【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト宮城峡を評価

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事では、ニッカウヰスキーのシングルモルトジャパニーズウイスキー「宮城峡」のテイスティングレビュー、ボトル評価、定価や流通価格、「シングルモルト余市」との違いについても解説致します。

「シングルモルト宮城峡」の味わいと「宮城峡蒸溜所」を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】宮城峡蒸溜所とは?

宮城峡蒸溜所

  • 設立年:1969年
  • 創業者:竹鶴政孝(ニッカウヰスキー創業者)
  • 所有者:ニッカウヰスキー
  • 所在地:〒989-3433 宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地

ニッカウヰスキー第二の蒸溜所

宮城峡蒸溜所は、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝が、余市蒸溜所とは異なるタイプのウイスキーを生み出すために設立した蒸溜所です。広瀬川と新川の清流に恵まれた宮城県仙台市郊外の谷間に位置しており、周囲を奥羽山脈に囲まれた冷涼かつ湿潤な環境が、ウイスキーの熟成に穏やかで優雅な特性をもたらします。

この地を訪れた竹鶴氏は、川の水をすくい取り、「ブラックニッカ」で割って飲み、その場で蒸溜所の建設を決意したと伝えられています。

 

宮城峡と余市の違い

宮城峡蒸溜所のウイスキー造りは、余市蒸溜所(北海道)とは対照的なスタイル。余市のヘビーでピートの効いたモルトウイスキーとは異なり、宮城峡ではライトピーテッド、またはノンピートの麦芽を使用し、スコットランドのローランド地域を意識した、華やかでクセの少ないモルトウイスキーを生産しています。

また、余市とは蒸溜方法も異なり、宮城峡では間接加熱式(スチーム加熱)を採用。バルジ型ポットスチルを使用し、ラインアームを上向きにすることで、フルーティーでクリーンな酒質を実現。

発酵には木桶発酵槽とステンレス発酵槽の両方を用い、木桶発酵槽では微生物の働きによって複雑なエステル香(リンゴや洋ナシ、トロピカルフルーツのような香り)を生み出しています。宮城峡は余市よりも周辺に森林の多いことで、木桶発酵槽との相性がよく、この違いも宮城峡独自の個性に繋がっています。

また、熟成環境も宮城峡に独特の風味を与える要素の一つ。余市の寒冷な「海洋性気候」ですが、宮城峡は比較的湿潤な「内陸性気候」。夏は湿度が高く、冬の冷え込みも適度なため、ウイスキーはまろやかで調和の取れた味わいに仕上がります。

熟成庫は余市と同様の伝統的なダンネージ式(三段積み)24棟。その他、2021年には24段からなる「ラック式オートメーション貯蔵庫」が完成したことで、宮城峡蒸溜所内での貯蔵能力が大幅に増加しています。

ちなみにこの熟成庫は、周辺住民から「マンション」や「社宅」と勘違いされたほ。宮城峡蒸溜所内でも存在感のある建物なので、見学に訪れた際に確認してみてください。

 

カフェ式連続式蒸溜機

 

宮城峡蒸溜所には日本で唯一カフェ式連続式蒸溜機(Coffey Still)が備えられており、グレーンウイスキーの製造も行っています。カフェ式スチルは通常の連続式蒸溜機と比べ、低温でゆっくりと蒸溜し、穀物由来の甘みとオイリーな質感を持つ豊かな風味のグレーンウイスキーを造ることができます。

この蒸留器は1963年に西宮工場(大阪)で導入され、その後1999年に宮城峡へ移設されました。カフェグレーンの原酒はニッカウヰスキーのブレンデッドウイスキー「フロム・ザ・バレル」「ザ・ニッカ」などの、多くの銘柄に使用されています。

 

見学必須・車があった方がアクセスは便利

宮城峡蒸溜所では予約制の見学ツアーを実施しています。自然豊かな宮城峡の地で、ウイスキー造りの工程からテイスティングまで、一通り学ぶことができます。

見学時間は9:00~14:30の間。約70分のツアーとなります。(蒸溜所見学50分+無料試飲20分)。

1~9名までの予約は前日まで。WEB予約は前日11:59、電話予約は前日16:00まで受け付けています。当日予約はできません。10年くらい前は、当日予約なしでも、少しの待ち時間でツアーに参加できました。

アクセスには、最寄り駅であるJR仙山線「作並駅」から土・日・祝日に宮城峡蒸溜所行きの無料シャトルバスが運行されています。JR仙台駅から電車で約40分、作並駅からバスで約7分くらいの時間で宮城峡蒸溜所に到着します。

作並駅から徒歩での移動は、30~40分くらいかかるためオススメできません。バスが運行しない平日は、車は必須です。

また、宮城峡蒸溜所内にはレストランがなく、周辺には食事ができるお店やコンビニすらないため、その辺もしっかりと計画しましょう。車を利用できれば、蒸溜所から15分圏内に飲食店がチラホラとあります。

 

予約なしで利用可能な施設

出典:https://sendai-experience.com/ja/ex/83

ビジターセンター(9:00~16:00)
ウイスキーの製造工程やニッカの歴史を学べる展示を自由に見学できます。

有料テイスティングバー(9:15~16:15 L.O.16:00)
蒸溜所限定ウイスキーを含む多彩な銘柄を試飲でき、自分でハイボールや水割りも作れます。

ギフトショップ(9:15~16:15 最終入場16:00)
蒸溜所限定のウイスキーやグッズ、お菓子などを販売しています。
ウイスキーは購入制限があります。

ウイスキー貯蔵庫(9:15~16:00)
低層貯蔵庫内で、樽の種類や熟成による色の変化を観察できる展示があります。

宮城峡が好きならぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか♪

 

宮城峡蒸留所|ライナップ

シングルモルト宮城峡

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シングルモルト宮城峡 グランデ

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空港免税店向け商品として2022年4月に発売開始。参考小売価格は10,000円(税抜)。

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【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト宮城峡を評価

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シングルモルト宮城峡

「シングルモルト宮城峡」は、2015年9月に熟成年数表記が廃止されたことで終売となった「宮城峡10年」や「宮城峡12年」に代わってリリースされたボトルです。現在は、宮城峡ブランドで唯一の商品(日本国内)として、その存在を支えています。

 

定価と価格推移

「シングルモルト宮城峡」は2024年4月の価格改定により、税込4,950円から7,700円へと値がり。この価格改定は過去最大の上げ幅となりました。

現在のところ、2025年の値上げ情報はありません。概ね定価の水準で販売されています。

【シングルモルト宮城峡の価格推移(税込)】

  • 2022年3月(定価4,950円):流通価格4,500円前後
  • 2023年3月(定価4,950円):流通価格4,500円前後
  • 2024年3月(定価4,950円):流通価格6,300~7,300円 ※値上げ直前
  • 2024年4月(定価7,700円):流通価格7,600~8,700円 ※値上げ直後
  • 2025年2月(定価7,700円):流通価格6,000~7,700円

 

香り

洋梨、はちみつ、メープルシロップ、杏、りんご飴、カスタードクリーム、ラズベリー、マーマレードジャム、バニラ、シナモン、モルトスナック。

フルーティーさと熟成樽由来のバニラとハチミツのアロマが豊かに広がります。

加水後はマスカット、ドライアップル、スミレの花、ルームフレグランス。妖艶なアロマが開きます。

 

味わい

甘くてクリーミー。スッキリとしている中にも、コクがあります。ミディアムボディ。中盤以降は徐々にドライ。かすかにスペイサイドモルトのような、かすかにピーティーでスパイシーな味わい。甘みが強く、フィニッシュにかけても風味が持続。余韻の長さは中程度。

加水すると若干なめらかになり、モルティーな風味が強くなります。スペイサイド及びハイランドモルトのような個性。トワイスアップ(1:1)までの加水でも、風味が落ちることはありません。

 

評価

「シングルモルト宮城峡」の評価としては、「人気以上の実力!日本版スペイサイドモルトは宮城峡」です。

口当たりは優しくなめらか。甘みがしっかりとあるなかで、若干のピート香が全体のアロマを複雑にし、エレガントで深みのある味わいを生み出しています。

宮城峡は余市と比べて「個性が弱い」と言われることもありますが、シングルモルトとしてのバランスの良さが魅力です。ブレンデッドウイスキーの原酒としての役割を果たしながらも、「シングルモルト宮城峡」ならではの風味がしっかりと感じられる、完成度の高い一本に仕上がっています。

年数表記が撤廃されて以降も、原酒も若さや未熟さも感じません。加水後も味わいもしっかりとしており、単に飲みやすいだけではなく骨格もあります。ストレートだけでなく、ロック、ハイボール、水割りでもその個性を失わず、心地よい飲み口で愉しむことができます。

 

ニッカウヰスキーでは、余市蒸溜所が「ハイランドモルト」を意識して造られており、第二の蒸溜所である宮城峡は「ローランドモルト」を目指して原酒造りをしているとされています。

余市が個性の強いハイランドモルトに近いのは納得できますが、宮城峡に関しては、ローランドモルトというよりもむしろスペイサイドモルトに近い印象を受けます。

穏やかで華やかな風味、バランスの取れた味わいを持つ宮城峡は、まさに「日本版スペイサイドモルト」と呼ぶにふさわしい一本。その人気以上の実力をもつ銘酒です。

「ローランドモルトとは何か?」を詳しく説明し始めると話が脱線してしまうため、ここでは簡潔にまとめますが、一般的にローランドモルトは、「ノンピートでクセが少なく、クリアでスムースな味わい」が特徴です。

ローランドと言えば3回蒸留の「オーヘントッシャン」が有名で、その他に「グレンキンチー」や、ここ最近シングルモルトとして復活した「ブラッドノック」が挙げられます。これらの蒸溜所はそれぞれ個性が異なるものの、共通するのはクセが少なくスムースで飲みやすい点です。

宮城峡が「ローランドモルト」を意識しているとすれば、先述の3つのシングルモルトと似た個性を持つはず。しかし、宮城峡には「ほのかなピート香」があり、後味の力強さや全体的な飲みごたえを考えると、むしろ「スペイサイドモルト」に近いと思います。

「シングルモルト宮城峡」は、「シングルモルト余市」と同時にノンエイジボトルとして登場し、現在はブランドを支える唯一の定番商品となっています。

年数表記ボトルがノンエイジ化された際、余市の味わいが大きく変わったという意見が多く聞かれました(それ自体は当然のことですが)。一方で、宮城峡に関しては、かつて販売されていた「宮城峡10年」や「宮城峡12年」との違いが、それほど大きく感じられなかったのを覚えています。

ノンエイジ化後も、宮城峡は原酒のバランスを巧みに調整することで、酒齢の若さをうまくカバーしていました。決して余市が劣るわけではありませんが、その時点で「宮城峡やるじゃん」と、余市と比べて人気のなかった宮城峡を改めて見直すきっかけになったのは確かです。

現在、ニッカウヰスキーが販売する国産100%のジャパニーズウイスキーは、「余市」「余市10年」「竹鶴」「宮城峡」の4種類。その中で最も入手しやすいのが「シングルモルト宮城峡」です。余市や竹鶴と比べて生産量が多い可能性もありますが、仮に同程度の生産量だったとしても、宮城峡は他の3本に比べて流通価格が低く、定価に近い価格で取引されています。(本来はそれが普通だけどね)

知名度に関しても、宮城峡を知らない方は意外に多く、NHKの朝ドラ「マッサン」でも、「余市」と「竹鶴」は有名になりましたが、宮城峡蒸溜所のシーンはほぼ無いので、それなりにウイスキーが詳しい方でなければ、今でも認知されていない印象もありますね。

2025年2月現在、数年にわたり続いてきた「ジャパニーズウイスキーバブル」は、ピークを過ぎて終焉に向かっている状況です。未だ高値で取引されているシングルモルトもまだまだあるなか、「シングルモルト宮城峡」は定価で購入可能な商品。

個人的には、ブームの最中でも店舗に在庫があったりもしたので、売り切れていないのが謎すぎました(笑)クオリティの高さと人気が比例しないウイスキー、それが「シングルモルト宮城峡」。

現在、ニッカウヰスキーはウイスキーの増産を進めており、余市や竹鶴などの人気銘柄も、今後は徐々に定価で購入できるようになる見込みです。「シングルモルト宮城峡」の流通量も増えていくでしょう。まだ試したことがない方は、ぜひお試しを。

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公式テイスティングノート↓

香り りんごや洋梨のようなフルーティーさ、甘く華やかな花の香り。樽由来のやわらかなバニラ香。
味わい ドライフルーツのようなスイートさ、なめらかな口当たり。
余韻 麦の甘さ、ほのかなビター感、穏やかな香が優しく広がる。

 

 



 

 

出典:Tak1701d – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=37652614による

「シングルモルト宮城峡」は、現在の日本のウイスキーシーンにおいて、他の人気銘柄に比べ隠れがち。しかし、その品質とバランスの良さは確かで、「日本版スペイサイドモルト」と評価できる銘酒です。

これからも流通量の増加と共に、より多くの人々にその魅力が伝われば嬉しいですね。そしていつの日か、「宮城峡10年」の復活にも期待したいところ。ウイスキーの奥深さを感じさせる「シングルモルト宮城峡」を、ぜひ手に取ってその世界を楽しんでください。

「シングルモルト宮城峡」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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