【2024年版】日本のウイスキー蒸留所114か所解説|和歌山県
72.紀州熊野蒸溜所
オーナーの「プラム食品」は梅酒や果実の加工品などを製造販売している企業。会社の創立50周年となった2019年に、ウイスキー免許を取得し紀州熊野蒸留所を開設しました。
仕込水として富田川の伏流水を使用。原料はカナダ産のノンピート麦芽、スコットランドおよびニュージーランド産のピート麦芽を主に採用しています。
ワンバッチの仕込み量は麦芽500kg。2,000リットルの麦汁を得ています。発酵槽はオープンタイプのステンレスタンクで、約2,000リットルが4基。蒸留器はアメリカの「ABE」社製の銅製ポットスチル。初留は2,000リットル、再留は1,000リットル。ウイスキーの他、減圧蒸留器も備えており、ジンの製造も行っています。
商品としては、紀州熊野蒸所の原酒とスコッチをブレンドし、ミズナラ樽で熟成させたブレンデッドモルトウイスキー「Japanese Blended Malt Whisky 熊野」を販売しています。
紀州熊野蒸溜所|おすすめのウイスキー
Japanese Blended Malt Whisky 熊野
Japanese Blended Malt Whisky 熊野
【2024年版】日本のウイスキー蒸留所114か所解説|兵庫県
73.西山酒造場
清酒やブランデーを造る「西山酒造場」が2022年よりウイスキーの製造に着手。
74.丹波蒸溜所
創業1925年となる京都市伏見の有名酒造メーカー「黄桜」のウイスキー蒸留所。丹波篠山市の山中に建設されました。
2021年にフォーサイス社製のポットスチルを2基導入し、本格的なモルトウイスキーの生産をスタート。2018年頃から焼酎用の単式蒸留器を使用してウイスキー造りをしています。この蒸留器はステンレス製でしたが、蒸留器の中に銅製のパネルを設置しているタイプ。しかし本格的なウイスキー造りを目指すため、銅製のポットスチルを新設した形です。
丹波蒸留所の仕込み水はもちろん伏見の名水「伏水」。硬度は61㎎で、日本酒の仕込み水を同じものとなります。大麦麦芽はノンピーテッドモルトとフェノール値30ppmのピーテッドモルトを使用。仕込みの量はワンバッジ2トン。
発酵槽はホーロー製。ポットスチルは初留がストレート型。再留はバルジ型。64.5度で樽詰めした後は、ダンネージ式の熟成庫で寝かせています。
2022年には3年物となるシングルモルトを発売。第一弾「丹波 1st edition」と第二弾「黄桜 丹波シングルモルトBottled in 2022 2nd」をリリース。丹波蒸留所のモルト原酒とスコッチウイスキーをブレンドした「Sakura Chronosブレンデッドモルト 2022」も発売。
翌年2023年には「丹波シングルモルト2023 1st」、「Sakura Chronosブレンデッドモ
ルト2023」、 「黄桜ウイスキー CaskMagic 杉樽Finish」、 「丹波シングルモルト 2023 2nd」などを、継続的にリリースしています。
丹波蒸留所|おすすめのウイスキー
サクラクロノス ブレンデッドモルト 2023
サクラクロノス ブレンデッドモルト 2023
【量り売り】丹波シングルモルト Bottled in 2023 1st 100ml
【量り売り】丹波シングルモルト Bottled in 2023 1st 100ml
75.神戸蒸溜所
酒類の卸し、輸入などの事業を行っている貿易会社「グロースターズ」によってつくられた蒸留所。複合レジャー施設「道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢(おおぞう)」の一角にあります。
ウイスキーは2022年10月に蒸留開始。新たに設置したウイスキー用の銅製スチル2基に加えて、ブランデー造りに使用される単式蒸留器が2基設置されているという、国内外でも珍しい蒸留所。元々あったフランス製のアランビック蒸留器(ブランデーの蒸留器)を活用し、神戸市のブドウ100%のブランデーも製造しています。
麦芽は主にクリスプ社のノンピート麦芽を使用し、イーストはディスティラリー酵母とエール酵母を混ぜて使用。1バッチ800kgの麦芽で、4,000リットルの麦汁を採取。ステンレスの発酵槽で仕込まれています。
2023年には、「神戸蒸留所ニューポット」をリリースしています。
76.六甲山蒸溜所
オーナー: アクサス(アクサスホールディングス)
創業年:2021年
所在地:兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲1034-229
公式HP:https://rokkosan-distillery.com
神戸港の背景にある美しい山々「六甲山」。六甲山上に向かうケーブルカーで山頂へ上り、バスで数分の場所に六甲山蒸留所があります。標高は800m。山頂に誕生したクラフトウイスキー蒸留所です。オーナーは化粧品や酒類の輸入販売をおこなっている「アクセス」。
仕込み水は六甲山頂にある浅井戸から、硬度44㎎の水を使用。大麦麦芽はフェノール値50ppm以上のヘビリーピーテッドタイプを使います。
発酵槽はステンレス製。ポットスチルはホルスタイン社製で、初留・再留のどちらも容量1800リットル。1基でまかなっています。
2021年にはニューポットとなる「六甲山蒸留所 THE FIRST」を限定発売。その他、スコットランド産モルト原酒をミズナラの樽で後熟した「六甲山ピュアモルトウイスキーMIZUNARA」や、ピーテッドタイプの「六甲山ピュアモルトウイスキーMIZUNARA Peated」をリリースしていますが、どちらも自社生産の原酒を使用していない商品となっています。
2022年には、東京に直営ウイスキーショップ 「青山WHISKY」を開業。2023年に「六甲山ピュアモルトウイスキー杉樽フィニッシュ」を発売しています。
77.海峡蒸溜所
オーナー:明石酒類醸造(マルシアビバレッジ[オランダ])
創業年:2017年
所在地:兵庫県明石市大蔵八幡町1-3
公式HP:https://akashisakebrewery.com/ja/the-kaikyo-distillery
明石酒類醸造は清酒「明石鯛」を主力商品としている、1856年創業の老舗造り酒屋。明石鯛の売り上げの9割は海外。特にイギリスでは人気のがあり、高級レストランや豪華客船クイーンエリザベス号で飲むことのできる日本酒として広まっています。
海峡蒸留所はスカイ島にある「トラベイグ蒸留所」のオーナー企業と資本提携を結んでおり、双方のデータ交換やスタッフの研修などを行っています。スコッチとジャパニーズの情報交換は、クラフト蒸留所では基本的にできないことなので、ウイスキー造りにどのような影響を与えるのか楽しみですね。
ワンバッジの仕込み量は700㎏。ノンピーテッド麦芽のみを使用。仕込み水は市水をろ過したもの。海が近いため、地下水を採取して利用することができませんでした。発酵槽はステンレス製2基と、木桶1基。ポットスチルは初留。再留ともにフォーサイス社のバルジ型。
現在はスコットランド原酒を使用した「波門崎ブレンデッドウイスキー」や「波門崎ピュアモルトウイスキー」をリリースしており、自社のシングルモルトは2026年頃の発売を目指しています。
見学ツアーは2024年春頃まで工事のため休止。2024年6月頃から再開される見通しです。
海峡蒸溜所|おすすめのウイスキー
波門崎ピュアモルトウイスキー
波門崎ピュアモルトウイスキー
78.江井ヶ嶋蒸留所
江井ヶ嶋酒造は江戸時代となる1888年に創業した老舗の酒蔵。酒造りを340年以上続けています。そんな歴史のある江井ヶ嶋酒造がウイスキーの製造免許を取得したのは1919年。
寿屋(現在のサントリー)よりも古くからウイスキーの製造に乗り出していました。記録上、免許を取得した年は古いものの、ポットスチルを導入して自社蒸留が行われたのは1961年となっており、1923年に創業した山崎蒸留所よりも後の話。つまり、日本で本格的なウイスキーを一番初めにつくったのは江井ヶ嶋酒造ではなく、サントリー山崎蒸留所ということになります。
生産設備が強化され、ウイスキーの製造が本格化したのは1984年のこと。敷地の一角に「ホワイトオーク蒸留所」(現在の「江井ヶ嶋蒸溜所」)を開設しました。
「あかし」というブランド銘でリリースされたウイスキーは、数ある地ウイスキーの中では頭一つ抜ける存在となります。かつては日本酒づくりの閑散期である夏の間のみ、ウイスキーの仕込みが行われていましたが、ウイスキーブームがきっかけとなり販売量が増加した影響で、現在は年200回程度仕込みが行われています。
2019年に三宅製作所の新しいポットスチルを2基導入。それまでは中古の国産スチルを使用していたそうで、新しいものはこの古いポットスチルに似せて作成しています。初留器5000リットル。再留器3000リットル。スコットランドや日本の他蒸留所とくらべ、シェル&チューブのコンデンサー(蒸留液の冷却装置の一部)が太くなっているのも江井ヶ嶋蒸留所の特徴的なところとなっています。
1バッジの仕込み量は1トン。マッシュタンはステンレス製。仕込水は地下100メートルの深井戸から汲み上げた、硬度60mlの井戸水。大麦麦芽は基本的にノンピートですが、フェノール値50ppmのヘビリーピーテッドタイプも使用しています。
江井ヶ嶋蒸留所では2009年から「あかし」ブレンドを展開。低価格帯のウイスキーを中心に販売してきました。しかし近年は高級ウイスキーの生産にも力を入れており、2020年から蒸留所名を冠した上位ブランド「シングルモルト江井ヶ嶋」シリーズの発売を開始。
「あかし」と「江井ヶ嶋」で造られているウイスキーの種類が明確に分かれている訳ではありませんが、「シングルモルト」か「ジャパニーズ」の表記が見つからない商品は「、海外原酒をブレンドしています。
とくに「シングルモルト江井ヶ嶋シェリーカスク」や「江井ヶ嶋ブレンデッド シェリーカスクフィニッシュ」などのシェリー樽にこだわったボトルの評価が高く、入手困難になるほどの人気。かつては老舗の酒蔵がつくる「生産量が多い地ウイスキー」という扱いでしたが、現在では主要なジャパニーズウイスキー蒸留所として認知されています。
2022年には三郎丸蒸留所との原酒交換によって製造した「あかしジャパニーズウイスキー ピュアモルト ダブルディスティラリーズ」をリリース。新しい試みにもチャレンジして革新的なウイスキー造りを続けています。
2023年8月にリリースされた「シングルモルトあかし PX5年 Heavily Peated」は、フェノール値50ppmのヘビリーピーテッドモルトを使用し、ペドロヒメネス(PX)樽で5年間熟成させた商品。これまでの「シングルモルトあかし」とは異なる個性を持つボトルとして注目されました。
江井ヶ嶋蒸溜所|おすすめのウイスキー
シングルモルト あかし
シングルモルト あかし
シングルモルト江井ヶ嶋 シェリーカスク 7年
シングルモルト江井ヶ嶋 シェリーカスク 7年
シングルモルトあかし PX5年 Heavily Peated
シングルモルトあかし PX5年 Heavily Peated
79.養父蒸溜所
養父蒸留所が位置している兵庫県養父市は、鳥取県と接する但馬地方の一部。この地域の清流である若杉川のそばにあり、周囲は豊かな森に囲まれています。
この蒸留所は、大阪に本社を構える酒の卸売りおよび小売り企業「ウィズワン」によって設立。8,000㎡の養鶏場跡地に、蒸留施設と2つの倉庫が建設されました。蒸留所の建物は一部がガラス張りであり、モダンなデザインで周囲の景観と調和しています。
仕込は麦芽1トンを使用。一括製造方式が採用されています。原料は主にオーストラリア産のノンピート麦芽。麦汁の抽出量は5,000リットルであり、発酵槽は日本製で、現在は4基のオレゴンパイン製がありますが、将来的には6基まで増設することが可能となっています。
ポットスチルはイタリアのフリッリ社製。初留・再留が1基ずつ。日本のー蒸留所では珍しく、ウォッシュチャージャーが採用されています。ウォッシュチャージャーは、発酵槽とスチルの間に配置され、蒸留プロセスを最適化し、モロミの熟成を促進させる効果があります。
養父蒸留所の特徴としては、蒸留後に「濾過」を行ってから樽詰めしているところにあります。この濾過は、特許技術を用いた特別な方法で行われ、貯蔵期間を最適化(短くなる??)することを目的としています。
樽詰め前に濾過するウイスキーといえば、テネシーウイスキーが最も有名です。「ジャックダニエル」や「ジョージディッケル」では、サトウカエデの木炭で濾過する「チャコールメローイング」という製法が伝統的に続けられています。
もちろん、養父蒸留所はテネシーウイスキーとは異なるスタイル。(そもそもモルトウイスキーとバーボンウイスキーで違うし)国内の蒸留所では基本的に行われていない製法で造られるモルトウイスキーが、数年の熟成を経てどうなるのか…注目されています。
【2024年版】日本のウイスキー蒸留所114か所解説|鳥取県
80.倉吉蒸溜所
2015年にウイスキー製造免許を取得。海外産モルト原酒を使用した「倉吉」、ブレンデッドウイスキー「鳥取」などのウイスキーをリリース。
倉吉蒸留所の原酒のみを使用した「シングルモルトウイスキー松井」も発売しており、サクラやミズナラの樽で熟成したものと、ピーテッドモルトで仕込んだクセのあるタイプの3種類があります。
「シングルモルト松井 ミズナラカスク」と「シングルモルト松井 サクラカスク」に使用している熟成樽は、バーボンバレルのヘッド(鏡面)のみをミズナラ材や桜材に組み替えたもの。酒齢3年以上の原酒を使用しています。
その他鳥取県名産の「梨」をボタニカルに使用したクラフトジンも造っています。
倉吉蒸溜所|おすすめのウイスキー
シングルモルト松井 ミズナラカスク
シングルモルト松井 ミズナラカスク
シングルモルト松井 サクラカスク
シングルモルト松井 ミズナラカスク
シングルモルト 松井 ピーテッド
シングルモルト 松井 ピーテッド
81.千代むすび 境港蒸留所
1865年創業の老舗酒蔵。「千代むすび」とは「永久に変わることのない人と人の固い結び、絆」を意味しているそうです。造り酒屋らしく日本酒の酵母で仕込みを行っています。
2021年にウイスキー製造免許を取得し、2024年にシングルモルトをリリース予定。現状では蒸留器は焼酎用の減圧蒸留器を使用してウイスキー造りが行われていますが、リリースされているボトルはスコットランド産の輸入原酒をメインとするものとなっています。
2023年には国内製造の銅製ポットスチルを導入し、本格的なモルトウイスキーの製造を開始しています。
【2024年版】日本のウイスキー蒸留所114か所解説|岡山県
82.岡山蒸溜所
岡山蒸溜所は大正4年(1915年)創業の宮下酒造株式会社によってつくられた蒸留所。同社は岡山の銘酒「極聖」や、地ビール「独歩」などをつくる老舗酒造メーカー。ウイスキーの製造免許を取得したのは2011年ですが、ポットスチルを導入し本格的なウイスキーの蒸留が開始したのは2015年となっています。
同社では焼酎なども蒸留しており、当初はその蒸留器で試験的にウイスキーを生産していました。2015年からはドイツのホルスタイン社製の蒸留器(ハイブリッドスチル)が1基導入され、本格的にウイスキーの生産をスタートさせます。
蒸留所(蒸留棟)は宮下酒造が経営するレストラン「独歩館」の横に新設。レストラン内からガラス越しに ハイブリッドスチルを見ることができます。
このスチルはウイスキーの他ジンなどのスピリッツを作ることが可能となるマルチな蒸留器で、他の蒸留所とは異なる個性的な原酒を生み出すことができます。容量は1500リットル。初留、再留とも同じスチルです。
仕込み水は地下100mからくみ上げた旭川の伏流水で、硬度5㎎の極軟水。使用する大麦麦芽は岡山産のスカイゴールデンなどを一部採用。ワンバッジの仕込み量は375㎏。発酵槽はステンレス製で、ディスティラリー酵母、ビール酵母、日本酒用酵母を使っています。
2019年には初のシングルモルトとなる「シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク」を発売。3つの樽(バーボン、シェリー、ミズナラ)で寝かせた酒齢3年以上の原酒をブレンドしたもので、ドイツで開催された「マイニンガー・インターナショナル・スピリッツ・アワード2019」では金賞を獲得。
さらに、世界的なウイスキーコンペとなる「ワールド・ウイスキー・アワード2020」では、シングルモルト・ノーエイジ部門で最高賞を受賞。国内よりも先に海外で高評価されています。
2020年にはシェリー樽での3年熟成「シングルカスクウイスキー岡山 シェリーカスクストレングス カスク M566」を発売。少量生産ならではの個性的なウイスキーを続けてリリースしています。
2021年の春には「シングルモルトウイスキー岡山 サクラカスク デビュー」をリリース。このウイスキーはサクラ材でつくった樽で3年以上熟成させた原酒を使用しています。桜の木は近年流行りだしている、新しい樽材。かつてサントリーでは「基本的には桜の樽はウイスキーには不向き」としていましたが、知多のグレーンウイスキーに使用したりと、活用方法が研究され見直されているようですね。
2022年にはミズナラカスクで熟成させた5年物「シングルカスク岡山ミズナラカスク」や、シェリー樽で3年7か月熟成させた「シングルカスク岡山シェリーカスク」を発売。価格はどちらも77000円と高価ですが、ミズナラカスクはあっという間に完売しています。
岡山蒸留所|おすすめのウイスキー
シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク
シングルモルトウイスキー岡山 トリプルカスク
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