【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|奈良県

出典:https://www.kamikiwhisky.com/
66,神息酒造 奈良蒸溜所
オーナー: YOSHINO SPIRITS
創業年:2023年
所在地:奈良県宇陀郡曽爾村山粕1635−1
公式HP:https://www.kamikiwhisky.com/
奈良県内初となるウイスキー蒸留所。奈良県最東部、ススキの名所「曽爾(そに)高原」の雄大な自然に抱かれた地に「神息(かみき)酒造 奈良蒸留所 KAMIKI DISTILLERY」はあります。古民家を改修し、蒸留設備を導入。この蒸留所の代名詞とも言えるのが、世界で初めて「吉野杉」の樽で熟成させたウイスキーブランド『KAMIKI』です。
古来より多くの寺院の建材として使われてきた吉野杉。その独特で清々しい香りと、どこか懐かしい柔らかな質感は、日本人の心に癒しを与えてきました。神息酒造では、この吉野杉を贅沢に樽材として使用する「オリジナルの二次成熟(フィニッシュ)」プロセスを確立。世界中のウイスキーファンを驚かせる、これまでにない清涼感と深みのある味わいを生み出しています。
同蒸留所のシングルモルトウイスキーは、2028年頃の出荷を予定しています。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|和歌山県
67,紀州熊野蒸溜所

出典:https://www.plumone.co.jp/kaisya-html/
オーナーの「プラム食品」は梅酒や果実の加工品などを製造販売している企業。会社の創立50周年となった2019年に、ウイスキー免許を取得し紀州熊野蒸留所を開設しました。
仕込水として富田川の伏流水を使用。原料はカナダ産のノンピート麦芽、スコットランドおよびニュージーランド産のピート麦芽を主に採用しています。
ワンバッチの仕込み量は麦芽500kg。2,000リットルの麦汁を得ています。発酵槽はオープンタイプのステンレスタンクで、約2,000リットルが4基。蒸留器はアメリカの「ABE」社製の銅製ポットスチル。初留は2,000リットル、再留は1,000リットル。ウイスキーの他、減圧蒸留器も備えており、ジンの製造も行っています。
商品としては、紀州熊野蒸所の原酒とスコッチをブレンドし、ミズナラ樽で熟成させたブレンデッドモルトウイスキー「Japanese Blended Malt Whisky 熊野」を販売しています。
紀州熊野蒸溜所|おすすめのウイスキー
Japanese Blended Malt Whisky 熊野
Japanese Blended Malt Whisky 熊野
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|鳥取県
68,倉吉蒸溜所

2015年にウイスキー製造免許を取得。海外産モルト原酒を使用した「倉吉」、ブレンデッドウイスキー「鳥取」などのウイスキーをリリース。
倉吉蒸留所の原酒のみを使用した「シングルモルトウイスキー松井」も発売しており、サクラやミズナラの樽で熟成したものと、ピーテッドモルトで仕込んだクセのあるタイプの3種類があります。
「シングルモルト松井 ミズナラカスク」と「シングルモルト松井 サクラカスク」に使用している熟成樽は、バーボンバレルのヘッド(鏡面)のみをミズナラ材や桜材に組み替えたもの。酒齢3年以上の原酒を使用しています。
その他、鳥取県名産の「梨」をボタニカルに使用したクラフトジンも造っています。
倉吉蒸溜所|おすすめのウイスキー

シングルモルト松井 ミズナラカスク
シングルモルト松井 ミズナラカスク
シングルモルト松井 サクラカスク
シングルモルト松井 ミズナラカスク
シングルモルト 松井 ピーテッド
シングルモルト 松井 ピーテッド
69,千代むすび 境港蒸留所

1865年創業の老舗酒蔵。「千代むすび」とは「永久に変わることのない人と人の固い結び、絆」を意味しているそうです。造り酒屋らしく日本酒の酵母で仕込みを行っています。
2021年にウイスキー製造免許を取得し、2024年にシングルモルトをリリース予定。蒸留は焼酎用の減圧蒸留器を使用してウイスキー造りが行われていますが、リリースされているボトルはスコットランド産の輸入原酒をメインとするものとなっています。
2023年には国内製造の銅製ポットスチルを導入し、本格的なモルトウイスキーの製造を開始。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|岡山県
70,岡山蒸溜所

岡山蒸溜所は大正4年(1915年)創業の宮下酒造株式会社によってつくられた蒸留所。同社は岡山の銘酒「極聖」や、地ビール「独歩」などをつくる老舗酒造メーカー。ウイスキーの製造免許を取得したのは2011年ですが、ポットスチルを導入し本格的なウイスキーの蒸留が開始したのは2015年となっています。
同社では焼酎なども蒸留しており、当初はその蒸留器で試験的にウイスキーを生産していました。2015年からはドイツのホルスタイン社製の蒸留器(ハイブリッドスチル)が1基導入され、本格的にウイスキーの生産をスタートさせます。

出典:https://www.doppokan.jp/
蒸留所(蒸留棟)は宮下酒造が経営するレストラン「独歩館」の横に新設。レストラン内からガラス越しに ハイブリッドスチルを見ることができます。
このスチルはウイスキーの他ジンなどのスピリッツを作ることが可能となるマルチな蒸留器で、他の蒸留所とは異なる個性的な原酒を生み出します。容量は1500リットル。初留、再留とも同じスチルです。
仕込み水は地下100mからくみ上げた旭川の伏流水で、硬度5㎎の極軟水。使用する大麦麦芽は岡山産のスカイゴールデンなどを一部採用。ワンバッジの仕込み量は375㎏。発酵槽はステンレス製で、ディスティラリー酵母、ビール酵母、日本酒用酵母を使っています。
2019年には初のシングルモルトとなる「シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク」を発売。3つの樽(バーボン、シェリー、ミズナラ)で寝かせた酒齢3年以上の原酒をブレンドしたもので、ドイツで開催された「マイニンガー・インターナショナル・スピリッツ・アワード2019」では金賞を獲得。
さらに、世界的なウイスキーコンペとなる「ワールド・ウイスキー・アワード2020」では、シングルモルト・ノーエイジ部門で最高賞を受賞。国内よりも先に海外で高評価されています。

2020年にはシェリー樽での3年熟成「シングルカスクウイスキー岡山 シェリーカスクストレングス カスク M566」を発売。少量生産ならではの個性的なウイスキーを続けてリリースしています。
2021年の春には「シングルモルトウイスキー岡山 サクラカスク デビュー」をリリース。このウイスキーはサクラ材でつくった樽で3年以上熟成させた原酒を使用しています。桜の木は近年流行りだしている、新しい樽材。かつてサントリーでは「基本的には桜の樽はウイスキーには不向き」としていましたが、知多のグレーンウイスキーに使用したりと、活用方法が研究され見直されているようですね。
2022年にはミズナラカスクで熟成させた5年物「シングルカスク岡山ミズナラカスク」や、シェリー樽で3年7か月熟成させた「シングルカスク岡山シェリーカスク」を発売。価格はどちらも77000円と高価ですが、ミズナラカスクはあっという間に完売しています。
岡山蒸留所|おすすめのウイスキー
シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク
シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|広島県
71,SETOUCHI DISTILLERY

日本酒「千福」を造る三宅本店が創業したウイスキーとジンを造る蒸留所。瓶詰め工場を再利用する形で蒸留所をオープンさせています。2022年から蒸留開始。
SETOUCHI DISTILLERYの仕込み水は自社の井戸から取り入れた「灰ヶ峰の伏流水」を利用しています。1バッチあたりの仕込み量は極めて小さく、麦芽250kg。英国産、オーストラリア産、国産の麦芽を用い、2本のローラーモルトミルで粉砕しています。
マッシュタンは1,000リットルの容量を持つステンレス製で、温水を4回に分けて注入。通常は1次麦汁と2次麦汁を分けて抽出していますが、ここでは4回の温水注入過程で行います。
発酵槽は、容量1,000リットルのビール用ステンレス製で、4基が備わっています。使用する酵母は、ドライの蒸留酒酵母やエール酵母などが混合されています。900リットルの麦汁に対し、酵母500gを投入し、1週間かけて発酵。

蒸留器はハイブリッド式が1基と、バルジ型のポットスチル1基の、計2つ。現在は、初留をポットスチルで行い、再留はハイブリッドスチルを使用。通常のミドルカットではなく、留液全体が適切なアルコール度数になるまで蒸留を続けるユニークなシステムを採用しています。熟成には主にオロロソシェリー樽を。貯蔵庫はラック式。
2022年4月には「ニューポット瀬戸内」をリリース。続けて2023年は「ニューボーン瀬戸内 Aged 1 Year」、2024年には「シングルカスクウイスキー ニューボーン瀬戸内 AGED 2 YEARS」を限定リリースしています。

SETOUCHI DISTILLERYで造られている「クラフトジン瀬戸内 檸檬」は、瀬戸内のレモンをキーボタニカルにした、柑橘の風味がしっかりと香る、クオリティの高いクラフトジン。ウイスキーよりも一足先に話題となっています。

2025年10月、ついに初のジャパニーズウイスキー『シングルモルトジャパニーズウイスキー瀬戸内 オロロソシェリーカスク』が登場しました。熟成には、あえて一般的なサイズよりも一回り小さい225リットルの「ホグスヘッド樽(オロロソシェリー)」を使用しています。樽が小さい分、瀬戸内の穏やかな潮風や寒暖差の影響をダイレクトに受け、3年という短い月日の中でも仕上がっています。
しかも、これらは全てシングルカスク(単一の樽からボトリング)。樽ごとの個性をそのまま楽しんでほしいという、造り手の想いが詰まった一期一会の味わいです。
SETOUCHI DISTILLERY|おすすめのウイスキー
シングルモルトジャパニーズウイスキー瀬戸内 オロロソシェリーカスク
シングルモルトジャパニーズウイスキー瀬戸内 オロロソシェリーカスク
72,SAKURAO DISTILLERY

オーナー: サクラオブルワリーアンドディスティラリー
創業年:1920年
所在地:広島県廿日市市桜尾一丁目12番1号
公式HP:https://www.sakuraodistillery.com
SAKURAO DISTILLERY(桜尾蒸留所)「旧 中国醸造株式会社」、現在は「株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー(サクラオB&D)」の100年の節目である2018年にオープンした蒸留所です。
蒸留所がある、広島県西部・廿日市市は、瀬戸内に面した海沿いある街。蒸留所からは海の向こうにある世界遺産「宮島」を見ることができます。宮島は厳島神社のある島で、世界中から多くの観光客が訪れています。
サクラオブルワリーアンドディスティラリーは、中国醸造時代の1920年にはウイスキー製造免許を取得しており、80年代には「戸河内」「グローリーエキストラ」などのウイスキーをリリースしていましたが、89年にウイスキーの蒸留は休止されました。SAKURAO DISTILLERYの開設により、再びウイスキーを生産しています。

仕込み水は小瀬川水系の伏流水。大麦麦芽はクリスプ社製のノンピーテッドと、50ppmのヘビリーピーテッドタイプを使用しています。ワンバッジの仕込み量は1トン。
ステンレス製の発酵槽とマッシュタンを使い、蒸留器はホルスタイン社製のハイブリッドスチル(再留)が1基と、ランタン型(初留)が1基の計2基。
別棟ではグレーンウイスキー造りもスタートさせています。グレーンの製造はステンレス製スチルに銅製のコラム塔を取り付けたハイブリッド蒸留器で行われています。初留はこの蒸留器で減圧蒸留。再留は既存の焼酎用ステンレス蒸留器で常圧蒸留。その後、コラム塔でアルコール度数を上がて精留しています。この特殊な蒸留システムをグレーンウイスキーに使用しているのは、世界で唯一SAKURAO DISTILLERYのみとなっています。
また、グレーンウイスキーの原料は、通常使用されているトウモロコシや小麦ではなく、国産の未発芽の大麦。大麦90%と大麦麦芽を10%の割合で仕込まれています。

ウイスキーの熟成は蒸留所内の「桜尾貯蔵庫」と、山地にある戸河内トンネル内「戸河内貯蔵庫」の二カ所で行われており、戸河内貯蔵庫で熟成させた原酒は「シングルモルト戸河内」として販売しています。戸河内トンネルは旧国鉄時代の「廃トンテル」。ダンネージ式で樽が積まれており、全長750mのスペースに4000樽の貯蔵が可能。
面白いのが熟成環境。非常に湿気の多い環境で熟成したウイスキーは樽の中身が減ることなく(エンジェルズシェアが無く)、水分が吸収されることでアルコール度数が落ちるそうです。

このことは、2021年にリリースされた初のシングルモルトウイスキー「シングルモルトジャパニーズウイスキー桜尾 1st Release CASK STRENGTH」と、「シングルモルトジャパニーズウイスキー戸河内 1st Release CASK STRENGTH」を比べると理解できます。桜尾のアルコール度数は54%であるのに対し、同じ3年物でありながら戸河内は52%となっています。
この二つを比べることで、戸河内貯蔵庫で熟成させたウイスキーは「量」は変わらないのに、アルコール度数が落ちるという、特異な状態が起こっていることを理解できます。

2022年からは通年商品のシングルモルト「桜尾」「戸河内」をリリース。同時に「シングルモルトジャパニーズウイスキー桜尾 シェリーカスク スティルマンズセレクション」も発売。「クリームシェリー樽」で熟成させた原酒を使用しています。
SAKURAO DISTILLERYではその他に、広島県産のボタニカルを一部使用しているクラフトジン「桜尾ジン」も生産しており、スピリッツコンペティションで高く評価されていることから人気となっています。
モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ジン。それぞれが個性的で他の蒸留所とは異なる独自路線の蒸留酒を生産するSAKURAO DISTILLERY。これからさらなる期待が高まります。


SAKURAO DISTILLERY|おすすめのウイスキー

シングルモルトジャパニーズウイスキー 桜尾
シングルモルトジャパニーズウイスキー 桜尾
シングルモルトジャパニーズウイスキー 戸河内
シングルモルトジャパニーズウイスキー 戸河内
ブレンデッドジャパニーズウイスキー戸河内
ブレンデッドジャパニーズウイスキー戸河内
73,SAKURAO DISTILLERY FOREST SITE
オーナー:サクラオブルワリーアンドディスティラリー
創業年:2025年
所在地:広島県廿日市市吉和
公式HP:https://www.sakuraodistillery.com
広島県廿日市市(はつかいちし)に本拠を置く「サクラオブルワリーアンドディスティラリー」から、ワクワクするようなニュースが届きました!2017年の蒸留開始以来、着実にファンを増やしてきた彼らが、次なるステージとして選んだのは、美しい山々に囲まれた内陸の地、吉和(よしわ)です。2025年3月3日、新蒸留所「SAKURAO DISTILLERY FOREST SITE(サクラオ ディスティラリー フォレストサイト)」の地鎮祭が執り行われ、その全貌が明らかになりました。
今回のプロジェクトの面白いところは、既存の「SAKURAO DISTILLERY(廿日市市)」との「対比」にあります。既存の桜尾は、瀬戸内海の潮風を感じる暖かい気候。一方、新設のFOREST SITEは山間部であり、渓流と豊かな山々に囲まれ、冬には雪も降る寒冷な気候です。
「広島県内の異なる気候風土(テロワール)でウイスキー造りを追求したい」という、作り手たちの飽くなき探求心が伝わってきますよね。全く異なる環境で熟成される原酒が、将来的にどのようなハーモニーを奏でるのか、今から楽しみでなりません。
新蒸留所は「蒸留棟」と「ビジター棟」の2棟構成で、大自然を全身で感じられる開放的なデザインになる予定。設備面でも一切の妥協がありません。ポットスチルはウイスキーの本場スコットランドの伝統を受け継ぐメーカーの製品を導入。ドイツの最新鋭の設備を組み合わせ、クオリティを極限まで高めます。
見学コースも設置される予定なので、私たちが実際にそのこだわりの工程やウイスキーの魅力を肌で感じられる日が来るのも、そう遠くはなさそう。
また、サクラオB&Dは現在、三井物産グループとの提携により、その経営基盤をさらに強固なものにしています。白井浩一郎社長は「100年を超える歴史の次の章へ」と意欲を語っており、この「FOREST SITE」が、まさに世界的なブランドへと飛躍するための重要な拠点になることは間違いありません。
2026年の秋ごろには、ビジター棟が完成予定。地方文化の発信や教育にも貢献したいという、日本のものづくり精神が詰まった新しい蒸留所「SAKURAO DISTILLERY FOREST SITE」。広島の山深くで、静かに時を刻み始めるウイスキーの物語に、ぜひ注目していきましょう!
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|徳島県
74,阿波乃蒸溜所
徳島県の母なる川、吉野川のほとりに位置する阿波市。この地に2023年4月、徳島県初となる本格的なウイスキー蒸留所「阿波乃(あわの)蒸溜所」が誕生しました。
運営するのは、江戸時代末期から続く老舗であり、四国で唯一の酒類総合メーカーとしても知られる「日新(にっしん)酒類」。清酒「瓢太閤(ひょうたいこう)」をはじめ、徳島名産のすだちを使った「すだち酎」やクラフトジン「AWA GIN」など、多彩なお酒を手がけてきた名門が、ついにウイスキーの自社蒸留に本腰を入れました。
実は、日新酒類とウイスキーの縁は昨日今日始まったものではありません。古くは1949年から「ヤングセブン」や「騒(そう)」といったブランドを展開しており、製造免許もしっかり持っていました。そんな歴史ある同社の前田康人社長(前身の前田酒造から数えて6代目!)が、「スコットランドのような寒冷地だけでなく、今やインドや台湾でも素晴らしいウイスキーが造られている」と刺激を受け、自社での本格生産を決意。蒸留所の建物は、歴史を感じさせる清酒蔵「太閤酒造場」の一角にあった焼酎倉庫をリノベーションして活用しています。
阿波乃蒸溜所の造りには、酒造りのプロならではのこだわりが随所に光っています。命ともいえる仕込み水は、清流・吉野川の豊かな伏流水。麦芽はポールズモルト社製のノンピート麦芽を使い、1バッチ500kgという規模で丁寧に仕込まれます。ABE社製のステンレス製マッシュタンで抽出された麦汁は、発酵槽で70〜95時間という長い時間をかけて発酵。この「ゆったりとした時間」が、原酒に豊かな風味を与えます。
蒸留器はユニーク。大阪のケミカルプラント社製「ロイヤルスチル」を採用。初留釜は胴体がステンレス、ヘッドから先が銅という珍しいハイブリッド仕様。一方、再留釜はすべて銅製です。
出来上がったニューポットは、平均63%に加水され、現在は主にバーボン樽に詰められています。ラック式の3段貯蔵庫で、年間70樽ほどが静かに眠りについています。
徳島の温かな気候と、吉野川が育む清らかな水。そして老舗酒造が培ってきた発酵の技。これらが溶け合った「阿波のシングルモルト」が、数年後にどんな表情を見せてくれるのか、今から楽しみでなりませんね。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|愛媛県
75,梅美人酒造
梅美人酒造は大正5年(1916年)創業の老舗蔵元。2023年にウイスキー製造免許を取得し蒸留を始めています。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|高知県
76,仁淀川蒸溜所
高知県初となるジンとウイスキーの蒸留所。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|福岡県
77,ニッカウヰスキー 門司工場
オーナー:ニッカウヰスキー(アサヒグループホールディングス)
創業年:2010年代
所在地:福岡県北九州市門司区大里元町2-1
公式HP:なしhttps://www.asahibeer.co.jp/enjoy/shochu/process/monji_07.html
大正3年(1914年)に「鈴木商店大里酒精製造所」として操業を開始し、現在ではニッカウヰスキーの所有する、長い歴史を持つ工場。
ニッカウヰスキー門司工場は、単式蒸留器を用いて造られている「一番札」などの、本格焼酎を造る工場として稼働していました。焼酎の他にも、スピリッツやリキュールなども製造。2010年代からはウイスキーの蒸留も行っています。
2017年から、門司工場は大麦(丸麦)を原料とするグレーンウイスキーの製造を開始。
門司の大麦グレーンは鹿児島県にある「ニッカウヰスキーさつま司蒸溜蔵」よりも規模が大きく、蒸留器も同じステンレス製の焼酎蒸留器。サイズは約10倍もあります。
さつま司が通常の2回蒸留を行うのに対し、門司では初留は減圧、再留は常圧で行います。その結果、ニッカウヰスキー門司工場のウイスキーは、より軽やかで清涼感がありながらも、麦の風味が程よく感じる味わいに仕上がっています。
「ニッカウヰスキーさつま司蒸溜蔵」と同様に、2023年に発売された「ニッカ ザ・グレーン」の原酒の1つとして重要な役割を果たしています。
ニッカウヰスキー 門司工場|おすすめのウイスキー
ニッカ ザ・グレーン
ニッカ ザ・グレーン
78,朝倉蒸溜所
福岡県朝倉市、豊かな自然に囲まれたこの地に、江戸時代から続く老舗蔵元「篠崎」が運営する朝倉蒸溜所があります。篠崎は新道蒸留所も運営しています。
ここはもともと日本酒や甘酒を造っていた醸造所で、その一画に2020年に蒸溜所を開設しました。敷地内には樹齢数百年という楠の大木が古い納屋の壁に食い込んで成長しており、まさにこの土地の長い歴史を見守ってきた場所と言えるでしょう。
朝倉蒸溜所が掲げるコンセプトは「独創性の追求(The Quest for the Original)」。玄人はもちろん、お酒に馴染みのない方までをも魅了する品質を目指し、国境を超えて愛されるスピリッツ造りに挑戦しています。特に注目したいのが、2022年からスタートしたグレーンウイスキーの製造です。
原材料は地元朝倉産の押し麦(大麦)480kgと、コーングリッツ120kgを使用。地元の素材を活かした「朝倉ならでは」の味を追求しています。マッシュタン(糖化槽)には甘酒用のタンクを、発酵には焼酎用のステンレスタンクを活用するという、蔵元ならではの知恵が光ります。
初留は焼酎用のステンレス蒸留器で「常圧蒸留」を行い、再留はドイツ・ホルスタイン社製の銅製「ハイブリッドスチル」で行います。単式蒸留器で2回蒸留して造られる、非常に贅沢なグレーンウイスキーです。
現在、篠崎はここから車で15分ほどの場所にモルトウイスキー専用の「新道(しんどう)蒸溜所」も運営しています。新道蒸溜所のモルトと朝倉蒸溜所のグレーンをブレンドした、自社産100%のブレンデッド・ジャパニーズウイスキーを造ること。朝倉のグレーンはその夢を実現するための大切なピースなんですね。
朝倉蒸溜所の魅力はウイスキーだけではありません。約40年の歴史を持つ麦焼酎をはじめ、ジンやラムなども製造しています。焼酎造りでは2度の蒸留でオフフレーバー(雑味)を徹底的に取り除き、ウイスキー造りで得た知見を還元しています。
熟成樽はアメリカンホワイトオークの新樽を中心に、シェリー樽、ブランデー樽、さらには桜樽や珍しい飫肥(おび)杉樽など、さまざまな樽を組み合わせて、複雑で甘い香りの骨格を作り上げています。
伝統を守りながらも、常に新しい「美味しい」を模索し続ける朝倉蒸溜所。歴史ある楠の木に見守られながら、次はどんな独創的な一滴が生まれるのか、楽しみでなりませんね。
79,新道蒸溜所

オーナーは江戸時代からの老舗酒蔵「篠崎」。「国菊」「比良松」などの清酒や焼酎を製造しており、2020年に朝倉蒸留所を開設。樽熟成した焼酎やそれをベースにしたリキュールをつくっています。
本格的なウイスキー造りを目指して、朝倉蒸留所とは別に開設したのが、福岡県初のウイスキー蒸溜所「新道蒸留所」。製造設備はすべて日本の三宅製作所製。
仕込み水は硬度85度の地下水。大麦麦芽はイギリス産のノンピーテッド麦芽をメインに、一部ヘビリーピーテッド麦芽も使用しています。ポットスチルは5800リットルのストレート型初留器、3300リットルのランタンヘッド型再留器の計2基。両方ともラインアームの角度は水平であり、冷却装置としてシェル&チューブコンデンサーが使用されています。
新道蒸留所では、1週間単位で複数の仕込み方法を採用しており、糖化時のマッシュレイショや、発酵に複数の酵母を用いたり、それに伴い複数のパターンの発酵時間を採用したりしています。これにより、多様な酒質を目指しており、特に重層的な香りを持つウイスキーを目指しているとのこと。

熟成にはバーボンバレルをメインに使用しており、さらにシェリー樽やミズナラ、栗の新樽なども使い、バリエーション豊かに様々な樽を試しています。また、この蒸留所は「森から育てるウイスキー」を標榜しており、自社林からの木材で発酵槽や樽を製作する計画を立てています。現在は、「ミズナラ」や「ニッケイ」などの広葉樹の植樹に積極的に取り組んでいます。
2022年9月に、ニューポット「新道New Make Whisky」を1600本限定でリリース。2023年はニューポット・ピーテッド「新道New Make ピーテッド」を発売し、すべて完売済となっています。
2024年8月からは蒸溜所ツアーとハンドフィル体験を開始。ウイスキーを瓶に充填するボトリング体験は、日本国内の蒸溜所ではなかなかできません。ボトルのラベリングも自身で行うことができます。
2025年、新道蒸溜所は、蒸溜所初となるシングルモルト・ジャパニーズウイスキー
「SHINDO EXPERIMENTAL 01」をリリース。「Experimental」とは、“実験的な”という意味。この言葉には、新道蒸溜所が掲げる理念 「THE QUEST FOR THE ORIGINAL(独創性の追求)」 が込められています。
理想の酒質を目指し、試行錯誤を重ねながら挑戦を続けること。その過程こそが蒸溜所の個性を形づくるという考えのもと、新道蒸溜所は常に自らに問いを投げかけ、答えを探し続けています。
新道蒸溜所|おすすめのウイスキー
SHINDO EXPERIMENTAL 01
SHINDO EXPERIMENTAL 01
SHINDO EXPERIMENTAL 02
SHINDO EXPERIMENTAL 02
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|長崎県
80,波佐見蒸留所
オーナー:元盛せせらぎ酒造
創業年:2023年
所在地:長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1742-12
公式HP:https://www.ganjo.jp/wwh/
陶磁器の里として知られる長崎県波佐見町。ここで2023年、長崎県内では2番目となる新たなウイスキー造りが始まりました。それが、元盛せせらぎ酒造の「波佐見蒸留所」です。
波佐見町といえば「波佐見焼」で有名な街。蒸留所の近くにある「やきもの公園」には、中国の景徳鎮(けいとくちん)の登り窯など、世界を代表する12基の窯が再現されており、世界中から観光客が訪れる文化的な土地です。そんな歴史ある町に蒸留所を構えたきっかけは、世界的なジャパニーズウイスキーの人気でした。
海外のお客様の「もっと飲みたい!」という熱いニーズに応えるため、中国企業の出資によってプロジェクトがスタート。2022年に大阪から九州まで理想の地を求めて巡るなかで、この町にある空き倉庫と出会い、リノベーションを経て2023年7月に待望の免許を取得しました。
面白いのは、蒸留を担当する職人たちが全員、日本酒造りの経験者だということ。長年培ってきた「醸造」の感性をウイスキー造りに注ぎ込んでいるんですね。
1回に使う麦芽は450〜500kg。ヨーロッパ産のノンピート麦芽を主に使用し、約2,000リットルの麦汁を得ています。発酵は6基のステンレス製発酵槽を使い、約5日間かけてじっくり行います。さらに、2種類の酵母を使い分けるなど、より良い香りを引き出すための研究に余念がありません。
蒸留は初留と再留の計2基のスチルに加え、実験用の銅製小型スチルも完備!これを使って細かな調整を行いながら、波佐見ならではの味と品質を追求しています。
熟成には、王道のバーボンバレルを中心に、シェリー樽やミズナラ樽、さらには和の香りを感じさせる桜樽など、バラエティ豊かな樽が使われています。当初は蒸留所内のスペースに樽を置いていましたが、それでは足りないということで、今では波佐見町内に約1,300㎡もの広大な倉庫を確保して熟成庫として活用しています。
伝統的な日本酒の技と、世界を見据えた情熱が溶け合う波佐見蒸留所。陶磁器のように、時を経て美しく仕上がるそのウイスキーが世に出る日が、今から待ち遠しいですね。
81,梅ヶ枝酒造
梅ヶ枝酒造は、清酒「梅ヶ枝」の蔵元であり、焼酎やリキュールも製造しています。2023年から長崎県初となるウイスキー造りを開始。ドイツのホルスタイン製ハイプリッド蒸留器を導入し、原酒を全て自社で蒸留して商品化を目指しています。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|熊本県
82,山鹿蒸溜所

熊本県初のウイスキー蒸留所として2021年11月から稼働しているのが「山鹿蒸留所」。焼酎を生産する工場からウイスキー蒸留所へと転換する形で誕生しました。オーナーは「山鹿蒸留所」。関係企業である本坊酒造からの技術支援を受けて生産しています。
仕込み水は国見山系と菊池川水系の深層地下水。大麦麦芽はノンピートとフェノール値50ppmのヘビリーピーテッドタイプを使用。ワンバッジの仕込み量は1.1トン。
生産設備はほとんどが三宅製作所製で、モルトミルだけはドイツ製です。ポットスチルはバルジ型の初留器6000リットルと、ストレートヘッド型の再留器3000リットル。スチルの内部には「邪魔板」が取り付けられており、この遮蔽板がスチル内に設置されていることで、雑味を除去することができるとのこと。この邪魔板は本坊酒造の蒸留所にも採用されています。

熟成庫は5~6段のラック式。3300樽が貯蔵可能。山鹿蒸留所では夏冬の寒暖差が45℃となっており、湿度も高いことから比較的早く熟成が進むかもしれません。
2022年には「YAMAGA DISTILLERY NEW POT」(アルコール60%)をリリース。蒸留所にはバーカウンターの試飲コーナーやショップも併設しており、オリジナルグッズやニューポットも販売しています。
2025年には初のシングルモルトウイスキー「山鹿 The First」を発売。
山鹿蒸留所|おすすめのウイスキー
シングルモルトジャパニーズウイスキー 山鹿 The First
シングルモルトジャパニーズウイスキー 山鹿 The First
83,大石酒造場
1872年創業の球磨焼酎を造る老舗焼酎メーカー。東京ウィスキー&スピリッツコンペティションでは焼酎部門で「特別限定酒大石」が金賞を獲得しています。
これまでスピリッツを樽熟成した「OHISHI WHISKY」を海外へ輸出していましたが、2022年からはウイスキー製造免許を取得し蒸留を開始しています。蒸留器は銅板を組み込んだ独自のステンレススチルを使用しています。
大石酒造場の仕込みは1バッチ400㎏。英国産モルトを使用。発酵槽はステンレス製で、合計4基。熟成庫はラック式。
2023年7月には「水上ウイスキー ニューポット」を限定1,000本で販売。2026年に初のシングルモルトウイスキーを発売予定。
84,田野蒸溜所
オーナー:高橋酒造
創業年:2024年
所在地:熊本県人吉市田野町3316-4
公式HP:https://www.hakutake.co.jp/tano-distillery/
熊本県南部、500年の歴史を誇る「球磨焼酎」の里として知られる人吉球磨地域。ここで「白岳(はくたけ)」などのブランドを展開する最大手のメーカー、高橋酒造が、創業125年目にして新たな挑戦を始めました。それが、2025年10月に本格始動するシングルモルトウイスキーの製造拠点「田野(たの)蒸溜所」です。
この蒸留所は、廃校を再生させた「記憶を残す」蒸溜所。標高680メートルの山間部に位置する人吉市田野地区にあり、2014年に閉校した「旧田野小学校」の校舎を再利用しています。
2020年7月の集中豪雨被害からの「創造的復興」を掲げる「くまもとアートポリスプロジェクト」の一環として誕生しており、単に建物を使うだけでなく、地域の象徴だった赤い屋根や梁をそのまま残し、かつての学び舎の記憶を未来へつなぐ「アダプティブ・リユース(適応的再利用)」という考え方が採り入れられています。
また、この高地ならではのダイナミックな気候も大きな特徴です。冬には氷点下10度以下まで下がり、雪や雲に覆われるこの環境が、ウイスキーの熟成にユニークな変化をもたらすと期待されています。
製造工程には、長年の酒造りで培われた知見と最新の設備が融合しています。原料には主にベアード社やクリスプ社の麦芽を使用。ノンピートを主軸としつつ、一部でヘビリーピート(40〜50ppm)も手がけます。水は地下80メートルから汲み上げる清らかな軟水です。
ドイツ・ローレック社製の最新鋭マッシュタンを導入し、発酵には3種類の酵母(エール酵母1種+ディスティラリー酵母2種)を使い分け、140時間という長時間をかけてじっくりと風味を引き出します。
蒸留は、ウイスキーの聖地スコットランド・フォーサイス社製のポットスチルを使用。焼酎造りで磨かれた蒸留の感性が、銅製のスチルを通じて新たな原酒へと昇華されます。
熟成庫(ウェアハウス)もまたユニーク。なんと小学校の体育館がそのまま貯蔵庫として活用されており、2階の見学通路からは整然と並ぶ樽の姿を一望できます。さらに敷地内には4,500樽を収容できる大規模な熟成庫も完成しています。
高橋酒造が目指すのは、「熊本発の蒸留酒文化を世界に広める」こと。この地で造られるシングルモルトが世界で評価されることで、米焼酎というジャンルにも再び光を当てたいという強い想いが込められています。
歴史ある学び舎が、世界へ挑む「蒸溜所」へと生まれ変わった姿は、まさに地域と文化の新たなスタートライン。観光誘致や試飲スペースの設置も計画されており、ウイスキー愛好家にとっても、地域住民にとっても交流の場となりそうです。
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|大分県
85,久住蒸溜所

出典:https://kujudistillery.jp/
大分県竹田市の雄大な「阿蘇くじゅう国立公園」の一角に、ウイスキー好きの情熱をそのまま形にしたような場所があります。それが2021年に誕生した「久住(くじゅう)蒸留所」です。
オーナーは、大正時代から続く老舗であり、ウイスキー愛好家にはおなじみの通販サイト「洋酒専門店TSUZAKI」を運営する津崎商事。まさに、ウイスキーを知り尽くしたプロが「理想の一滴」を求めて自ら造り手に回った、なんともロマンあふれる蒸留所です。
久住蒸留所は、もともと店舗の敷地内にあった倉庫を改装して造られました。その製造設備は、あの「秩父蒸溜所」を参考に導入されており、随所にこだわりが光ります。
ポットスチルは本場スコットランドのフォーサイス社製。ストレート型のスチルを2基導入しています。発酵槽は秩父蒸溜所のスタイルを参考にしつつ、スコッチの伝統に倣った5基の「木桶(きおけ)」。阿蘇山系の名水百選にも選ばれた清らかな伏流水を使い、「淡く華やかなスペイサイドモルト」のような美しい味わいを目指しています。
熟成庫は、伝統的な「ダンネージ式」の第一熟成庫と、効率的な5段の「ラック式」の第二熟成庫の2種類を使い分けています。合わせて約1,200樽を貯蔵可能で、くじゅうの厳しいけれど清々しい自然環境の中で、原酒たちが静かに眠りについています。
2022年〜24年にかけては、即完売となった「久住NEWBORN」シリーズ。ピーテッドタイプを含め計5種類がリリースされ、2024年をもってニューボーンとしての役割を終えました。2025年には、自社蒸留の原酒が、ウイスキーを名乗れる「熟成3年」を迎えます。自社原酒のみをカスクストレングスでボトリングした「シングルモルト久住 THE FIRST」をリリース。
店舗の裏にある小さな倉庫から始まった挑戦が、いま大きな実を結ぼうとしています。プロの目利きと、阿蘇の自然が育んだ「久住」の物語。これからさらに深まっていく熟成が楽しみで仕方ありませんね。
久住蒸留所|おすすめのウイスキー

シングルモルト久住 THE FIRST
シングルモルト久住 THE FIRST
【2026年版】日本のウイスキー蒸留所|全126カ所を解説|宮崎県
86,SATO DISTILLERY
SATO DISTILLERYは、「天の刻印」や「銀の水」などで有名な酒造元「佐藤焼酎製造場」が所有する蒸溜所。2021年からウイスキーの製造を開始。
2022年にはニューボーン「Next 100 New Born The 1st Edition」をリリースしており、2023年には国産米を原料とした「延岡シングルグレインウイスキー」が発売されています。
2024年には「single malt whisky 天の刻印」を発売。
87,尾鈴山蒸留所

出典:https://osuzuyama.co.jp/philosophy/land/
宮崎県・尾鈴山(おすずやま)の深い緑に包まれた場所に、ひっそりと佇む「尾鈴山蒸留所」。ここは、まさに「山の蒸留所」という言葉がぴったりの、神秘的な空気感に満ちた場所です。
オーナーは、あの有名なプレミアム焼酎「百年の孤独」や「中々」を手がける老舗・黒木本店。焼酎造りの伝統とウイスキーへの情熱が融合した、この類まれな蒸留所の魅力を紐解いていきましょう。
この蒸留所のルーツは、先代社長の黒木敏之氏がスコットランドで訪れたエドラダワー蒸留所にあります。その少人数・少量生産で守り抜かれるクラフトマンシップに深く感銘を受け、「自分たちもそんなこだわりの蒸留所を造りたい」と、あえて人里離れた山中に1998年に開設されました。
当初は焼酎を造っていましたが、その遺志を継いだ現代表の黒木信作氏によって、2019年11月から待望のウイスキー造りがスタートしたのです。
尾鈴山蒸留所の最大の特徴は、原料への並々ならぬこだわりです。まず、農業生産法人「甦る大地の会」を運営し、原料となる大麦(はるしずく、はるか二条など)をすべて自社で栽培しています。
さらに驚くべきは、製麦(モルティング)も手作業というところ。大きなステンレス容器を使い、なんとビニールハウス(温室)の中で行われています。フロアモルティング(床製麦)ならぬ「ボックスモルティング」です。手間も時間もかかりますが、この「愛情たっぷりの手作りモルト」こそが、唯一無二の味わいを生み出す源泉なんですね。
設備もまた、焼酎蔵ならではのユニークな工夫が施されています。仕込み水には、尾鈴山・小丸川上流の硬度7.5という超軟水を使用。発酵槽には、地元宮崎県産の杉材で作られた木桶を使い、なんと焼酎と兼用しています。
ウイスキーの蒸留工程も非常に個性的で、まずステンレス製の焼酎兼、クラフトジンなども造る蒸留器で初留(1回目の蒸留)を行い、その後に三宅製作所製の銅製ストレート型ポットスチルで再留(2回目の蒸留)。焼酎のスチルで重厚な風味のベースを造り、銅製のスチルで華やかに磨き上げる……。この独自のハイブリッドな工程が、尾鈴山らしい繊細な調和を生み出しているのです。

2020年にはニューポット「OSUZU MALT NEW MAKE」、2021年には18か月熟成の「OSUZU MALT NEW BORN」、2022年には宮崎の桜の樽とアメリカンオーク樽で27か月熟成させたOSUZU MALT NEW BORN」をリリース。
そして2023年には、ついに3年熟成のジャパニーズウイスキーが誕生しました。
ここでは地元産の「木」を使った熟成にも積極的です。
- Chestnut Barrel: 地元産の栗材をアメリカンオークと組み合わせて熟成。
- Cedar Barrel: 宮崎県産の杉を使用した樽で熟成。
- Sakura Barrel: 2024年に発売された、華やかな桜材の樽で仕上げた最新作。
さらに、俳優のパク・ソジュン氏がクリエイターとして参加したウイスキー「26(トゥエンティシックス)」がリリースされるなど、世界的な注目度もますます高まっています。
山に囲まれた静寂の中で、手作業で麦を芽吹かせ、杉の桶で発酵させ、栗や桜の樽で眠らせる……。まさに「日向国(ひむかのくに)」の自然をそのまま瓶に詰め込んだような、真のクラフトウイスキーですね。
残念ながら現地での一般見学は行っていませんが、その分、一本のボトルから広がる山々の情景を想像しながら愉しむのも乙なものです。
尾鈴山蒸留所|おすすめのウイスキーとクラフトジン
尾鈴山蒸留所 OSUZU MALT
尾鈴山蒸留所 OSUZU MALT
OSUZU MALT Cedar Barrel
OSUZU MALT Cedar Barrel
OSUZU GIN
OSUZU GIN
88,宝酒造 黒壁蔵

オーナー: 宝ホールディングス
創業年:1982年
所在地: 宮崎県児湯郡高鍋町蚊口浦5323
公式HP:https://www.takarashuzo.co.jp/
京都・伏見の銘酒「松竹梅」でおなじみの宝酒造。その伝統的な「白壁蔵」と対をなす存在として、宮崎県高鍋町に位置するのが「宝酒造 黒壁蔵(くろかべぐら)」です。
2025年に創立100周年を迎えた宝グループにおいて、この黒壁蔵がいま、本格的なウイスキー造りの拠点として大きな注目を集めています。その歴史は古く、1938年に旧日本軍の航空燃料を作るアルコール工場として誕生しました。戦後の1952年に宝酒造が払い下げを受け、以来、焼酎造りの重要拠点として歩んできました。
「宝酒造 黒壁蔵」は、実はウイスキー造りの歴史も意外と長く、1982年にはすでにテスト製造を開始していました。当時の手書きの記録からは、職人たちの並々ならぬ熱意が伝わってきます。その後、空前の焼酎ブームによって一度は製造が途絶えてしまいましたが、昨今のジャパニーズウイスキーへの期待に応えるべく、満を持して「再挑戦」が始まりました。
黒壁蔵の最大の特徴は、同じ敷地内に「単式蒸留機(ポットスチル)」と「連続式蒸留機」の両方を備え、モルトとグレーンの両方を自社で造り分けているところにあります。これは世界的に見ても非常に珍しいスタイル。日本国内でもこうした蒸溜所は多くありません。
モルトウイスキーに使用されるのは、1950年代に名を馳せた「白河工場」の設備を模したスコットランド製の大型スチル。初留釜2基、再留釜1基が稼働しており、その直径は約3.8m、容量は23KLという圧巻のスケール!この巨大なスチルが、クリーンでありながら力強い原酒を生み出します。
もともと甲類焼酎を造っていた「スーパーアロスパス」という巨大な連続式蒸留機のうち3塔を使い、大麦原料のグレーンウイスキーを製造しています。この高品質なグレーン原酒は、自社製品だけでなく、なんと他社のクラフト蒸留所にも供給されており、業界全体の発展も支えているんです。
2013年には敷地内にクーバレッジを開設しました。現在は4名の熟練職人が、年間約400挺もの樽の補修や再生を行っています。自社で樽をメンテナンスできる体制があるからこそ、長期にわたる安定した熟成が可能になるわけですね。
2025年には、新たなブランドとして「寶ウイスキー」が立ち上がり、その第一歩としてニューメイクが発売されました。荒々しい力強さを持ちつつも、雑味がないクリーンな口当たりが特徴で、焼酎造りで磨かれた発酵・蒸留技術が、ウイスキーという形で結実した唯一無二の個性。これから樽の中でどう化けていくのか、期待感に胸が膨らみます。
また、パートナー企業としてスコッチの銘門「トマーチン蒸留所」を持つ宝酒造(現在は宝酒造、丸紅、国分グループ本社が共同所有)。そのバックボーンと黒壁蔵の技術が融合し、今後は本格的なブレンデッドウイスキーの展開も見据えています。
宮崎の豊かな風土の中で、新たな歴史を刻み始めた黒壁蔵のウイスキー。その「将来の姿」に思いを馳せながら、まずはニューメイクでそのポテンシャルを感じてみてはいかがでしょうか。


















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