【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peatedを評価

ユースケ
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こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

ジャパニーズウイスキーの世界では、近年クラフト蒸溜所を中心に多様なスタイルのシングルモルトが生み出されています。その中でも、兵庫県明石市にある江井ヶ嶋蒸溜所は、日本最古のウイスキー製造免許を持つ蔵元として、独自の歩みを続けてきました。

従来は軽快で穏やかな酒質を得意としてきた同蒸溜所ですが、近年ではピートを強く効かせた原酒や、シェリー樽熟成を前面に打ち出した意欲的なボトルも登場しています。

この記事では、そうした流れを象徴する1本である「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」に注目。テイスティングレビューを軸に、江井ヶ嶋蒸溜所の歴史や設備、原酒造りの特徴、さらに現在展開されている主要ブランドについても、ウイスキー専門ブログの視点から詳しく解説していきます。

 

江井ヶ嶋蒸留所(Eigashima Distillery)とは?

日本ウイスキー最古の免許を持つ、クラフト蒸留所

江井ヶ嶋蒸留所(Eigashima Distillery)は、兵庫県明石市江井ヶ嶋に位置する、日本でもっとも歴史的背景を持つウイスキー蒸留所のひとつです。運営母体は江井ヶ嶋酒造株式会社。清酒を祖業とする酒蔵でありながら、日本のウイスキー史において極めて重要な存在として知られています。

最大の特徴は、1919年に日本で初めてウイスキー製造免許を取得した企業である点。ただし、この事実はしばしば誤解されやすく、「日本最古のウイスキー蒸留所」と混同されることがあります。正確には、免許取得が最初であり、現在の蒸留所設備による本格的なウイスキー蒸留が安定的に行われるようになったのは、1984年頃となります。

歴史的背景とウイスキー造りの歩み

江井ヶ嶋酒造の創業は1888年。当初は清酒を中心に、焼酎やみりん、果実酒など幅広い酒類を製造してきた総合酒類メーカーです。1919年、日本においてウイスキーという酒がまだ一般的でなかった時代に、同社はウイスキー製造免許を取得。この時点では本格的な連続蒸留・熟成体制が整っていたわけではなく、ウイスキーはあくまで将来的な酒類のひとつという位置づけでした。

その後、酒税法改正や市場環境の変化を経て、1980年代にウイスキー専用の蒸留設備を新設。1984年、現在の蒸留所の原型となる施設が完成し、「ホワイトオーク蒸留所」として本格的なモルトウイスキーの蒸留を開始します。

2019年には蒸留所名を「江井ヶ嶋蒸留所(Eigashima Distillery)」へ改称。これにより、土地の名前と日本的な背景を前面に押し出すブランド戦略へと舵を切ります。

蒸留設備と生産規模

江井ヶ嶋蒸留所では、かつて日本酒造りの閑散期にあたる夏季のみウイスキーの仕込みを行っていました。しかし近年のクラフトウイスキーブームにより需要が拡大し、現在は設備や体制を整え、通年でウイスキーを生産しています。

仕込みはワンバッチあたり麦芽1トン。マッシュレイシオは1:4で、糖化槽にはステンレス製のセミロイタータンを使用しています。糖化時間は約6時間、麦汁量は約4,600リットルと、過度な抽出を避けた設計が特徴です。

発酵槽はステンレス製を主体としつつ、ダフラスファー型の木製発酵槽を1基併用しています。発酵時間は66時間または114時間で、イーストにはディスティラリー用酵母を使用し、穏やかで輪郭のはっきりした酒質を目指しています。

蒸留には、2019年に新調された三宅製作所製のポットスチル2基を使用しています。従来のスチル形状を踏襲したストレート型で、太径のシェル&チューブ式コンデンサーを備えている点が特徴的。加熱はスチームコイル方式で、再留時のミドルカットは約72〜65%と比較的広めに設定されています。

原料麦芽は主にノンピートですが、一部では50ppmクラスのヘビーピート麦芽も使用。樽詰度数は63.5%で、ラック式を主体とした熟成庫にて、樽ごとの状態を細かく管理しながら熟成が進められています。

江井ヶ嶋蒸留所のブランドと主なラインナップ

Akashi(あかし)

蒸留所の所在地名を冠した、最も広く知られるブランド。種類はブレンデッド、シングルモルトに分かれる。軽快で飲みやすいスタイルから、樽由来の厚みを感じるボトルまでレンジが広く、国内外で流通している。

シングルモルトあかし

Eigashima(江井ヶ嶋)

比較的新しいブランドライン。蒸留所名を前面に出したプレミアム志向のシリーズ。種類はブレンデッド、シングルモルトに分かれる。限定性が高く、熟成年数や樽構成を明確に打ち出す傾向にある。

シングルモルト江井ヶ嶋 SEXTET

ブレンディッド江井ヶ嶋 シェリーカスクフィニッシュ

ホワイトオークあかし

旧蒸留所名を冠した表記。種類はブレンデッド、シングルモルトに分かれる。現在も一部商品で使用され、日本国内では馴染みのある名称として残っている。

ホワイトオークあかし

ホワイトオークあかし シングルモルト

香掬(カスク)

2025年5月に発売した新しいシングルモルトウイスキーのブランド。樽(カスク)の個性を最大限に引き出すことをコンセプトに、多彩な樽で熟成した原酒、それぞれの特性や香りの複雑さを職人の技で丁寧に掬い上げることを目指している。

香掬 オールドシェリーバット 15年

香掬 オロロソシェリーカスク5年ピーテッド

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peatedを評価

シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated
Single Malt Akashi PX Sherry Cask 5 Years Heavily Peated

「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」とは?

「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」は、フェノール値50ppmのヘビリーピーテッド麦芽を使用して造られたシングルモルトウイスキーです。2018年より蒸留が始まり、強いスモーキーさと発酵由来のフルーティーな香りが特徴です。

江井ヶ嶋蒸留所では1961年のウイスキー製造開始以来、主にライトピーテッド麦芽(5~10ppm)を使用して、軽やかで飲みやすいモルトウイスキーを造ってきました。こうした原酒は、通年販売の「シングルモルトあかし」などに使用され、国内外で幅広く愛飲されています。

一方、「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」は、従来よりピート感の強い麦芽を使い、熟成には極甘口のペドロヒメネス(PX)シェリーの空樽を使用しています。瀬戸内海の穏やかな気候の下で5年間熟成され、力強いピートスモークに加え、カシスやプルーンの果実香、ダークチョコレートやレーズンの風味が調和した、濃厚で印象的な味わいに仕上がっています。

香り

ドライイチジク、レーズン、アーモンド、カシューナッツ、黒糖のど飴、ラズベリー、アプリコット、バニラ、ビターチョコレート、カルダモン、黒コショウ、麦芽飴、接着剤、ヨードチンキ。

加水すると、硫黄、プラスチック、青りんご、マッシュルーム。

 

味わい

甘くてスモーキー。オイリーな口当たりで、徐々にピートの個性は強くなり、アイラモルトのようなしっかりとした燻製香とヨードチンキを感じます。ミディアムボディ。ドライフルーツ、黒糖、キャラメル。フィニッシュにかけてもスモーキーでピーティー。ビターな味わいが残ります。

加水後もリッチな甘さがあり、中盤以降はスモーキー。バランスは崩れず、個性がしっかりと保たれています。

 

評価

「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」の評価としては、「あかしブランドとして異例の強烈なピートスモーク!PXシェリーの濃厚な甘味と融合した、挑戦的かつ完成度の高い1本」です。

江井ヶ嶋蒸溜所がリリースするシングルモルトウイスキーには、タイプごとに異なるブランド名が付けられていますが、その明確な基準は公表されておらず、実際のところは流動的な部分も多いように感じられます。このボトルは、その中でも最も基本となる「あかし」ブランドに属しています。

「あかし」ブランドの多くは、ノンピート、もしくはライトピーテッド麦芽を使用した穏やかな酒質で構成されています。そのため、「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」は、このブランド内では異色の存在。フェノール値50ppmのヘビリーピーテッド麦芽で仕込まれた、江井ヶ嶋蒸溜所としては非常に珍しいタイプと言えるでしょう。

熟成には、PXシェリー(ペドロヒメネス・シェリー)樽を使用しています。樽由来の影響は非常に明確で、PXシェリー特有の濃厚な甘みや、タンニン由来のほろ苦さに加え、ドライフルーツ、カカオ、キャラメルを思わせる、ジューシーでスイートなアロマが立ち上がります。

その甘やかな印象の後に続くのが、フェノール値50ppmならではのかなりヘビーなスモーキーさ。正露丸や焼け焦げた木材を想起させるニュアンスがあり、アイラモルトを彷彿とさせる力強いピート感を備えています。ジャパニーズ・シングルモルトの中で近い個性を挙げるとすれば、「厚岸」や「三郎丸」といった、スモーキーかつピーティーなスタイルが思い浮かびます。

このボトルの魅力は、単にスモーキーである点に留まりません。PXシェリー樽由来の個性もしっかりと表現されており、そのバランスは見事。5年熟成という若さを感じさせない、複雑で奥行きのある味わいに仕上がっています。スモーキーではありながら、余韻がピート一辺倒になることはなく、フルーティーさやナッティーさ、スパイスの要素が折り重なるように広がります。

加水後の変化については、香味が大きく「開く」という印象はありませんが、バランスが崩れることもありません。そのため、ストレートだけでなく、ロック、水割り、ハイボールなど、さまざまな飲み方で安定して楽しめるところも評価できます。

市場価格の面から見ても、非常に優れた1本。容量は500mlですが、近年のヘビリーピーテッド系ジャパニーズウイスキーの中では、9,000〜10,000円前後という価格帯は良心的。しかも、一般的なバーボン樽ではなく、PXシェリー樽熟成であることを考えれば、コストパフォーマンスは高いと感じますね。

江井ヶ嶋蒸溜所のシングルモルトは多様なタイプがリリースされていますが、個人的にはヘビリーピーテッドタイプの完成度は特に高いと感じています。本商品は数量限定でしたが、今後は定番ボトルとして、「シェリー&ピーティー」なスタイルの継続的なリリースにも期待したいところです。

 



 

「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」は、江井ヶ嶋蒸溜所の中でも異色とも言える、強い個性を備えたシングルモルトです。フェノール値50ppmのヘビーピーテッド麦芽と、PXシェリー樽由来の濃厚な甘味が明確に主張し合いながらも、5年熟成とは思えない完成度の高さ。

江井ヶ嶋蒸溜所の今後のリリースを占う意味でも、このボトルは重要な存在です。
「シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated」が気になる方は、ぜひBARWHITEOAKで、その力強くも奥行きのある味わいをじっくりと確かめてみてください♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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