【スコッチウイスキーレビュー】タムデュー12年を評価

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

ウイスキー愛好者にとって、シェリー樽で熟成されたウイスキーはその深い風味と複雑さが魅力のひとつ。

「タムデュー12年」は、シェリー樽100%というこだわりを持ちながらも、隠れた実力者として注目されているウイスキーです。スペイサイドの有名蒸溜所と比べて、その名声はあまり高くないものの、味わいのクオリティは決して引けを取りません。

今回は「タムデュー12年」の魅力を深掘りし、テイスティングレビューを中心に、タムデュー蒸溜所の歴史や特徴、代表的なシェリーカスク・ウイスキーとの比較を通して、その本質に迫っていきます。

 

 

タムデュー(タムドゥー)蒸溜所 Tamdhu distillery とは?

出典:By Tamdhu Distillery by Peter Moore, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=117537477

タムデュー(タムドゥー)蒸留所 Tamdhu distillery

  • エリア: スペイサイド
  • 設立年: 1897年
  • オーナー企業: イアン・マクロード社(Ian Macleod Distillers Ltd)
  • 蒸留器: 初留×3基、再留×3基
  • 年間生産量: 400万リットル

タムデュー蒸溜所の歴史と背景

タムデュー(タムドゥー)蒸溜所は、1897年にスコットランド・スペイサイドで創業され、長い歴史を誇る蒸溜所です。スペイサイドの中心部に位置し、ウイスキー愛好家にとっては比較的知られた名前でありながら、日本ではまだあまり知られていない存在です。タムデューはその独自の製法とシェリー樽に対するこだわりを守り続けており、近年では徐々に評価を高めています。

シェリー樽へのこだわり

タムデューのウイスキーの最大の特徴は、シェリー樽100%の使用にあります。シェリー樽のウイスキーとして、スペイサイドの中でも特異な存在であり、特にシェリー樽にこだわり続けるその姿勢が評価されています。

スペイサイドには、マッカランやグレンファークラスのようにシェリー樽を使う蒸溜所がいくつかありますが、タムデューもその一つ。全てのシングルモルトウイスキーをシェリー樽100%で熟成させています。

タムデューでは、アメリカンオークとヨーロピアンオークの両方のシェリー樽が使用され、これらがウイスキーに与える味わいには微妙な違いがあります。アメリカンオークはバニラやキャラメルのような甘い香りを、ヨーロピアンオークはよりスパイシーでリッチなフレーバーを与えるため、タムデューのウイスキーはその絶妙なバランスによって個性を持っています。

生産の流れと設備

タムデュー蒸溜所は、スコットランドで最も有名な蒸溜所群の一つとして、独自の製法を守り続けています。蒸溜所の設備は、最新の自動化システムによって効率的に運営されており、特にサラディン式モルティングという伝統的な製麦方法が特徴です。タムデューはこの方式を採用しており、製麦用のボックスが10個あり、それぞれが最高で22トンのモルトを処理することができます。

タムデュー蒸留所は6基のスチル(初留×3基、再留×3基)を使用。年間生産量は約400万リットルで、スペイサイドの中でも中規模な蒸溜所です。

サラディン式モルティング

サラディン式モルティングとは、19世紀末にフランス人技師チャールズ・サラディンによって考案された、機械式の製麦方法。人力で麦芽を攪拌・乾燥させるのではなく、機械的に通気と攪拌を行う「密閉型モルティング槽」によって発芽をコントロールする仕組みです。

この方式は1950〜1970年代にかけて、スコットランドやヨーロッパ各地のモルトウイスキー蒸溜所で採用されます。その後は近代的な「ドラム式モルティング」へと進化したことで、現在はサラディン式がほとんど利用されなくなりました。

 

出典:https://www.tamdhu.com/about-tamdhu

タムデューの変遷と近年の展開

タムデューは1999年にエドリントン・グループに買収され、その後2009年から一時休業状態となっていました。しかし、2011年にイアン・マクロード・ディスティラーズがタムデューを買収し、再稼働を果たしました。イアン・マクロードはすでにグレンゴイン蒸溜所を所有しており、タムデューをポートフォリオに加えることで、スペイサイドの蒸溜所を強化することが狙いでした。

蒸溜所の再稼働後は、設備の大規模な更新が行われ、シフトごとの担当者が全工程をコントロールできるように改善。これにより、効率的な生産が可能になり、品質も安定します。

今後の展望と未来

タムデュー蒸溜所は、創業から125周年を迎える2022年に、大きな記念事業が予定されています。今後も「タムデュー18年」などの高年数のウイスキーや、希少価値の高いボトルが登場し、さらに注目を集めることが予想されます。

 

主なラインナップ

出典:https://www.tamdhu.com/shop/our-collection

タムデュー 12年

初心者でも飲みやすいスムーズな口当たりながら、骨格がしっかりしており、タムデューの世界観を代表するボトル。

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タムデュー 15年

12年物よりもファーストフィルの比率は高め。熟したプラムやフィグ、シナモン、ナッティな風味が複雑に重なり、より濃厚な余韻を楽しめる。価格・内容ともに最もバランスの取れた“ベンチマーク的存在”。

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タムデュー バッチストレングス

タムデューの真髄とも言えるシリーズ。加水なしでボトリングされるため、圧倒的な濃密さと香り立ちを楽しめる。各バッチで異なる個性を持ち、ウイスキーファンのコレクターズアイテム。※Batch No.8(約57.5%)は2024年リリースで高評価。

タムデュー 18年

蒸留所125周年記念でリリースされた定番ボトル。18年の長熟によるリッチなドライフルーツ香とスパイス感、フィニッシュにわずかなトースティなオーク香が漂う。「マッカラン18年」と比較されることも多く、コスパの高いシェリー系長熟として注目されている。

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タムデュー 21年

限定品を含む定番商品の中で最も熟セ年数が長いボトル。シェリーの重厚さが極致に達した高級ウイスキー。チョコレート、タバコ、ドライデーツ、古樽のニュアンスなど、圧倒的な深みを持つ。

 

 

【スコッチウイスキーレビュー】タムデュー12年を評価

タムデュー12年  Tamdhu 12-year-old

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タムデュー12年とは?

2011年にイアン・マクロード社がタムデュー蒸溜所を買収。設備の近代化とブランド再構築が行われました。そして2018年に登場したのが「タムデュー12年」。このボトルは、再始動後の新生タムデュー蒸留所を代表するボトルです。

イアン・マクロード社は、マッカランやグレンファークラスと同様、自社契約のシェリー樽生産システムを持っています。スペイン・ヘレスで自社用のシェリー樽を造り、熟成させています。

  • 樽材:ヨーロピアンオーク(スパニッシュオーク)+アメリカンホワイトオーク
  • シーズニング期間:約2年間。オロロソシェリーを熟成。
  • 輸送:ヘレスからスペイサイドへ船・陸路で輸送

ヨーロピアンオーク樽はスパイスやドライフルーツ、アメリカンオーク樽はバニラやキャラメルの香りをもたらし、両者のブレンドによって深みのある味わいが完成します。

 

香り

レーズン、アプリコット、カカオニブ、アーモンド、カルダモン、オレンジビターズ、黒糖、ドライパイン、マドレーヌ、ヌガーグラッセ、洋梨のコンポート。

加水すると青りんご、石鹸、ラベンダー、レモンチェッロ、オレンジキュラソー。

 

味わい

甘くてボディに厚みがあります。ミディアムボディ。なめらかで芳醇。ドライフルーツとナッツ、スパイスの風味が広がり、やや酸味を感じます。中盤以降はドライで少しビター。余韻は長め。シェリー樽の個性がゆっくりと続きます。

加水後のバランスはよく、なめらかな口当たりですが、一定の飲みごたえと骨格の強さを感じます。甘み、苦み、酸味が一体となって、上品かつ重厚な味わいです。

 

評価

「タムデュー12年」の評価としては、「シェリー樽シングルモルトの隠れた実力者!上品かつエレガントな余韻も魅力」です。

オロロソ・シェリー樽100%のシングルモルトとしては、「マッカラン」や「グレンファークラス」、「グレンドロナック」ほど名声が高いわけではありません。しかし、その実力はこれらの名だたる銘柄に肩を並べる存在。シェリー樽由来の風味はリッチで奥深く、単に濃厚なだけではなく、上品でエレガントな余韻を残す…その完成度の高さが、このウイスキーの本質を物語っています。

香りはドライフルーツとナッツが中心で、王道のシェリーカスク・ウイスキーといった印象。芳醇で複雑、そして加水後にはさらに香りが開き、12年熟成クラスの中でも上位に位置するアロマバランスを誇ります。

味わいは、ほどよい甘みに支えられながらも、タンニンの渋みと穏やかな酸味が全体を引き締めています。これらが美しく調和し、ウイスキー全体の完成度を底上げしているのが特徴です。

余韻は長く、黒糖のような甘さに柔らかなスパイスが加わり、落ち着いた満足感を残します。食後のリラックスタイムにじっくり楽しむのに最適な一本。

どの要素を取り出してもネガティブな部分が見当たらず、まさに「シェリーカスクの良い部分だけを抽出した」ような仕上がり。よくできている、という言葉に尽きます。

ここからは、シェリーカスクの代表銘柄と比較します。

マッカラン12年 シェリーオークとの比較

「マッカラン12年」は、よりドライでビター、そしてスパイシー。これはスパニッシュオーク100%の樽構成によるもので、シェリー樽の個性がより前面に出ています。タムデューと比べると、より骨太で力強いスタイル。ロックやハイボールでも存在感が際立ちます。

一方で「タムデュー12年」は、滑らかで丸みのある口当たり。ストレートで飲むならこちらを選びたいですね。価格もマッカランより2,000円ほどお手頃で、コストパフォーマンスを考慮すればタムデューに軍配が上がります。

グレンファークラス12年との比較

「グレンファークラス12年」は、シェリーの風味が控えめ。これはファーストフィルだけでなく、リフィル(再利用)シェリー樽を多く使っているため。その分、熟成感や樽香がやや穏やかで、バランス重視の味わいに仕上がっています。

「タムデュー12年」もリフィル原酒を含んでいると思われますが、その比率はより低めで、全体的にシェリーの濃厚さが際立っています。

価格帯はほぼ同等ながら、よりリッチなシェリー感を求めるなら、タムデュー12年の方が満足度は高いかもしれません。

グレンドロナック12年との比較

「グレンドロナック12年」は、オロロソに加えてPX(ペドロ・ヒメネス)シェリー樽も使用しており、甘く濃厚な個性。2024年のリニューアル後は、全体的にすっきりとした味わいへ変化し、旧ボトルに比べて甘さや熟成感が穏やかになりました。

旧ボトルのグレンドロナック12年は、「タムデュー12年」と非常に似た構成で、甘み・苦味・酸味のバランスが秀逸でした。新ボトルはややライトになり、「グレンファークラス」寄りのバランスに。ハイボールやロックでも楽しみやすくなっています。

市場価格は「グレンドロナック12年」が1,000円ほど安価ですが、これは旧ボトルの在庫が影響しているため。価格が並んだ際には、味わい・バランス・完成度の点で、タムデュー12年の方が一歩上といえるでしょう。

総評

「タムデュー12年」は、他のシェリーカスク100%シングルモルトと比べてもまったく引けを取らない、むしろそれ以上の完成度を持つウイスキーです。華やかさと深み、そして飲みやすさのバランスが絶妙で、シェリー樽モルトの入門にも最適。また、ジャパニーズウイスキーのような甘みを好む方や、クセの少ないスコッチを求める方にもおすすめ。

飲み方はストレートかトワイスアップがベスト。加水によって香りがふわりと開き、さらに多層的な表情を見せてくれます。

「タムデュー12年」は、派手さはないものの、シェリー樽モルトの“理想形”とも呼べる一本。穏やかな深みの中に、クラシックなスペイサイドの美徳が息づいています。

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「タムデュー12年」は、シェリー樽モルトの真髄を感じさせる一本であり、派手さはなくとも、その深みとバランスは一度味わうと忘れられない印象を与えます。シェリー樽100%で熟成されたウイスキーを愛する方々にはもちろん、クセが少なく飲みやすいスコッチをお探しの方にもおすすめできるウイスキーです。

もしあなたがシェリーカスクのウイスキーを試したことがないのであれば、この「タムデュー12年」がその第一歩になるかもしれません。味わってみたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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