
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、シングルモルトスコッチウイスキー界のロールスロイスと称される「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」について、テイスティングレビューを中心に、マッカラン蒸溜所の魅力、ボトル評価、定価や価格推移、そして値上がりの背景など、多角的に解説します。
「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」の味わいを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
【ウイスキーレビュー】ザ・マッカラン シェリーオーク18年を評価|マッカラン蒸溜所

出典:By James Allan, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9280915
マッカラン蒸溜所(The Macallan Distillery)
- 地域:スコットランド・スペイサイド
- 創業年:1824
- 製造元:エドリントングループ社
- 蒸留器:初留12基、再留24基
- 仕込み水:クラインミルトン川(スペイ川の伏流水)
- 年間生産量:1,500万リットル
ザ・マッカラン蒸溜所(The Macallan Distillery)は、スコットランドのスペイサイドに位置するシングルモルトの名門で、販売本数ではグレンフィディック、グレンリベットに次ぐ第3位を誇ります。
2023年11月、オールドヴィンテージ「ザ・マッカラン1926」がロンドンのオークションで約4億円(218万7500ポンド)で落札され、蒸留酒ボトルとして史上最高額を記録しました。この実績は、マッカランがスコッチウイスキーを象徴する存在であることを物語っています。
歴史と背景
1824年、スコットランドのエリー・ホール農場にて、アレクサンダー・リードによって創業されたマッカラン蒸溜所は、スコッチウイスキーの黎明期から業界を牽引してきました。蒸溜所の名前は、ゲール語の「Magh(肥沃な土地)」と「Ellan(聖コロンバ)」に由来し、この地が豊かな自然に恵まれた場所であることを象徴しています。
長年にわたり、マッカランは他の蒸溜所とは一線を画す品質へのこだわりと革新を続けてきました。2018年には、約1,400億円を投じた新しい蒸溜所を完成させ、その近未来的な建築デザインは注目を集めました。
製造工程のこだわり

出典:https://www.themacallan.com/en/inside-the-macallan/our-process/distinction-in-the-distillation
1. 厳選された原材料
マッカランは、蒸溜所周辺で栽培された「ゴールデン・プロミス種」という希少な大麦をメインに使用。この品種は収量が少ないものの、ウイスキーに豊かな風味とクリーミーなテクスチャーを与えるとされています。
現在は栽培する農家が少ないことから、他の品種も合わせて仕込みに利用しています。
2. スモールスチルによる蒸溜
新しいマッカラン蒸溜所には、やや小さめの蒸留器が導入されています。初留釜(ウォッシュスチル)の容量は13,000リットル。再留釜(スピリットスチル)が容量3,900Lリットル。
特徴的な小型のポットスチルは、蒸溜の際に液体との接触面積を増やすことで、濃縮されたリッチなニューメイクスピリッツを生み出します。これがマッカラン独特の濃厚で芳醇な味わいの基礎を築いています。
3. シェリー樽への徹底したこだわり
マッカランの品質を支える最大の要素は、樽への投資です。蒸溜所では主にスパニッシュオークのオロロソシェリー樽を使用。樽の製造プロセスにまで細かく関与し、ウイスキーに与えるオロロソシェリー樽の影響を最適化しています。
4. 熟成と管理
マッカランのウイスキーは全て100%天然色でボトリングされます。これは樽による自然な色合いだけで勝負するというこだわりを表しています。熟成環境や温度管理にも細心の注意を払い、品質を維持しています。
マッカランの代表的なシリーズ
- シェリーオークシリーズ: マッカランの伝統を象徴するシリーズ。100%スパニッシュオークのオロロソシェリー樽熟成。ラインナップは「12年」、「18年」、「25年」など。
- ダブルカスクシリーズ: ヨーロピアンオークとアメリカンオークのシェリー樽を組み合わせたシリーズ。オロロソシェリー樽100%。華やかで優しい甘みが特徴的。
- トリプルカスクシリーズ: ヨーロピアンオークとアメリカンオークのシェリー樽に加え、バーボン樽の原酒を合わせたシリーズ。多彩な層を持つ味わいが楽しめます。
マッカランは2025年4月から値上がり
マッカランの値上げは、毎年恒例といっても過言ではないほど定期的に繰り替えされていますが、25年4月からの値上がりも、ウイスキー好きとしては楽観視できない値上げ幅となっています。
製品名 | 容量(ml) | 現行価格 | 新価格 | 値上がり率 | 差額 |
---|---|---|---|---|---|
ザ・マッカラン シェリーオーク 12年 | 700 | 12,500 | 13,500 | 8.0% | 1,000 |
ザ・マッカラン シェリーオーク 18年 | 700 | 52,000 | 62,000 | 19.2% | 10,000 |
ザ・マッカラン シェリーオーク 25年 | 700 | 280,000 | 360,000 | 28.6% | 80,000 |
ザ・マッカラン シェリーオーク 30年 | 700 | 550,000 | 796,000 | 44.7% | 246,000 |
ザ・マッカラン ダブルカスク 12年 | 700 | 9,040 | 9,900 | 9.5% | 860 |
※全て税抜価格(円)で表記。
【ウイスキーレビュー】ザ・マッカラン シェリーオーク18年を評価
ザ・マッカラン シェリーオーク18年(2021年リリース)
The Macallan Sherry Oak 18 Year Old(2021 release)
- 43% 700ml
- 2021年リリース
- 樽:スパニッシュオークのオロロソシェリー樽で18年以上熟成。
- 抜栓時期:2023年1月
- テイスティング時期:2025年2月
- whiskybaseでの評価:89.58/100
- 小売希望価格(税抜):52,000円(2025年4月からは 62,000円)
- 楽天市場価格[2025年2月]:46,200円
- Amazon価格[2025年2月]:49,900円
「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」とは?
「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」は、「シェリーオーク12年」と並ぶマッカランの代表的なボトル。熟成年数18年以上のスパニッシュオーク・オロロソシェリー樽で熟成された原酒のみを使用しています。
かつてのマッカラン18年は、同一ヴィンテージの原酒をヴァッティングして造られていました。しかし、ヴィンテージごとに風味のばらつきが生じるため、現在では複数のヴィンテージをブレンドし、より安定した味わいを実現しています。
2015年までは蒸留年(ヴィンテージ)が記載されていましたが、2016年以降のボトルは、「リリース年(ボトリング年)」の表記へと変更。
長きに渡って続いた、マッカラン18年の「ヴィンテージ表記」ですが、ボトリング年の表記に変更されたことは、構成原酒の変化を示すものであり、2015~2016年は大きな転換期と言えますね。
定価と価格推移
シングルモルトスコッチウイスキーの売り上げで日本国内No.1の座を維持し続けるマッカラン。シングルモルトブームの追い風を受け、販売量を増やしてきました。しかし、2013年以降はシェリー樽や原材料の高騰により、毎年のように価格が上昇。特に人気の高い18年物は、わずか12年の間に大幅な値上がりを見せています。
2013年までの定価は 12,000円(税抜) で、実際の販売価格は10,000円前後でした。(現在では12年物ですら1万円では購入できませんが…) それが 2025年2月時点では47,000~50,000円 にまで上昇し、12年前と比べると約5倍の価格差となっています。
ザ・マッカラン シェリーオーク18年の定価と価格推移
- 2013年3月:税抜定価12,000円 → 18,000円
- 2015年4月:税抜定価18,000円 → 22,000円
- 2016年4月:税抜定価22,000円 → 27,000円
- 2019~2020年:税抜定価27,000円 → 30,000円
- 2022年4月:税抜定価30,000円 → 32,000円
- 2022~2023年:税抜定価32,000円 → 40,960円 (税込流通価格 55,000円前後)
- 2024年4月:税抜定価40,960円 → 52,000円 (税込流通価格 55,000円前後)
- 2025年2月:52,000円 (税込流通価格47,000~50,000円)
- 2025年4月(予定):税抜定価52,000円 → 62,000円
この急激な価格上昇により、かつては比較的手の届きやすい18年物も、今や高級品の領域に。今後も市場動向に注目が集まります。
香り
ドライレーズン、ドライイチジク、ドライパイナップル、オレンジビターズ、オロロソシェリー酒、アーモンドキャラメル、カカオ、シェリーブランデー、マドレーヌ、ブランデーケーキ、レモンタルト、紹興酒、ダークラム、なめし皮、甘草。
シェリーカスク由来のドライフルーツ香が主体。洋酒を使用した焼き菓子のような、リッチでアロマティックな風味。奥には甘草やシナモンのようなスパイス香も感じます。
加水後はストロベリーキャンディー、ラムネ菓子、あんず、洋梨。砂糖菓子やシロップのような甘い香りが一層開きます。
味わい
口当たりは柔らかすぎず、甘みの後に酸味を感じます。ミディアムライトボディ。中盤以降もなめらかな味わいが続き、徐々にドライで上品なビターテイストを感じます。フィニッシュにかけては穏やかですが、ドライフルーツと若干のスパイス香。フィニッシュにかけてはオロロソシェリー由来の酸化熟成のニュアンスが続きます。余韻は中程度
加水するとクリーミーでなめらかな味わいの中に、フルーティーさ、バニラ、キャラメルのような樽香が開きます。
評価
「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」の評価としては、「上品かつ上質なシェリーカスク。飲み慣れたらさぁ大変…」です。
久しぶりに「マッカラン18年」をテイスティングしましたが、最後に飲んだのがいつだったか思い出せないほどです(笑)。実はバーテンダーでも、オフィシャルボトルをじっくりテイスティングする機会は意外と少ないものです。特に「マッカラン18年」のような高級で入手困難なボトルなら、なおさらそのチャンスは限られています。
久しぶりに「マッカラン18年」を飲んだ感想としては、想像以上に上品で穏やかな印象でした。シェリーカスク由来の「濃厚さ」というよりも、丸みを帯びた優しいタッチが特徴的。価格差は大きいものの、「ザ・マッカラン シェリーオーク12年」の方がシェリーカスクらしい味わいをより強く感じられるため、両ボトルをブラインドテイスティングした場合、案外当てられない人も多いかも。
とはいえ、「繊細」というほど柔らかいわけでもありません。18年物らしいしっかりとした骨格と飲みごたえを備えています。ただ、正直なところ「もう少し濃厚だった記憶があったのに…」と感じる部分もありました。
現在では「高嶺の花」となった「マッカラン18年」に、少し過度な期待を抱いてしまったのかもしれません。定価52,000円(2025年4月以降は62,000円)という高価格帯のウイスキーですから、自然とその価格に見合った味わいを求めてしまうのも無理はありません。
ただ、値段を考慮しないのであれば、他の18年物シングルモルトの中でもトップクラスの実力を誇るのは間違いありません。その完成度の高さがゆえに、逆に評価が厳しくなってしまう部分もあるのでしょう(笑)。
もしこの「マッカラン18年」に慣れてしまったら、18年クラスで同等のクオリティを求めるのは至難の業です。特にオロロソシェリーカスク100%で構成されたウイスキーとなると、代替品はほぼ存在しないと言っていいでしょう。
「マッカラン18年」はリリース年ごとに微妙な味わいの違いがあり、ウイスキー愛好家たちの間でもリリース年別に評価が分かれることが多いようです。ウイスキーの専門評価サイト「Whiskybase」でも、それぞれのリリース年で異なるスコアがつけられています。
例えば、2020年リリースのボトルは「89.58/100」と高評価を得ています。一方で、2021年リリース分だけはなぜかデータが掲載されていないという不思議な状況も見られます。このような年ごとの違いも、マッカラン18年をコレクターや愛好家にとって特別な存在にしている要因の一つと言えるでしょう。
毎年異なるとは言っても、マッカラン蒸溜所の生産能力は高く、一時期枯渇状態だった「マッカラン18年」も、最近は定価水準で購入できるようになってきました。つまり、生産量が限られているとはいっても、それなりのボトリング本数は維持されているため、品質的には比較的に安定しており、リリース年の差も、徐々に感じなくなるのではと予想しています。
今回テイスティングしたのは2021年リリースのボトル。この時期はまだ流通量が完全には回復していない微妙なタイミングでした。それだけに、2024年リリースボトルなどと飲み比べてみると、経年的な変化や安定感の進化をより鮮明に感じられるかもしれませんね。リリース年ごとの特徴を味わうのも、「マッカラン18年」の楽しみ方の一つでしょう。
最後に飲み方ですが、これは言うまでもなく「ストレート」の一択でしょう。「マッカラン18年」の、なめらかで上品な口当たりは、ストレートか少量の加水のみで味わうべき。
もしこれを割って飲むなら、あくまで自宅で「マイボトル」を楽しむ時に限られるでしょう。そして、BARのような特別なシーンや、上司や目上の方と飲む場では、「マッカラン18年をハイボールで」と注文するのは避けたほうが無難(笑)。
「マッカラン18年」の品格を尊重する飲み方で、その価値を存分に堪能してみてください♪
「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」は、熟成年数18年以上のオロロソシェリー樽原酒で造られた、上品で深みのあるシングルモルトウイスキーです。
近年は生産量が増え、定価購入が可能になった一方、リリース年ごとの味わいの違いを楽しむのも魅力です。高級シングルモルトとして不動の地位を誇り、特別な場面にふさわしい一本。
シングルモルトスコッチウイスキー「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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