日本全国のウイスキー蒸留所解説【全24か所】おすすめ銘柄も紹介

最新の記事は「【2023年版】日本のウイスキー蒸留所76か所解説|おすすめ銘柄も紹介

  1. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 厚岸蒸留所
        1. アイラモルトを目指してつくられた 北海道厚岸町にある蒸留所
        2. おすすめのウイスキー
  2. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 遊佐蒸留所
        1. ノンピート麦芽をメインに仕込み 鳥海山の麓にある蒸留所
  3. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 安積蒸留所
        1. 蒸留棟は酒蔵 老舗酒蔵のウイスキー
        2. おすすめのウイスキー
  4. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 八郷蒸留所
        1. クラフトビールに次いで目指すのは革新的な真のジャパニーズウイスキー
        2. おすすめの商品
  5. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 鴻巣蒸留所
        1. 埼玉県北東部の鴻巣市にある外国人が経営する蒸留所
  6. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 秩父蒸留所
        1. クラフトジャパニーズウイスキーのパイオニア 世界に「秩父」の名を轟かせた蒸留所
        2. おすすめのウイスキー
  7. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 秩父第二蒸留所
        1. チャレンジ精神を忘れず原酒の安定供給を目指す 秩父の第二蒸留所
  8. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 ガイアフロー静岡蒸留所
        1. 軽井沢の蒸留器を復活させた蒸留所 2020年に序章となるシングルモルトを発売
        2. おすすめのウイスキー
        3. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 新潟亀田蒸留所
        4. はんこメーカーが目指すのは世界に認められるジャパニーズウイスキー
  9. 日本全国のウイスキー蒸留所解説 三郎丸蒸留所
        1. 北陸で唯一のウイスキー蒸留所。鋳造製ポットスチルに世界が注目。
        2. おすすめのウイスキー

日本全国のウイスキー蒸留所解説 厚岸蒸留所

厚岸蒸留所
オーナー:堅展実業
創業年:2016年
所在地:北海道厚岸郡厚岸町宮園4丁目109-2
公式HP:http://akkeshi-distillery.com/index.html
主な商品:厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露、厚岸ウイスキー SARORUNKAMUY

アイラモルトを目指してつくられた 北海道厚岸町にある蒸留所

北海道厚岸町は牡蠣の生産で有名な小さな港町。 アイヌ語の「アッケシイ」が名前の由来となっており、その意味はズバリ「カキのあるところ」。そんな厚岸町に2016年に誕生したのが厚岸蒸留所。生産開始から4年程しか経過していませんが、つくられたウイスキーは品評会で高く評価されており、日本のモルトファンだけでなく、世界中が注目するモルトウイスキー界の新鋭といえる存在となっています。

「アイラモルトのようなウイスキーが作りたい」。蒸留所にコンセプトははっきりとしたものでした。厚岸蒸留所はプラン作りから全ての蒸留器具、蒸留試験に至るまで、スコットランドのフォーサイス社(ポットスチルの製造メーカー)によるコンサルティングによってつくられました。フォーサイス社の技術者が2か月以上現地に滞在し、ウイスキーのノウハウを一から伝えていったそうです。スコッチの伝統に乗っ取った形で生産が行われているのは、ジャパニーズウイスキー全体に言えることですが、全てのプランニングをフォーサイス社(スコットランド人)によって進められた蒸留所というのはこれまでになく、日本の蒸留所としては厚岸が初となっています。

仕込みは1バッチ麦芽1トン。麦芽はスコットランド産がメインですが、地元厚岸町の「りょうふう」という二条大麦も使用されています。ノンピートとピーテッドの2種類のタイプを生産しており、比率は半々。アイラ島のようなウイスキーを造りたいのであれば、全てをピーテッド麦芽にしてもいい訳ですが、多種多様な原酒を生産し熟成されない限りは、蒸留所の未知なる可能性が開拓できません。また、シングルモルトだけでなくブレンデッドウイスキーを生産することも視野に入れた場合、クセの少ないモルト原酒も必要になりますので、生産比率が半々であることには納得できますね。

2018年からニューボーンシリーズ「ファウンデーション」をリリース。その後、2020年には初のシングルモルトとなる「サロルンカムイ」をリリースしています。そして、これまで200mlの小さなサイズの販売でしたが、2020年10月には初の700mlボトルの3年物「厚岸シングルモルトウイスキー寒露」が15000本限定で発売されました。日本の24節気をタイトルにしたシリーズはまだ始まったばかり。まだ新しい蒸留所なので、ウイスキーの販売を焦って欲しくはありませんが、リリースされる商品に注目していきたいですね。

 

おすすめのウイスキー

厚岸ウイスキー サロルンカムイ

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厚岸 ニューボーン

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日本全国のウイスキー蒸留所解説 遊佐蒸留所

遊佐蒸留所
オーナー:金龍
創業年:2018年
所在地:山形県飽海郡遊佐町吉出字 カクジ田20番地
公式HP:https://yuza-disty.jp/
主な商品:なし

ノンピート麦芽をメインに仕込み 鳥海山の麓にある蒸留所

遊佐蒸留所 公式ホームページより引用 https://yuza-disty.jp/company/#access

山形県遊佐町に2018年にオープンした遊佐(ゆざ)蒸留所は、庄内平野の北端にあり、日本百名山の一つでもある鳥海山を背後に面した静かな土地。周りには米どころ山形を象徴する豊かな田園風景が広がる穀倉地帯となっています。これまでの日本のウイスキー蒸留所にはない、豊かな実りを感じさせる環境でウイスキー造りが始まったのは2018年11月。厚岸と同じく、プランニングはスコットランドのフォーサイス社によるもので、技術者からウイスキー造りを教わったのは2人の若い女性スタッフ。酒造りは初めてとのことですが、地元を盛り上げ、世界一のウイスキーをつくるという熱い想いには心を打たれます。

創業したのは地元焼酎メーカー「金龍」。仕込みは1バッチ1トン。ノンピーテッド麦芽をメインに仕込んでいますが、ピーテッド麦芽の仕込みも行っています。マッシュタンはステンレス製。発酵槽は木製のダグラスファー(ベイマツ)。ポットスチルは初留はストレートヘッド型で、再留はバジル型。ラインアームは下向きで比較的長いのもが採用されています。

生産が始まったばかりで、蒸留所の見学は予定されていません。少ないスタッフで製造しているので対応するのが難しいでしょうから、今は静かに見守っていきたいですね。山形と言えば日本酒が有名ですが、近い将来 東北を代表するウイスキー蒸留所になってくれることに期待しています。

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 安積蒸留所

安積蒸留所
オーナー:笹の川酒造
創業年:2016年
所在地:福島県郡山市笹川1丁目178
公式HP:http://www.sasanokawa.co.jp/
主な商品:安積The First

蒸留棟は酒蔵 老舗酒蔵のウイスキー

笹の川酒造は1765年に福島県郡山市で創業した老舗の蔵元。終戦直後の1946年にウイスキーの製造免許を取得。代表的な銘柄「チェリーウイスキー」は1980年代に一世を風靡しました。一時期はウイスキーの生産を休止していましたが、ウイスキーの需要増加を受け再び生産開始に乗り出しました。そして2016年に操業開始したのが安積蒸留所。笹の川酒造の敷地内にあった古い蔵を改装し、蒸留塔にしています。マッシュタンとポットスチルは共に2基ずつ。制作は三宅製作所。仕込みは1バッチで麦芽400キロ。熟成にはミズナラ樽、ワイン樽、ラムカスクなど様々な樽が使われています。また、新しく木桶発酵槽を導入。酵母はアメリカのディスティラリー酵母を主に使用していますが、老舗の蔵元らしく、試験的に清酒酵母などでも仕込みを行っており、他の蒸留所とは違ったユニークなウイスキー製造にも力を注いでいます。

生産開始から3年後の2019年12月に「安積THE・FIRST」を発売。2020年の12月にはフェノール値50 ppm ではへビリーピーテッドタイプの「安積 ピーテッド」がリリースされました。ちなみに蒸留所名の「安積(あずみ)」は、この辺りの昔の地名。万葉集にも歌われている由緒ある土地となっています。

敷地内にひときわ目立つ緑色の建物の中には、戦前から使用されていたアロスパス式の連続式蒸留機(フランスのメル社が開発したもので、主にグレープスピリッツを蒸留に利用するための蒸留器)が入っています。現在は稼動していませんが、国内でも僅かしか残っていないレトロな設備。見てみたいものです。

 

おすすめのウイスキー

シングルモルト 安積 ザ ファースト ピーテッド

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 八郷蒸留所

八郷蒸留所
オーナー:木内酒造
創業年:2020年
所在地:茨城県石岡市須釜1300-8
公式HP:http://kodawari.cc/
主な商品:なし

クラフトビールに次いで目指すのは革新的な真のジャパニーズウイスキー

茨城県石岡市八郷地区。みかん栽培では北限、りんご栽培では南限となるためこの地は、1年を通して果実が育つ環境であることから農業が盛んです。そんな自然の恵みが豊富な地域に2020年に誕生したのが八郷蒸留所。

運営元の木内酒造は「常陸野(ひたちの)ネストビール」で有名な 酒造メーカー。ビールの他、清酒、梅酒、焼酎、ワインも手がけています。2016年からウイスキー作りの計画をスタート。もともと八郷地区で地元食材を使ったレストランを経営していたことから、八郷で蒸溜所を開設することとなります。蒸留所の敷地は広大な広さで約2000坪。蒸留所自体は新設されたものではなく、昭和40年代に建てられた古い公民館を再利用し建設しています。外観は確かにそれっぽい感じ。ウイスキーの蒸留所らしさはありませんが、そこも個性的でクラフト蒸留所らしくていいですね。

八郷蒸留所では他のメーカーと違い、様々な穀物を使ってウイスキーを製造しています。大麦麦芽の他、小麦、米、そば、トウモロコシなどを使用し、既存の常識にとらわれない新しい形でウイスキーづくりに取り組んでいます。 ポットスチルはフォーサイス社製のストレートヘッド型。発酵槽はヨーロピアンオークのミックス材や、フランス産のアカシヤ材が使われています。酵母は自家製培養のオリジナル酵母。ビールや清酒造りをしているメーカーらしく、オリジナリティある同社の技術・ノウハウが活かされています。最終的に目指していきたいのは完全に国産となるウイスキー。原料から酵母に至るまでを純国産で造ることを理想としています。

木内酒造の経営するレストレンは東京にもあります。JR秋葉原駅〜御徒町駅間の新商業施設「SEEKBASE AKI-OKA MANUFACTURE」にある「常陸野ブルーイング 東京蒸溜所」は、本格的な蒸留設備を併設したダイニングバーとなります。木内酒造の常陸野ネストビールや、クラフトジンを飲むことができます。さらに、茨城の銘柄牛や銘柄豚、常陸野産の野菜を使った料理を味わうこともできます。将来的にウイスキーを飲むこともできるようになるでしょう。

 

おすすめの商品

常陸野ネストビール

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日本全国のウイスキー蒸留所解説 鴻巣蒸留所

鴻巣蒸留所
オーナー:光酒造
創業年:2020年
所在地:埼玉県鴻巣市小谷625
公式HP:https://hikaridistillery.com/
主な商品:2025年頃販売予定

埼玉県北東部の鴻巣市にある外国人が経営する蒸留所

現在スコットランドには、日本企業がオーナーとなっている蒸留所がいくつも存在していますが、鴻巣蒸留所は逆パターン。外国人が経営する日本初となるウイスキー蒸留所となっています。創業者はエリック・チェア氏。英国で化学製品メーカーの CEO も務めています。蒸留所は 東京から JR 高崎線の電車に乗って1時間ほどにある、埼玉県鴻巣市。2020年にオープンしたまだ新しい蒸留所です。

蒸留所の外観は日本の酒造イメージさせて建設されました。日本の建築技術にスコットランドらしいデザインが加わった、蒸留所には見えないおしゃれな外装。その辺のモダンさが外国人経営者らしいところです。スタッフは社長であるエリック氏を含めわずか4名。日本でも最小クラスの小さなクラフト蒸留所となっています。

仕込みはノンピート麦芽とピーテッド麦芽の両方を使用。いずれは地元鴻巣でつくられた大麦も使いたいとのこと。発酵槽はステンレス製合計6基。酵母は海外から取り寄せた数種類のイースト菌を使用しています。蒸留器は初留がランタンヘッド型。再留がバルジ型。樽詰のアルコール度数はスコッチウイスキーでも採用されているスタンダードな度数である「63.5%」。熟成樽はファーストフィル・バーボン樽で、ダンネージ式の4段積みで熟成しています。

ウイスキーの販売についてはまだ未定ですが、2025年以降のリリースを考えているそうです。そしていつかは宿泊設備を併設したビジターセンターもつくりたいのだとか。日本のウイスキー蒸留所の近くには宿泊施設はありませんから、もし実現できれば話題になること間違いなし。多くのウイスキーファンが泊まりに来るでしょうね。ウイスキーは無理にリリースせず、じっくりと仕上げてほしいと思っています。

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 秩父蒸留所

秩父蒸留所
オーナー:ベンチャーウイスキー
創業年:2007年
所在地:埼玉県秩父市みどりが丘49
公式HP:https://www.facebook.com/ChichibuDistillery
主な商品:イチローズモルトミズナラウッドリザーブ、イチローズモルトダブルディスティラリーズ、イチローズモルト ワインウッドリザーブ、イチローズモルト&グレーン

クラフトジャパニーズウイスキーのパイオニア 世界に「秩父」の名を轟かせた蒸留所

蒸留開始から14年。秩父蒸留所は単なるクラフトウイスキー蒸留所ではなく、今や世界中で高く評価されているジャパニーズウイスキー蒸留所です。埼玉県秩父市の工業団地に誕生した無銘のちいさな蒸留所は「イチローズモルト」として国内外で大きな反響を受けています。

秩父蒸留所の創業は2007年。翌年2008年の2月に最初の蒸留をスタートさせたときは、創業者 肥土伊知郎 氏を含めてもスタッフは僅か 3名。1バッジの仕込みもわずか400 kgという、まさにベンチャーなウイスキー蒸留所でした。ポットスチルはフォーサイス社製ですが、2000リットルの極小サイズで現在はこのような小さな容量のスチルは造られていないようです。発酵槽は木桶のミズナラ材。手作り感のあるウイスキーは、徐々にファンの間で話題となっていきます。

肥土伊知郎 氏は伝統に乗っ取った製法も大事にしていますが、新しい試みにチャレンジすることもウイスキーブームが起こる以前から重要視していました。熟成樽では「チビダル」などオリジナルの容量のものを製造したり、原料の麦芽を地元 埼玉県産のものを利用することなど、多くのことに取り組みます。最も印象的だったのが「フロアモルティング」。伝統的な製麦方法であるフロアモルティングは現在、本場スコットランドでもその製法を使う蒸留所はほとんどありません。しかし秩父蒸留所では伝統的な製法もウイスキーづくりの基本とし、フロアモルティングの製法を取り入れるために、イギリスの「モルトスター」や蒸留所でスタッフを研修させています。2012年には「イチローズモルト 秩父 ザ・フロアーモルテッド」を発売。フロアモルティングでつくられた貴重な国産ウイスキーとして話題となりました。秩父蒸留所でつくられる全てのウイスキーが、フロアモルティングで製麦したものを原料にしているわけではありませんが、手間、時間、労力をかけてウイスキー造りを行うという、蒸留所としての姿勢には感銘を受けますね。

設立から5年後となる2013年には蒸溜所内に自社の製樽工房をつくり、熟成樽の制作にもチャレンジします。埼玉県の羽生市にかつてあった「マルエス洋樽」の技術者からクーパレッジに必要な技術を学びます。現在は北海道産のミズナラを使ったミズナラカスクも独自で作るまでに。2009年からは毎年、ミズナラ原木を入手するために北海道に行きオークションで落札しているとのこと。ミズナラはバーボンの10〜20倍の相場となる高価なもの。ウイスキーのために肥土さん自らが厳選しているそうです。地元 秩父にもミズナラの群生地はあるようですが、調査中。将来的には大麦麦芽から樽までを全て秩父産の原料でのウイスキーづくりが行われることでしょう。

2020年10月、秩父蒸留所では初となる10年物の「THE FIRST 10」をリリース。2018年には第二蒸留所を新たにオープンさせ、秩父のウイスキーづくりの挑戦が終わることはありません。

 

おすすめのウイスキー

イチローズモルトミズナラウッドリザーブ

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イチローズモルト
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イチローズモルトダブルディスティラリーズ

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イチローズモルト ワインウッドリザーブ

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イチローズモルト&グレーン

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 秩父第二蒸留所

秩父第二蒸留所
オーナー:ベンチャーウイスキー
創業年:2018年
所在地:秩父蒸留所から約400m離れた場所
公式HP:https://www.facebook.com/ChichibuDistillery

チャレンジ精神を忘れず原酒の安定供給を目指す 秩父の第二蒸留所

秩父蒸留所からわずか400m程離れた場所に2019年に施行した秩父第二蒸留所は、第1蒸溜所の5倍の生産能力を誇っており、今やベンチャーウイスキーにとっての重要拠点です。イチローズモルトは原酒不足の影響から供給が追い付いていない状況が続いていますが、第二蒸留所の完成によって生産量をあげることで、商品の安定供給を目指しています。

第一と異なるのは生産規模だけではありません。第一蒸留所の開設当時、スタッフの数などさまざまな要因によって「こだわる」ことができなかったウイスキーづくりを、第二蒸留所では実現することができるようになっています。蒸留の加熱方式には、スコッチの伝統的な直火焚き蒸留を採用。ガスによる熱源で間接蒸留(スチーム加熱蒸留)よりも芳ばしい原酒を生み出すことができます。その他、秩父らしい挑戦的な試みとしては、発酵をさせる木桶にフレンチオークが使用されている点が挙げられます。フランスから職人を呼び、現地で組み立てて完成させたこだわりの発酵槽からはどのようなウイスキーができるでしょうか。第一のミズナラ発酵槽とはまた違う原酒が生み出されることはまちがいありません。

ポットスチルはスコットランドのフォーサイス社製。初留、再留ともにストレートヘッドで両方ともガス直火焚き。第一蒸留所のものと比べるとかなり大きく見えますが、スコットランドの一般的な蒸留器のサイズといったサイズ。いままでが「クラフト」(下手したら密造酒レベル(笑))だったのに対し、第二は本格的な生産を可能にする設備が備わっています。

第2蒸留所の操業によって、秩父蒸留所は生産量を大幅に増やすことができました。世界的な人気を誇るイチローズモルト。蒸留所が大きくなったとはいえ、これから生産されるウイスキーに対する期待は、生産規模に見合わない程の大きなものとなるでしょう。

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 ガイアフロー静岡蒸留所

ガイアフロー静岡蒸留所 公式ホームページより引用 https://shizuoka-distillery.jp/

ガイアフロー静岡蒸留所
オーナー:ガイアフローディスティリング
創業年:2016年
所在地:静岡県静岡市葵区落合555番地
公式HP:https://shizuoka-distillery.jp/
主な商品:シングルモルトウィスキー静岡 プロローグK

軽井沢の蒸留器を復活させた蒸留所 2020年に序章となるシングルモルトを発売

ガイアフローはウイスキーの輸入インポートをする会社。2013年にはブラックアダー・インターナショナル社の正規輸入元となります。2014年にガイアフローディスティリング株式会社を設立。ウイスキーの生産の準備を本格的に開始。そして2016年、静岡県初となる本格的なウイスキー蒸留所としてガイアフロー静岡蒸溜所を操業します。蒸留所はJR静岡駅から車でおよそ40分のところにある、オクシズ(奥静岡)と呼ばれる自然豊かな土地に建設されました。蒸留所の外観には静岡産のヒノキが使用され、周りには冷却水用のため池があり、スコットランドの蒸留所のような景観です。

ガイアフローは2015年3月に、閉鎖した軽井沢蒸留所のウイスキー製造設備を購入。設備は老朽化してはいたものの、適正なメンテナンスを施すことで再利用可能となり、静岡蒸留所へ移設されました。ポットスチルは2種類で計3基。軽井沢蒸留所から移設した初留釜「K」(直火炊き蒸留)と、フォーサイス社製の新しいポットスチル「W」(初留・再留 各1基)があります。発酵槽は静岡県産の杉材と、オレゴンパイン材でつくられたものの2種類。熟成庫は伝統的なダンネージ式と移動ラック式を採用しています。

2020年には念願だった3年物のシングルモルトウイスキー「プロローグK」をリリース。軽井沢のポットスチル「K」のみで仕込まれた原酒を、ファーストフィルのバーボン樽で熟成させたもので、原料には国産大麦麦芽が50%以上使用されています。 2021年にはプロローグKに次ぐ第2弾のシングルモルトのリリースを予定。様々な原酒づくりをおこなっている静岡蒸留所の、今後のウイスキーには注目が集まっています。

蒸留所は見学ツアーが可能。コロナ禍においても感染予防を徹底させ継続しています。また、静岡蒸留所はプライベートカスク(1樽買い)をおこなっている数少ない蒸留所。毎年オーナーを募集していますので気になる方は公式HPをチェックしてみてください。

 

おすすめのウイスキー

シングルモルトウィスキー静岡 プロローグK

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 新潟亀田蒸留所

新潟亀田蒸溜所 公式ホームページより引用 https://www.niigata-distillery.com/

新潟亀田蒸留所
オーナー:新潟小規模蒸溜所
創業年:2021年蒸留開始
所在地:新潟市江南区亀田工業団地1-3-5
公式HP:https://www.niigata-distillery.com/
主な商品:なし

はんこメーカーが目指すのは世界に認められるジャパニーズウイスキー

2021年2月、新潟であらたな蒸留所が始動したことを知らない方のほうが多いかもしれません。新潟亀田蒸溜所は全国に120店舗を展開するハンコメーカー大手「大谷」の取締役 堂田浩之氏が創業したクラフトウイスキー蒸留所。 JR 新潟駅から車で10分のところにある亀田工業団地と呼ばれるエリアにあります。

「元々ウイスキーが好きだったから」というシンプルな理由から、蒸留所を作ることを決意した堂田さん。ハンコ業界はペーパーレス化が進み縮小傾向にあるなか、世界でも認められるビジネスとしてもウイスキーづくりに魅力を感じていたようです。新潟小規模蒸溜所は2019年プロジェクトを開始。ハンコ倉庫の一部を改造し蒸留所をつくりました。コロナ禍の影響で2020年に開始するはずだった蒸留ができず、持ち越しになり2021年2月に一年遅れて生産をスタート。仕込みは1バッジ400㎏。発酵槽はイタリア製のアカシア材が3基。スコッチではあまり使用されていない珍しいものとなります。ポットスチルはランタン型の小さいもので、2000リットルが初留釜で蒸留されています。熟成樽はシェリー樽とバーボン樽を使用する予定。

ハンコメーカーの大きな挑戦は小さな蒸留所から。ウイスキーづくりに多様な業界からの参入があることは喜ばしいことですね。リリースの時期はまだ未定ですが、3年後のウイスキーを楽しみに待ちたいと思います。

 

日本全国のウイスキー蒸留所解説 三郎丸蒸留所

三郎丸蒸留所
オーナー:若鶴酒造
創業年:1952年(2017年リニューアル)
所在地:富山県砺波市三郎丸208
公式HP:https://www.wakatsuru.co.jp/saburomaru/
主な商品:サンシャインウィスキー、ムーングロウ 、三郎丸 ニューポット、三郎丸0 THE FOOL

北陸で唯一のウイスキー蒸留所。鋳造製ポットスチルに世界が注目。

北陸・富山県で本格的なウイスキーづくりを行っている三郎丸蒸留所の創業は1952年。「サンシャインウイスキー」は富山を代表する地ウイスキーとして長年愛されています。2017年に大規模な改修を行いリニューアル。その後18年にはマッシュタンを最新鋭のものに入れ替え、19年6月に世界初の鋳造製(ちょうぞうせい)のポットスチル「ZEMON」を導入し、進化し続けている蒸留所です。

ZEMON は三郎丸の稲垣貴彦氏と高岡の老子製作所が共同開発した蒸留器。鋳物(いもの)・鋳造(ちゅうぞう)とは、材料に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属を使用し、融点よりも高い温度で熱して液体にしたあとに専用型に流し込んで、目的の形状に固める加工方法の一つ。

鋳造(ちゅうぞう、英: casting)は、材料(主に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属)を融点よりも高い温度で熱して液体にしたあと、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法です。三郎丸ではこの技法でつくったポットスチルに対して特許を取得(特許第6721917号)。その高い技術から、経済産業大臣賞などの数々の賞を受賞。ポットスチルとしては前代未聞の挑戦となっており、製造されるウイスキーに世界中が注目しています。ZEMONは初留・再留の2基。同じ型でつくった全く同じサイズ。錫(すず)が約8%配合された独自の配合でつくられた超合金となります。

発酵槽は容量6000 L の木桶製で、木材はカナダ産のダグラスファーでつくられたもの。ホーロータンクで発酵させたもろみを移し替え、24時間木桶で発酵させています。これによって乳酸菌発酵が安定し、木桶には独自の乳酸菌が住み着くこととなります。乳酸菌やあらゆる微生物がウイスキーの香気成分におおきな影響をもたらします。まだ仕込みの回数(年数)が少ない状態ですが、いずれは三郎丸ならではのスピリッツが生み出されることでしょう。熟成庫はこれまで蒸留棟に併設していましたが、2020年にウッドラック式の熟成庫を新設しています。

大麦麦芽はスコットランド本土のピートを用いてつくられた50 ppmのヘビリーピーテッド。そのほかアイラ島産のピートを炊き込んだ麦芽も使用。フェノール値は45ppmと本土の物より数値が低いものですが、潮気と複雑さが感じられる全く異なるタイプのピーテッド麦芽となっており、本土のものと明らかに個性が違うようです。2種類のピーテッド麦芽から異なるタイプの原酒を生み出しています。

 

おすすめのウイスキー

サンシャインウィスキー

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ムーングロウ

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三郎丸 ニューポット

十年明 マンサニージャ カスク フィニッシュ

 

最後のページでは中国・九州地方などに誕生した新しい蒸留所が続々登場!

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