蒸溜所)」が閉鎖。

ちょうどこの時期、埼玉県の旧羽生蒸溜所からウイスキー原酒樽が笹の川酒造に預けられることになりました。これらの樽は、後に「イチローズモルト カードシリーズ」として、カルト的な人気を博すことになります。

 

2014年、笹の川酒造で眠っていたウイスキーが「YAMAZAKURA」としてリリースされます。忘れられた時間の中で、天使に分け前を与えながら、しっかりと熟成。新たにボトリングされた「YAMAZAKURA」は、予想を上回る人気となります。

そして、笹の川酒造のウイスキー造りが本格始動することになります。

 

安積蒸留所の創業は2016年。笹の川酒造の敷地内にあった古い蔵を改装し、ウイスキーの製造を再開。マッシュタンとポットスチルは共に2基ずつ。制作は三宅製作所。仕込みは1バッチで麦芽400キロ。

大麦麦芽は、イギリス産ノンピーテッド麦芽と50ppmのヘビリーピーテッド麦芽などを使用しています。

 

熟成にはミズナラ樽、ワイン樽、ラムカスクなど様々な樽が使われています。また、新しく木桶発酵槽を導入。酵母はアメリカのディスティラリー酵母を主に使用していますが、老舗の蔵元らしく、試験的に清酒酵母などでも仕込みを行っており、他の蒸留所とは違ったユニークなウイスキー製造にも力を注いでいます。

熟成庫は固定ラック式(第一熟成庫)と、2021年に完成したばかりの移動ラック式となる第二熟成庫があります。2棟合わせて1600樽を貯蔵することができます。

 

安積蒸溜所の主なラインナップ

YAMAZAKURA シングルモルト 安積 2025 EDITION

  • 特徴: 安積蒸溜所のシングルモルトウイスキー。ノンピート原酒をベースとして、数種類の樽で熟成した安積原酒をブレンド。華やかな香りときれいな甘さが感じられる、安積蒸溜所らしい味わい。
  • アルコール分: 50度
  • 容量: 700ml

YAMAZAKURA 黒ラベル

  • 特徴: 厳選したモルトとグレーンをブレンドした、マイルドで口当たりが良く、ほのかなピート香を感じるブレンデッドウイスキー。
  • アルコール分: 40度
  • 容量: 700ml

YAMAZAKURA Precious(プレシャス)

  • 特徴: 「黒ラベル」の上位ボトル。上質のグレーンウイスキーと厳選されたモルトウイスキーをブレンドした、贅沢で深い味わい。蜂蜜のような甘さとしっかりしたモルト感。
  • アルコール分: 46度
  • 容量: 700ml

YAMAZAKURA 安積蒸溜所&4

  • 特徴: 世界5大産地のウイスキー原酒をブレンドしたワールドブレンデッドウイスキー。メープルシロップの香りとスムースなモルトの味わい、スパイシーでスモーキーな余韻。
  • アルコール分: 47度
  • 容量: 700ml

PURE MALT WHISKY YAMAZAKURA(ピュアモルトウイスキー山桜)

  • 特徴: オーク樽5年以上熟成モルト、シェリー樽熟成モルト、ピーテッドモルトをブレンドしたリッチな味わい。シェリー樽由来の果実香と程よいスモーキー感。
  • アルコール分: 48度
  • 容量: 700ml

FINE BLENDED CHERRY WHISKY(ファインブレンデッド チェリーウイスキー)

  • 特徴: 笹の川酒造を代表する銘柄。1980年代に人気を誇ったブレンデッドウイスキー。スムースでクリーンな風味が特徴。
  • アルコール分: 37度
  • 容量: 1800ml

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washbackを評価

山桜 シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback
YAMAZAKURA SINGLE Malt ASAKA Peated 1st Wooden Washback

安積 ピーテッド 1st Wooden Washback

 

「山桜 シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」とは?

「山桜 シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」は、安積蒸溜所が2020年から導入した木製発酵槽で仕込んだ原酒のみを使用した特別なシングルモルトウイスキーです。木製発酵槽100%の原酒から生まれる初のボトルであることから、「1st Wooden Washback」と名付けられています。

フェノール値50ppmのヘビリーピーテッド麦芽を使用し、安積らしい柑橘を思わせる爽やかな香りと華やかさに、力強いスモーキーなフレーバーが絶妙に重なります。

安積のピーテッドシリーズは2019年の「ザ・ファースト」で幕を開け、第二弾は2023年にリリース。今回のボトルは、シリーズ待望の2年ぶりの新作となります。

アルコール度数50%のカスクストレングス仕様で、バーボン樽熟成・ノンチルフィルター。限定3,000本のみのリリース。

 

香り

レモン、青りんご、黒糖のど飴、魚の燻製、木炭、ヨードチンキ、消毒液、レーズン、ドライアップル、イチジク、くるみ。

加水すると、バニラ、ミルクキャラメル、洋梨。

 

味わい

さっぱりとした甘さの後に、スモーキーでピーティー。徐々にドライでビター。少しアルコールっぽさも感じます。ミディアムライトボディ。レモンキャンディー、燻製、薬局。フィニッシュにかけても、焼けた畑、正露丸。余韻はやや長め。スモーキーさが中心です。

加水後はフローラル。お花と香水のような風味に、しっかりとスモーキーな個性。加水後もバランスは崩れず、独特な個性が広がります。

 

評価

「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」の評価としては、「力強いスモーキーさと安積らしい個性が融合!木桶にこだわる意欲的なヘビリーピーテッドモルト」です。

安積のピーテッドシリーズとしては2023年以来、約2年ぶりのリリースとなります。これまでのシリーズ名とは異なり、今回は木桶発酵槽で仕込んだ原酒を前面に打ち出した名称が採用されています。

木桶とステンレス槽による発酵の違いがウイスキーに与える影響は一言で説明しにくいものですが、要約すると以下のような感じです。

  • 木桶発酵:木材に棲みつく乳酸菌や微生物の働きが加わることで、ウイスキーに独特の個性や複雑さを与える伝統的な製法。自然なニュアンスが多彩に広がるため、個性的で奥行きのある味わいにつながります。
  • ステンレス槽発酵:外部からの影響を受けにくく、酵母本来の風味を安定して引き出せる現代的な製法。清潔に保ちやすく、仕込みに変化が少ないため、大規模生産や品質の安定性を重視する蒸溜所で採用されやすいのが特徴です。

ウイスキーに独特の風味をもたらす点から木桶を好む蒸溜所も多い一方で、歴史のある蒸溜所であっても安定性を重視してステンレス槽を利用する場合もあります。

「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」は、存在感のあるスモーキーさが最大の特徴。通常の安積はノンピート仕込みでクセが少なく、穏やかな風味が魅力ですが、このピーテッドシリーズは全く異なる個性です。まるでアイラモルトのような、力強いピート香が際立っています。

香りは柑橘系のフルーティーさや、バーボン樽由来の穏やかな樽香も感じられます。さらに、しっかりとした燻製香や薬品のようなアロマに加え、ヨード香もアクセントとして現れます。味わいの余韻は、バニラやキャラメルを思わせる樽香の中で、スモーキーさが力強く口中に残ります。

似ているタイプで言えば「カリラ」でしょうか。カリラはリフィルバーボン樽のみを使用しており、安積の基本的なスタイルであるバーボン樽熟成と共通点があります。しかし、オフィシャルボトルのカリラは熟成年数が高いため、完全に同じとは言えません。

「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」はやや若干の熟成不足を感じさせ、アルコール消毒液のような個性があります。この特徴は、ショートエイジングが影響していると言えます。そのような事実を踏まえると、「カリラ12年」と言うよりは、むしろボトラーズリリースのバーボン樽熟成で、熟成年数が6~8年程度、カスクストレングスでボトリングされたものに似ているかもしれません。

熟成が短いと、一般的にはネガティブに捉えられることが多いですが、ヘビリーピーテッドタイプのウイスキーにおいては、逆にそのクセの強さが際立つことで、良い仕上がりになることもあります。

「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」は、確かにやや未熟さを感じさせる部分がありますが、樽香やフルーティーなアロマは穏やかでありながらもバランスよく反映されています。そのため、全体的にバランスが悪い印象はありません。ピーテッドモルトにとって最も重要なのは、しっかりとしたクセの強さ。ここでは、スモーキーさがしっかりと感じられ、飲み手が極端にがっかりすることはないでしょう。

ジャパニーズスモーキーモルトとしては、「厚岸」や「三郎丸」に匹敵するほどの強烈なスモーキーさを持っています。安積蒸溜所の基本は「ノンピート」ですが、これだけ高品質なヘビリーピーテッドモルトを造ることができるのであれば、思い切って「スモーキーモルト全振り」を試してみるのも一つの手だと思います。ただし、安積蒸溜所(笹の川酒造)はブレンデッドウイスキーも多く手掛けており、これらの原酒供給に必要な自社製モルトのスタイルを急激に変えることは現実的ではありません。

過去のピーテッドシリーズ「ザ・ファースト」と「2023年エディション」を比較してみましょう。

どちらも正直なところ似ており、大きな違いは感じられません。ただし、気になった点として、「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」は、これら2本に比べてやや熟成が短く感じられました。

これは樽のタイプを変えたことが影響しているのか、それとも生産量の増加が関係しているのか、真相は定かではありません。しかし、こう感じたのも、ボトルの抜栓直後にテイスティングを行ったため、その影響もあるかも。さらに、「感じ方」はその日のコンディションや環境によっても変わるので、一概に言えない部分です…

いずれにせよ、ジャパニーズウイスキーでアイラモルトのようなスモーキーなタイプを求める方にとって、「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」は非常に魅力的なボトルであることは間違いありません。フェノール値「50ppm」のモルトを使用しているにもかかわらず、クセが強すぎることなく、しっかりと期待に応えてくれるウイスキーだと言えるでしょう。

おすすめの飲み方はストレートですが、ハイボールやロックで飲んでも、そのスモーキーさが衰えることはありません。自分の好みに合わせた飲み方で愉しみましょう。

安積 ピーテッド 1st Wooden Washback

 



 

「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」は、安積蒸溜所のこだわりが詰まったスモーキーで個性的な一本です。木桶発酵による豊かな深みと、ヘビリーピーテッドモルトならではの力強いピート香が絶妙に調和しており、スモーキーモルト好きにとっては必ず手に取りたいボトルと言えるでしょう。

「シングルモルト安積 ピーテッド 1st Wooden Washback」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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