
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、1909年に誕生した伝統あるブレンデッドスコッチ「オールドパー」シリーズの中でも、スタンダードながら根強い人気を誇る「オールドパー12年(正規品ボトル)」にフォーカス。味わいの特徴やボトルとしての評価、使用されている構成原酒について、テイスティングレビューを交えて詳しく掘り下げていきます。
また、「正規品」と「並行輸入品(通称:玉付きボトル)」の違いにも触れているため、どちらを選ぶべきか迷っている方にも役立つ内容となっています。オールドパーの奥深い世界を、一緒に紐解いていきましょう。
ブレンデッドスコッチウイスキー「オールドパー(Old Parr)」とは?
オールドパーは、クラガンモアをキーモルトに据えたブレンデッド・スコッチウイスキー。現在はディアジオ社の傘下にあるマクドナルド・グリーンリース社が製造を担っています。ラベルに描かれた厳格な老人の肖像、ずっしりとした角型ボトル…これらは、オールドパーの格調高いアイデンティティを象徴しています。
日本との深い関係──明治期から続く“格式のあるスコッチ”
オールドパーが日本に初めて登場したのは、1873年(明治6年)。岩倉使節団などの欧米視察団がイギリスから持ち帰ったことがきっかけでした。
それ以降、日本では政財界や文化人の間で「特別な酒」として根強い人気を誇り、特に吉田茂や田中角栄といった歴代首相が愛飲していたことでも知られます。ウイスキーというより「格式そのもの」が瓶に詰まっているかのような存在感が、いまなお支持される理由でしょう。
ブランド名の由来“152歳まで生きた男”トーマス・パー
「オールドパー」という名前は、16〜17世紀に実在した人物トーマス・パー(Thomas Parr)にちなんで名付けられました。彼は英国史上最も長寿だった人物とされ、なんと152歳まで生きたと言われています。
その名声は国王チャールズ1世の耳にも届き、王自らが謁見を求めたという逸話も残っています。国王から「その長寿の秘訣は?」と尋ねられたトーマスは、「特別なことは何もしていない」と答えたそうです。
彼はその後、ロンドンで“健康長寿の象徴”として市民からも親しまれ、亡くなった際にはチャールズ1世の命によりウエストミンスター寺院に手厚く埋葬されました。彼の墓は、詩人シェイクスピアやニュートンらが眠る「詩人のコーナー」にあります。
味わいとデザイン“語れるウイスキー”としての魅力
オールドパーの特徴は、まろやかな口当たりと、どこかノスタルジックな麦芽の風味。クラガンモア蒸溜所のフルーティで穏やかなモルト原酒を軸に、わずかにピートの効いたモルトが骨格を支えています。
また、その重厚な角型ボトルと、歴史的人物の肖像をあしらったラベルデザインは、飲む前から特別感を演出。贈答用や年末年始の席にもふさわしい、クラシックな装いが魅力です。
オールドパーの主なラインナップと特徴
ボトル名 | 熟成年数 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|---|
12年 | 12年 | スタンダード、バランス型。 | 日常飲み |
シルバー | NA(表記なし) | 最も安価。スムース。 | ハイボール向き |
スーペリア | NA(長期熟成) | 上質な香味と奥行き。 | 特別な日、ギフト |
トリビュート | NA | 海外限定、記念モデル。 | コレクション向き |
18年 | 18年 | 円熟した味わい。 | 中〜上級者向け |
オールドパーの「玉付きボトル」とは?
オールドパーの「玉付きボトル」とは、ボトルの口にガラスまたはプラスチック製の球体(薄水色の玉)が内蔵されているタイプのことを指します。これは、ラムネの瓶に似た構造です。
英語では「ball stopper」などと呼ばれることもありますが、正式名称ではなく、俗称的な表現となります。日本では「玉付き」が一般的な呼び名でしょうか。
「玉付きボトル」の特徴
・ボトルの注ぎ口に「回転する玉」が入っている
玉が液体の流れを制御し、注ぐときに適量がゆっくり出る仕組み。
・注ぐ時に少し揺らす
玉がウイスキーの注ぎ口にピッタリとハマっている場合、ウイスキーが流れてこない。こうした時はボトルを少し揺らすことで注ぐことができる。
・玉は取り外しが困難
詰め替えや、中身のすり替えを防止する構造。
「玉付きボトル」の存在理由(目的と背景)
主な目的は「詰め替え防止」と「ブランド保護」。
オールドパーは非常に人気のあるウイスキーであるため、中身のすり替えや偽造が過去に問題視されたことがありました。そのため、開封後に再利用ができないようにするために玉付きボトルを導入しています。
「玉付き」と「玉なし」の違い(オールドパー12年の場合)
特徴項目 | 玉付き | 玉なし |
---|---|---|
詰め替え防止 | 再利用不加 | 再利用可能 |
液体の出方 | 少しずつ注がれる | 通常通り |
見た目 | 注ぎ口に透明な玉が見える | 通常通り |
正規/並行品傾向 | 並行品 | 正規輸入品 |
プレゼント適性 | 物珍しさが特徴 | 実用的 |
オールドパーの場合、「玉無し=正規品」という訳ではなく、各ラインナップ(オールドパー12年/18年/スーペリアなど)ごとに仕様が異なります。
【ブレンデッドウイスキーレビュー】オールドパー12年(正規ボトル)を評価|並行品との違いとは?
オールドパー12年 Old Parr 12 YEARS OLD
- ブレンデッドスコッチウイスキー
- 正規販売ボトル(国内向け)
- 40% 750ml
- 抜栓時期:2025年6月
- テイスティング時期:抜栓から2週間後
- whiskybaseでの評価:76.91/100
- 楽天市場価格[2025年6月]:4,268円
- Amazon価格[2025年6月]:3,880円
「オールドパー12年」の特徴
「オールドパー12年」は、長きにわたって世界中のファンに愛されてきた、ラインアップとしては中心的な存在です。
主要な構成原酒には、スペイサイド地方のクラガンモアとグレンダランが使われています。どちらも華やかでフルーティーな個性を持つモルトであり、12年以上熟成されたモルト・グレーンと共に絶妙にブレンドされています。このバランスの良さが、最大の持ち味とも言えるでしょう。
「オールドパー12年」の発売時期
「オールドパー12年」の明確な発売時期については定かではありません。しかし、一般的に「12年表記」が導入されたのは、1960年代中頃〜後半と考えられています。
1960年代前半まで、オールドパーは「デラックス(Deluxe)」表記のみで、年数表示がないボトルが主流でした。1960年代後期のボトルには「12年」表記が確認されるようになります(例:セラミックジャグやデラックス表記のボトル)。
このため、オールドパー12年の発売は1960年代中頃~後半にかけてのリニューアルと推定されます。
年数表記導入の背景としては、この時代にスコッチ業界で年数表記付きのブレンデッドウイスキーが増加したことから。これは、消費者に品質の高さを分かりやすく伝えるマーケティング戦略の一環として導入されたもので、オールドパーもこの流れに追従したと考えられます。
並行品との違い(外観・デザイン)
「オールドパー12年」の正規ボトルと、玉付きの並行輸入ボトルは、見た目に大きな違いはありません。ただし、表ラベルの色味にわずかな差があるように見える場合があります(※画像比較参照)。
裏ラベルは明確に異なり、
- 正規品は日本語表記(国内向け)
- 並行品は英語表記(海外流通向け)
が採用されています。
なお、ボトルの形状やキャップデザインには違いは見られません。そのため、外観上の最大の違いは、「注ぎ口に玉があるかどうか」に集約されると言えるでしょう。
香り
洋梨、りんご、ラズベリー、ドライイチジク、カルダモン、アップルパイ、ミントキャンディー、ドライシェリー、アプリコット。
加水すると、キャラメルやアーモンドが引き立ちます。
並行品・玉付きボトル↓
オレンジ、レモン、マスカット、スイカ、牧草、青畳、アーモンド、レーズン、カルダモン、アプリコット、イチジク、シェリー酒。
加水すると、ドライアップル、ドライストロベリー、洋梨。
味わい
甘さと酸味のバランスが良く、ライトボディながらも飲みごたえのある印象。中盤以降はドライでスムース。フィニッシュにかけては穏やかで、ピートのクセは全く感じません。
加水後もボディは弱まらず、飲みやすさと力強さがしっかりと維持されています。
並行品・玉付きボトル↓
ふくよかな甘さと酸味の後、すぐにドライ。ライトボディ。スムースに広がります。フィニッシュにかけては、ややシンプルな味わい。苦みは少なく、飲みやすい印象です。余韻は中程度の長さ。ピーティーな風味はほとんどなく、ブレンデッドスコッチの中では穏やかでクセは少なめ。
加水後も飲みやすいバランスですが、しっかりとしたボディは継続。トワイスアップよりも多く水を加えても、骨格があります。
評価
「オールドパー12年(正規ボトル)」の評価としては、「正規ボトルのほうがまろかや?ぶっちゃけ大した差は無いかも…」です。
今回は、「オールドパー12年」の正規ボトルと、並行輸入の玉付きボトルの違いにフォーカスしてご紹介します。味わいの個性そのものを知りたい方は、「玉付きボトル」のテイスティングレビューもあわせてご覧ください。
結論から言うと――この2本、かなり似ています。でも、少しだけ違う。そんな印象です。
まず香りに関しては、どちらもバランスが取れていて、フルーティーさやスパイス、樽香の傾向も非常に近く、共通点が多いです。正直なところ、「ほぼ同じ」と言ってしまってもいいレベルです(というか、同じ商品ですしね)。
一方で、味わいの面では、若干の違いを感じました。口に含んだときのアロマの広がり方や、甘み・酸味・苦みのバランスは共通していますが、正規ボトルのほうがややまろやかで、刺激が少なく、樽のニュアンスもほんの少し強く感じられました。
とはいえ、「玉付きボトル」が明確に尖っているとか、粗さを感じるわけではありません。あくまで、飲み比べたときにわかる“ちょっとした違い”に過ぎません。
加水した場合も、微妙な違いが見られます。正規ボトルはよりソフトでなめらかな印象。対して玉付きボトルは、加水してもボディの厚みがしっかり保たれていて、やや力強い飲み口。
ただし、この差は2本を同時に比べた場合にようやく分かる程度で、どちらも非常によくできたブレンデッドスコッチであることに変わりはありません。総合的に見れば、正規ボトルのほうがやや飲みやすく、ストレートで楽しむなら正規ボトル、加水して楽しむなら玉付きボトルのほうが向いていると思います。
もちろん、正規品と玉付き並行品は本来“同じ商品”ですので、中身が完全に一致している可能性も十分にあります。ですが、今回のテイスティングで私が率直に感じたのは、「大きな差はないけど、全く同じという感じでもない」ということ。
こうした違いは、ボトリングされたロットや開栓時期によっても印象が変わるため、一概には言い切れません。加えて、私自身が「並行品はちょっと違うかも…」という先入観を持っていたことも、レビューに影響しているのかも。
特にオールドパーのように生産量の多い人気銘柄は、流通地域によって中身が微妙に調整されている可能性もあります。(メーカーの営業担当に聞くと「全部同じですよ」と言われますが…)
もし気になる方は、ぜひ当店で「正規ボトル」と「玉付きボトル」の飲み比べを試してみてください。そして、ぜひその感想を教えていただけると嬉しいです。
「オールドパー12年(正規ボトル)」は、長い歴史に裏打ちされたブレンデッドスコッチの名品です。正規品と並行輸入品、見た目はよく似ていて、味わいも大きな差はありませんが、細かな違いに気づいたとき、ウイスキーの奥深さをあらためて感じさせてくれます。
「違いがある」のか、「気のせい」なのか――
その答えは、ぜひあなた自身の舌で確かめてみてください。
ブレンデッドスコッチウイスキー「オールドパー12年」の、正規ボトルと並行輸入ボトルを飲み比べたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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