日本全国のウイスキー蒸留所解説【全24か所】おすすめ銘柄も紹介

最新の記事は「【2023年版】日本のウイスキー蒸留所76か所解説|おすすめ銘柄も紹介

日本全国のウイスキー蒸留所解説 長濱蒸留所

長濱蒸留所
オーナー:長濱浪漫ビール
創業年:2016年
所在地:滋賀県長浜市朝日町14-1
公式HP:https://www.romanbeer.com/article/nagahama-distillery-tour/
主な商品:アマハガン ワールドモルトエディション、シングルモルト長濱、長濱ニューメイク

クラフトビール造りからウイスキー製造へ。少量生産で「一樽入魂」

琵琶湖のほとり、滋賀県北東部に位置する長浜市はかつて水運の町としても栄えた宿場町で、歴史情緒あふれる街なみが漂う城下町でもあります。市街地の周辺には、浅井長政の居城「小谷城跡」や、関ヶ原の合戦で活躍した「石田三成の出生地」、織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍が激突した「姉川の合戦跡」など、戦国時代の武将たちの足跡を辿ることができます。

そんな観光都市としても有名な長浜市に2016年、初のウイスキー蒸留所となる長濱蒸留所が操業を開始しました。日本の蒸留所としては最小規模となるクラフトウイスキー蒸留所は、1996年創業の長濱浪漫ビールが二十周年の記念事業としてスタート。ビール造りのノウハウを活かし個性的で本格的なウイスキーを生産しています。

蒸留所はレストラン兼ビール醸造所となる江戸時代の米倉を改装した建物の中にあります。レストランからはガラス越しにポットスチルを見ることが可能。こんな蒸留所は海外でも存在していません(笑)ポルトガルのホヤ社製ポットスチルはアランビック型。当初は2基で生産していましたが2018年に増設し、現在は初留2基、再留1基の3基で蒸留しています。仕込みは1バッジ麦芽400 kg。モロミは発酵までの工程がビール造り兼用となっており、ノンピーテッドのドイツ産麦芽と、スコットランド産のピーテッド麦芽を使用。今後は滋賀県産や地元長浜の大麦麦芽をつかって生産する予定もあるそうです。熟成樽はさまざななタイプが使用されており、バーボン樽やシェリー樽の他、アイラ島のクオーターカスク、フィノシェリー、赤ワイン、白ワイン、アメリカン・モルトウイスキーのリフィルバレルなど、バリエーション豊富に使用。クラフト蒸留所ならではの挑戦的な熟成スタイルですね。

2020年には3年物となるシングルモルトをリリース。バーボン樽、シェリー樽、ミズナラ樽を巧みに使用したシリーズは第三弾まで発売されました。また、シングルモルトの前に発売された「AMAHAGAN(アマガハン 反対から読むと長濱)」も人気。このシリーズは海外のモルトウイスキーをベースに、長濱蒸溜所でつくられたモルト原酒をブレンドしたもので、レギュラーシリーズ4本のうち3本がWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)で賞を獲得しました。これまで、大手メーカー以外がつくった、海外原酒をブレンドしたウイスキーは高評価されることがほとんどありませんでした。多彩な熟成樽を使用することで、これまでにない新しいウイスキーを完成させ話題になったことは素晴らしいことですね。

 

おすすめのウイスキー

アマハガン ワールドモルトエディション

長濱ニューメイク

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長濱蒸溜所
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日本全国のウイスキー蒸留所解説 江井ヶ嶋蒸留所

江井ヶ嶋酒造公式ホームページから引用 http://www.ei-sake.jp/company.html#saiyou

江井ヶ嶋蒸留所
オーナー:江井ヶ嶋酒造
創業年:1984年(1919年にウィスキーの製造免許取得)
所在地:兵庫県明石市大久保町西島919
公式HP:http://www.ei-sake.jp/index.html
主な商品:ホワイトオーク シングルモルトあかし 、ホワイトオーク 地ウイスキーあかし、ホワイトオーク あかしレッド、ホワイトオーク あかし スペシャル ブレンド

瀬戸内と明石海峡の穏やかな風土が生み出すウイスキー。

江井ヶ嶋酒造は江戸時代となる1888年に創業した老舗の酒蔵。酒造りを340年以上続けています。そんな歴史のある江井ヶ嶋酒造がウイスキーの製造免許を取得したのは1919年。実は、寿屋(現在のサントリー)よりも古くからウイスキー製造の乗り出していました。記録上、免許を取得した年は古いものの、実際に生産されていたかはよくわかっていません。つまり日本で本格的なウイスキーを一番初めにつくったのは江井ヶ嶋酒造ではなく、サントリー山崎蒸留所となります。

本格的なウイスキーの生産に取りかかったのは1984年。敷地の一角に「ホワイトオーク蒸留所」(現在は名前を変え「江井ヶ嶋蒸溜所」)を開設しました。「あかし」というブランド銘でリリースされたウイスキーは、数ある地ウイスキーの中では頭一つ抜ける存在となります。かつては日本酒づくりの閑散期である夏の間のみ、ウイスキーの仕込みが行われていましたが、ウイスキーブームがきっかけとなり販売量が増加した影響で、現在は3月から10月までの間仕込みが行われています。

2019年に三宅製作所の新しいポットスチルを導入。それまでは中古の国産スチルを使用していたそうで、新しいものはこの古いポットスチルに似せて作成。「江井ヶ嶋らしさ」を保持したいが故に、同じような形となりました。スコットランドや日本の他蒸留所とくらべ、シェル&チューブのコンデンサー(蒸留液の冷却装置の一部)が太くなっているのが特徴的。1バッジの仕込み量は1トン。マッシュタンはステンレス製。仕込水は地下100メートルの深井戸から汲み上げています。

江井ヶ嶋蒸留所ではこれまで低価格帯のウィスキーを中心に販売してきたしたが、近年はシングルモルトの生産にも力を入れています。2020年から蒸留所名を冠した「シングルモルト江井ヶ嶋」シリーズを新たに発売。江井ヶ嶋ブランドの上位ラインナップとして一部の酒販店や公式ホープページでリリースしています。とくに「シングルモルト江井ヶ嶋シェリーカスク」や「江井ヶ嶋ブレンデッド シェリーカスクフィニッシュ」などのシェリー樽にこだわったボトルの評価が高く、入手困難になるほどの人気。かつては老舗の酒蔵がつくる「地ウイスキー」という扱いでしたが、現在では主要なジャパニーズウイスキー蒸留所として認知されており、今後の動向にも注目が集まっています。

 

おすすめのウイスキー

ホワイトオーク シングルモルトあかし

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ホワイトオーク
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ホワイトオーク 地ウイスキーあかし

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日本全国のウイスキー蒸留所解説 岡山蒸留所

岡山蒸留所
オーナー:宮下酒造
創業年:2015年
所在地:岡山市中区西川原184
公式HP:https://www.msb.co.jp/
主な商品:シングルモルトウイスキー岡山

知る人ぞ知る岡山の新鋭。海外で高評価されている蒸留所。

岡山蒸溜所は大正4年(1915年)創業の宮下酒造株式会社が経営。同社は岡山の銘酒「極聖」や、地ビール「独歩」などをつくる老舗酒造メーカー。ウイスキーの製造免許を取得したのは2011年ですが、ポットスチルを導入し本格的なウイスキーの蒸留が開始したのは2015年。まだ全国的にはあまり知られていない蒸留所です。同社では焼酎なども蒸留しており、その蒸留器で試験的にウイスキーも生産していましたが、2015年からは本格的な蒸留器(ハイブリッドスチル)が1基導入され、生産がスタートします。

蒸留所(蒸留棟)は宮下酒造が経営するレストラン「独歩館」の横に新設。レストラン内からガラス越しに ハイブリッドスチルを見ることができます。このスチルはウイスキーの他ジンなどのスピリッツを作ることが可能となるマルチな蒸留器で、他の蒸留所とは異なる個性的な原酒を生み出すことができます。使用する大麦麦芽は岡山産のスカイゴールデンなどを一部採用し、原料にもこだわっています。熟成樽はバーボン、シェリー、ミズナラなどを、ジャパニーズウイスキーで使われる基本的なものを使用。

2019年には初のシングルモルトとなる「シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク」を発売。3つの樽(バーボン、シェリー、ミズナラ)で寝かせた酒齢3年以上の原酒をブレンドしたもので、ドイツで開催された「マイニンガー・インターナショナル・スピリッツ・アワード2019」では金賞を獲得。さらに、世界的なウイスキーコンペとなる「ワールド・ウイスキー・アワード2020」では、シングルモルト・ノーエイジ部門で最高賞を受賞。国内よりも先に海外で高評価されています。

2020年にはシェリー樽での3年熟成「シングルカスクウイスキー岡山 シェリーカスクストレングス カスク M566」を発売。少量生産ならではの個性的なウイスキーを続けてリリースしています。2021年の春には「シングルモルトウイスキー岡山 サクラカスク デビュー」をリリース。このウイスキーはサクラ材でつくった樽で3年以上熟成させた原酒を使用しています。桜の木は近年流行りだしている、新しい樽材。かつてサントリーでは「基本的には桜の樽はウイスキーには不向き」としていましたが、知多のグレーンウイスキーに使用したりと、活用方法が研究され見直されているようですね。

 

おすすめのウイスキー

岡山蒸溜所 新歩 ニューボーンウイスキー

宮下酒造 岡山蒸溜所 新歩 ニューボーンウイスキー 200ml 62度
新歩

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 桜尾蒸留所

桜尾蒸留所
オーナー:サクラオブルワリーアンドディスティラリー(旧 中国醸造株式会社)
創業年:2018年
所在地:広島県廿日市市桜尾一丁目12番1号
公式HP:https://www.sakuraodistillery.com/
主な商品:桜尾ジン オリジナル、桜尾ジン リミテッド

モルトとグレーンを生産。広島にある革新的な蒸留所。

桜尾蒸留所は「旧 中国醸造株式会社」、現在は改名し「株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー(サクラオB&D)」の100年の節目である2018年にオープンした蒸留所です。広島県西部にある廿日市市は瀬戸内に面した海沿いある街。蒸留所からは海の向こうにある世界遺産「宮島」を見ることができます。宮島は厳島神社のある島で、世界中から多くの観光客が訪れています。

ステンレス製の発酵槽で仕込まれる量は1バッジ大麦麦芽1トン。マッシュタンも同じくステンレスで、ハンガリー産のもの。蒸留器はホルスタイン社製のハイブリッドスチル(再留)が1基、ランタン型(初留)が1基の計2基。本格的な2回蒸留をおこなっています。また、桜尾蒸留所は別棟でグレーンウイスキー造りもスタートさせています。原料はグレーンで通常つかわれるトウモロコシや小麦ではなく、国産の未発芽の大麦。大麦90%と大麦麦芽を10%の割合で仕込み、焼酎用のステンレス製蒸留器で蒸留しています。この蒸留器のシステムも通常の連続式蒸留器とは異なるもの。初留は減圧蒸留、再留は常圧。コラム精留器を組み合わせているという複雑なシステムとなっており、グレーウイスキーに使用しているのは世界で唯一、桜尾蒸留所のみとなっています。

現在は広島県産のボタニカルを使用してつくられたクラフトジン「桜尾ジン」が主力商品。2021年には3年の熟成となるシングルモルトウィスキーが発売される予定です。モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ジン。それぞれが個性的で他の蒸留所とは異なる独自路線の蒸留酒を生産する蒸留所。これからに期待しましょう。

 

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日本全国のウイスキー蒸留所解説 尾鈴山蒸留所

尾鈴山蒸留所
オーナー:尾鈴山蒸留所
創業年:2019年
所在地:宮崎県児湯郡木城町石河内656−17
公式HP:https://osuzuyama.co.jp/
主な商品:OSUZU MALT NEW MAKE

モルティングは手作業。尾鈴山山中で造られているウイスキー。

尾鈴山蒸留所は宮崎県・尾鈴山の山中にある豊かな山の蒸留所。老舗焼酎メーカー黒木本店が2019年に創業しました。同メーカーは「百年の孤独」や「中々」などの有名な焼酎を生産。代表の黒木信作氏は「甦る大地の会」という農業生産法人も経営しており、焼酎やイスキーの原料となる芋や大麦はすべて自社で調達しています。

大麦は「はるしずく」「はるか二条」という品種を使い、自社で製麦。製麦と言えば、スコットランドの伝統な製法「フロアモルティング」を思い浮かべますが、尾鈴山蒸留所ではそれができる設備がありません。精麦は大きなプラスチック容器を使い浸麦し、温室(ビニールハウス)の中で手作業で行っているとのこと。生産量を増やすことができない古式な製法ですが、愛情豊かにモルトがつくられているのに間違いありません。

2021年の時点で仕込みは1バッジ大麦麦芽800㎏。「手作業モルティング」の割には立派な生産量です。発酵槽は宮崎県産の杉材でつくられたもので、焼酎と兼用。蒸留器はステンレス製の焼酎用蒸留器2基と、ウイスキー用銅製ポットスチルが1基。焼酎用で初留を行い、ポットスチルで再留しています。

蒸留所の開設に至っては、先代の社長 黒木敏夫さんがスコットランドのエドラダワー蒸留所に感銘を受けて決意したようで、その遺志を2代目が継ぎ生産されています。エドラダワーのように少人数・少量生産でこだわりのウイスキーを造る。まさに真のクラフトウイスキーとよべる蒸留所だと思います。

 

おすすめの商品

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日本全国のウイスキー蒸留所解説 嘉之介蒸留所

写真は「鹿児島県観光サイトかごしまの旅」から引用 https://www.kagoshima-kankou.com/guide/52764/

嘉之介蒸留所
オーナー:小正醸造
創業年:2017年
所在地:鹿児島県日置市日吉町神之川845-3
公式HP:https://kanosuke.com/
主な商品:嘉之助ニューボーン

鹿児島の老舗焼酎メーカーが3基のポットスチルで世界を目指す。

嘉之助蒸留所公式ホームページより引用 https://kanosuke.com/special/singlemaltkanosuke2021-1st/

小正酒造は1883年に創業した老舗の本格焼酎メーカー。2017年、ウイスキー免許を取得し、鹿児島県日置市の吹上浜の丘上に建てられたのが嘉之助蒸溜所。世界に通用するウイスキーを造りたいと強い決意で始めた嘉之助は、社長 小正芳嗣氏の祖父の名前が名付けられています。

仕込みは1バッチ麦芽1トン6000リットルの麦汁を抽出できます。設備は三宅製作所のものが使われており、マッシュタン、ステンレス製の発酵槽、ポットスチルとすべてが三宅製。発酵槽が床に埋め込まれているのスタイルは焼酎の蔵と同じように作成されたからで、どの蒸留所へ見学に行っても見られない焼酎メーカーだからこその設計です。ポットスチルはサイズが異なる3つのタイプあり、それぞれ容量、形状、ラインアームの角度が微妙に異なっており、多彩な原酒を生み出すことができるように工夫されています。一番大きいものは容量6000リットル。中は3000。小は1600。冷却装置は3基とも屋内ワームタブとなっています。

また、小正醸造では日置にある焼酎蔵でグレーンウイスキーの製造も行っています。焼酎用のステンレス蒸留器を使い、自社のモルトとグレーンの原酒をブレンドしたウイスキーを将来的にリリースする予定とのこと。その他「メローコヅル」と呼ばれるオーク樽熟成を施した米焼酎もつくっており、全量を樽熟成させた初となる商品として話題になっています。焼酎メーカーとしても新たな挑戦を続け、ウイスキー造りも積極的に行っています。

2018年にはニューポットを数量限定で発売し、その後8ヵ月間貯蔵した「嘉之助ニューボーン2018」を発売。2019年には16ヵ月間貯蔵の「嘉之助ニューボーン2019」。2020年にはイギリス産ピーテッド麦芽を使用した24ヵ月間貯蔵の「嘉之助ニューボーン2020ピーテッド」を発売。そして2021年6月、待望の3年熟成「シングルモルト嘉之助2021 FIRST EDITION」が登場。焼酎メーカーのウイスキー造りへの挑戦は始まったばかりです。

 

おすすめのウイスキー

嘉之助ニューボーン

 

※この記事は『ウイスキーガロア2021年4月号』を参考にし作成しています。

ウイスキーガロア2021年4月号

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日本でウイスキーをつくっている24か所の蒸留所をご紹介いたしました。

この他にも10か所以上の稼働蒸留所と建設中の蒸留所が存在しています。今後も記事を更新し、また新たな情報を皆様にお伝えしていきたいです。空前のジャパニーズウイスキーブームによってたくさんの蒸留所が誕生しましたが、3年以上を経過する蒸留所はこれから本格的に増えていくこととなります。楽しみですね!

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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